紫吹淳×岡田浩暉インタビュー「ミュージカル『グッバイ・ガール』を見て恋をして!」

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いよいよ2015年8月7日、喜劇の天才ニール・サイモン脚本のブロードウェイミュージカル『グッバイ・ガール』が17年ぶりに日本で上演される。シングルマザーのダンサーポーラと、変わり者の売れない役者エリオットが、ひょんなことから一緒に暮らすことになるロマンチックコメディだ。原作はアカデミー賞やゴールデングローブ賞を受賞した同名のアメリカ映画である。ブロードウェイでミュージカル化され、トニー賞にもノミネートされた不朽の名作だ。
2011年に『風と共に去りぬ』で夫婦役を演じて以来の共演となる紫吹淳と岡田浩暉に話を聞いた。

『グッバイ・ガール』

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――『グッバイ・ガール』は日本では17年ぶりの上演ですね。

紫吹:ニール・サイモンの作品のなかでも、あまり知られていないですよね。実際、私も知らなかったですし。素晴らしい物語なのに、17年もの間上演されていなかったのが意外だなと思います。
岡田:僕も知らなかったです。もっと上演されていてもよかったような気がするね。ニール・サイモンの作品は何度も日本でも上演されていますけれど、やっぱりセリフの量が多いね。
紫吹:よく喋るの、2人とも!
岡田:『グッバイ・ガール』では主役のポーラとエリオットが2人で喋るシーンが多いので、そういった大変さもあって、もしかしたらあまり上演されなかったのかなあ。

――オシャレな会話が繰り広げられる、大人むけのラブコメディですよね。

紫吹:そうですね!本当によくできた脚本だなと思います。楽しいし、面白い。そこに、大人ならではの恋愛が描かれている。男女の掛け合いセリフがものすごくおしゃれで、日本ではあんまりこういう会話はしないんじゃないかな。
岡田:本当におしゃれだよね。
紫吹:恋したくなるんじゃないかな。日本のミュージカルでは味わえないような感覚です。
岡田:そうだよね!大人の恋愛のおしゃれさが、日本の作品ではあまりない描かれ方なんです。
紫吹:たとえばキスをして、「どんな気分?」「バカなことしたい気分」といった感じです。そのあとに「じゃあもう片方の唇かんで」と続くんですが、そんなの日本では言わないじゃないですか!それを本気で言うことで、その空間がおしゃれになる。すべてがそういう感じなんです。
岡田:やっぱりニール・サイモンの会話劇ならではの面白さがありますね。
また、ニール・サイモンは普遍的なテーマを題材にするんですが、それも見どころのひとつです。たとえば、ポーラは母子家庭だし、エリオットはなかなか売れない役者です。そういった普遍的なテーマを持った2人が出会って恋していくのは作品の魅力ですね。

――舞台版は、映画の『グッバイ・ガール』ともまた違いますか?

紫吹:まったく違うわけではないですが、ミュージカルにしかない良さはありますね。歌が入る事によって、より心情がわかりますし。
岡田:そうだね!それはすごく感じますよ!

『グッバイ・ガール』01

――ではお二人のことについてお伺いします。
過去に何度か共演されていますが、初めてのコメディ共演はいかがですか?

紫吹:岡田さんはぴったりですよね。
岡田:いや、そのまんまお返ししますわ!
紫吹:でも、今まで何回も共演させていただいているのに、また全然違う一面を見ていますね。前回夫婦役を演じた『風と共に去りぬ』では正当派2枚目の役でしたが、今回は2.5枚目……いや3枚目かな。日々発見があって、新たな人と出会っている感じがします。
岡田:そうですね。紫吹さんは勘が鋭いので、本読みの段階からすでにポーラなんですよ。
紫吹:私としてはまだまだですよ。でも、岡田さんのおかげで安心して演じることができています。私は岡田さんと違って、事前に演技のプランを考えて役をつくりこむタイプではないんですが、岡田さんは感覚で演じてしまう私を自由にさせてくださるんです。包容力がすごい。
岡田:いえいえ、とんでもない。紫吹さんも、ぞんぶんに恋したくなるポーラですよ。

『グッバイ・ガール』02

――互いに恋に落ちるわけですが、相手役のどんなところが魅力的ですか?

