1960年代、リバプール。のちに世界中を熱狂させることになるロックバンド「ビートルズ」の創成期を描いた舞台『BACKBEAT』が、「ファイナル」となる再々演を迎える。2026年4月12日(日)の水戸での開幕に向け、熱気高まる稽古場を取材した。

再々演に戸塚祥太、加藤和樹、辰巳雄大、JUON、上口耕平が三度の集結

『BACKBEAT(バックビート)』は、1994年公開の同名伝記映画をイアン・ソフトリー監督自らが舞台化した作品。結成当初は5人編成だったビートルズに、メジャーデビューを待たずして袂を分かつことになったメンバーが存在したという史実に基づく青春物語だ。


親友ジョン・レノンに誘われベーシストとして加入した画家志望のスチュアート・サトクリフを中心に、ポール・マッカートニー、ジョージ・ハリスン、ピート・ベストら5人がドイツ・ハンブルクの巡業で頭角を現していく姿と、写真家アストリッド・キルヒヘアとの運命的な出会いによるスチュアートの葛藤を、20曲以上の生演奏を交えて描き出す。
日本では石丸さち子(翻訳・演出)と森大輔(音楽監督)のタッグによって2019年に初演を迎え、2023年にも再演されている。初演から5人のビートルズを演じるのはスチュアート・サトクリフ役の戸塚祥太、ジョン・レノン役の加藤和樹、ジョージ・ハリスン役の辰巳雄大、ポール・マッカートニー役のJUON、ピート・ベスト役の上口耕平。


このほか、スチュアートと運命的に出会う写真家のアストリッド・キルヒヘア役の愛加あゆが再演から続投。そして、新キャストとしてクラウス・フォアマンとリンゴ・スターの2役を演じる林翔太、エルヴィス・プレスリー役として初演からカンパニーを支える尾藤イサオなどが出演。
初演から続投する5人と共に、ビートルズ来日公演から60周年という節目の年に「ファイナルステージ」を迎える。
言葉より雄弁な「生音」の説得力!熱のこもった公開稽古

稽古場中央に組まれたバンドセットに、おそろいのカンパニーTシャツと黒い衣裳で身を包んだ“5人のビートルズ”が現れると、そこはさながらライブハウスだ。この日披露されたのは、ビートルズとアスリッドが初めて出会うシーンの「Long Tall Sally」、スチュアートがアスリッドへの想いを込めて歌う「Love Me Tender」、別の方向を向き始めたスチュアートをグループに繋ぎとめようとするジョンが歌う「Money(That’s What I Want)」の計3曲。


初演、再演とステージを重ねてきた5人の演奏は、単なる「劇中の演奏」という枠にとどまらない。本来右利きのところを死ぬ気で左利きに変えたJUONのベース、未経験なのに「ギターが弾ける」という“嘘”でキャスティングされたところからそれを真実に変えた辰巳のギター、屋台骨として冷静かつ熱くビートを刻む上口のドラム。そして戸塚と加藤は、互いに抱えた想いをぶつけるように、ヒリヒリするような関係性を歌と芝居でぶつけ合う。


天才たちがぶつかり合い、光と影が交錯する青春の痛みが、生演奏のグルーヴと相まって見ている者の胸を熱く焦がす。すでに出来上がっている彼らの「ビートルズ」を、さらに深めようともがいていた。
演出・石丸さち子が語る「奇跡のカンパニー」

公開稽古の熱気冷めやらぬ中行われた取材会には、キャスト陣と共に翻訳・演出を手掛ける石丸さち子も登壇。
石丸は、再々演に向けた想いを「世界中、いつの時も『バンドやろうぜ』ってメンバーを探している人たちがいると思うんですけれども、リバプールでまだ10代後半だったビートルズのメンバーたちが出会ったこと自体が奇跡だったと思うんですね。そして、この忙しいメンバーが三度集まれたということも、奇跡だと思います」と切り出した。
劇中では20曲以上の楽曲が生演奏されるが、「どんどんよくなっている」とのこと。「初演の時点で、ビートルズを知らない方たちからは『素敵なビートルズを知りたい』と思われ、ビートルズファンの方からは『あの頃のビートルズがいるようだった』とお褒めの言葉をもらうほどの仕上がりだったので、今回もまたすごい仕上がりになると思います」と自信を見せた。
そして、「本作を一言で言い表すならば、“青春”です。素晴らしい出会いがあると同時に、痛ましい別れがやってくる。光があるところには必ず影ができる。誰もが味わってきた青春の喜びと痛みを、テンションがぶち上がる生演奏と共に味わえるのが本作の最大の魅力ですので、ぜひとも味わっていただきたいです」と語った。
「進化だけではない、深化のアプローチを」

