約10ヶ月という短い活動期間の間に140点以上の作品を残し、忽然と消えた浮世絵師・東洲斎写楽をご存知だろうか。写楽の正体は未だ謎をはらんでおり、諸説がある中「写楽は実は女だった・・・!?」と言う大胆な発想を基に、写楽の謎に迫りつつ写楽が生きた時代の人間模様を描いたミュージカル『戯伝写楽』が2010年に誕生。そして、2018年1月に8年ぶりの上演が決定した。
Japanese Musical『戯伝写楽 2018』に物語の鍵となる女性・おせい役として、中川翔子が出演する。中川にとって、4作目となる舞台出演。絵を描くことが大好きな中川だからこそ感じる、おせいへの思いや、演劇という世界に向き合うことへの思いを聞いた。
『戯伝写楽』は「明るく、ポップで入りやすい世界」
――出演が決まった時の正直なお気持ちを教えてください。
「・・・ヤバイ!」って思いました(笑)。と言うのも、私は江戸時代含めて「歴史」にまつわる知識が抜けたまま大人になってしまったんです。好きなことや興味があることはどんどん深く掘り下げてきたんですが、知らないことは一切知らない・・・そう生きてしまったんです。
でも、よくよく聞いたら「写楽」と言う人物が何者だったのか、いろいろな説があるそうで、複数名で活動していた説とか、有名な芸術家が“写楽”という名前で描いていた説とか・・・正体がはっきりしていないのなら、(演じる上で)いろいろな妄想の余地があるんじゃないな、と思いました。
私自身も絵を描くことが大好きで、絵を描くことの素晴らしさや、人生と切り離せないものであることを感じている一人でもあります。絵とは、イマジネーションを形にするものであり、自分が生きた証にすることであり、精神統一できるものだと実感しているので、短期間で大量の絵を残した写楽が、一体どんな思いで描いていたんだろうと・・・きっと、ものすごくハイになっていたんだろうとは思いますが、そこに至るまでに何があったのかと、写楽に興味を持つことができました。
――初演の映像をご覧になったそうですが、観た感想はいかがでしたか?
ミュージカルと言うことで、歌の雰囲気も「The・和」という感じなのかと想像していたら、意外とそうではなく、すごくポップで明るくて、入っていきやすい世界観でした。それから色彩も、日本ならではの「赤」の美しさを感じました。
登場人物の描かれ方については、当時は今より寿命も短かったでしょうから「生きる」ということに命がけで、喜びや哀しみに対しても今よりもっとシンプルに大きなことと受け止めていたのかなと思います。おせいは、とにかく“謎の女”感がありますよね。私自身も人から「何をしている人なんだろう」「“謎み”がある」と言われるので、そこは共通しているかもしれないですね。
――ビジュアル撮影でおせいの姿になった時に感じたことは?
「髪の毛は茶髪のままで行きましょう、エクステとかもつけましょうか」と言われて「え?これでいいの?」って驚きました。地毛で髪を結うのが嬉しかったですし、おせいの服装ってフリーダムでして、着物にレースがついていたりと楽しかったです。おせいはたぶん「好きなことを形にしたい」と考えそうな人物だと思うので、かわいいものを身に着けたいんじゃないかな。
――そのおせいは、橋本さとしさんが演じる斎藤十郎兵衛の影的存在となってひたすら絵を描き続けることになりますが、そんなおせいの心情を今の段階でどう思われますか?
これをやる事が出来るなるなら死んでもいい。人間に生まれて来たんだから、好きなものを見つけてやり続けたい・・・おせいにとってそれが夢だったから、ひたすらに絵を描くことができて幸せだったのではと思います。楽しくなければこんな短期間で大量に描けなかったでしょうし。
でも、最初は十郎兵衛の影としての役割におせいが了承したとしても、同じ環境であり続けるのは、そのうち我慢できなくなるでしょうね。「自分が生きた証を残したい、自分が絵で何かを直接伝えたい」という思いが、描き手ならいずれ出てくるのではないかと思うんです。・・・でも、SNSがない時代でよかったですね。こんなことしたら、誰かがすぐSNSに書いてバレちゃうから(笑)。
写楽と直接語り合いたい
――絵に思いを込める、絵を通じて何かを伝える、ということについて、中川さんご自身はどのように考えていますか?
例えば、ルーブル美術館では何百年も前の絵画を、毎日何万人という人が観に来ますが、それって何かしらの強い思いが絵に込められているからこそ、今もなお多くの人を惹きつけているように思うんです。同じように、数百年と言う歳月が流れた今の時代に「新しい写楽の絵が発見された!」と言うニュースを聞くと「私を忘れないでくれ」って絵が叫んでいるからじゃないだろうかって想像してしまいますね。絵に込めた写楽の思いが強烈だからこそ、絵が発見されるのではと思うんです。
また、演劇などで何度となく演じられている「写楽」そのものにも「演じられることで自分を知ってほしい」と言う強い思いがどこかに残っているかも。だからこそ、しっかり演じないといけないですよね。写楽自身も、自分が繰り返し演じられることをおもしろがっているんじゃないですかね?自分の描かれ方を「自分はもっとこう言う人だ」とか、笑いながら眺めているかもしれない(笑)。
――確かに!絵を通じて何かを訴えようとしている写楽と直接話をしたくなりますね。
現代に召喚したいですね。こちらもいろんなものを見せたいし、語り合いたいです。「何を食べていたんですか?」とか、「冬と春どっちが好きですか?」とか、シンプルなことから、「絵はどのパーツから描くんですか?」とかも聞いてみたい!・・・写楽にiPadを渡したら、それで絵を描いてくれたりするのかなあ。何でこんな描き方をするんだろう、と不思議に思うんですけど、今の時代にいたら、萌えタッチの絵とかも描けるのかなあ(笑)。いいところも欠点も、デフォルメして描いているので興味は尽きません。浮世絵を摸写してみたくなりますね。
――ぜひ!中川さんが描く浮世絵を拝見したいです。
共演者の皆さんの似顔絵を、浮世絵バージョンで描けるようになりたいです!
