森絵都による水泳の飛込み競技を題材とした「スポ根」青春小説で、第52回小学館児童出版文化賞受賞作『DIVE!!』が初の舞台化。過去、ラジオドラマ、映画、コミック、映画など様々なメディアで展開され、幅広い世代に支持される作品が、舞台上でどのように表現されるのか・・・。2018年9月20日(木)の開幕を前に、主演を務める納谷健に本作にかける意気込みなど話を聞いた。
泳いでると、いつの間にか沈んじゃうんです(笑)
――最初に、今回の「DIVE!!」The STAGE!!に出演が決まった時の気持ちからお話していただけますか?
『DIVE!!』は以前(2008年)映画化もされたこともあり、飛込み競技を題材にした話というのは知っていましたが、今回の舞台化が発表された時は「舞台の上で、どのように飛込みシーンを表現するんだろう?」と、一般のお客様と同じような反応でしたね(笑)。その後、台本を読んで、そして演出の伊勢直弘さんからの「青春群像劇として、しっかりと“届ける”」という言葉を聞いて、飛込みの表現はこの作品の“いちスパイス”であり、大切なのは僕らがこの作品のメッセージをキチンと伝えること。作品そのものが面白いから、僕らキャストがちゃんと心を込めて演じれば、絶対にお客様に楽しんでもらえるものになるんだというのは思いました。
――この作品で納谷さんが演じるのは主人公の坂井知季(さかい ともき)。中学生の役ですね。
中学生なので実際の自分の年齢よりもかなり低く、幼い感じに演じなくちゃいけないと思うのですが、重要なのは“前を向いた時のエネルギー”や“純粋な葛藤”だと思うので、その部分を大事に丁寧に演じるだけです。
――本読みを見学させていただいて、純粋さ、真っすぐさが伝わってくる“いい子”なんだろうなという印象を受けました。
でも、きっと「いい子=面倒な子」なんですよ(笑)。素直なだからこそ、逆にとっつきにくかったり、理解されなかったりするんだろうなって・・・。ミステリアスな人って、多くの人はやっぱり怖い存在だと思うので、子供の純粋さゆえの“怖さ”“末恐ろしさ”“計り知れなさ”みたいなものが感じられるように作って行けたらなって思います。
――現段階で納谷さん自身は「坂井知季をどう作り上げていこう」と考えていますか?
キャラクターそれぞれを見せる舞台になっているので、主演だからって前に立って引っ張るようなことせず、その場その場の立ち位置をわきまえながらストーリー全体として見せていくのが大事なので、先に自分でキャラクターを作っちゃうのではなく、稽古場で実際に動いていく中で自然と出来上がっていくのに任せた方がいいのかなって・・・。ちゃんと原作があるものですし、アニメ化もされて声優さんの声でイメージが既に出来ているので、そこを崩すようなことはせずに、いかに舞台に消化していくかという作業に徹したいなと思っています。
――共演の方々の印象も伺えますか?
今回が初共演という方が多い座組ですけど、大広陵(おおひろ りょう)役の杉江大志くんと松野清孝(まつの きよたか)役の瀬戸祐介さんは舞台『刀剣乱舞』での共演経験があるし、頼れる先輩なので安心感がありますね。ほかの方たちはエネルギッシュで明るい感じの人が多い印象だったので、不安が一気に取り払われて稽古が楽しみになりました。お互いを尊重し合って、影響し合って成長していく少年たちの姿が描かれている作品なので、個性豊かな面々が集まったからこそ尊重し合って、一緒にいいものを作り上げていきたいです。
――キャストの皆さんは、今回、肌の露出もあるので体作りが重要ですね。
飛込みをしている人の体型に、いかに近づけられるかがポイントかなと思うのですが、僕自身はすでに筋肉が付いてしまっているので、新たに筋肉をつけるのではなく、立ち姿などで“それっぽく”見せることになると思います。昔、バレエを習っていたこともあるので、頭の先から指先まで意識してポーズをとるなど、その時の経験を生かせるんじゃないかな。あと稽古中はパフォーマンス指導の先生からボディバランスや体幹のトレーニングを教えていただけるのが個人的には楽しみです。演出の伊勢さんも、この舞台に向けて春からダイエットを始めるなど、体を張っていろいろ試行錯誤してくださっていると聞いて、僕ら役者も大いに影響されましたし、一層士気が高まりました。
――丸山レイジ役の高橋健介さんは、「この舞台のためにシックスパック(※腹筋を鍛えるEM機器)を買いました」と言ってましたね(笑)。
「そこはジムに行くとかじゃないんや」「健介くん、お金かけて楽するんや」って思いましたけどね(笑)。でも健介くんも負けず嫌いっぽいので、きっと見えないところで絶対に努力してくると思います。負けてられないです!