生演奏の手応えや稽古場の雰囲気について問われると、長年連れ添ったバンドメンバーのように、互いにツッコミ合いながらの和やかなクロストークが展開された。
スチュアート役の戸塚は「時間をいっぱいいただけるので、熟成されてきているのではないかなと。進化だけでなく、深く掘っていく“深化”の方向に今回はアプローチできていると思っています。あとの細かいことは、もうほとんどジョン(加藤)とバンドマスターのポール(JUON)に任せています」と全幅の信頼を寄せてバトンを渡した。

これを受けたジョン役の加藤は、「バンドリハから本稽古に入り、徐々にビートルズになりつつあるという感覚があります。僕自身も前作が終わって、ようやくちょっとジョンに慣れてきたなと。声帯がやっとジョンになってきました」と役を身体に馴染ませている現状を明しながら、「ファイナルということに臆することなく、いつも通りの彼らを体現していきたいと思っております」と頼もしく宣言した。

自分の名前と「ジョージ・ハリスン」が混ざり、一斉に「なんて?」とツッコミを受ける辰巳雄大
そして、思わず「辰巳雄大」と「ジョージ・ハリスン」が混ざったような謎の自己紹介をした辰巳。総ツッコミを受けながら、「初演の時はついていくことに必死だったんですが、ギターのことをたくさん学んで、今や『ジョージ・ハリスンです』と名乗りそうになるほど役が憑依しています」とユーモアたっぷりに場を変えながら、「役作りの一環として文献にあたったところ、『ジョージ本人がギターを持ってる時だけが自分らしくいられた』という言葉を残していたり、年下のジョージが唯一本音で戦えるのは音楽の中だけだった、ということがたくさん書いてありました。音楽の中でジョージらしく生きるというのは、自分の中でもこの舞台にとって大切なことだと思っています」と、役への想いを熱弁。

ポール役のJUONは、「実はこの初演が、僕にとっての初舞台だった」と振り返り、周囲のサポートに感謝しつつ「前回の自分の演技を超えること」を目標に掲げた。「ファイナルと言っていますが、終わる気はしないので、ファイナルのその向こう側に行きたいなと!」という熱い言葉に、メンバーも力強く頷く。

そんな血気盛んなメンバーをドラムの位置から俯瞰しているのが、ピート役の上口だ。「丁寧にきっちりと音楽を届けるぞ」と前日に誓い合ったはずが、いざ始まると開始早々全員が目の前で暴れ出したエピソードを笑顔で暴露。「常に後ろから全部見ているので、みんなの弾ける瞬間とかも分かる(笑)。このメンバー、まだまだぶっ飛んでいくんだなと、今日の稽古披露でも感じられました。僕たちも年齢を重ねてきて、俯瞰で見る力や冷静な力もついてきましたが、だからこそ音楽のクオリティを上げつつ、初演や再演に比べてもっと爆発していけると思います」と、変わらないカンパニーの疾走感を言葉にした。

彼らに大きな影響を与えるアストリッド役の愛加は、男性陣のすさまじいパワーを肌で感じながら、「石丸さんと作った再演をベースに、そこからさらに上を目指せるように、いろんな資料を読んだり見たりして学んでいる最中」だと、愛情深く強い影響を与える役どころに真摯に向き合っているプロセスを語った。

また、今回からの新キャストとなる林は「去年の夏ぐらいからドラムのレッスンさせてもらっていて」と入念な準備を明かしつつ、出来上がったカンパニーに入るプレッシャーはあったものの「皆さんすごくいいお兄さん達で、スッと輪に入れていただけました。今はみんなと合わせるのが楽しくてしょうがないです」と顔をほころばせた。また、「台本をいただいてから、あえて皆さんの演奏を絶対に聴かないようにしていて。初めて皆さんの演奏を聴いた時の衝撃を、そのままお芝居に使えるなと思って大切に演じています」と、新キャストならではの役作りを語った。
尾藤イサオとビートルズの“特大”伝説の思い出
今回ブラッシュアップされた点については、演出の石丸が本作の奥深いテーマについて口を開いた。「彼らは疾走するんですが、それは『未来が見えていての疾走』ではなく『自分がどこに行くか分からない状態』での疾走なんです。光のシーンを演じていても、自分たちの孤独や野心のようなものをしっかり腹に据えて演じていくとどうなるか。今回は、これをかなり追求しています」と、ファイナルだからこそ到達できる芝居の境地を語った。
また、再演で叶えた「ライブの時間」は今回も設けられるという。「再演時に上演時間を縮めて、夢を叶えて最高の客席を見ることができました。今回も、ぜひそれを楽しみにしていただきたいと思います!」とアピールした。

