2017年12月に上演される浪漫活劇譚『艶漢』第二夜。尚 月地の人気漫画『艶漢』を原作に、傘職人でノーフン(フンドシをはいていない)がちな柳腰の美少年・吉原詩郎と、熱血で正義感溢れる巡査・山田光路郎、そして無敵の色気を放つ詩郎の兄貴分・吉原安里を軸にした、エログロナンセンスな昭和郷愁的アンダーグラウンド事件簿が、再び幕を開ける。
メインキャスト全員が、初演より続投となる中、山田光路郎役の末原拓馬と、吉原安里役の三上 俊は、揃って「続編を待ち望んでいた」と語る。「浪漫活劇譚」「歌謡倶楽部」と、それぞれの『艶漢』を振り返りながら、二人の作品への想いを聞いた。
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――浪漫活劇譚『艶漢』第二夜、待っていました!
末原:僕らも待ってました!
三上:待ちわびていました(笑)。本当に、続編ができることをずっと願っていたんですよ。
――衝撃の初演からは1年半、歌謡倶楽部から数えても、もう1年が経ちますね。初演の時のことを、少し振り返っていただけますか?
三上:はじめて安里を観た時は「嘘でしょ、なんで俺?」って思いましたよ(笑)。お話をいただいたのが、発表の3ヶ月ぐらい前だったかなあ。とにかく・・・身体が間に合うかなというところから始まって。でも、この作品において、ファンの方の中に占めるビジュアルの割合はとても大きいはずだから、まずは身体ありきで作っていかなければ、と覚悟しました。
最初は、原作者の尚 月地先生から「安里は服を着ていてもいいです」って言われていたんですけど、「いや、服を着ていたら安里じゃない!」と奮い立って、がんばりました(笑)。
末原:稽古場の隅にもね、チョコレートが置いてあって、飴が置いてあって・・・その横にプロテイン、みたいな状況だったね。
三上:あったね~、おっきいのが。
末原:僕もそれを見て「ああ、こういうことなんだな」って思いました。ずっと筋トレしてたもん。でも、あそこまで作り込むって、ストイックにやらないと成し得ないから、感動が生まれるよね。俊くんの体の仕上がりなんて、特に。それは、観てくださった方にとっても一つの喜びだったんじゃないかな。
――初演の稽古場では、作・演出のほさかようさんからどのような演出がつけられていたんですか?
三上:印象に残っているのは、バナナを持とうかって言われたことかな(笑)。あと、もっとエロく!もっとエロく!って言ってるのは何回も聞いたよね?
末原:いっぱい言ってた~。わざわざエロくするための時間というのを取ったりね(笑)。身体の角度とか「それをやるとどうなる?」みたいな検証を、めっちゃ真剣にやってたり。
三上:でも「艶漢」の世界観をほさかさんが一番分かっていらっしゃったので、そこに乗っかったという感じでした。
末原:光路郎については、役を作るまでに結構時間かけさせてもらったなあ。肉体以外の見た目って、僕らの仕事じゃないじゃない?
三上:そうだね、衣裳さんやヘアメイクさんたちの技があってだよね。
末原:そうそう。それから、声もある程度、原作を知っている方にはイメージがあるよね。だから、なるべく大多数がイメージするストライクゾーンを考えるんだけど、我々は声のプロではない。そう考えた時に、役者としてどうやってキャラクターと向き合うかを突き詰めると、人としてのあり方になると思うんです。相対する人とどうやってしゃべるのか、目の前で起こる物事にどうやって対処するのか、そういう内面を突き詰めていきましたね。
――初演では、皆さんが作り上げたものを目の当たりにして、お客様の熱が一層増したように記憶しています。
末原:稽古している間は分からないものを、めちゃくちゃ感じたね。
三上:本当に、そのとおりで。稽古中は、皆、ちょっと感覚が麻痺してたと思うんですよ。やりすぎかなと思っていたところもありましたし。幕が開いて引かれちゃったらどうしよう、って(笑)。でも、ほさかさんを信じて、とことんやりきろうと。
末原:安里は、特にそういう思いはあったよね。
三上:好き放題にやってたからね(笑)。でも、(初演では)最初に、圭登が詩郎として真っ裸で出たじゃない?
末原:マル禁棒のところね(笑)!
三上:その時にお客さんがすごく盛り上がってくれているのが分かって、あの瞬間「あ、これ大丈夫だね、いけるね!」って、楽屋で皆、確信したんです。
――その後、歌謡倶楽部という新たな公演へと発展して、すごく驚いたのですが。
三上:僕らもびっくりでしたよ、(上演決定を聞いたのが)終わってすぐでしたからね。
末原:お疲れさまでした!と同時に、滑り込んできた感じだったよね。初演の反響のおかげだと思う。
――歌謡倶楽部は、演劇とはまた違うショーの面の強い公演でしたが、大変だったことはありましたか?
