2017年4月2日(日)に開幕する舞台『エジソン最後の発明』は、劇作家・演出家の青木豪による7年ぶりのオリジナル・演出作品。東京・シアタートラムを皮切りに名古屋、大阪にて上演される。瀬奈じゅん、東山義久、小野武彦といったバラエティ豊かなキャストと共にお届けする、かなりおかしくて、ちょっぴりせつなくて、相当ハッピーな大人たちの物語。本作について、作・演出の青木豪と、出演の瀬奈じゅんに話を聞いた。
瀬奈さんの声を活かした役にした
――今、台本を執筆中だそうですが、どんな話になりそうですか?
青木:死者と話す機械を発明しようとする、町工場のおじいさんの話です。まず、工場を舞台にしたいなと思ったのがきっかけです。トタンが錆びているような雰囲気が好きで、そんな舞台セットが観たいなあ、と。工場に思い入れがあるつもりはないんですが、実家がお総菜屋さんだったので、下町の雰囲気は身近なのかも。
それからいろいろ調べていくうちに、エジソンが死者と話す機械を考えていたという資料を読んで、題材にしようと決めました。自分なら誰としゃべりたいのかなあとワクワクしたんですよ。瀬奈さんは工場の社長であるおじいさん(小野武彦)の娘で人気ラジオパーソナリティーの役なんですが、これは、瀬奈さんに合いそうだなということで設定しました。
瀬奈:そうなんだ!私だからパーソナリティーなの!?
青木:似合うと思ったんです。瀬奈さんの声を聴いて、ラジオの仕事をしていたら面白いんじゃないかな~と。舞台上でも、ラジオで喋っているシーンも作りたいんですよ。
瀬奈:嬉しいです。小さな頃からハスキーな声にすごくコンプレックスがあるんですが、人からは「声が好き」と言っていただく事が多くて、「自分は嫌いだけど、この声を“好き”と言ってくれる人がいるんだ」と知って、いつかラジオをやってみたいなって思っていたんです。
――ラジオパーソナリティでもあり、工場の娘でもありますが、ものづくりに馴染みは?
瀬奈:工場ってまったく身近になかったので、まだイメージがわかないんです。しかも、機械がすごく苦手で、テレビの録画やダビングもままならないタイプなんです。学校の授業でも、電池を繋げて・・・・・・なんてまったく好きじゃなくて。とはいえスポーツも好きじゃなかったなあ。ドッジボールなんかだとずっと逃げるので、最後まで残っちゃうんです。やればできるのかもしれないですけど、好きじゃないんですよね・・・・・・。足も速かったけど、リレーの選手になりたくないから、スピードを調節してました(笑)
青木:朝早く行って練習するのが嫌だな~、みたいな感じなんですかね。
瀬奈:そうそう。踊るのは大好きでバレエ少女だったんですが、休み時間や放課後に外で遊ぶことはしなかったですね。
青木:じゃあ、休み時間は何してたんですか?
瀬奈:ゴムとびはよくやりましたね!流行ってました。あれが唯一やったスポーツです(笑)
青木:あったねー!俺もゴムとびはやりましたよ。妹とその友達と遊んでることが多かったからね。懐かしいなあ。
――青木さんもゴムとび・・・・・・意外ですが、似合うかも?
瀬奈:青木さんって、会う前はもっと堅くて怖い感じの方なのかと勝手に想像していました。でも実際にお会いすると、なんて物腰の柔らかい方なんだろうという印象です。あと、せんとくんに似てる。
青木:奈良のマスコットキャラクターのね(笑)
瀬奈:すみません、失礼ですよね(笑)。もう初めてお会いした時に「せんとくんに似てますよね」って言っちゃったんです。そう思ったら、隠していられないんです。
青木:全然、大丈夫ですよ。割と近い系列のものに似てるって、よく言われるんですよ。一番言われるのは、レツゴー三匹(漫才トリオ)のじゅんさんですけどね。
瀬奈:似てる!そっくりです(笑)
初共演だから、芝居創りに集中できる
――死者と話せる機械が実際にあったら、誰と話したいですか?)
青木:昔一緒に舞台をつくっていた美術担当さんとしゃべりたいなあ。劇団を旗揚げした時からずっと一緒にやっていた方でなんです。当時すでにかなり年配だったので、病気で亡くなられてしまいました。でも時々、「僕が今やっている事、大丈夫ですかね?」と聞きたくなるんです。いろいろと助けていただいたんですよ。たとえば、すごくリアリズムな作品を書いてた時に「俺、セット全部グレーにしちゃうからな」と言われました。「俺がリアルなセットを作ると、お前はきっと“あそこのコンセントはいくつあった方がいい”なんて余計な事をいっぱい考えちゃうだろ?そうしたら絶対書けなくなっちゃう。俺はいいかげんに作るから、お前は作品の事だけ考えてろ」って。そんな人だったから、時々、なんだかすごく話したくなるんです。
――リアリズムなのにあえて全部グレーにするとは、きっと青木さんのことをよく見てくださっていたんでしょうね。・・・瀬奈さんは、お話されたい方はいますか?
