シアターコクーンが海外の才能と出会い、新たな視点で臨む“DISCOVER WORLD THEATRE”シリーズ。その第6弾にあたるシェイクスピアの代表作『ハムレット』が2019年5月に上演される。タイトルロールを演じるのは初舞台の『皆既食』(2014年)以来、様々な舞台で確かな演技力を発揮してきた岡田将生。『皆既食』で演出を務めていた蜷川幸雄に「君とシェイクスピアをやりたい」と言わしめた岡田に、現在の心境を聞いた。
――稽古に入る前に、演出のサイモン・ゴドウィンさんのワークショップを受けられたそうですね。サイモンさんと実際にお会いしてみて、いかがでしたか?
ワークショップでは、自分の感情を様々な表現方法で表出させたり、身体を使ったコミュニケーションのトレーニングを行いました。僕にとっては新鮮なことばかりで。ワークショップを通してサイモンさんの想像力の豊かさが伝わり、改めて「この方の演出を受けたい!」と感じました。
――河合祥一郎さんの翻訳で、シェイクスピア作品の中でも台詞量がトップクラスという難役に挑むことになりますが、プレッシャーなどはありますか?
もちろん台詞が多いのは確かですが、その量に囚われてはいけないな、と思います。幸いなことに、周りにはシェイクスピアに詳しい先輩がたくさんいて、中でも吉田鋼太郎さんは「何かあれば電話してこい」とおっしゃってくださいました。
それから、シェイクスピアに直接繋がりはないのですが、ドラマ『昭和元禄落語心中』(NHK 、2018年)で落語の師匠方に教わったことが活かせると思います。『ハムレット』には独白台詞が多いのですが、相手に聞かせるための言い方、お客さんを引き込ませる間の使い方をあのドラマで学べたのは、いい経験になったと感じています。
――シェイクスピア作品ということで、蜷川さんに対する想いなどがあればお聞かせください。
舞台での立ち方や発声の仕方、動き方も分からなかった初舞台の時、そういった部分を一つずつ丁寧に教えてくださったのが蜷川さんでした。怒られることももちろんありましたが、その中にも優しさがあって・・・。稽古場で言われた「相手を立たせること」という言葉は、今でも僕の中にあります。
今回のお話をいただいた時には、心の中で蜷川さんに「本当にいいんでしょうか?」と問いかけました。蜷川さんへの想いは消えませんが、今回は自分がサイメモンさんとだからこそ作れるハムレットを演じられたらと思います。
――初舞台から自分が成長したと感じる部分はありますか?
5年前は「共演者の方に迷惑をかけないようにしなきゃ」など、目の前のことでいっぱいいっぱいでしたし、作品についても一つの固まった捉え方しかできませんでした。でも今は、その時の環境や体調によって変わる台本の印象の変化を楽しめるようになってきています。こういうこと考えられるようになったのは、一つの成長なのかな。
――岡田さんが思う『ハムレット』の魅力を教えてください。
台本を読めば読むほど、ハムレットに対する自分の思いが変わり続けていて、今はその変化を楽しんでいます。最初は、ハムレットという役を勝手にすごい人にしてしまっていたんです。でも狂気めいたキャラクターと言われる彼も、一人の人間であり、弱い部分があったりと現代の我々に通ずるところがあることに気づきました。
役自体に魅力を感じているので「ちゃんと人として生きなければ」と考えています。ハムレットだからこの役作りをしました、ということではなく、自分の心のコントロールや表現の仕方が、そのままハムレットになればいいなと思います。
――オフィーリア役の黒木華さんとは、久しぶりの共演となりますね。
ビジュアル撮影でお会いしたのですが、同い年ということもあり気兼ねなくお話しできました。共演した時から「素敵な女優さんだな」と思っていたので、舞台を通して同じ空間を共有できるのは、すごく嬉しいです。
――最後に、公演への意気込みをお願いします。
稽古場を見て、一段と作品へのギアが上がりました。サイモンさんと色々な可能性の中で自分らしいハムレットを探し、おもしろく楽しい稽古場にしていきたいです。発言し、想像させ、その中でハムレットを見つけていけたらと思います。
◆公演情報
Bunkamura30周年記念 シアターコクーン・オンレパートリー2019
DISCOVER WORLD THEATRE vol.6『ハムレット』
【東京公演】2019年5月9日(木)~6月2日(日) Bunkamuraシアターコクーン
【大阪公演】2019年6月7日(金)~6月11日(火) 森ノ宮ピロティホール
【作】ウィリアム・シェイクスピア
【翻訳】河合祥一郎
【演出】サイモン・ゴドウィン
【美術・衣裳】スートラ・ギルモア
【出演】
岡田将生、黒木華、青柳翔、村上虹郎、竪山隼太、玉置孝匡、冨岡弘、町田マリー
薄平広樹、内田靖子、永島敬三、穴田有里、遠山悠介、渡辺隼斗、秋本奈緒美
福井貴一、山崎一、松雪泰子