中川翔子を大きく変えた「舞台」と言う存在
――気がつけば、舞台出演も4作目になりましたね。徐々に舞台女優としての自信もついてきたのでは?
いやもう、恐ろしい(笑)。怖くて仕方がないんです。台詞や段取りを覚えられるのだろうか、とかまったく知らなかった江戸時代と言う世界に入り込めるのかな、とか・・・不安のほうがいっぱいなんです。
舞台とは、私が知らなかったいろいろなスキルが伸びる場所なんだなと思いました。というのも、舞台をやり始めてから、コンサートなど歌う現場で、舞台で得た「喉を活かすスキル」が明らかに活かされていると実感したんです。
そして、舞台をやる前は人間関係にものすごく不安を感じていたんですが、皆で飲みに行くことや、ご飯を食べに行くことがそんなに怖いことではないんだと知りました(笑)。20代の頃は、人なんて信用できないし、変なことを言うとすぐ何か言われるし・・・人付き合いが異常に怖かったんです。でも稽古、本番とやっていくうちに「あの時、こんな変なことをやったでしょ!」とか笑ってつっこみ合えるようにもなりました。妄想歌謡劇『上を下へのジレッタ』の時もそうでしたし、『ドラゴンクエスト ライブスペクタクルツアー』のメンバーとは今も集まって飲みに行ったりするんですよ。
今回は、初舞台『ブラック メリーポピンズ』の時にいろいろ教えてくださった小西遼生さんとまたご一緒できます。小西さんには、江戸の知識を教えていただいたりして・・・その存在に安心しています。残念ながら舞台上ではほとんど絡みがない役なんですが(笑)。
――舞台も4作目ともなると、以前共演したキャストやスタッフと再会することも増えてきますね。
そうなってくるんでしょうね。脚本の中島かずきさんも『天元突破グレンラガン』の時に出会わせていただいた一人です(番組の主題歌を中川さんが担当)。この出会いがあったからこそ、お仕事を続けてくることができたし、人生も変わりました。いつか恩返ししないといけないなと思っていたので、今回早速がんばらないと(笑)。
舞台のおかげで、人間として欠けていた部分が少しずつ埋まってきています。一人暮らしをしたり、友達と遊んだりすることも好きになれました。やはり「学び」が多いんだなあと思いました。稽古はしんどいし怖いけど、本番が終わってお客様からいただける拍手が嬉しくて。お客様だって、時間と命とお金をかけて観に来てくださる・・・それはとんでもなく大変なこと。それでもお客様が良かったって思ってくれたからこそ、拍手をくださるわけです。尊いことですよね。これからまた、その喜びを目指してがんばろうって覚悟を決めたいと思います。
あと、なぜか舞台をやるようになってから風邪をひかなくなりました!体調管理に一層気を付けるようになったんです。一人の時は「気合いでなんとかする」でしのいできましたが、それでは周りに迷惑がかかると、ようやく学んで(笑)。お芝居って、すべてが元気じゃないとできない。そして脳みそも喉も肉体もフル回転しないとできない仕事です。だから常に元気でいないと・・・このことを学べて本当によかったと思います。
――今回、演出を務める河原雅彦さんとは初顔合わせですね。
はい。怒られることもあるかもしれませんが、絶対いい経験を積む事が出来ると思います。また「すごい達成感を得た!」と言える自分がいますように。
――最後に、本作を楽しみにしているお客様へメッセージをお願いします。
舞台って、稽古場から本番が終わるまで、お客様に物語を届けるためにすべてにおいてフルスイングでやらないといけないと思っています。そして舞台が終わってから身につく経験は未来に繋がる一歩になるはずです。そんな生活が再び始まります。怖いけどワクワクしています。おせいがどんな生きた証を残しながら生き抜いたか、と言うことを表現していきたいです。
◆作品情報
cube 20th presents Japanese Musical『戯伝写楽 2018』
【東京公演】2018年1月12日(金)~1月28日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
【福岡公演】2018年2月3日(土)・2月4日(日) 久留米シティプラザ ザ・グランドホール
【愛知公演】2018年2月7日(水) 日本特殊陶業市民会館 ビレッジホール
【兵庫公演】2018年2月10日(土)~2月12日(月・休) 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
【作】中島かずき
【作詞】森雪之丞
【音楽】立川智也
【演出】河原雅彦
【出演】
橋本さとし(斎藤十郎兵衛役)
中川翔子(おせい役)
小西遼生(喜多川歌麿役)
壮一帆(浮雲役)
東山義久(与七役/Wキャスト)
栗山航(与七役/Wキャスト)
池下重大(鶴屋喜右衛門役)
中村美貴
華耀きらり
大月さゆ
染谷洸太
馬場亮成
岩橋大
山崎樹範(鉄蔵役)
吉野圭吾(大田南畝役)
村井國夫(蔦屋重三郎役)
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Japanese Musical『戯伝写楽 2018』に出演する中川翔子さんより、直筆サイン入りチェキをいただきました。こちらを、抽選で1名様にプレゼントいたします。
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(撮影/エンタステージ編集部)