演劇、ミュージカルの世界でアメリカ最大のイベントといえばトニー賞!今年で70回目を迎えるトニー賞授賞式の模様を6月13日(月)午前8時(日本時間)よりWOWOWが完全生中継でお贈りする。豪華スターの競演と圧巻のステージで盛り上がること間違いなしのプログラム。本番組で3回目のスペシャル・サポーターを務める井上芳雄に話を聞いた。
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毎年、ブロードウェイの凄さに圧倒されてます
――昨年のトニー賞授賞式は『王様と私』で渡辺謙さんがノミネートされたこともあり、日本でもかなり盛り上がりましたね。
リバイバル作品賞で『王様と私』が受賞し、主演女優賞をケリー・オハラが獲って「これはもしかしたら謙さんも・・・!」という期待と熱気がスタジオにいても凄い勢いで伝わってきました。残念ながら受賞は逃してしまいましたが、謙さんは僕たち日本人のプレイヤーに大きな夢を授けて下さったと思います。
中継で謙さんとお話させていただいて、とてもフラットに接して下さる方だ、と改めて思いました。舞台の本番と、授賞式のリハーサルとでスケジュールが大変だったことなどをお話頂いたのですが、人としての大きさも感じましたし。そういう方だからこそ、海外の舞台でも活躍できるのでしょうね。
――井上さんがスペシャル・サポーターとして番組に参加なさるのは今年で3回目になりますが、最初の頃と比べて何か変化を感じることはありますか?
少しずつではありますが、トニー賞というアメリカ演劇界の一大イベントが日本でも認知されてきている、とは思います・・・とは言ってもまだまだ広めていかないといけないんですけど(笑)。今はネットで大抵のことが調べられますし、雑誌にも海外の演劇界について詳しく書かれていたりもしますが、やはり向こうの熱をリアルタイムに体感していただけるという点では生放送の力って大きいですよね。今年も朝がかなり早いですが、そこは頑張りたいと思います(笑)。
――今年のノミネート作品で井上さんが特に気になっているミュージカルはなんでしょう。
今年は前評判の段階で『Hamilton』が断トツですよね。実は僕、今回初めてスペシャルサポーターとしてブロードウェイに行かせていただくんです。実際に現地で観劇しますので、番組で作品に対するコメントもよりリアルに語れるんじゃないかと思っています。『Hamilton』も情報としては「凄い、凄い!」っていろいろな人から聞きますが、じゃあ一体どこがそんなに凄いのかということを、自分の目で見て皆さまにお伝えできるよう頑張ります。他にもオードラ・マクドナルドさんら、向こうのミュージカルスターのパフォーマンスを実際に拝見できるのがとても楽しみです。
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――将来的にご自身がトニー賞を目指す!という目標は?
毎年、トニー賞授賞式の模様を画面を通して観て、やっぱりブロードウェイはすごいな、って圧倒されますし、その時のちょっと悔しい思いを自分への刺激としてフィードバックしています。僕ももっともっと頑張らないとなって毎年思いますね。ただ、トニー賞=絶対に叶わないもの・・・として捉えていても進歩がないですし、昨年の謙さんの快挙もありますから、どこかで意識はしていきたいですし、もちろんチャンスがあれば海外の舞台にも立たせていただきたいとは思っています。
そしてそれとは別に、まず自分たちが今いる日本の演劇界やミュージカル界全体が、世界の本場に追い付いて、いつか追い越せるよう日々の活動をしっかりやっていきたいです。あと僕、毎回お話していますが、何とか“日本のトニー賞”を実現させたいと思っていて。まあ、具体的な案はこれからなんですけど、とにかく“日本のトニー賞を作りたいんだ!”と言い続けていく所存です。
映像界にも吹く“ミュージカル俳優の風”
――国内のミュージカルシーンで言えば、StarSの映像等での活躍を見て、劇場に足を運ぶ方も増えていると思うのですが。
StarSの活動を三人で始めた時から、ジワジワとそういう現象も起きていると伺っています。今年は特に三人とも映像の仕事も多いのですが、ドラマやバラエティで僕たちのことを知った方たちが劇場に来てくださるのは嬉しいことですよね・・・それを目標にしているところもありますし。スケジュール的には大変だったりもしつつ(笑)、大きな意味があることだと思っています。
もちろん、ミュージカルの世界以外での活動を僕一人が頑張ってやってもそれは大きな“波”にはならないんです。市村正親さんや石丸幹二さんといった先輩方も映像で活躍していらっしゃいますし、浦井(健治)君も山崎(育三郎)君もそれぞれの現場で頑張っていて、何となくですが、映像の世界でもミュージカル俳優たちの風が吹いているような気もします。正直、舞台と映像を並行してやっていくのは時間的、体力的にキツいことも多いんです。でもここ数年はそれを意識してトライしてきましたし、今もそれを続ける時期だと思っています。
――井上さんは「日本の演劇界とミュージカル界の間にある“壁”を壊していきたい」とずっとおっしゃっていますが、今の実感としてはいかがでしょう?
