“カーニバル”のような亜門式ミュージカル!『ヴェローナの二紳士』 西川貴教インタビュー

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シェイクスピアの初期の喜劇をミュージカル化した『ヴェローナの二紳士』が、宮本亜門の演出により12月7日(日)から東京・日生劇場で上演される。ポップスやロック調の音楽に加え、ラテンミュージックの要素が足されたカーニバルのような本作で、プロテュース役として主演を務める西川貴教に話を聞いた。

製作発表の模様はこちらからご覧ください!(動画)

――宮本亜門演出作品には初のご参加ですが、亜門さんの印象はいかがですか?

とてもパワフルな方だと思います。稽古場全体が亜門さんの熱量に引っ張られているところもありますね。

――使用される楽曲がロックだったりポップスだったりラテン調だったりするのも興味深いです。

まだ今は稽古場のピアノに合わせて歌っている段階なのでパワー全開!というところまでは行けていないのですが、オケの皆さんと合わせた時に、どういう音楽に仕上がるのか僕自身もとても楽しみにしています。

――製作発表の時には西川さん演じるプロテュースに対して「性格も行動もかなり破綻している人間」とコメントがありましたが…。

確かに最初はそういう印象もありました。ただ、台本を読み込んだり、ブロードウェイ版初演のCDを聞きこんだり、資料を読んだりして役を深めていく作業を進めていくうちに、プロテュースという人間に対しての感じ方も変わって来ました。

彼は一見自己中心的でどこか破綻している様にも見えるんですが、実はそうではなくて、普通の人のように周囲の目を気にして常識的に行動しようという概念を持っていないだけなんですね。その場その場で自分の思いや目的に対してとても素直で純真。幼い頃の心をそのまま持って大人になった様な人間なんです。そのピュアな部分をどう見せていくのかが課題の一つかもしれません。

――これまで歌番組で共演していたアーティストの方たちと、ミュージカルの現場でご一緒されるのはどんな感じですか?

ジュリア役の島袋(寛子)さんとはT.M.Revolutionのデビュー時期とSPEEDのデビュータイミングが近かったこともあって、たくさんの番組でご一緒させていただきました。でも当時はほとんどお話をする機会がなかったんです。彼女は10代の女の子たちのグループに所属していましたし。それが今回こういう形でしっかり共演させて頂くことになって、“島袋さんはいい年の重ね方をして来たんだなあ”と実感しています。沖縄にいた頃の純粋な気持ちが今でもちゃんと胸の奥にあるというところにジュリアとの共通点も感じますね。

島袋さんも僕も音楽の世界からスタートして今はミュージカル作品にも出演させて頂いています。今回は彼女がジュリアとしてしっかりそこに存在してくれているので、僕もプロテュースとして向き合い、きっちり関係性を作れていると思います。ヴァレンタイン役の堂珍(嘉那)君もそうですが、面白くてぴったりハマったキャスティングをして下さってますよね。さすが亜門さんです!

『ヴェローナの二紳士』

――西川さんは『ヴェローナの二紳士』がミュージカル出演5作目になりますが、俳優として舞台に立とうと思われたきっかけは何だったのでしょう?

正直にお話すると自分が望んだというより、強いオファーを頂いたというのが最初のきっかけです。主演での出演だったのですが、この世界で役をつかもう、上に昇ろうとしている方たちが大勢いる中で大役を頂き、自分としては戸惑いもありましたし考える事も多かった。それでその後何年かは俳優としての仕事はほとんどお断りしていたんです。

そんな中、足掛け3年に渡ってとても熱心に声を掛けて下さる方との出会いがあり、2007年に『ハウ・トゥー・サクシード』というミュージカルに出演することを決めました。この作品で主演を務めさせて頂いたことが僕の中で大きな変化を生んだんです。僕と言う人間を頼ってくださり、作品の中で生きる機会を与えて下さった方たちがいる。共演するキャストやスタッフさんの思いにも応えなくてはいけない。稽古から千秋楽までそのことをこれまでにない位意識しました。この作品に参加出来たことはとても大きな経験でしたね。

――『ハウ・トゥー・サクシード』のフィンチ役も『ヴェローナの二紳士』のプロテュース役も、自分の目的や思いのために明るく周囲を巻き込んでいくというところに共通点があるように思います。

僕がやらせて頂くキャラクターは一貫してそういう役どころというのはあるかもしれません。コメディにこだわっている部分もありますし。この『ヴェローナの二紳士』もこれまでいくつかのバージョンが上演されてきたのですが、どちらかというとヴァレンタインの方が作品のキーマンとしての役割を担う事が多かったんです。それが今回、プロテュースが中心となって物語が進んで行くという展開になっていて、その役を自分が演じるということに即座に入り込めない部分もありました。ですが、稽古場で亜門さんとコミュニケーションを重ね、共演者の皆さんとシーンを作っていく内に“ああ、こういうことを求められていたんだ”と、すとんと胸に落ちて来るものもあり、今はプロテュースをとても愛おしく思っています。

『ヴェローナの二紳士』は、群像劇です。その物語の中で1本の筋を通しているのがプロテュース。亜門さんや個性的なキャストの皆さんと新しく華やかで楽しい作品を作り上げていけたらと思っています。ぜひ劇場にいらして下さい。


インタビュー終了後、場面稽古が行われているスタジオに潜入。この日はミラノに到着したヴァレンタイン(堂珍嘉那)がミラノ大公(ブラザートム)、その娘・シルヴィア(霧矢大夢)、シルヴィアの婚約者・チューリオ(武田真治)らの演説や華やかなダンスを目の当たりにするというシーンを返していた。

演出の宮本亜門はエネルギッシュに動き回り、出演者に自らが大枠の演技や振りを見せることで場面を作り上げていく。ヴァレンタインのある種の素朴さ、ミラノ大公の笑顔とその下に隠された恐ろしさ、真面目に動くことが大きな笑いに繋がっていくチューリオ、華麗なダンスを披露する美しいシルヴィアとそれぞれのキャラクターが色鮮やかに立ち上がっていく様に期待が高まる。

『ヴェローナの二紳士』ブロードウェイ版の初演は1971年。シェイクスピアの喜劇と『HAIR』の作曲家、ガルト・マグダーモットが手掛けた音楽とのコラボレーションが多彩な出演者と演出家・宮本亜門によってどう立体化されるのか、開幕を楽しみに待ちたい。

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『ヴェローナの二紳士』

12月7日(日)~12月28日(日)
東京・日生劇場にて上演

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