『向日葵のかっちゃん』三上真史&酒井敏也インタビュー!「大人であることの大切さを噛み締めて」

当ページには広告が含まれています

2017年8月23日(水)に東京・博品館劇場にて開幕する『向日葵のかっちゃん』。本作は、小説家・西川司の自伝小説を初舞台化した作品で、小学校低学年を支援学級で過ごした“かっちゃん”が一人の熱血先生“森田先生”と出会い、成長していく姿を描く。森田先生役は三上真史、そして、校長先生役は酒井敏也が演じる。久しぶりの共演となる二人に、作品の印象や、自身の経験談などを語ってもらった。

『向日葵のかっちゃん』三上真史&酒井敏也インタビュー

――酒井さんと三上さんは『ベニスの商人』でご一緒されていらっしゃいましたが、それ以来ですか?

三上:そうですね!久しぶりに再会できて光栄です。

酒井:僕は、テレビで見ていたので。TVKが大好きで、よく観てます。

三上:ええ?!そうなんですか!嬉しい・・・僕もいろんな作品で酒井さんのお芝居を見させていただいていました。あれからお会いする機会こそなかったですが、僕は酒井さんが大好きなのでまた共演させていただけてほんと嬉しいです。

――この『向日葵のかっちゃん』は、小説家である西川司さんの自伝的小説の舞台化ですが、原作を読まれた印象を教えていただけますか?

三上:小説を拝読してまず泣いてしまったんですけど・・・、作品の中に描かれている教育、育てる、出会い、その大切さを噛みしめましたね。なんでもないようなことが成長していく中で大きな出来事になっていくということを忘れてはいけないなと改めて感じました。自分にもそういうことがいっぱいあったなって思い出しました。大人になると、ともすれば自分が誰かに教える立場になることもあるじゃないですか。その時、果たして僕は相手にとって「こういう人になりたい」と思える存在になれているだろうか、森田先生みたいでありたいな、と大人であることの大切さを噛み締めましたね。

酒井:僕は、著者の西川先生と同世代なので、僕らの時代にもこういう先生がいたんだなあって思いました。厳しい先生が多かった印象なので・・・。だから、生徒にここまで寄り添える森田先生というのは、どういう生き方をしていたのか、知りたくなりましたね。

三上:確かに・・・僕もすごく知りたいです。

『向日葵のかっちゃん』三上真史&酒井敏也インタビュー_4

――確かに、小説はかっちゃんの視点で書かれているので、森田先生の人生は書かれていないんですよね。舞台では、それも掘り下げていただける気がしていますが。

三上:小説ではかっちゃんと森田先生が中心になっていますが、酒井さんの演じられる校長先生、星野真里さんが演じるかっちゃんのお母さん、皆の持つかっちゃんへの愛を表現できたらいいですよね。森田先生はもちろん、かっちゃんを取り巻く大人たちの人間味や思いがきちんと伝わるように。

酒井:それも気になりますよね。春休みという短い時間の中でぐんぐん成長していくかっちゃんと、子どものそんな姿を見た母親の気持ちとか、その時のお父さんはどうだったのか、兄弟はどうだったのか、とか。

――小説とは、また少し違う物語を見せていただけそうですね。

三上:そうですね。小説を読んだ方にもこの物語のまた違う面を観てもらえるというか・・・。(脚本・演出)わかぎゑふさんは実際に西川先生にお話を聞いた上で、物語的なフィクションも含めてこのお話を作られたとおっしゃっていました。物語として、より大切なことが伝わりやすい内容をお届けできると思います。

酒井:僕も、森田先生のお話聞きたかったな。

三上:そうそう!嘘みたいな本当の話なんですが、Twitterで「森田先生は私のおじいちゃんです。舞台観に行きます」というメッセージをいただいたんですよ!お孫さんが舞台をやることを知ってくださったみたいで・・・。おじいちゃんのことが大好きだったんですって。驚きつつも、嬉しく読ませていただきました。そして森田先生は実際にいらしたんだなあと改めて実感しましたね。

酒井:すごい、それは嬉しいね。

『向日葵のかっちゃん』三上真史&酒井敏也インタビュー_3

――ちなみに、お二人は子どもの頃はどんなお子さんでしたか?勉強はお好きでした?

三上:いやぁ・・・好きではなかったです(笑)。

酒井:僕は、勉強についていけていなかったので・・・。授業を受けながら、「今日は何をしようか・・・」って、ずっと想像を巡らせながらじっとしている子どもでした(笑)。

三上:このお話に出会って、子どもの頃を振り返るじゃないですか。小学生の時にクラスで悪さをした子がいて、それを僕がやったと疑われたことがあるんですよ。僕じゃないと言ったのにその先生は信じてくれなくて。
なんでちゃんと話を聞いてくれないんだろうってすごくショックでした。忘れたと思っていたけど子どもの頃の気持ちってずっと残りますね(笑)。

逆に、中学生の時は親身になってくれる先生と出会ってこういう人になりたいなと思ったことも覚えています。だからかっちゃんにとっての森田先生の存在の大きさは計り知れないですよね。

――出会いは、人生のターニングポイントになりえますもんね。学校の先生ではなく、そういう“人生の師”という出会いってありますか?

