『十二番目の天使』栗山千明インタビュー「一番共感してもらいやすい役」

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世界中で大ベストセラーとなった小説『十二番目の天使』が、2019年3月16日(土)より上演される。舞台化されるのはこれが初。家族を失った主人公ジョンを演じるのは井上芳雄。ジョンは、監督をつとめることになる野球チームで“十二番目のメンバー”である少年ティモシーに出会う。しかしティモシーは大きな秘密を抱えていた・・・。

「僕は、絶対、絶対、絶対、絶対、あきらめない!」

絶望の淵に立った男と、秘密を抱えた少年。彼らと密接に関わり物語を優しく包む二人の女性を、2役演じ分けるのは栗山千明。ジョンの妻・サリーとティモシーの母・ペギー役として臨む本作について、話を聞いた。

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目次

ひさびさの舞台に緊張しています

――栗山さんにとって、1年半ぶりの舞台ですね。出演が決まった時のお気持ちはいかがでしたか?

思ったより早くきたな、というのが正直な感想でした。前回(『ミッドナイト・イン・バリ』2017年9月)が5年ぶりの舞台だったので、1年半で舞台に立つという心構えをしていなくて・・・(笑)。緊張しています。映像のお仕事の方が多いので、それとは違う緊張感ですね。

――舞台と映像、どんなところに違いを感じていますか?

舞台はお客様と同じ空間にいるので、伝えなきゃという気持ちが大きいです。映像だとカメラで寄ってもらって、アップでお伝えすることを、演劇で、その場にいる人すべてに伝えきるには、自分から発信するエネルギーがもっとたくさん必要だなと思っています。だから声も身振り手振りも大きくなって。公演が終わってから数日は、映像の現場で「大きすぎる」って言われていました(笑)。

それから、何公演もあるので自分のモチベーションを保ち続ける必要があるのと同時に、少しずつ変化もしていきますよね。初日と千秋楽では演じる身としても違いますし、何度も足を運んでくださるお客様がいると客席のリアクションも変わってきます。そして何より、舞台はライブなのでちゃんと、間違えずに台詞を言いきれるか不安です・・・!

――慣れるまでは緊張もありそうですね(笑)。今回は共演者も初めての方が多いんですよね?

そうなんです、少しでも私自身のことを知ってもらえていると、安心するんですけれど……。今回は、六角精児さん以外は初めてお仕事する方々なので、まず、どんな役者さんなのかわからない。気軽に話しかけてもいいのか、稽古の進め方はどうなのか、どういうお芝居をされる方なのか、舞台上で私の演技にどんな反応をされるのかと、探り探り進めちゃうんですよね。そのうちに、皆さんが同じ方向を目指してるなとわかるとほっとします。
作品や演出家さんによって稽古の雰囲気も変わってくるけれど、『十二番目の天使』は優しい作品なので、作品に合ったいい雰囲気で臨めるといいな。

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結末を知っていても心が揺さぶられる作品

――原作はベストセラー小説ですが、ご存知でしたか?

読んだことはなかったです。だから出演が決まって、まず「私の役名はサリーなんだ!」と驚きました。日本人の役ではないので、お客様に「サリー」だと思ってもらえるかなという心配と、人との距離感が、日本人の感覚とは違うのかなと気になっています。

――なるほど・・・映像だと外国の人を演じることはほぼないですものね。

そうなんですよね、舞台だとよくあるものだと思うんですが・・・。今回は母親役なので、親子関係は日本よりベタベタしているのか、それともサッパリしているのか、想像できなかったんですよ。ほかにも、感謝の気持ちを込めて男性の頬にキスをするという場面があるのですが、私には全然ない感情なので分からなかったんです。稽古をしながら、観ている方に自然に感情移入していただけるように演じたいです。

――作品を読んだ感想はどうでしたか?

率直に、前向きになれる優しいお話だなと感じました。でも、正直に言うと、私はスポーツの知識がまったくないんです。タイトルが『十二番目の天使』だから「野球って12人でやるスポーツなんだっけ?」と思ったくらい、何も知らなくて。「三塁打ナントカ」みたいな用語がぜんぜん分からないんですよ・・・野球のシーンでは小説の後ろにある解説を読みながら想像していました。

それでも、1日で読み終わりました。登場人物たちがどうなっちゃうんだろう、とか、野球少年のティモシーはヒットを打てるのかな!?と気になって、どんどん読み進めました。実は、先にプロット(全体のあらすじ)を読んでから小説を手に取ったので、結末を知ってから読んだんです。それでも、秘密を抱えるティモシーにたくさん心が揺さぶられたので、小説を知っている方も知らない方も楽しんでもらえるんじゃないかなと実感しました。

――作品のキャッチコピーにもなっている「絶対、絶対、絶対、絶対、あきらめない!」という言葉がとても響く作品ですね。

はい。井上さん演じる主人公のジョンが絶望の淵にいるところから始まる物語ですが、ぬくもりや前向きさを感じる、あたたかい作品だなと思います。

――物語の鍵となる少年ティモシーがWキャストなので、演じる人によって作品の印象が変わりそうです。

Wキャストだからこそ、毎公演の感動の幅が変わってきそうですね。井上さん演じる主人公のジョンも、私が演じるティモシーの母親も、ティモシーによって心を動かされる人物。だからティモシーが日々違うことによって、きっと私たちも変化していくのかなと楽しみですし、お客様も何度も楽しめると思います。

――栗山さんはティモシーの母親ペギーと、主人公ジョンの妻・サリーの2役を演じます。どちらも母という立場が共通しますが、母という立場を演じる上では思うことはありますか?