末原:そうだねえ、大変だったんだけど・・・祭りだったね。幕が開いた瞬間、会場がワーッと湧く感じがして、この時も「大丈夫だ、待ってくれてた」って感じでいっぱいだったね。
三上:そうだね。歌がありましたけど、ミュージカルではなかったので、どうしたらいいのか最初は迷いがあったんですけど。安里が歌ってるの、聞いたことないし。でも僕もお客さんの反応を見た時に、間違っていないんだなと思えました。
末原:不思議だったよね。「詩郎」「光路郎」「安里」といった役がいる前提で、そのキャラクターたちが芝居をしているという、メタ的構造というか。
三上:劇団「艶漢」だったもんね。
――尚先生が漫画の巻末やカバー下に描かれるおまけマンガの空気を感じました。
末原:ああ~!
三上:確かに!それを読んでいる時の感覚に近かったように思います。
――本編では見られないキャラクターの一面が見れたように感じました。演出も、ほさかさんではなく伊勢直弘さんが手掛けられましたが、違いは大きかったですか?
三上:作っているものが全然違うんですが、僕は、ほさかさんは女性的観点、伊勢さんは男性的観点を強く持ってこの作品を見ているような気がしました。繊細と大胆、と言いますか。もちろん一概には言えないですし、どちらも繊細であり、大胆なんですけど、その配分の差を感じたというか。
末原:最初か前例があるかという部分も、きっと大きかったよね。伊勢さんは、ほさかさんの「浪漫活劇譚」が受け入れられたからこそ、それを舞台として拡大するのが自分の仕事だって話してたから。ある意味、「浪漫活劇譚」では原作の方に僕らが寄っていく。「歌謡倶楽部」では舞台として作品の世界をアレンジしていく。目指すところの違いがはっきりしていたから、分かりやすかったですね。
――なるほど。そんな2作を経て、いよいよ『第二夜』が始まるわけですが、共演を重ねて、末原さんと三上さんの関係性に変化などはありましたか?
末原:(三上さんを見やって)目の前では言えないな~。俊くん、ちょっと部屋出てて(笑)。
三上:なんで(笑)!そうですね~・・・、もう、大好きですよ。
末原:「歌謡倶楽部」の時にめちゃくちゃ仲良くなったよね。
三上:拓馬は、自分で劇団を持っていて、演者でもあるし作り手側でもあるんですけど、こういう原作ありきの作品って初めてだったんだよね。
末原:うん、初めてだった。
三上:最初は、不器用だなぁって思ってた(笑)。
末原:あはは(笑)。
三上:でも、いいヤツだなって。誰とでもすぐに仲良くなっちゃう人だから、距離感の近さに少し戸惑ったんですけど(笑)。初演で苦楽を共にして「歌謡倶楽部」の時にすごく意気投合したね。
末原:そう、すごく突然だった。「ビール飲みながら帰ろう!」みたいな感じになった(笑)。「浪漫活劇譚」の初演は必死だったから「歌謡倶楽部」でまた会えた時には「おお、旧友よ!」みたいな気持ちだったんだよ。
三上:分かる(笑)。
末原:俊くんは、ズバ抜けて職業「俳優」としてのプロ意識というか、クオリティが高いんだよね。我が道を行く人かなと思いきや、めちゃめちゃ面倒見が良くて。このカンパニーにとって、大事な存在だよ。
スポーツのチームで“キャプテン”と“エース”が違う、みたいに、「艶漢」において“キャプテン”は詩郎で座長の圭登なんだけど、“エース”は安里であり俊くんなんだと思う。そういう俊くんが、一番ストイックでいてくれるから、皆、高いレベルのことをやろうとするんだろうし。だから、本当に助かってるよ。
三上:ありがとう。僕も、拓馬のことをすごく尊敬しています。
――すごくプロフェッショナルで、いい関係性ですね。詩郎役の櫻井圭登さんは初演時、大抜擢でしたが、お二人は変化を感じますか?
