9月から新作『遊星ブンボーグの接近』の全国ツアーを開始するヨーロッパ企画。そのプレビュー公演まで2週間を切った某日、京都の稽古場に潜入させていただいた。この稽古の様子をお伝えしよう!
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この日の稽古前半は、作・演出の上田誠が脚本執筆に集中するということで、残りのメンバーで届いたばかりの台本の読み合わせをしたり、軽い立ち稽古を行っていた。通常の公演なら、この時期だとまだ脚本がないことが多いらしいが、今回は早くも全体の半分程度の脚本ができているそうだ。
本作は、多分演劇界ではまだ誰も大舞台ではやってないであろう、文房具がテーマのコメディ。公演前なのでその詳細は一切語れないが、見事なまでに「うわあ、その視点で文房具を描くのか!」とうなってしまう世界だ。様々な文具についてオタク的なほど細かく語りながらも、ヨーロッパ企画お得意のSF的シチュエーションもしっかり盛り込まれている。まだ稽古段階だというのに、本気で笑わされるシーンも多々あった。
ほどなくして上田が稽古場に到着し、まだ固まっていない後半部のエチュード(与えられたテーマに沿って即興で演技をすること)稽古が開始された。話の流れで、石田剛太がペンについて熱く語るシーンでは、上田が要所で「そこ、○○って言ってみて」などと役者たちに指示を飛ばす。それは外れてしまうこともあるが、手応えのある演技が出てきた時は、上田の背中が笑いで揺れるのがわかる。それによって役者も乗っていき、あっという間にシーンが膨らんでいくという、まさにヨーロッパ・マジックとも言うべきひと時を体感できた。
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「全体の構成が固まるのは早かったけど、文房具がテーマなのでいつもより目線が細かくなって、そのために何稿も重ねているという感じ。それでももう一潜りして、より細かいことを描いていこうと思ってます」と上田。さらに今回は、珍しい映像の使い方を試しているそうで「その実験を目撃するという視点でも観ていただけたら」とも。
思えば『建てましにつぐ建てましポルカ』では迷路、『ビルのゲーツ』ではゲートシステムと対決するなど、ここ最近「物vs人」な構図が目立ったヨーロッパ企画。その分彼らにしては緊張感高めの舞台が続いたが、今回は稽古を見る限り(あくまでも現時点では)文房具とのいい関係を描いてるように見受けられた。『遊星ブンボーグの接近』、久々に彼らの最大の売りである「ゆるさ」を、十二分に楽しめる舞台になりそうな予感がする。