瀬奈:私はおじいちゃんと話したいです。宝塚が大好きだったので、きっと、いつか私が入ればいいなって思ってたと思うんです。だけど、私が宝塚の受験を決意する前に亡くなっちゃって・・・・・・もちろん、私が宝塚に合格した事も、トップになった事も知らない。だから、「宝塚入ったよ、トップになれたよ」って伝えたいな。
青木:きっと天国ですごくドヤ顔してるでしょうね。「俺の孫を見ろ」って(笑)
瀬奈:ふふふ、自慢してたかもしれませんね。
――死者と話せる機械にまつわる今作・・・・・・ハッピーエンドなのは決まっているとか?
青木:はい。絶対、ハッピーエンドにします!それだけは決めて書いてるんですよ。
瀬奈:そこまで言ってハッピーエンドじゃなかったら、お客さんが「ええ~!?」って怒っちゃいますね(笑)。私もどんな作品になるのか知らないので、すごく楽しみです。基本的な設定だけは聞いているんですけど、あとは脚本ができるのを待ちたいと思います。完成したものを読んで感じた直感を大切にしたいですね。そして稽古が始まったら、真剣に取り組むのみです。
――共演は、ほとんど初めてご一緒する方ですよね?
青木:小野武彦さんが出演されるお芝居の脚本を一度書いたことがあるくらいで、演出として関わるのは初めてですね。岡部たかしさんや武谷公雄さんなど、ずっと舞台を観ていて好きな俳優さんとご一緒できるので楽しみです。
瀬奈:私もまりゑちゃん以外は全員初めましてです。
青木:楽しくしたいですね。昔、自分の劇団で演出していた時は、ヒドイ人でしたけど・・・・・・。
瀬奈:え、厳しいんですか?
青木:初めましての方に強く出ることはないです(笑)。前は、怒鳴ることもありましたね。自分でもどうするのがいいのかよくわかってなくて、全員で手探りでしたからね。だから当時の劇団員には申し訳ない事をしたなと思っています。今は穏やかですよ。ずっと一緒にやっているメンバーだったので、慣れもあったんでしょうね。だからまったく知らない人だらけの稽古場に行った時に、すごく楽しかったという思い出もあります。「この芝居を良くしよう」という目的以外に共通の話題もなくて、芝居の話だけができる環境というのも良かったです。距離をそんなに縮めなくてもいいですしね。
瀬奈:ああ~、それは分かります!初めての人達と仕事をする時は、「芝居をする」「皆で良いものを創る」という目的しかないですよね。今回も初めましての方が多いので、良い舞台を創るという目的に向かえる気がします。皆で良い芝居をしたいし、それが私達の自己満足ではなく、ちゃんとお客さんに伝えられて、楽しさを感じていただけるように頑張ります。
青木:上演するシアタートラムは細かい芝居が届く空間だから、お客さんも一緒になれるのではと思っています。皆でその場を共有する事がすごく楽しい作品になるように創っていきたいので、ぜひ共有しに来て下さい。さらに、出演者それぞれの新たな面を引き出せていけたらと思っています。ファンの方にも、いつもと違う側面を絶対お見せできると思いますよ。
◆瀬奈じゅん プロフィール
1974年4月1日生まれ。東京都出身。’92年宝塚歌劇団 花組公演『この恋は雲の涯まで』で初舞台。2005年、月組トップスターに就任。様々な色を持つトップスターとして絶大な人気を集める。’09年12月退団。以降、ミュージカル『エリザベート』、『アンナ・カレーニナ』等で主演を歴任。コンサートも開催しエンターティナーとしての魅力を発揮している。最近の主な作品に、『貴婦人の訪問』『ア・フュー・グッドメン』『シスター・アクト~天使にラブ・ソングを~』『今度は愛妻家』ほか。第37回菊田一夫演劇賞・演劇賞、第3回岩谷時子・奨励賞受賞。
◆青木豪(作・演出) プロフィール
1997年に劇団グリングを旗揚げ。以後、2009年の活動休止まで作・演出を務め、市井の人々の巧みな会話劇で評判を呼ぶ。近年では幅広い作風に挑み、プロデュース公演や多くの劇団にバラエティに富んだ作品を提供。近年の舞台作品では、脚本として『ガラスの仮面』『八犬伝』『断色』『鉈切り丸』『9 days Queen』『天鼓』『ブルームーン』『花より男子 The Musical』など、演出として『往転−オウテン』(第66回文化庁芸術祭新人賞受賞)『The River』Dステ19th『お気に召すまま』(演出担当)などを手がける。そのほか、NHK FMシアター『リバイバル』でABU賞受賞、HTBスペシャルドラマ『ミエルヒ』ではギャラクシー賞テレビ部門優秀賞など数多くの受賞歴を持つ。
◆舞台『エジソン最後の発明』公演情報
【作・演出】青木豪
【出演】瀬奈じゅん 東山義久 岡部たかし まりゑ 安田カナ 武谷公雄 八十田勇一 小野武彦
2017年4月2日(日)~4月23日(日) 東京・シアタートラム
2017年5月1日(月) 愛知・青少年文化センター アートピアホール
2017年5月2日(火)、5月3日(水) 大阪・サンケイホールブリーゼ
企画・製作:キューブ ニッポン放送
お問い合わせ:キューブ 03-5485-2252(平日12時~18時)
公式サイト:https://edison.amebaownd.com/
(撮影/エンタステージ編集部)