ミュージカル『サムシング・ロッテン!』 加藤和樹インタビュー!念願のコメディで新境地開拓?

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演劇への愛と情熱を詰め込んだコメディミュージカル『サムシング・ロッテン!』が、2025年12月に待望の再演を迎える。演出は初演に続き福田雄一、主演は中川晃教が続投。そして今回、スーパースター・シェイクスピア役として加藤和樹が初参加する。

「福田作品に出てみたかった」という加藤。自身も「大好き」だというコメディに挑む難しさや面白さ、そして演じるシェイクスピア役についての考え、中川晃教から「盟友」と呼ばれるようになった関係性の変化や、役者としての自己分析から仕事への考え方など、様々な角度で語ってもらった。年末年始、コメディで「新しい加藤和樹」に出会えそうだ。

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目次

「スケジュールどうなってる?」 福田雄一監督からの直接オファー

――まず、本作へのご出演はどのように決まったのか教えてください。

オファーをいただいたのは、去年の2月ぐらいでしたかね。福田(雄一)さんから直接お電話で「来年のこのあたりのスケジュール、どうなってる?」というご連絡をいただきまして。「スケジュール確認してみます」というところから始まって、決まったという感じでした。

――加藤さんは、福田さんのコメディ作品にずっと出たいと思っていらっしゃったそうですね。

僕、『モンティ・パイソンのスパマロット』が大好きなんですよ。福田さんの演出で観た時、劇場で文字通り腹を抱えて笑いまして。福田さんの映像作品にも共通しますが、独特な笑いが僕には結構ツボだったんです。

WOWOWさんの『グリーン&ブラックス』という番組で初めてご一緒させていただいたんですが、いつか福田さん演出の舞台作品にも出てみたいなという思いがあったので、今回声をかけていただいて、すごく光栄でしたし、夢が叶った形ですね。今は、自分をどう調理していただけるのかと楽しみにしています。

「家で一人笑ってしまった」加藤和樹が語る『サムシング・ロッテン!』の魅力とコメディへの難しさ

――『サムシング・ロッテン!』の初演はご覧になりましたか?

作品のタイトルは知っていたのですが、初演は劇場に行けなかったので、映像で拝見させていただきました。

――改めて映像をご覧になって、いかがでしたか?

家で一人、映像を見ながら笑っていまして、「ちょっと自分、気持ち悪いな・・・」と思いました(笑)。本当にテンポが良くて、間の使い方とかが本当に秀逸だなと思いました。お客さんの笑いのポイントをちゃんと押さえている、というか。

この作品って、福田さんもおっしゃっていましたけど、ミュージカル好きのためのコメディなんですよね。いろんな楽曲の一節や劇中の台詞を、作品に取り入れて笑いに変えているというところが魅力の一つかなと思います。あとはやっぱり、ダンスナンバー。タップダンスのナンバーや、みんなが一つになれる楽曲で、お客さんと一体になって楽しめるハッピーミュージカルだと感じました。

――お忙しい中でもよく観劇されている加藤さんですが、一観客として観るのと、ご自身が出演されると決まってからご覧になるのでは、観る感覚は変わりますか?

それはやっぱり、変わりますね。やっぱり、お客さんとして観ている時は純粋に楽しんでいるんですよ。でも、実際に自分が「出る」って決まって観る時は・・・。包み隠さず言うと「自分にこれができるのか・・・?」と、ちょっとマイナスなところから入ってしまう傾向が僕にはあります。もちろん「ここに入れたら楽しいだろうな」とか、「新しいチャレンジができるな」という期待感の方が大きいですけど。どうしても、ちょっと観る視点は変わっちゃいますね。

――これまでの出演作から考えると、加藤さんにはあまりコメディのイメージがないですよね。

そうですよね。『裸足で散歩』ぐらいかな。でも、コメディ自体は大好きなんです。ただ自分がやるというイメージがあんまり湧かなくて。

――でも、加藤さんご自身は結構こっそりおもしろいことを言われている気がします。

僕、面白いもの大好きなんですよ。本当はもっとボケたいし、なんならウケたいという気持ちもあるんです。ただ、その出し方があんまり上手くない(笑)。だから今回、笑いのスペシャリストである福田さんにいろいろご指導をいただいて、「俺だって笑いが取れるんだ」ってなりたい。でも、笑いは取りに行っちゃだめなんですよね。難しい。

――難しいところもまた、コメディを演じる面白さだったりしますか?

