『トロイラスとクレシダ』浦井健治&ソニン インタビュー!「二人でどんな化学反応を起こせるのか、楽しみにしています!」

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シェイクスピア戯曲の中でも上演回数が極めて少ない『トロイラスとクレシダ』。“異色のシェイクスピア作品”とも評される本作が、魅力的なキャストと鵜山仁の演出により2015年7月15日(水)に開幕する。トロイ戦争と悲恋という二つの軸を持って進む物語でタイトルロールを演じる二人・浦井健治とソニンに今の思いを語って貰った。

『トロイラスとクレシダ』浦井健治&ソニン

関連動画:『トロイラスとクレシダ』浦井健治&ソニンからメッセージ!

――お二人のご共演は2009年の『ヘンリー六世』(新国立劇場)以来、6年振りですね。

浦井:さっきソニンさんとも(ポスターやフライヤーの)撮影時のことを話していたのですが、今回の共演は6年振りとは思えないくらい“あ・うん”の呼吸で行けるんじゃないかと。口に出して言わなくてもお互い感覚で分かり合える部分が多いというか…そういう感じって共演者として凄く大切だと思うんです。
その関係性を『ヘンリー六世』という作品の中で築けたのはありがたいことですし、(『ヘンリー六世』では)一部から三部までの流れの中で密に対峙する場面があまりなかった分、今回はしっかり向き合える役でご一緒出来てとても嬉しいですね。

ソニン:全く同じ気持ちです。『ヘンリー六世』で共演する前も浦井さんの舞台は拝見していましたし、その後もいろいろな作品を見させていただいて、ミュージカルとストレートプレイの両方で活躍し、どの作品でもきちんと爪痕を残す俳優さんだなあ、とリスペクトしていました。私もミュージカルとストレートプレイの両方に参加させていただいていて、そういう面でも役者としてお互いに混ざりやすい気がします。

――作品によってガラっと佇まいや雰囲気を変えてしまえるのもお二人の共通点だと思います。

浦井:僕もソニンさんの舞台は拝見していますが、楽屋に挨拶に行った時の受け答えからもう全然違うんですよね(笑)。

ソニン:それはお互い様(笑)。そういうところも似てるから、6年振りの共演が凄く楽しみなんです。

――お二人とも6年の間にいろいろな舞台に挑戦されて、キャリアを積み上げたところでのご共演…嬉しいことですね。

浦井:お互いがそれぞれのビジョンを持ってさまざまなトライをし、6年が過ぎた今、(演出の)鵜山(仁)さんが、「今、あの二人を一緒に組ませたらどうなるんだろう」と、その“糸”を結んで下さったことがありがたいと思いました。

ソニン:鵜山さんがこの二人で『トロイラスとクレシダ』をやろうと思って下さったことが、私はとても嬉しかったです。いつかまた一緒に、という思いはもちろんありましたが、私たちの方から鵜山さんにお願いしたこともありませんでしたし。

浦井:実は『トロイラスとクレシダ』への出演が決まるかなり前に、ふと鵜山さんからソニンさんのことを聞かれたことがあったんです。確かに『ヘンリー六世』の打ち上げでは一緒に歌いましたし、その後もお互いの舞台を観てはいるけれど、プライベートで食事もしたことがないのにいきなりどうしたんだろう…って不思議に思ってはいたんです。
もしかしたら鵜山さんの中には以前から、“この二人でシェイクスピアを”という思いがあったのかもしれないですね。

『トロイラスとクレシダ』浦井健治

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――トロイラスとクレシダは作品の中で恋に落ちます。

浦井:クレシダは途中から別の魅力的な男性に魅かれていってしまいますが(笑)。でもこういうことって遠距離恋愛では…ままあることなのかなあ、と。

ソニン:これから鵜山さんともお話をしてクレシダという役を作っていきますので、確定的なことは言えないのですが、この作品には恋愛における女性と男性の違いがとても明確に描かれているように思います。シェイクスピアが描く女性像って、皆どこか共通点があるようにも感じるんです。