そして、プレスリー役の尾藤。60年前のビートルズ来日公演(日本武道館)で、尾藤たちが前座を務めていたことは知られているが、当時の特大の思い出を教えてくれた。当時、最前列でステージを見ていたという尾藤。同い年だったジョージ・ハリスンが「出てくる度に手を振ってくれた」という喜びから、「日本のアーティストからビートルズに記念になるものをプレゼントしたい」と、先輩の内田裕也と共に銀座でストライプのシャツを買いに行ったという。
「ローディーさんに渡そうとしたら、ビートルズの楽屋まで案内してくれるというので、ついていったんです。そうしたら、直前で日本のスタッフに『勝手にビートルズに物を渡すなんてとんでもない!』と止められてしまって。でも、裕也さんは納得しなくて『何でだ!』って食って掛かっていたんですよ(笑)」と、“特大”の伝説的エピソードをユーモアたっぷりに披露。

尾藤イサオを笑顔にする”令和のジョージ・ハリスン”こと辰巳雄大
結局、ストライプのシャツは渡せずじまいだったという尾藤に、すかさず辰巳が「まだお手元にあるのなら、僕が代わりにいただきたい!」と“令和のジョージ・ハリスン”として申し出ると、尾藤は特大の笑顔を見せていた。
オノ・ヨーコにも観に来てほしい!「令和のビートルズ」は絶好調
石丸が「令和のビートルズ」と称し「絶好調」と太鼓判を押すカンパニー。“ファイナル”となる再々演に向け、上口は「AIの技術などで色んなものができてしまう世界がきたからこそ、生で見る『今しかないこの瞬間のエネルギーや尊さ』を感じてほしい」と舞台芸術の意義を力説すれば、JUONが「免疫力爆上がり、観に来たら心の中も爆上がりです!」と笑顔を見せる。

辰巳は「演じるということをやめて、ジョージ・ハリスンとして自分の人生をかけて生きるという覚悟を持って、毎公演音をかき鳴らしていきたいと思います。そして、いつかタモリさんの前で(ミュージックステーションの)階段を降りてこれたらいいなと思っています(笑)!」と壮大な野望を覗かせた。

最後に加藤が「ファイナルなので、とにかく見なきゃ損するよ」と力強く呼びかけ、戸塚が「オノ・ヨーコさん、もし東京にいらっしゃる事がありましたらぜひ見に来てください!」と大胆にアピール。
そして、「ビートルズの武道館から60年。僕たちも、60年後にこの作品をやる若者たちが『どうやったらあいつらに触れられるんだろう』と悩ませちゃうくらいの熱を出したいと思います。よろしくお願いします!」という戸塚の熱い宣戦布告とともに、笑いと熱意に包まれた会見は幕を閉じた。

「令和のビートルズ」たちが魂を削り、音を楽しむ。その強烈なエネルギーのぶつかり合いを目撃できるのは、今回が本当に最後。彼らの青春の集大成を、ぜひ劇場の最前線で体感したいものだ。
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)
『BACKBEAT』2026 公演情報
| 公演情報 | |
|---|---|
| タイトル | 『BACKBEAT』 |
| 公演期間・会場 | 【プレビュー公演】 2026年4月12日(日) 水戸市民会館 グロービスホール【愛知公演】 2026年4月17日(金)〜4月19日(日) 穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール【大阪公演】 2026年4月25日(土)・4月26日(日) SkyシアターMBS 【東京公演】 【兵庫公演】 |
| スタッフ | 作:イアン・ソフトリー、スティーヴン・ジェフリーズ 翻訳・演出:石丸さち子 音楽監督:森大輔 |
| キャスト | 戸塚祥太(A.B.C-Z)、加藤和樹 辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)、JUON(THE & ex FUZZY CONTROL)、上口耕平 愛加あゆ、林翔太 鍛治直人、東山光明、田川景一、安楽信顕 尾藤イサオ |
| チケット情報 | 【プレビュー公演(水戸)】2026年2月14日(土)発売 S席 10,000円/A席 9,000円/B席 7,500円【愛知公演】2026年3月15日(日)発売 全席指定 12,500円【大阪公演】2026年3月15日(日)発売 全席指定 12,500円 【東京公演】2026年2月14日(土)発売 【兵庫公演】2026年4月12日(日)発売 ※全席指定・税込/未就学児入場不可 |
| 公式サイト | https://www.backbeat-stage.jp |
| 公式SNS | @BackbeatStage |


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