僕、今年、ミュージカルの舞台は『エリザベート』一作品になりそうで、あとの出演作はストレートプレイばかりなんです。この状況って、少し前の自分からしたら考えられないことですし、『アルカディア』で共演した浦井(健治)君にしても、ミュージカルとストレートプレイの割合がほぼ半々になっていますよね。そう考えると、自分たちの周りでは少しずつ壁が壊れてきているのかな、という実感はあります。「今回は、歌わないんですね」と言われなくなったら、壁がなくなったということになるのかもしれません。
また、テレビのバラエティ番組等に呼んでいただく時は、“ミュージカル俳優・井上芳雄”という立ち位置でお話しますから“ミュージカル俳優あるある”みたいなトークも多くなって、そこで自分がやっているストプレやドラマの仕事とある種のタイムラグを自覚することもあります。ただ、そういう活動を続けることで、多くの方がミュージカルに目を向けてくださるのは嬉しいことですから、アピールは続けていきたいですね。
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――日本のミュージカル界がブロードウェイに勝っていると思うところがありましたら教えてください。
日本のミュージカル界はお客さまも含め、とても懐が深いと思います。上演される作品の種類も古いもの、新作、来日作品、ブロードウェイやウエストエンド発、ウィーンもの、オリジナル作品、宝塚・・・と物凄く多いですよね。この多様性は日本独自のものじゃないかと。ほとんどが国内のお客さまなのに、常にバラエティに富んだ作品がいろいろな劇場で上演されているのも素晴らしいことだと思います。本当はもっと男性のお客さまが増えてくれると嬉しいのですが(笑)。
――今回、初めてトニー賞の授賞式をWOWOWでご覧になる方や、井上さんが思う見どころなど最後にお話いただければ!
まずは授賞式のオープニングのパフォーマンスに注目して欲しいです。オープニングのクオリティで、大体その年の授賞式の盛り上がりが分かるところもありますし。個人的にはトニー賞・最大の華ともいわれる「ミュージカル作品賞」はぜひチェックしていただきたいです。番組では(作品の)解説もありますし、映画化されている舞台もありますので、ご存知の作品もあるかと思います。どれが獲るのか予想するのも楽しいと思いますよ。
“ミュージカル界のプリンス”として、そしてストプレでも活躍する“俳優”として、井上芳雄は今日もエンターテインメントの世界を駆け抜ける。最近はドラマのみならず、バラエティでも活躍する井上だが、インタビューをさせて頂くたびに、その場の空気を読み取って的確&率直に言葉を紡ぐ姿に心を掴まれる。
6月13日(月)の生放送では、スペシャル・サポーターとしてその機転の速さと現場で得た実感を駆使し、ブロードウェイの熱い空気を私たちに伝えてくれるのだろう。賞の行方と共に、彼のトークにも要注目だ!
◆『生中継!第70回トニー賞授賞式』
6月13日(月)午前8時~(同時通訳)WOWOWプライム