三上:僕は、元ローソン社長で現サントリーホールディングス社長の新浪剛史さんからいただいた言葉が強烈に響きました。以前やった舞台『クールの誕生』の時に対談をさせていただいたことがありまして・・・。

酒井:すごい組み合わせだね。

『向日葵のかっちゃん』三上真史&酒井敏也インタビュー_2

三上:はい。たった一度お話しただけなんですが、同じ目線になって話をしてくださいました。その時、新浪さんが「逆Tの字」のお話をして下さったんです。本当に尊敬できる方だなと思いました。
例えば縦軸が自分の主な仕事、横軸がまったく違う業種とします。逆Tの字は、縦軸だけでなく横軸を作っていくと土台がしっかりして縦軸が倒れなくなる。その横軸がどんどん増えて伸びていくと今度は扇形になる。そうすると、絶対に主軸は倒れないし、こっち(横軸)も伸びるというお話だったんですが、それを聞いてすごくはっとしました。というのも、ちょうど対談時期が『趣味の園芸』のお仕事を始めさせていただいた頃で・・・。その話をしたら「それは伸ばした方がいいよ」と言ってくださって。「好きなことを伸ばせ」というのは僕にとって金言でしたね。

酒井:「好きなことを伸ばせ」、か。いい言葉だね。

三上:「好きは絶対につながって最後は一緒になるから」って言っていただいたことが僕にとってのターニングポイントでした。酒井さんは?

酒井:やっぱり、つかこうへいさんですよね。

――たくさんあると思うのですが、つかさんのお言葉でご自身の転機につながったこととかありますか?

酒井:いろいろあるんですけど・・・「芝居をするな」という言葉が残ってますね。あとは・・・21歳の頃に聞いた話なんですが・・・「結婚している男と女の言うことは聞くなよ」って(笑)。

三上:ちょっと待ってください~(笑)。

酒井:理由を聞いたら「アイツら、守りに入っているから」って。なんてかっこいいこと言うんだろうと思っていたんですけど、つかさんもその後結婚して・・・守りに入ったなあって(笑)。でも、守るものがあるっていうことは、別の力になりますからね。

三上:僕は攻めていきますっ(笑)!!

酒井:(笑)。もう一つ、旅番組で広島の呉にある小さい屋台村で出会った80過ぎおばあちゃんに言われたことがあるんですけど。番組の最後に、旅について何か一言書かないといけないことになっていて、いい言葉が思いつかなかったのでそのおばあちゃんに聞いてみたんです。「僕に何か一言ありませんか?」って。そうしたら「そのままでええんじゃ、そのままで」って言葉が返ってきたんですね。

三上:深い言葉だ・・・。

酒井:響きましたね。今でもすごく覚えています。・・・その後に「Let It Go~ありのままで~」が流行って(笑)。

三上:おばあちゃん、先見の明がありますね(爆笑)!!

――何気ない一言がどう響くかは、人間と人間のコミュニケーションならではですよね。

三上:言葉ってすごい力持ってるんですよね。出会い一つで人生って変わるんだなって思います。かっちゃんも森田先生と出会っていなかったら、全然違う人生だったかもしれないじゃないですか。

酒井:そうだよね。

三上:かっちゃんは、自分自身はずっと“できない”と思い込んでいたけれど、森田先生の「できる」「絶対大丈夫」で変わっていく。そんな森田先生もきっとかっちゃんとの出会いで変わったと思うんです。森田先生は“先生”ですが、“人”としての素直な気持ちを言葉にするんですね。大人になるとできないこともいっぱいあると、それすらも伝えられるんです。それって向き合ってるからこそ包み隠さず言えることであり、すごく人間らしいことですよね。

『向日葵のかっちゃん』三上真史&酒井敏也インタビュー_5

――人間の持つ力や出会いの大切さを、改めて感じる機会をいただけそうですね。最後に、公演を楽しみにしている皆様へメッセージをお願いします。

酒井:そうですね・・・ご覧になる方は、原作を知って観ていただいた方が、間違いないと思うので。ぜひ、原作を買って、読んで、劇場に観に来てください。

三上:この物語は今まで皆さんが歩んできた人生とどこか重なるところがあると思います。もし全然違ったとしても、「自分にもこういう先生がいたら・・・」とか「自分はこうだったなあ」と思い浮かべていただけたら。

舞台を観ていただいたら今までどこかモヤモヤしていたものや何か悩んでいることが、すっと楽になるかもしれません。お客様にとって何か心の芽生えとなって、向日葵の花のように次の日を明るく照らせたらと思います。

◆公演情報
『向日葵のかっちゃん』
8月23日(水)~8月27日(日) 東京・博品館劇場
【原作】西川司
【脚本・演出】わかぎゑふ
【出演】
三上真史 星野真里 酒井敏也
西ノ園達大 高木稟 梅田悠 二瓶拓也
阿由葉朱凌/戸塚世那(Wキャスト)

『向日葵のかっちゃん』

(撮影/エンタステージ編集部)

この記事が気に入ったら
フォローしてね!

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

エンタステージは、演劇初心者からツウまで、演劇に関する情報、ニュースを提供するサイトです。サイトを訪れたユーザーの皆さんが、情報をさらに周囲に広めたり、気になる作品や人物などを調べたり・・・と、演劇をもっと楽しんでいただける情報を発信していきたいと思います。

目次