最近では母親役も増えてはきたのですが、複雑な家庭だったり、特殊能力があったりする役が多くて、今回のように身近にいるかもしれない親子を演じるのは初めてです(笑)。たぶん、この物語の中で、一番共感してもらいやすい役だと思います。

――ペギーとサリーの2役を演じることについてはいかがですか?

どう違いを出すかは、模索中ですね。二人が物語の中でリンクするのが舞台ならではのおもしろさでもあると思うので、どこを近づけて、どこを違う人として演じるのか稽古で探っていきたいです。

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緊張で台詞を忘れる夢をみる・・・けれど

――本番に向けて、どんな気持ちで準備をしていますか?

とにかくドキドキしています!これまではコメディ要素が多い舞台が多かったので、こんなに真っ直ぐな作品は初めて。ハプニングがあった時に笑いに持っていくこともできないし・・・何かやらかしたらどうしよう!これまでそんなに大きなミスをしたことがあるわけではないんですけど、せっかくの素敵なお話をぶち壊しにしてしまわないかと不安で、舞台上で台詞を忘れる夢を見てしまうんです・・・。

――すでにそんなに緊張しているんですか!?

私、すぐに緊張するんですよ!不安症なんです・・・。普段は「緊張をあまり見せちゃいけない」と思って、できるだけ平気な顔をしているんですが、手だけ震えていることも多いんです。前回の舞台でも、緊張しすぎて毎日舞台に出る前に“悶々タイム”に入っちゃったんです。開演5分前に楽屋で「ああ、うう、始まる・・・」と呻いて、楽屋を出ても「あと何分で出番だ・・・うう」と(笑)。

きっと少し余裕が出てきたら、お客様の声や反応が楽しくなるはず。早く緊張よりも楽しさの比重が多くなればいいなと思っています。今はまだ、何が楽しみかを想像するよりも、緊張の方が大きいんですが(笑)。

――栗山さんなりの不安解消法とかあるんですか?

とにかく今できることをやることですね。小説をいただいてからは、気になるところがあったら小説のその周辺を読み返してみたりと、できるだけ下準備をして気を紛らわせるようにしています。
あとは、体力作りとか・・・花粉症ブロックの注射も打ってきました。うるうるするシーンで鼻水とかくしゃみとかできない・・・(笑)。映像ならやり直しができるけれど、舞台はそうはいきませんから。とにかく、できることはなんでもしないと!

――ツアーもあって公演期間も1ヶ月半ほどあるので、体力や花粉症には気をつけてください!

そうですね。・・・あ、不安ばかりお話してしまいましたが、楽しみなことがありました! 前回の舞台で、ツアーがすごく楽しかったんです。だから今回も、とても待ち遠しいなと思っています。なかなか行けないところに行かせていただけますし、その土地の美味しいご飯が食べられるし、何より、どこへ行ってもお客様があたたかく迎えてくださるのが、すごく嬉しかったです。今回も、いろんな土地でいろんなお客様と出会って、美味しいものが食べられることを楽しみにしています!

――素敵な舞台になりそうで、とても楽しみにしています。

ありがとうございます。これだけピュアな作品はあまり経験がないので、気持ちよく演じることができたらきっと一皮むけられるかなと期待しています。悲しくもあり、前向きでもあるお話なので、公演を重ねるごとに自分の中にいろんなことが蓄積していければいいなと思います。緊張もたくさんするけれど、自分に言い聞かせます・・・絶対、絶対、絶対、絶対、あきらめない!

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◆公演情報
『十二番目の天使』
【東京公演】3月16日(土)~4月4日(木) シアタークリエ
【新潟公演】4月6日(土)・4月7日(日) りゅーとぴあ 新潟市民芸術文化会館 劇場
【石川公演】4月9日(火)・4月10日(水) 北陸新聞 赤羽ホール
【茨城公演】4月13日(土)・4月14日(日) 水戸芸術館ACM劇場
【香川公演】4月17日(水) レクザムホール(香川県県民ホール)大ホール
【福岡公演】4月19日(金) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
【福井公演】4月21日(日) 越前市文化センター
【愛知公演】4月24日(水) 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
【兵庫公演】4月26日(金)~4月29日(月・祝) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール

【原作】オグ・マンディーノ
【翻訳】坂本貢一(求龍堂「十二番目の天使」)
【台本】笹部博司
【演出】鵜山仁

【出演】
井上芳雄、栗山千明、六角精児、木野花、辻萬長
大西統眞/溝口元太(Wキャスト)、城野立樹/吉田陽登(Wキャスト)

※辻萬長の「辻」は一点しんにょうが正式表記

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この記事を書いた人

高知出身。大学の演劇コースを卒業後、雑誌編集者・インタビューライター・シナリオライターとして活動。

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