1789年のフランス革命勃発後、パリの街はジャコバン党に支配され、元貴族たちは次々と彼らに処刑されていた。そんな状況を打開しようと立ち上がったイギリス人貴族のパーシー。彼は仲間たちとともに「スカーレット・ピンパーネル」を結成し、無実の人々を救おうと決意する―。
本作でピンパーネル団のひとり、ベン役を演じる相葉裕樹に話を聞いた。
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今回の課題はエレガント!?初の貴族役!
――ピンパーネル団、かなり華やかなメンバーが出揃いました!
最初にピンパーネル団のみんなと顔を合わせたのは、演出のガブリエルさんとの懇談の席でした。その時はまだはじめましての方もいて、そんなに深いお話は出来なかったんですが、取材などで顔を合わせる際に、少しずつ、互いの意志を確認し合っている感じです。これから稽古が本格的に始まれば、おのずと絆も深まるのではないかと。これだけ若手俳優が揃うミュージカルも珍しいですよね。
――出演が決まった時のお気持ちをうかがいたいです。
宝塚で非常に人気のある作品だということは存じていましたので、最初にお話を聞いた時は身が引き締まる思いでしたし、とても光栄だと思いました。石丸(幹二)さんや安蘭(けい)さんといったベテランの方々と、僕たち若手がガッツリ組めるということで、共演者のみなさんと共に、どんな化学反応が起こせるのか、今からドキドキしています。
――宝塚版の映像をご覧になったそうですが、その時に「この役をやってみたい!」と感じたキャラクターはありましたか。
あ、そういう見方もありますよね・・・今、気づきました(笑)。映像を見ている時は、ただ物語に引き込まれて、宝塚の独特な世界観を普通に楽しんでしまいました(笑)。ストーリーや構成もシンプルで無駄がないですし、衣裳や装置も含めてなんてカッコ良い世界だろうと。また、宝塚のみなさんは衣裳さばきが素晴らしいんですよ。その部分は自分がベンを演じる際も参考にしたいと思っています。
――ベンはピンパーネル団の中でも手下的な色合いが強い役柄ですよね。相葉さんと“手下”キャラとの共通点がなかなか思い浮かびません。
ガブリエルさんとお目にかかった際に、ピンパーネル団のメンバーに短い台詞が書かれたメモ的なものが渡されて各自それを読んだんです。多分、あの時にガブリエルさんの中で、僕たちのキャラクター付けがある程度固まったと思うのですが・・・僕、下っ端っぽかったんでしょうか(笑)。
――『GEM CLUB』の時は、中河内(雅貴)さんがリーダーで、相葉さんはサブリーダーとして先輩チームに君臨していた印象です。
ですよね・・・自分でもあの時はサブリーダー的なポジションだったと思います。今回はちょっと違った立ち位置になりそうですね(笑)。でも僕、実は末っ子なんですよ。小さい頃から、兄の後ろを必死でついていく・・・みたいなところはありましたので、ガブルエルさんにはそんな一面を見抜かれたのかもしれないです(笑)。
外国の演出家の方とお仕事するのも今回が初めてなんです。通訳の方を通しての会話も新鮮ですし、基本、日本人のクリエイターと変わらないとは思いつつ、熱量の大きさやパワーはすごいと感じていますので、その熱に負けないよう、自分の思いや考えも稽古場でしっかり出していきたいところです。
――ピンパーネル団は皆さん“貴族”ということで、姿勢や立ち振る舞いも普段とは違ってきますよね。
まだ、本格的な稽古に入る前のプレ稽古に参加しているところなのですが(注:取材時)、マントさばきを含めた衣裳の着こなしや立ち居振る舞いについては日々勉強中です。日常的な所作を含めて、何気ない動きにどこまでエレガントさを出せるかが、今回の課題のひとつかもしれません。
――そういうポイントに関して、ダンスをずっとやられていたことはかなりプラスになるのでは?
確かにそれはありますね。何かアドバイス等があった時に、すぐその感覚を体で掴めるというか。ただ、貴族というのは未知の世界ですから、少しでも役柄に厚みが出るよう、そこはしっかり作っていきたいです。
ひとつの作品を終えるたびに、新しい世界が見える
――相葉さんはこれまで『ピピン』のタイトルロールや『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』のシーモア、『ラ・カージュ・オ・フォール』等、多くの海外ミュージカルに出演していらっしゃいます。
そう言っていただくと・・・確かに出させてもらっていますね(笑)。方向性は違うのですが、どれも自分にとっては大きな挑戦でした。『ラ・カージュ~』に関しては、台詞や歌も頑張りましたが、なにより鹿賀丈史さん、市村正親さんという大先輩に囲まれての芝居に緊張しましたし、なんとかこの中で爪痕を残さないと!と、気合いも入りつつ・・・プレッシャーもなかなかのものでしたよ(笑)。
オリジナル作品では、昨年の『HEADS UP!/ヘッズ・アップ!』が濃かったですね。お陰さまで、幕が開いてからの評判も良く、多くのお客さまに楽しんでいただけたのですが、何しろオリジナル作品ということで、稽古中は本当に大変でした。哀川翔さんが座長だったんですけど、どんな時もおおらかな心でカンパニーを支えてくださって、僕たちも翔さんに身を任せるつもりでついていきました。あの時のメンバーとは今でも翔さんのお宅で集まったりしています。
――そうやっていろいろな方たちと、さまざまな作品に出演なさると、相葉さんの中でも次第に変化のようなものが生まれてくると思うのですが。
稽古を重ねて本番の舞台に立って、また新しい作品と出会って・・・と繰り返していくと、課題もたくさん見えてきて、さらに上の世界にいきたいとも感じるんです・・・それまで気付かなかった自分の弱点も自覚しますし。ゆっくりではありますが、一段一段階段を登って行くような感覚かもしれないですね。
――作品ごとにステップアップができるのは素晴らしいことだと思います。お忙しい毎日の中で、リフレッシュ法がありましたらぜひ!
温泉が最強ですね(笑)。温泉に行く時間がない時は、スーパー銭湯やマッサージで癒されています。自分の体の状態に関しては、ものすごく敏感なんですよ。稽古や本番が続くと、すぐ体がバキバキになってしまうので、ちゃんとケアしないと起きるのも大変だったり(笑)。
『スカーレット・ピンパーネル』は、ダンスがメインの演目ではない分、これまでとは少し違うアプローチで自分の魅せ方を研究していければと思っています。貴族的な所作や立ち居振る舞いもそうですし、あまり演じた経験がない手下キャラの造形も極めたいです。ピンパーネル団は、舞台に出てきた瞬間に“カッコ良いヒーロー”としてお客さまに認識していただかないといけませんので、そんなキラキラ感も自然に出せるよう、本番に向けて稽古に励みます!
黙ってそこに立っているだけで“華”を醸し出す人だと感じた。高身長に甘いマスク、そしてしなやかさとキレとを併せ持ったダンス力・・・ミュージカル俳優が欲しがる多くのファクターを持っているのに、ご本人はいたってシャイだ。
本作『スカーレット・ピンパーネル』で相葉裕樹が演じるのは、ピンパーネル団の一員で“手下キャラ”のベン。個性豊かな若手俳優が揃う中で彼がどんな新境地を見せてくれるのか・・・開幕を楽しみに待ちたい。
◆ミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』
2016年10月19日(水)~10月26日(水) 東京・赤坂ACTシアター
2016年10月30日(日)~11月7日(月) 大阪・梅田芸術劇場メインホール
2016年11月24日(木)~11月29日(火) 東京・東京国際フォーラム ホールC
(撮影/高橋将志)