やっぱり、笑ってもらった時の快感って普通のお芝居では得られないものがあるんですよね。笑いは取りに行ってはダメですが、この『サムシング・ロッテン!』は笑わせに行く作品だと思うので、そういう意味ではやりすぎるぐらいでもいいのかなと思う部分と、ちゃんとお芝居の流れの中で笑わせに行く部分を、バランス良くできればいいなと思っています。

シェイクスピア役をどう演じる?

――今回演じられるシェイクスピア役には、どうアプローチしようと考えていますか?

まだ、具体的には思い浮かんではいない状態です。やはりこう、前回演じられた西川さん(西川貴教さん)のイメージが強すぎて・・・。それを超えるものという考えではなく、自分だから出せるシェイクスピアという役の魅力や面白さ、かっこよさ、ダサさみたいなものを、全部ひとまとめにして表現することができたらいいなと思っています。

――シェイクスピアは、自己主張が強くナルシストな役柄でもあります。

そうですね。普通のミュージカル作品では、あまり自己主張してはいけないと思いますが、この作品、特にシェイクスピアは本当に自己主張が強い・・・(笑)。「Will Power」っていう楽曲なんかは特に、「俺を見ろ!」みたいな楽曲なので、いかに突き抜けてやれるかが勝負という期待感はありますね。

――シェイクスピア役に、ご自身とリンクする部分はありますか?

あんまり一致するところはない気がするんですけど(笑)。僕も歌詞を書いたり、曲を作ったりはするので・・・、彼の何かを生み出す苦悩は理解できるかなと思います。「時代の寵児だ」「天才だ」ともてはやされて格好つけてはいるけれど、虚勢を張っているというか、裏を返すと自信のなさの表れだと思うんですよね。プレッシャーも感じているだろうし。

だから、彼の見えない部分にある弱さみたいなものが垣間見える瞬間があってもいいのかなって、今は考えていたりします。自分はいつも自信がない人間なので、そういう部分で上手く気持ちがリンクするところが見つけられればなと考えています。

――この作品では、シェイクスピアがトビー・ベルチに変装する場面もあります。

ねえ、それ。子どもですね・・・(笑)。声とか、どうしよう。僕はどちらかというと背も高い方なので、設定的に大丈夫かなと思うところは正直あるんですけど。でも、できる限りのことはやりたいと思っています。いろいろ考える楽しさはありますね。だから、どちらかというとシェイクスピアよりもトビーの方がやりがいあるのかもしれない。変な言い方ですけど(笑)。

憧れから“盟友”へ――中川晃教との変化した関係性

――続投の方も多いカンパニーに入られますが、顔ぶれをご覧になっていかがでしたか?

そうですね。でもアンサンブルの方でご一緒した方もいらっしゃいますし、僕と同じで初めて参加される石川禅さんとは、もう何作もご一緒しているので非常に心強く感じています。

――ライバル役となる中川晃教さんとは、『フランケンシュタイン』に始まり今年は共演が続きますね。

非常に嬉しいですね。やはり、あっきーさんとご一緒するというと『フランケンシュタイン』のイメージがどうしても強いと思いますけれども、またこうして別の作品、別の関係性で対峙する役ができるというのは、僕にとっても、お客さんにとってもすごく楽しみなことだと思っています。

――まったく毛色の違うコメディでの共演というのも、興味深いです。

僕としては、心強い反面、ちょっと怖さもあるなあと。あっきーさんって面白いことが好きなんですよ。皆さんもご存知だと思うんですけど、急に突拍子もないことを振ってきたりもするんですよ。そこがドキドキというか。自分がそれを受けた時にどういう感情になるのか、果たして笑わずにいられるか。僕は結構ゲラなので、ちょっと心配はあります(笑)。

――共演を重ねて、中川さんとの関係性に変化は感じますか?

