10年を経て、満を持してのタッグ! ヨーロッパ企画『遊星ブンボーグの接近』上田誠×川岡大次郎インタビュー

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ヨーロッパ企画の最新公演『遊星ブンボーグの接近』が2015年9月5日(土)よりスタートする。今回の公演で特筆すべきは、なんといっても「ゲストとして川岡大次郎が出演」ということだろう。そう、川岡といえば本広克行監督作品の映画版『サマータイムマシン・ブルース』に出演。映画から10年を経て、満を持しての(!?)本公演参加。その経緯と現在の想いを、作・演出家の上田誠とともに語ってもらった。

『遊星ブンボーグの接近』

――もともと、お二人の出会いは映画がきっかけだったんでしょうか?

川岡:そうですね。あの映画が2005年公開だから、もう10年前ですよね。で、これまでの間、お仕事ではご一緒してなくて・・・。
上田:公演を観に来ていただいたり、イベントに出ていただいたりというのはあったんですけどね。今回、急にお呼びすることになったという(笑)。

上田誠『遊星ブンボーグの接近』

――ずっと交流はあったんですね。

上田:映画の時も、映画撮影前にヨーロッパハウス(注・上田の実家、上田製菓内にある劇団事務所)で寝泊まりしていただいたり。

——そんなことがあったんですか!?

川岡:僕、映画出演が決まった時、まだヨーロッパ企画さんを知らなくて。それでまず公演を観に行って、その後京都のヨーロッパハウスに遊びに行ったんですよ。なぜか一緒にゲームやったり、上田さんのお父さんお母さんにご挨拶したり……。
上田:それでかなり仲良くなって。
川岡:関係ない仕事で京都行った時、ふらっと遊びに行ったら鍋でもてなしてくれたりとか(笑)。ヨーロッパ企画さんは本当の同級生のような感覚を僕としては持ってます。僕はもともと関西人なんで、こういう“温度を感じながら作る”っていう関係性がすごく好きなんですよ。でも今回の公演のオファーを頂いた時は、びっくりしました(笑)。

川岡大次郎『遊星ブンボーグの接近』

——なぜ川岡さんだったんでしょう?

上田:2011年の『ロベルトの操縦』という公演で、意識的に客演さんを呼ぶ、ということをスタートさせたんですね。その時から、次はどんな方を呼んだら面白いだろう……というのが広がっていって。あと、この間プロデュース公演でNON-STYLEの石田さんとゲームセンターをテーマにした作品(『TOKYOHEAD』)をやったんですが、お客さんも出演者も“違う文脈”の方々が作品の中に異質なものを持ち込んでくださる、それがとても面白かったんです。自分のコメディの幅が広がってきたということでもあると思うんですけど、そういう意味では、演劇はやられていても、僕らのやっていることの文脈とは違う方ですし、最適かなと。あの、勝手な出会いなんですけど、僕としては川岡さんはドラマ『ビーチボーイズ』のイメージが強くて(笑)。
川岡:その話はずっとされてますよね(笑)。
上田:変な話ですけど、“芸能人”という方を、僕らのフィールドである舞台のゲストに呼ぶときは、やっぱり慎重に考えていた部分があるんです。でも川岡さんは『ビーチボーイズ』的な文脈というか(笑)、芸能人の文脈でありながら、僕らと親しくしていただいてる。僕の知ってる世界と知らない世界を両方つないで頂いてる、架け橋的な感じがあるなと。あとね……すごく、ラテン系な方なんですよ。
川岡:(笑)。そこは同じ関西人でも、京都と大阪の違いでしょうね。
上田:今回文房具がテーマの話で、文化系の話になるだろうなという予想があるんで、かき回してくれるだろうなと。
川岡:おー!
上田:……まあ後付けなんですけどね(笑)。正直な所、僕らは配役も後で決まっていくスタイルなんで、客演さんを呼ぶ理由は「一緒にやりたい」それだけなんです。
川岡:じゃあ、あまり知らない人は本公演には呼ばないの?
上田:そうですね。劇団も10年同じメンバーでやってますし、もともとあまり自分たちから積極的に新しい場所には行かないんですよ。川岡さんみたいな感じで、何かのタイミングでお引き合わせいただいたりすると、新たな人たちと知り合って……というのはあるんですけど。

『遊星ブンボーグの接近』

――そういう中では川岡さんとずっと交流が続いたのは、すごくいい関係性ですよね。

川岡:僕にとって、人生が変わったのが映画『サマータイムマシン・ブルース』だったんです。あの作品に出るまで演劇に触れたことがなくて、あれをきっかけにヨーロッパ企画の役者さんとか、ムロツヨシとか変な人たちとたくさん出会って(笑)そこから、自分でも演劇をやりたい! って思うようになったんですよ。
上田:そういう意味では僕達も、例えばうちのメンバーがムロさんと一緒に舞台をやったり、映像作品で上野樹里さんに出ていただいたり……以前知り合った人たちと積極的に動いていくようになる、そういう変化はこの10年でも徐々に出てきたんでしょうね。なのでそのタイミングで、川岡さんに出ていただきたいなと。