浦井:ちょっと日本女性に通ずるところもありますよね。芯が強かったり。

ソニン:そうそう、ちょっと古風なところとか。

――クレシダの「言い寄られている時の女は天使。言い寄られている時が一番楽しい」という台詞がとても印象的でした。

ソニン:女性って正にそうですよね? それをクレシダのように口にするかどうかは別にして。

浦井:僕もこの言葉は凄く響きました。印象的ですし、グサっと刺さります。でも男性って、それを分かった上であえて女性の掌の上で転がされつつ愉しむ…そんなところもあるかもしれないです(笑)。

――トロイラスは「戦争」と「恋愛」を同列に考えている男性とも思えますが。

浦井:トロイラスが物語の中でその二つをどう捉えていくか、ですよね。この戯曲には約一週間ぐらいの短い間の話が書かれています。その時間の流れをきっちり見せていくのも課題の一つです。

ソニン:たった一週間で私は他の人…(岡本健一さん演じる)ダイアミディーズにも心を奪われてしまう訳です(笑)。

浦井:一目惚れだよね(笑)。でもトロイラスもクレシダに一目惚れしたんだし。
『トロイラスとクレシダ』は、一週間という時間の中で「戦争」と「恋愛」のさまざまな状況や感情が渦巻く作品で、男女の問題からいろいろなことが起き、それが戦争にまで発展していく。政治的なことだけではなく、そこに人間の深い感情が存在することで、観て下さる方も共感しやすい部分が多いのではないでしょうか。

『トロイラスとクレシダ』浦井健治&ソニン

――『トロイラスとクレシダ』には実力派の俳優さんたちもたくさんご出演されます。

浦井:今回は文学座の方たちとも共演させていただくのですが、演劇界を牽引している劇団の一つですし、その文学座を代表する方たちとご一緒出来るのでとても楽しみです。本当の意味で自由にやらせていただけるとも感じていますし、僕たちが鵜山さんに望まれているであろう“化学反応”をどう起こしていけるのか、胸をお借りするつもりでぶつかっていきたいですね。こんなに光栄なこともなかなかないですし。
この戯曲には親子間、兄弟間といった“家族”のエピソードもたくさん描かれていますので、父上や兄上に対して、稽古場で勢いやある種の吹っ切れた感覚も持ちつつ、関係を作っていけたらと感じています。

――製作発表ではトロイラスの父・プライアム王役の江守徹さんから「新人のつもりで頑張ります」というお茶目なお言葉も出ていましたね。

浦井:あのお言葉は凄かったですね。

ソニン:私、どうしようかと思いました(笑)。

浦井:製作発表の後に改めて江守さんにご挨拶をさせていただいたら、僕の目を見てにこっと笑って下さって…「父上~!」って(笑)。

――クレシダは男性陣を“翻弄”していきますよね。ご自身はいかがですか?

ソニン:おっと、そう来ましたか(笑)。うーん、翻弄したり翻弄されたり…どっちの面も持っているかもしれないですね。Uh…

浦井:上手い!最後は英語になってるし!(笑)。

ソニン:実は私、昨日までニューヨークにいたんです。

――『嵐が丘』の千秋楽が終わってすぐ?

ソニン:そうなんですよ。ちょうどセントラルパークでシェイクスピアの『テンペスト』が上演されていまして、それもしっかり観てきました。ちなみに私、とても素朴な疑問で、どうしてこの作品のタイトルは『トロイラスとクレシダ』なんだろう、ってずっと考えているんです。と言うのも、例えば『ロミオとジュリエット』のように、恋人たちの物語のみが進むという展開でもなく、トロイ戦争のこと、政治的なこと…いろいろなエピソ-ドが絡んでくる戯曲ですよね。シェイクスピアはどうして二人の名前をタイトルにしたのでしょうか。
クレシダ…に限らず、女性って周りの環境に順応するのが男性と比べて早いと思うんです。それは生きるために必要な術(すべ)かもしれない。環境を否定せず、順応しながら生き抜いていくというクレシダの生き方は自分と共通するところかな、とも思います。
女性の方が恋愛や生き方において、“正義”とかをあまり考えず、どちらかというと本能重視で動くような気もしますね。クレシダだけの場面を見ると「うーん、ちょっとこの人大丈夫?」と思ったりもしますが(笑)、そこにきちんと肉付けをして、ご覧になった方が「分かる!」と言って下さるような、筋の通る役にしたいです。