紫吹:一見変わり者なのに、とても人間味溢れているところですね。エリオットは人から見るとちょっと変わっているかもしれないけれど、それは真面目さゆえだったりするんです。たとえば、変な食べ物に凝っていたりするのも、体のことを考えている結果だったり。こだわりが過ぎるのも誠実さゆえというのは素敵ですね。まっすぐで真面目なところは、本来の岡田さんともすごく共通する部分だと思います。
エリオットが体に良い変な食べ物を食べるシーンがあるんですが、岡田さんも本読みの段階から麦芽とかレシチンを持って来ていて、真面目だなあと。
岡田:僕はふだんからスムージー食べてるんですよ!
でも、真面目な人って変わり者に見られますよね。紫吹さんも変わってると思うよ。
紫吹:私、変わってる?
岡田:カップラーメンを食べたことがないとかね。でも、役者は変わってる人が多いと思うよ。
紫吹:たしかに、普通の生活ができなからこの世界にいないかも。昔、恩師に「あなたは普通の生活ができない人だね」って言われたことありますもん。今回も、台本のなかに皿洗いのシーンがあるんですが、困ったことに皿洗いをしたことがないんです。いよいよ皿洗いデビュー(笑)
岡田:でも紫吹さんは、舞台でたくさんの人を楽しませて温かい気持ちにさせてくれるので、それでもいいんですよ。
紫吹:だといいんですけど。
岡田:『グッバイ・ガール』のポーラも、優しくて感じがよくて思いやりがある人。とても細かいところを思いやれるバランスのとれた女性だと感じているんですが、それは紫吹さんにもすごく当てはまりますよ。あとは情の深いところも紫吹さんに似ていますよね。
紫吹:情は深い。だってほら、群馬の人だから!

――お二人とも群馬県太田市の出身で、同郷なんですよね!

岡田:そう、群馬はね。
紫吹:情が深いですよね。でも、いったん相手をブチッと切ったら、完全に切りますよ。
岡田:そう。一度ブチッて切ると最後なんですが……
紫吹:それまではもうすごい情の深さだよね。

――そんなポーラの情の深さにも、恋してしまう?

岡田:そうですね。せっかくのラブコメディなので、舞台上で存分にポーラの魅力を味わわせていただこうと思ってます。
紫吹:味わうって……あんまり美味しくないかもしれませんよ。
岡田:とんでもないです!いやーもう、今日もお綺麗ですし。
紫吹:ありがとうございます……(笑)

――本当に、とても仲が良いんですね。お二人の相性がいいんでしょうね。

岡田:そう思っていただけるように頑張ります!
紫吹:観ていただけたら、きっと心がじわじわ温かくなりますよ。演じていても、胸の内からじんわりとあたたかな気持ちが湧いてきます。
岡田:俺も本当にそんな気持ち。
紫吹:熱い夏、ぜひ劇場に来て、一緒に泣いて笑ってください。思うぞんぶん笑って、そして泣いて、最後は心がほっこりして、恋がしたくなるような気持ちで帰っていただけたら嬉しいです。
岡田:そうね!いいシーンがあるんですよ。恋をもう一度してみようかな、という気持ちなりますね。
紫吹:ちょっと気まずい恋人たちとか、ぜひ観ていただくと、原点に立ち返れるかもしれません。
岡田:あーそうかもしんない!
紫吹:ポーラとエリオットだって、最初はケンカばかりなのに、そんな二人が最終的にくっつくので。

――じゃあ、倦怠期のカップルとかに?

