ミュージカル『サンセット大通り』鈴木綜馬インタビュー!「またこの作品に出演できることに幸せを感じています」

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いよいよ、2015年7月4日(土)に開幕する、ミュージカル『サンセット大通り』。
ビリー・ワイルダー監督の同名映画を、『オペラ座の怪人』のアンドリュー・ロイド=ウェバーが作曲を手掛けた傑作ミュージカルだ。2012年の日本初演から3年ぶりの再演となる。アメリカ・ハリウッドを舞台に、かつての大女優ノーマと売れない脚本家ジョーの愛憎を描く本作。ノーマの執事マックスを演じる鈴木綜馬に、開幕直前の稽古場で作品の魅力、共演者について直撃した。

鈴木綜馬『サンセット大通り』

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――2012年の日本初演から3年ぶりの再演になります。今回も初演に続いてノーマの執事・マックスを演じますね。

初演をやらせていただいたとき、「アンドリュー・ロイド=ウェバーの楽曲に抱かれるのがこんなにも素敵なんだ」と感じました。再演があったらいいなと思っていたので、願いが叶ってまたできることに大きな幸せを感じています。

――アンドリュー・ロイド=ウェバーの楽曲の魅力は?

今回の作品でいえば、「今どの場面をやってるんだろう?」と分からなくなるくらい、同じモチーフのメロディが何度も登場してくるんです。それを、いまはこの人が歌ったかと思えば、次には別の人が歌ったり。形を変えながら、そのメロディラインが脈々と全編に息づいているんです。楽曲の使い捨てにならない、というか。同じメロディだけど、ある人物が歌うときと、その人物の対極の人物が歌うこともあって。全く見え方が違ってくる。コインの表と裏、じゃないけど、ひとつのモチーフでこんなにもドラマ性が出てくるんだっていうことを体感できたりして。なんだかすごく、物語と音楽の奥の深い結びつき方を感じるんですね。それが上手なんだろうな。あと転調ね。同じモチーフがどんどん転調していくなかで、高揚感が高まっていくみたいなこととか。それから、なんと言ったって、アレンジそのものがゴージャスじゃないですか。高級感というとすごく言葉が薄くなっちゃうんだけど、「ひとつのクラスされた音楽」っていう、誰もがとても上質なものを聞いているというか、ディナーを食べているみたいな。お客様も、同じモチーフのメロディが何度も出て来ることで、帰るときにはそのメロディを覚えていたりとかしますよね。

――劇場を出るときに、ふと口ずさんでいるみたいな。

そうですね。口ずさみながら帰る姿もよく見ます。稽古場ではスタッフさんも、流れている楽曲を心地よく感じながら仕事されてたりとか。棟梁とか、メロディを口笛で吹いてますからね(笑)。そういったことが楽しい…と言ったらおかしいけれど、「作曲家冥利につきるんじゃないの、アンドリュー!」って思っちゃいます(笑)。

鈴木綜馬『サンセット大通り』

――個人的に好きな楽曲はありますか?

僕は、ノーマが歌う、撮影所で歌う、2幕の『As If We Never Say Goodbye』が好きですね。歌詞とメロディのジャストミートな感じがいい。アンドリュー・ロイド=ウェバーがどんな気持ちでこの曲を書いたんでしょうね……。

――ストーリーもドラマティックですよね。演じる側から感じる作品の印象はいかがでしょうか?

すごくドロドロした部分とか、人間臭い部分もいっぱいあるんですけど、僕の甘甘な解釈だと(笑)、「大人のおとぎ話」ですかね……。僕が演じるマックスは、ノーマのそばにいたかったがために無謀な行動をしますが、現実ではありえないことが起こってて、日常感がない話なので。でも稽古場では、演出の鈴木裕美さんがいろいろなヒントを与えてくださるので、新たな解釈に気づかされてそこから深く掘り下げてみたり。それが楽しいですね。こないだは、ジョーとノーマがキスしてる場面で、ノーマにキスしてる顔がマックスにちゃんと見えるように角度を取りなさいって指示を出してるんですよ。僕はそれを真後ろでしっかり見ることになるわけですが、「マジすか?」みたいな(笑)。