『トロイラスとクレシダ』ソニン

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――『トロイラスとクレシダ』は『ハムレット』と『十二夜』の翌年に書かれたとも言われています。そのためか、いろいろな作品のテイストが混ざっている様に感じました。

浦井:『ヘンリー五世』と『ハムレット』の間に完成したって説もあるようですね。『トロイラスとクレシダ』はシェイクスピア作品の中でも上演回数が少ない分、新鮮な気持ち…ある意味先入観のない状態で純粋に舞台を楽しんでいただけるのではないかと思います。例えば街を歩いているご夫婦がふと看板を見つけて「へえ、観てみようか」と劇場に入って「面白かったね、これもシェイクスピアなんだね」と満ち足りた気持ちで日常に帰っていく…それが成立する作品なのかな、と。
演出の鵜山さんも、今だからこそ“料理”のしがいがある!と仰っていますし、上演回数が少ない作品だからこそ、新しいものをこのカンパニーで創っていけるのではないかと思っています。

ソニン:戯曲を読んで、悲恋でもあるし、戦争を描いてもいるし、ちょっと笑える場面もあったりしつつ、書かれている台詞がとても美しい…本当にシェイクスピアのいろいろな要素の良いところ取りとも言える作品だと感じました。これは役者も熱くなれます!

浦井:確かにこの作品に関しては、演じる側もシェイクスピア作品ということでガチガチになるのではなく、“楽しむ準備”をしてから世界に飛び込むことが大切なのかもしれません。

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――では最後に、お二人からのメッセージをお願いします。

浦井:今回、僕はとにかくガチガチに考えすぎずに稽古場に立てればと思っています。その場の空気感や皮膚感覚を大切にトロイラスとして存在出来ればと。演劇界の大先輩方とご一緒させていただけますので、あらゆることに丸裸の状態でぶつかっていきたいです。
『トロイラスとクレシダ』はシェイクスピア劇ではありますが、充分現代に通ずる作品でもあります。身近な…自分たちの物語としてお楽しみいただけると思いますので、ぜひ難しいものと考えずに、劇場にお越しいただければ嬉しいです。

ソニン:素晴らしいカンパニーだということは、キャストをご覧になればすぐお分かりいただけると思います。出演者の一人ではありますが、鵜山さんがこの『トロイラスとクレシダ』をどう“料理”して下さるのかが本当に楽しみです。共演者の皆さんや鵜山さんのことを信じて、どーんと身を任せるつもりです。感謝の気持ちを忘れず、のびのびと参加させていただきます。劇場でお待ちしています!

昨年は5本の舞台に出演し、第22回読売演劇大賞では最優秀男優賞を受賞した浦井健治と、ニューヨーク留学からの帰国後、精力的に舞台に挑むソニン。今、演劇界が最も注目していると言っても過言でない二人が挑戦するのが“異色”のシェイクスピア作品『トロイラスとクレシダ』だ。

インタビュー時に言葉を選びながら真摯に答えを探す浦井健治と、時に感覚的になりながら、作品や役への情熱を懸命に語るソニン。二人の姿に戦争と恋の狭間で悩むトロイラスと、周囲の男性たちを翻弄しながらしなやかに生きるクレシダの姿がすでに重なって見えた。

製作発表やその後のコメントで、演出を担当する鵜山仁をはじめ、多くの出演者から「現代に通ずる」というキーワードが発せられた本作が、2015年の夏に私たちにどんな矢を放つのか…その時を楽しみに待ちたい。

舞台『トロイラスとクレシダ』は2015年7月15日(水)~8月2日(日)まで東京・世田谷パブリックシアターにて上演。東京公演終了後は石川、兵庫、岐阜、滋賀にてツアー公演が行われる。

『トロイラスとクレシダ』浦井健治&ソニン

☆浦井健治とソニンから、エンタステージをご覧の皆様にメッセージ!動画もお楽しみください!

ヘアメイク:氏家恵子、たなべこうた
スタイリスト:宮崎智子(浦井健治)
(浦井さん衣装)
Tシャツ¥7500 KATHARINE HAMNETT LONDON 03-5784-3327
パンツ\14000 MORGAN HOMME 03-3770-1733
シューズ\19000 KATHARINE HAMNETT LONDON 03-5784-3327
ジャケット スタイリスト私物

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