ミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』上原理生にインタビュー!「こうなったら“革命家俳優”として突き進んでいきます!」

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フランス革命後のパリ。この地ではロベスピエールの命により無実の貴族たちが断頭台に送られていた。友人を処刑されたイギリス貴族のパーシー・ブレイクニーは、志を同じくする仲間たちとピンパーネル団を結成し、身分を隠してパリに潜入。果たしてパーシーとピンパーネル団は恐怖政治下のフランスを救うことができるのか――。

昨年、男女キャスト版が初演されたミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』が今秋二都市で再演される。本作でロベスピエールとプリンス・オブ・ウェールズの二役を演じる上原理生に話を聞いた。

ミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』上原理生

――今回、二役のうちのひと役、ロベスピエールも革命家です。上原理生さん=ミュージカル界の“革命家俳優”ということでよろしいでしょうか?

確かに(笑)!『1789-バスティーユの恋人たち-』のダントン、『レ・ミゼラブル』のアンジョルラスからのロベスピエールですしね。さらにどの作品もフランスが舞台なんですよ。もしかしたら、僕、前世がフランス人で、革命に散った一人だったのかもしれないですね……フランス、じつは行ったことないんですけど(笑)。

――『1789-バスティーユの恋人たち-』で上原さんが演じられたダントンと、今回担われるロベスピエールは、盟友としてフランス革命で共に闘ったと史実にもあります。

そうなんですよ、それなのに『スカーレット・ピンパーネル』で描かれるフランス革命から5年後の世界で、ロベスピエールは恐怖政治を行う政治家になっています。もしかしたら、一緒に闘ったダントンを断頭台に送っているのかもしれなくて。『1789』で古川雄大くんが演じたロベスピエールをずっと近くで見ていましたので、どこかで二つの作品やロベスピエールという役をリンクさせていけたら面白いな、とも思っています。

――革命後の5年の間にロベスピエールの心に何が起きたのか、いろいろ考えてしまいますね。

『スカーレット・ピンパーネル』でのロベスピエールは、自身も処刑される少し前で、いろいろなことに余裕がなくなっていたんだろうとは思います。フランス映画でダントンを主人公に、彼が処刑されるまでを描いた作品があるんですよ。これにはもちろんロベスピエールも出てくるんですが、ダントンが処刑された後に、ロベスピエールが自分の部屋に戻って自らの行動を逡巡するシーンがあるんです。するとそこにメイドの小さな息子が入ってきて、フランス人権宣言を暗唱し始めるんですが、最初は安堵の表情でそれを聞いていたロベスピエールの顔が次第に絶望へと変わっていくんです。当初は理想と希望に燃えていたはずだったのに、今はそれが違う方向に行ってしまった……みたいな。『スカーレット・ピンパーネル』ではちょうどその時代のことが描かれていますので、どこかでロベスピエールの葛藤みたいなものも表現していきたいです。

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ロベスピエールは“真っ白な正義”を胸に抱く人

ミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』上原理生_2

――ご自身とロベスピエールがリンクすると思われる点はありますか?

(即答で)ありますね!

――具体的に、ぜひ!

出演が決まった時にいろいろ考えてみたんですけど、ロベスピエールって口げんかや口論になった時、絶対に正論で相手を負かす人だと思うんです。僕にもそういうところがあるんですが(笑)、そんな時、周りの人には「分かる。分かるけど、世の中は正論がすべてじゃないんだよ」と優しく諭されたりして。僕はロベスピエールをすごく純粋な人だと捉えています。“真っ白な正義”をつねに胸に抱いているというか。

――ロベスピエールには二幕のオープニングでビッグナンバー「新たな時代は今」もありますし、そこからある仕掛けに発展もしていきます。

僕、『ミス・サイゴン』にしても『レ・ミゼラブル』にしても二幕の冒頭で重要なナンバーを歌わせていただく機会が多いんです。『スカーレット・ピンパーネル』でも「新たな時代は今」と、そのすぐ後の展開で、お客さまに驚いていただければ。(フランク・)ワイルドホーンさんの楽曲をミュージカル作品の中で歌わせていただくのは今回が初めてなのですが、どの曲も楽譜を読むだけで歌いたい衝動に駆られちゃうんです。キャラクターの心情にぴったりフィットした曲調にも惹かれますね。

僕は歌の人間なので、特に歌に関しては繊細に、大胆に取り組んでいきたいと思っています。「新たな時代は今」に関しても、ロベスピエールという人間のすべてが詰まっているようなナンバーですから、役者として自分の持っているものを最大限に出して表現していきたいです。