――でもお話してて、川岡さんが“ラテン系”なのにびっくりしました。

川岡:そうですか? まだまだいろんな面がありますよ(笑)。
上田:ヨーロッパのメンバーはおとなしい人が多いので、一番騒がしいかも(笑)。うちで仲いいのは永野(宗典)さん?
川岡:そうですね。僕と永野君って同い年なんですよ。だから本当の同級生トークのノリでいつも話してるというか。でも芝居の真面目な話よりかは、公演観に行って「あれどうやってやってんの!?」とか、そういうのが多いですけどね。

『遊星ブンボーグの接近』

――川岡さんから見た、ヨーロッパ企画の魅力とは。

川岡:いつも凄いなと思うのが、観に行った後に嫌な気分にならないんですよ。劇団を知らなくても劇場に足を運べば、笑ってほんわかした気持ちで帰ることができる。誰もがその時間を楽しむことができる、これが凄いなと。あとね、ブレない。前回公演の『ビルのゲーツ』見てても改めて思ったんですけど、本当にブレないな、と。人間って、どうしても年を経ることでだんだん変わっていくものだと思うんです。でも彼らは根本がブレないから、そこが本当に好きだし、ずっと観たいと思う劇団なんですよね。
上田:多分、すごく慎重なんですよ。例えば第一回公演のタイトルが『ところで、君はUFOを見たか?』で、今回が『遊星ブンボーグの接近』。変わらないじゃないか、という(笑)。でも最初は“SFシチュエーション群像コメディ”だったのが、そこに舞台装置の仕掛けでの新たな試みが入ったり、企画性が入ったり、公演を重ねることに要素は足されているんです。だけれども根本の部分は残っていて、そこに積み上げ、重ねて行くから、結果的に変わらないんじゃないんですかね。もちろん、方向性として迷った時期もあります。でも最近はメンバーがそれぞれサイドワークをやっていて、そこで新たなことや実験的なことをやって、劇団公演に持って帰ってきてくれている。ある意味劇団として厚みが出てきたからこそ、劇団では“積み上げる”ことをやろう、と。
川岡:僕みたいに一人でやっていると、長く続いているというだけでもリスペクトですよ。

——川岡さんも映画出演以降コンスタントに舞台出演を重ねられていますが、その経験を経ることでヨーロッパ企画の見方が変わったり、ということはありませんか?

川岡:うーん、それはないかも。去年土佐君ととある作品で共演した時、土佐君に「大次郎さん、エモーショナルな芝居僕ら下手なんですよ」って言われて「ああそうか」と(笑)。まあ確かに、僕が普段やってる現場と全くアプローチが違うんですよね、ヨーロッパ企画って。それは映画の時にわかったんですけど。何度やっても本広監督に「違う」と言われてそうしたら上田君がワークショップで“ヨーロッパメソッド”を教えてくれて、「だからこうなるのか」とわかったんです。だから今回、上田君の演出をガッツリ受けるのは初めてなんで、ちょっと緊張してます。
上田:でもね、僕らは劇団でやってて、川岡さんは一人でやられている。だから鍛えている筋肉の箇所がただ違う、それだけだと思うんですよ。違う道は歩んできても、「面白い」と思う感覚は共通してると思うんで、そこは楽しみです。

『遊星ブンボーグの接近』

――ちなみに今回のテーマは『文房具』とのことで。

上田:前回はビルという大きなものに立ち向かう話だったんで、今回はミクロなものを掘り下げる話、と。あと最近、のっけから「この世界は何だ?」的な世界……ソリッドなシチュエーションを描くのが好きで。その中でさらにストーリーが変な方に行って、なぜか最後は感動を生む、みたいな、そういうのをやりたいなと思ってます。

――にしてもミニマムな題材ですよね。

上田:ホッチキスの針がガシャンとやって出なくて、入れ替えて、「ああ出た」みたいな。あと上手くホッチキスの針が止められなくて、針が曲がっちゃって……みたいなあの感覚です。それを劇場に集まったお客さんが見守る、そういう芝居になるかと。

『遊星ブンボーグの接近』

――……川岡さん、わかりますか?

川岡:……天才、としか言い様が無いですけど、何もわからないです(笑)。不安でしかないですけど(笑)。
上田:お芝居って、映像みたいに“ズーム”するものが苦手なものなんですよ。でも『ロベルトの操縦』という作品で、やはり本来演劇が苦手なはずの“移動”を描くことができた。また、さっきお話した『TOKYOHEAD』でゲームセンターの話をやったんですけど、それが意外と上手く行ったんですよね。なので、ズーム、拡大の方法はいくつかあるなと思っていて。演劇的手法としてどう見せていくか、それをこれから試行錯誤していく作業に入ります。

――ストーリーをどうするかというより、このテーマをどういう風に見せていくか、その方法論を探していくと。

上田:そうですね。本来演劇には不向きなものだとは思うんですけど、そこがうまくできれば面白くなるのではと。
川岡:僕、お仕事を受けるときに脚本がない状態で引き受けるの初めてなんでかなりドキドキなんですよ(笑)。でもそこも含めて楽しめればいいな、と思います。

『遊星ブンボーグの接近』

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この記事を書いた人

演劇雑誌編集部を経て、現在は演劇・芸能・サブカルチャーなど幅広い分野で活動中。演劇マンガの監修を手がけたことも。

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