――観客はそれを見て、リアリティを感じて作品に引き込まれていきそうな気がします。

そうですね。この作品の舞台はアメリカですけど、ミュージカルを作っている人たちはイギリス人ですよね。彼らは自分たちの私生活をそうそう見せない人たちでしょ。だけど、のぞき見、ゴシップとかそういうところに食いついたり、興味を抱いたりする。それを見てちょっとエキサイトしたりしますよね。そこを演劇という大前提で、オープンに出来ちゃうところの醍醐味っていうか。それがいかんなく発揮されているのがこの作品な気がします。『アスペクツ・オブ・ラブ』(アンドリュー・ロイド=ウェバー作曲)もそういう人様にはみせないものを演劇としてバッと見せる感じだけど。演劇ってもしかしたらそうなのかもしれない。劇団四季時代、浅利慶太さんに「人は人の行為に興味を持つんだよ。それが見たいんだよ」って言われたことあります。ちゃんと、欲求、客席の欲求にちゃんと答えることが大事なんだと。

――マックスを3年ぶりに再び演じるにあたって、さらに深めたいところはありますか?

もう初演でなにやったかあまり覚えてなくて(笑)。今回わりとゼロから作っていく感じでした。でもジョーに対しては、ボン、と力で返してたけど、今回は怒りのテンションで向かって来ても、それをスッと受け止めながら、淡々と対峙していくとかは今回演出のなかに新たにあったりしますね。そういったちょっとの新しいことって言うんですか? そう言うことにトライしているのが、とてもクリエイティブな時間として楽しいですね。

鈴木綜馬『サンセット大通り』

――今回は、ノーマ役もジョー役もダブルキャストですよね。

ノーマが2人いるのは一夫多妻みたいで嬉しいですよ(笑)。

――そうなんですね(笑)。安蘭けいさんと濱田めぐみさん、それぞれの魅力があると思いますが。

そうですね。どちらもすごく素敵です。なんて言ったらいいのかな? 二人の女優さんがおのおの生きて来た、体験して来た演劇的な経験なども含めて、等身大のものがこう……やっぱり演技のなかに出てくるんですよね。そこが垣間見れる瞬間が、僕にとっては至福の時です(笑)。二人とも、ノーマを作り込もうとしていないんですよ。演出家もそういうふうにディレクションしていない。二人それぞれの良いところを、そのまま役に投影させているというか。抽象的な言い方ですけれど。

――では、ジョー役の平方元基さん、柿澤勇人さん二人の魅力はいかがですか?

元基くんは、安定したオーソドックスなものを感じます。立派な背丈、表現力のある声にも恵まれて。理想的な演じ方をしている。かたや勇人くんは、すごくヒリヒリ、ザラザラした、荒々しいものをストレートに提示しようとしてるところが面白いですね。

――稽古場では二人にアドバイスをされたりするんですか?

演技のトレンドがどんどん変わってきているので、自分が何かを教えるってことより、むしろ若者たちから何を吸収するかっていうことのほうが大きいと思っているのですよ。二人からはいろんな面で刺激を受けながら一緒に稽古をしています。

――最後に、いよいよ開幕となりますが、改めましてメッセージを。

ロイド=ウェバーの作ったこの楽曲に、どうお芝居をリンクさせていったらいいか。さらに相乗効果でいいものを客席に届けられるかということを考えています。お客様が何を見たいか?どう楽しみたいか?ワクワクしてくれるか? すべてはお客様の最大の利益になるように。それを大きな目標として、裕美さんをはじめ僕たちは結束しています。ぜひぜひ劇場へ足をお運びいただければと思います。

◇鈴木綜馬プロフィール◇
1960年12月20日生まれ、東京都出身。1982年、劇団四季に入団。『ジーザス・クライスト=スーパースター』『ハムレット』など多くの作品に出演。1998年に退団した後も舞台、ドラマ、ライブなど多岐に活躍。最近の主な出演作に、ミュージカル『タイタニック』『フルモンティ』『シェルブールの雨傘』など。8月21日(金)より、東京、大阪にてミュージカルショー『End of the RAINBOW』、11月に神奈川にて『フロッグとトード』に出演予定。

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