『プリンス・オブ・ブロードウェイ』柚希礼音インタビュー!「目の前のことを大切にしながら、一歩一歩進んでいきたい」

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10月23日(金)より、東京、大阪で世界初上演される、ワールドプレミアミュージカル『プリンス・オブ・ブロードウェイ』。ブロードウェイ・ミュージカルの巨匠、演出家ハロルド・プリンスが、自身が手掛けてきた作品と、自らの人生を重ね紡ぐミュージカル・ショーだ。この作品に、唯一の日本人キャストとして参加する柚希礼音。今年5月に宝塚を退団したばかりの彼女の新たなる挑戦に注目が集まる。

柚希礼音

――『プリンス・オブ・ブロードウェイ』に出演が決まったときのお気持ちは?

「私がブロードウェイに憧れていたことを、皆さん知っていたんですか?」って思うほど、あまりにもピンポイントに素晴らしいお話でした。じつは、宝塚時代のファンの皆さまは第1作目には自分が真ん中、主演の作品のほうがいいのだろうかと思ったり…すごく悩みました。でも、あまりに男役を大切にしすぎて守りに入ってる柚希礼音よりも、ちょっと失敗もあるかもしれないけど挑戦している姿の方が、観て何かを思ってくださるかなと。発表された時、ファンの皆さまが喜んで下さっている声がたくさん聞こえてきたので良かったです。

――ブロードウェイの巨匠ハロルド・プリンスという、ビックネームとのお仕事に驚かれたのではないですか。ハロルドさんの第一印象はいかがでしたか?

ハロルドさんが手掛けられた作品を観ようとすると、あれもそう、これもそうってなって(笑)。本当にすごい人だと聞いていたので。“大プロデューサー!”と思っていましたが、とても気さくで、明るい方なんだと。さらに、振付のスーザン・ストローマンさんもすごい方だし、衣裳を担当される方も、今年のトニー賞にノミネートされてた方ですし…。出演者も、武道館コンサートの前にニューヨークへ行った時に観た、『オペラ座の怪人』と『レ・ミゼラブル』に出演されていた方が出られるんですよ。これはすごいことだと思いました。

――衣裳といえば、「男役さんはいつスカートをはくのか」ということが気になったりしますが、今回衣裳を担当されるアイビー・ロングさんは『シカゴ』の衣裳を担当されるなど、セクシーな衣裳を作られていますね、今回の柚希さんの衣裳はどうなるんでしょうか…。

演じる役に必要ならば、私はあまり気にしていませんが、ファンの皆さまが「そんなすごい姿で…」となったら、とも思うので(笑)、間を取りながら。スカートでいちばん抵抗があるのは、これ、というのは伝えました。娘役のAラインワンピースみたいなのは、私としてはすごいことですから(笑)。スカートじゃなくてちょっと露出してる、とかのほうがいいかな。あと思い切り長いスカートとか(笑)。

――これから稽古が始まるわけですが、宝塚の時とはずいぶん違うものになりそうですね。

なにもかもが違います。これまで男役をやってて、まだ一度も女性役で立ったことがない初心者の私が、こんなにすごい方々と同じ舞台に立つということが怖過ぎます。このあいだ、(湖月)わたるさんに電話をして、「稽古着ってどんなものを着ればいいんでしょう?」と聞くという、そんなレベルです(笑)。「娘役の稽古着みたいなのを着るんですか?」「そんなの着ないから!」とか(笑)。わたるさんもニューヨークでお稽古されたことがあるので、向こうの床はこうだから、こういう靴で、こういうものを着なさいって。お忙しい方なのに、いろいろなことを教えていただきました。

柚希礼音

――発音やお稽古のため、ニューヨークに単身で行かれると聞きました。どんな生活になりそうですか。

宝塚退団後、一旦リセットして一人の人間として歩き出すには、ちょうどいい生活なんじゃないでしょうか。電車に乗ったり、買い物しながら語学勉強したり、人としてちゃんと自分の足で立った生活を送ろうと思います。あと、白いご飯が大好きなので、最近使ってる土鍋を持っていこうかと。前回の旅行では、ニューヨークのご飯は3日食べたらもう無理、ってなりましたので(笑)。

――ハロルドさんは会見で、柚希さんにはブロードウェイに憧れている女の子をやってもらうと話されていましたね。

そうなんです。「ブロードウェイに憧れる礼音」という場面があるみたいです。まさに「今の私」をハロルドさんの演出、スーザンさんの振付でできるなんて信じられないです。男役の踊りから離れて、一度普通に踊るっていうことがどういうものか、クラシックバレエももう一回やり直して挑みたいです。

――唯一の日本人キャストということ、宝塚の出身ということで、自分の強みだなと思うところはありますか?

日本で公演するので、多くの日本人の方が観に来てくださると思います。そのなかで、一人日本語で歌えるということ。皆さまがご存知の曲ばかりだとは思いますが、ずっと英語だとどうも…ってなると思うんです。市村さんもハロルドさんとして日本語でストーリーを作ってくださいますが、日本語の曲があるとほっとしたり、心に入っていけるようになればいいと思います。

――ハロルドさんの手掛けた数多くの作品のなか、柚希さんが特にお好きな作品、踊りたい、歌いたい曲はありますか。

絶対に自分はできないんですけど、『オペラ座の怪人』がすごく好きです。稽古や本番できっと間近で聞いて感動していると思います。

――宝塚で培ったメンタリティは、今回の作品でどう生かされるでしょうか。

宝塚時代は毎公演、常に高すぎる壁をよじ上っていくような作業でした。今回もさらに高く、なかなか登れないとは思いますが、宝塚時代に高い壁を無理矢理にでもよじ登ると素晴らしいものが待っていることを何度も味わってきましたので、それを信じて初日までに上れるか、それとも千秋楽ごろ上れるのか、わかりませんが頑張りたいです。先日、(ブロードウェイの舞台に挑む、渡辺)謙さんのドキュメンタリーを見ましたが、「自分の立場を保っているうちは何も挑戦できない」という言葉がすごく響きました。いろんな批判を受けてでも、立場を一度壊してでも思い切って挑戦するんだ、みたいな。私もそれをしてみようと思ってます。

柚希礼音

――この作品後の夢や目標は考えていますか?

こうなりたい、というのがはっきりしていなくて、どうしたものかと(笑)。そういえば、宝塚時代も、「どういう男役になりたいですか」と下級生時代から言われていましたが、全然分からなかったんです。でも目の前のことを一つ一つ大切にやって、振り返ればすごく幸せな宝塚人生だったので、これからも先のことを見すぎず、目の前のことを大切にしながら、一歩一歩進んでいきたいと思います。

――基本は舞台中心の活動になるんでしょうか?

そうですね…舞台はやっていきたいです。あとは自分で限界を決めず、なにか挑戦できることがあったらやってみたいような気もします。

――宝塚を退団して、これから新しいことを始める、今の心境はどんな感じなんでしょうか?

また人生をかけてやることに出会った感じでしょうか。1日が24時間じゃ足りない、いままでも足りなかったけど、まだ足りないんですよ。新しいことを学ぶことだらけだからかな? 見なきゃいけない映像もあるし、勉強もしなきゃいけない、いろいろあります。ちょっと焦ってて、不安もいっぱいあります。でもちゃんと自分がやるべきことをセレクトして、上手く時間を使いながらやっていこうと思っています。皆さま、一生懸命頑張りますので、シアターオーブ、梅田芸術劇場の公演をよろしくお願い致します!

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