三上:『第一夜』の時は、途中から合流だったし、稽古も短かったので、とにかく必死だったんだろうと思います。それが「歌謡倶楽部」では自分がやりたいことを詰め込んでくるようになりましたね。本当に楽しく演じているのが伝わってきました。詩郎という存在を、好きになったんだと思います。
末原:最初は子猫のようだったもんね(笑)。キョロキョロ、どうしましょう・・・みたいな感じだった。でも、結構いい感じに根は図太くて芯はしっかりしてた。俊くんが言ったとおり「歌謡倶楽部」ではちゃんといい部分をしっかり出せるようになったよね。
三上:僕らのこともすごくリスペクトしてくれているんだけど、(詩郎と安里)二人の絡みのシーンで「ここ、こうしてみよう」という考えに「僕はこうしたいです」って、ちゃんと対等に向き合えるから。そういう姿を見る度に、詩郎にぴったりだなって感じます。きっと『第二夜』ではもっといい遊びを入れてくると思いますよ。
末原:そうだね。ある意味、詩郎が彼を作っているよね。
三上:役との出会いって、大事だよね。
末原:俊くんも、プライベート、安里にそっくりだよ(笑)。
三上:安里との出会いは、大きかったね~。芝居って解放だと思うんですけど、安里をやっていると解放しすぎちゃうんですよね。挨拶でチューしそうになっちゃったり(笑)。
末原:俺、チューされたよ!「歌謡倶楽部」の打ち上げの時に(笑)。それに、稽古場でもずっと誰かを触ってるよね。なぜか、ずっとベッドのところで待機してるんですよ。ちょっと、気持ちがエロくなってるんだろうね!隣に座ると、すぐ引っ張られるの。
三上:なんか、オープンマインドになっちゃうんですよね(にっこり)。
――ちなみに、肉体作りはどうされているんですか?
三上:初演の時は、ほぼ絶食だったんですよ。絶食、筋トレの繰り返し。でも、『第二夜』のビジュアル撮影のために、違う現場をやりながら同じことをやっていたら、全然台詞が覚えられなくて。脳が回らなくなってしまうことが分かったので、ちょっと変えるつもりです。だから今回は、食べて、走ってます。(末原さんに)どうしてる?ジムとか行ってる?
末原:いや、ジムは行く暇ないからやめた。やっぱり一番は自制だね。でも俺、わりと(胸筋を差して)膨らむの早いんだよ。でも、腕がね・・・。
三上:俺、腕はすぐ太くなっちゃうんだよ~。難しい。
末原:安里は光路郎とは逆で、全部細くしないといけないでしょ。腹筋も、いっぱいつけると太くなっちゃうんじゃない?
三上:そう。だからインナーマッスルしかやってない。腹筋をつけるというよりは腹筋の周りをなくす、というようにやっています。
――『第二夜』には、新キャラクターとして新たなキャストも加わりますね。脚本を読まれた感想を教えていただけますか?
三上:ほさかさんの構成力は、やはり素晴らしいなと思いました。安里としては、原作の物語の中で(田上真里奈さん演じる)六口との距離が縮まっていくのが楽しいなと思っていて、今回はそこまで深くは描かれていないんですけど、少しそれが感じられると思います。もし、この作品が続いていくことができたら、いい伏線になっているんじゃないかな。
末原:この『第二夜』にも、原作のいろんな要素が詰まっているんだけど、俺は(狩野和馬さん演じる)湯上のエピソードがすごく好き。普遍性があるというか、テーマ自体が誰にでも通用するものが描かれていると思う。尚先生の原作、本当にすごいよね。人間の中にある、美しいだけではない部分を細かいところまで表現しているから、古典演劇でもいけるようなネタがいっぱいなんだよね。
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――それでは最後に、公演を楽しみにしている皆さんへメッセージをお願いします。
三上:待望の第二夜ということで、僕らもずっと準備して待っていました。新キャストも加わって、さらにパワーアップした『艶漢』の世界をお見せできると思います。僕自身も、新しい刺激をもらいながらも安里として成長して、こねくり回して、もっとエロく(笑)お届けできたらなと思いますので!ぜひ、楽しみにしていてください。
末原:『艶漢』というのは、作り手、作品を愛する方、いろんな人の思いがこもった“現象”だと思っています。舞台として、またその“現象”を新たに創り出す場にすべく、僕らは誠心誠意やるだけです。何ができるのかを追求して、勝負していきたいと思います。
◆公演情報
浪漫活劇譚『艶漢』第二夜
12月13日(水)~12月17日(日) 東京・俳優座劇場
【原作】尚 月地『艶漢』/「ウィングス」連載中(新書館)
【脚本・演出】ほさかよう(空想組曲)
【出演】
櫻井圭登、末原拓馬(おぼんろ)、三上 俊/
田上真里奈、林野健志/野田裕貴(梅棒)、狩野和馬/
村田 恒、加藤良輔
【アンサンブル】岡田あがさ、吉野哲平、大澤信児、高士幸也
【公演告知動画】https://youtu.be/a3jkYqPzHTA
(C)尚 月地/新書館 (C)尚 月地/幻灯署活劇支部