――「新たな時代は今」には「あの1789年を~」という歌詞もあったと記憶しています。

そうなんですよ!で、僕は違う作品でダントンとして1789年にロベスピエールの隣にいたわけです。そこから5年の間にロベスピエールの心情に何が起きてこうなったのか……ただの悪役としてではなく、彼の深い部分もしっかり魅せることが今回の課題のひとつだと思っています。

ミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』上原理生_3

――パーシー役の石丸幹二さんとは初共演ですね。

ようやく実現するんだ!という気持ちです。じつはまだちゃんとご挨拶もできていなくて(注:取材時)。僕にとっては偉大すぎる存在の方で、遠くから憧れの眼差しで拝見しているという感じでしょうか。

――石丸さんは東京藝術大学の先輩でもあります。

同じ大学の出身で、同じく歌の勉強をなさった先輩でもいらっしゃいますが、僕にとってはそれ以上にとても繊細な芝居をなさる方だという印象が強いんです。石丸さんが丁寧にパーシーという役に向き合われる姿を、今回は近くで拝見できるのがとても楽しみです。

フランスの前は沖縄?青い海を見て涙が

――少し前に、ちょっと珍しい場所に行かれたとか。

沖縄に行ってきました。民宿に泊まったんですけど、宿の人にしっかり言われましたよ「理生さんは島人(しまんちゅ)の顔をしてますね」って(笑)。で、僕も「これで日焼けして黒くなったら完璧ですね」と答えたら「いや、今のままで充分イケますから」って(笑)。

――地元の方からお墨付きが(笑)。

そうそう(笑)。また苗字が上原でしょ?沖縄には同じ苗字の方が非常に多いんです。それで、中でも特に上原姓が多い糸満市に連れて行ってもらって、そこの真っ青な海を見ていたらなんだか涙が出て来ちゃって。あれ?じゃあ、フランスの前は沖縄に生きる島人だったのかな……?なんて(笑)。

ミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』上原理生_4

――2年前にエンタステージでお話をうかがった時に「ラテン系のトートを演じてみたい」とおっしゃっていたのが非常に印象的でした。あれからお気持ちに変化はありましたか?

お話しましたね~。現時点では自分で「この役をやってみたい!」という強い希望はないのですが、『スカーレット・ピンパーネル』と同じくワイルドホーンさんが作曲なさった『モンテクリスト伯』の世界観には憧れます。あとは“革命家俳優”として、1番インスピレーションを受けるのが、キューバ革命を率いたチェ・ゲバラなので、彼にはすごく興味がわきますね。初めて『レ・ミゼラブル』でアンジョルラスを演じることになった時に、(吉原)光夫さんから「ゲバラとか……いいよ」と言っていただいたりもして。

ゲバラを通して、人はなぜ革命を起こすのかということを自分の中に入れていったような気がします。やはり根底にあるのは国への愛情や深い思い、忠誠心なんですよ。その熱がアンジョルラス、ダントン、ロベスピエールの中にも強く息づいていると思います。

――チェ・ゲバラが進行役を務めるミュージカルといえば『エビータ』ですが、ロイド=ウェバー作品にご興味はありますか。

それはもちろんあります。『エビータ』もですが、楽曲で一番惹かれるのは『オペラ座の怪人』なんです。コンサートでは良く「ミュージック・オブ・ザ・ナイト」を歌わせていただくのですが、クラシカルで美しい旋律が自分の中にも強く響くんですよ。ベースに演技があるミュージカルと違って、コンサートではただ音楽に没頭できるので、その違いを体感するとわくわくしますね。

――『スカーレット・ピンパーネル』、再演からのご登場でひとり二役。上原さんのロベスピエールとプリンス・オブ・ウェールズがどう花開くのかとても楽しみです。

ありがとうございます。初演から出演なさる方たちがお作りになった空気を損なわず、自分なりのロベスピエールとプリンス・オブ・ウェールズを演じられればと思っています。歌い手、そして“革命家俳優”として、「新たな時代は今」をしっかり受け継ぎ歌っていきたいですね。

ミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』上原理生_5

対峙するたびに大きく、そして率直な人だと強く感じる。単語を選別して臆病に語るのではなく、自身の中から湧き出る感情を素直に言葉に乗せて伝えていく……そういうおおらかさを持ったプレイヤーなのだと。

線の細さとはある意味対極の力強さとパワフルさを持つ上原理生。これまで演じてきた役も相まって、彼が”革命家俳優“と称されるのはごく自然なことにも思える。年齢を重ねるごとに輝きを増し、人の奥深いところまで表現できるタイプの俳優だと思うので、小さくまとまることなく、さまざまな場所で”革命“を起こして欲しいと願うのだ。

◆ミュージカル『スカーレット・ピンパーネル』
2017年11月13(月)~15日(水)梅田芸術劇場メインホール
2017年11月20日(月)~12月5日(火)TBS赤坂ACTシアター

(撮影/エンタステージ編集部)

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