紫吹:おすすめ!
岡田:あーいいかもしんない!!
紫吹:ご夫婦とかね。しかもポーラとエリオットの間には、ルーシーという子どもがいるので、子ども目線でも楽しんでもらえると思いますよ。ご家族で観にいらして、パパとママの雰囲気を感じていただけたら。
岡田:そのとおり!本当にそのとおりです!今の、二人でそう言ったことにしてください(笑)
紫吹:もう(笑)

『グッバイ・ガール』03

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終始笑顔に包まれていたインタビュー。紫吹と岡田は何度も顔を見合わせ、互いの言葉を補い、気づかい合っていた。その後の稽古でも、息のあった掛け合いを見せた二人。お洒落なセリフのやりとりは会話だけでなく、情感豊かな歌にのせて客席を包み込む。

当日行われた製作会見には演出のマキノノゾミも登場し、「二人には「外人になれ」と言っています。ふつうの日本人が恥ずかしくて言えないような甘いセリフを言うには、“血中外人濃度”をあげてもらわないと。ニューヨーカーになりきれば、お客さんを酔わせることができるはず」と、二人の甘い恋を描く意欲を見せた。またニール・サイモンの大ファンだというマキノは、「『グッバイ・ガール』は初めてみたニール・サイモンの作品で、とくに思い入れがあります。有楽町にザ・ブロードウェイをつくりあげますよ」と意気込んでいる。ミュージカルは初演出というマキノだが、その意気込みの強さに期待が高まる。

相性抜群の二人が送るロマンチックコメディで、この夏、熱い恋がしたくなりそうだ。

『グッバイ・ガール』は、東京国際フォーラム ホールCにて、8月7日(金)から23日(日)まで上演される。共演は、ポーラとエリオットが同居することになるアパートの管理人を中尾ミエが演じるほか、ポーラの12歳の娘ルーシー役を吉井乃歌/児玉萌々がWキャストで演じる。


『グッバイ・ガール』04

▼紫吹淳 プロフィール
1968年群馬県太田市出身。宝塚音楽学校を卒業後、1986年「レビュー交響楽」で宝塚初舞台を踏み、1992年「スパルタカス」新人公演で初主演に挑戦。数々の作品で主役に抜擢さ れ、2001年、宝塚歌劇団月組のトップに抜擢。 2004年3月、宝塚歌劇団退団。その後の主な出演作品は、舞台『ホテルマジェスティック~戦場カメラマン澤田教一 その人生と愛~』『SONG OF SOULS』、ミュージカル『9時から5時まで』、テレビ朝日『ナサケの女~国税局査察官』など。最近ではバラエティでも活躍している。
『グッバイ・ガール』ではNYに住む30代半ばのシングルマザーのダンサーで、男運が全くないポーラを演じる。

▼岡田浩暉 プロフィール
1965年群馬県太田市出身。音楽ユニット「To Be Continued」のボーカルとして1991年にシングル「君がいたから」でデビュー。同時に俳優としても『愛してると言ってくれ』『ナースのお仕事』など数多くのドラマ、映画、舞台に出演。近年の主な出演作は、TBS『LEADERS』、映画『SPEC』、舞台『レ・ミゼラブル』など。
『グッバイ・ガール』では「リチャード三世」に主演するため、NYにやってきた、変わり者だが情熱を持っている男エリオットを演じる。

▼グッバイ・ガール あらすじ
シングルマザーのポーラは、ニューヨーク・マンハッタンで役者の彼氏と3人暮らし。しかし、彼はある日置き手紙を残して出て行ってしまう。「もう役者の男なんてごめん!」と失意に陥るポーラだったが、元彼から部屋を又借りしたというエリオットが真夜中に突然訪ねてくる。
売れない役者であるばかりか、かなりの変わり者のエリオット。部屋をシェアすることになってしまった二人は喧嘩ばかりの日々を送るが…

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この記事を書いた人

高知出身。大学の演劇コースを卒業後、雑誌編集者・インタビューライター・シナリオライターとして活動。

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