――今回はフライングやトランポリン など、飛込みの表現で様々なパフォーマンスが使われるようですが、その点の不安は?
表現として未知数なので、不安もありつつ楽しみな部分も多いですね。とはいえケガをするわけにはいかないので安全優先で、でも僕らが出来るギリギリの事は、体を張ってやりたいなと思っています。パフォーマー担当キャストも体操経験者など身体能力の高い方たちがそろっているので、今までに見たことのないものが見せられるんじゃないかと思いますし、みんなで声を掛け合って稽古をして、日々の些細な変化にもお互い気づいてアドバイスをしたり気遣っていけるような、そんないい関係を築いていきたいなと思います。
――ちなみに納谷さんは泳げますか?高いところは大丈夫ですか?
高いところは全然大丈夫!ただ体脂肪率が低すぎて水に浮かないんですよ。普通に泳いでいてもいつの間にか足がプールの底についてて「あれ?」ってなっちゃう(笑)。
――“筋肉あるある”ですね(笑)。
納谷 はい、完全に“筋肉の人”ですね(笑)。
――あと、スタッフの方は飛び込みの試合を見に行ったそうですが、納谷さんはご覧になったことはありますか?
実際に試合を見に行ったことはないですが、稽古に入る前に講習でプールに行った時に選手の方たちの練習風景をすぐ近くで見せていただく機会がありました。飛び込み台の上にも立たせてもらったんですが、10メートルって想像より全然高くて・・・あ、飛込んだのは3メートルの高さからでしたけど。
――それでも十分高いですよ!それに素人がいきなり10メートルは危険です。万が一、バランスを崩して水面に叩き付けられたら大ケガじゃすまない場合もありますからね。
なのに選手の方たち、クルクル回りながら飛込みますからね。人間業じゃないですよ。経験と練習を何年もやって身に着けたものを、未経験の僕らがどこまでお芝居の中で表現できるかはわかりませんが、選手の皆さんと同じ気持ちで“使命”を背負ってプレッシャーと戦いなから挑んでいこうと思います。
――本番が間近に迫った心境は?
おそらく、稽古自体は2週間ぐらいでギュッと濃密な感じでやるんじゃないかな。その方が僕ら自身の芝居も固まるし、集中してやった方が作品としても1本の筋がしっかり通ったものが出来上がるんじゃないかなと思います。共演者との雰囲気作り、作品の空気作りをしっかりやって、幕が開いたときに舞台上を『DIVE!!』の世界で埋められるように、あとは初めて台本を読んだ時に僕自身が感じた新鮮な気持ちを最後まで大事に持ち続けられるように、“生の熱さ”を観客の皆さんに伝えたいですね。
――最後に、公演を楽しみにしている皆様にメッセージをお願いします。
お客様はメインビジュアルの写真やアニメ、小説などからイメージしてくださっていると思います。上半身の露出の多い俳優たちがたくさん出て来る作品ではありますけど、見どころはそこだけじゃなくて、ストーリーも熱く、見ごたえのあるものになると自信を持って言えます! 皆さんの期待を越えていけるもように、キャスト&スタッフ一同全力を尽くすので、ぜひ劇場に来て“生の熱量”を体験してください!
◆公演情報
「DIVE!!」The STAGE!!
【東京公演 日程・場所】2018年9月20日(木)~2018年9月30日(日)シアター1010
【大阪公演 日程・場所】2018年10月6日(木)~2018年10月7日(日)森ノ宮ピロティホール
【原作】森絵都『DIVE!!』(角川文庫刊)
【脚本・演出】伊勢直弘
【協力】アニメ『DIVE!!』製作委員会
【出演】納谷健、牧島輝、財木琢磨、杉江大志、高橋健介、名塚佳織、唐橋充、安達勇人、宮城紘大、瀬戸祐介、西野太盛、ほか
【公式HP】http://officeendless.com/sp/dive/
(C)森絵都・角川文庫刊/アニメ「DIVE!!」製作委員会 (C)「DIVE!!」The STAGE!! 製作委員会