共演を重ねて、より深い仲になれてきた感じがします。初めて共演した時は、憧れのあっきーさんという感じだったので、ちょっと遠慮している部分もたくさんあったんです、恐れ多いというか・・・。でも、共演を重ねる中で、歌のことも、お芝居のことも、意見交換や話し合いができる関係性になれたと言いますか・・・先輩後輩というよりは、仲間として話すことができるようになったように感じています。

――上演発表の時、中川さんは加藤さんのことを「盟友」とコメントされていましたね。

いやもう、あっきーさんからそう言っていただけたのは本当に光栄です。なんでしょう・・・最近のあっきーさんは、結構僕のことを頼りにしてくれている感じがするんですよ。そんなに頼りがいがあるかな?って僕自身は思うんですけれども、頼りにしていただけるのは非常に嬉しいです。

あっきーさんって、諦めない心を持っている方なんですよ。自分で納得して前に進みたいんですよね。あっきーさんの言うこともすごく分かるし、思わぬところに目を付けるので「そこの着眼点は僕には無かった」とはっとさせられることも多いので、いつも本当に刺激的です。

自己評価は「不器用」加藤和樹流、同時並行の仕事術と役作りの信念

――加藤さんは、ご自身のことを「俳優」としてどのように分析されていますか?

僕は結構、「とりあえず一回やってみましょうか」っていうタイプ。俳優としては、不器用なんだと思います。言われたことはすぐできないし、ミュージカルにおいてはダンスも苦手だし。役とも時間をかけていかないと向き合えないし。もっと要領のいいやり方があるんじゃないかっていつも思うんですけど、愚直に向き合うことしかできないので。そういう意味で、不器用な役者だと、自分自身では思っています。

――逆に考えると、それは強みでもありますね。

真面目に取り組むことしかできないので、そういう意味では真っすぐではあるのかな。あとは、楽しむ心は常に持っているというところは自分の強みになるのかなと思います。

――加藤さんは、いつも複数の作品や音楽活動が並行していてとてもお忙しいそうだと思っているのですが、頭の切り替えはどのようにされているのですか?

整理はしてはいないんですよ(笑)。いろんなものがそれぞれバラバラに置いてある、みたいな状態というか。日によって「今日はこっちの引き出しから」「あっちの引き出しから」ってやっている感じです。だから、現段階でもこの『サムシング・ロッテン!』のことはまだその辺に置き去りにしている段階で。やっぱり、「とりあえずやってみよう」「やってみないと分からない」というのが僕の根幹なんでしょうね。稽古場で、とりあえずトライしてみないと役も見えてこないし。台本を読んでいるだけでは役作りできないんですよね。

自分なりに考えたものを稽古場に持っていくことももちろん必要なんですけど、でも僕の場合は「こうやってみよう」って考えたものはダメな気がしていて。その場で起こること、リクエストされたことに自分がどうリアクションするかの方が大事だと思うんですよね。なので、あまり頭でっかちにならず、考えすぎずに、もうフラットな状態で稽古に臨みたいと、常々思っています。

――なるほど。「考えすぎない」のは、柔軟でいるためにすごく大事なことですね。

僕自身のいいところでもあり、悪いところでもあるんですけどね。本当はもっと考えた方がいいこともたくさんあるんですけど。考えすぎちゃうと一方通行になってしまうじゃないですか。視界も狭まるし。

そうではなくて、広い視野を持ちながら、なんとなく手をつけておくぐらいの方が、僕にとっては後々良かったりする。とにかく、一つのことしかできないので、その時その時にまっすぐ向き合うだけです。そういう意味で、やっぱり不器用なんですよね。

年末年始はコメディで!「新しい自分に出会える期待をしています」

――今年は『ラブ・ネバー・ダイ』から始まり、『フランケンシュタイン』『マタ・ハリ』と重めの作品が多かった中、年末年始をコメディでまたぐことになりますね。

こう言ってはなんですが、暗めの作品ばかりですね(笑)。気持ち晴れやかに年を越せるのは、僕自身あんまりない経験かも。楽しみつつも、同じように作品とちゃんと向き合って、お客様に上質なコメディミュージカルを届けられるように、真っすぐ、フラットな気持ちでがんばりたいなと思います。

――最後に、楽しみにしているお客様へメッセージをお願いします。

コメディと聞いて、お客様も「どういう加藤和樹が見られるんだろう」と思ったのではないかと思いますが、僕自身も新しい自分に出会えるんじゃないかなって期待しています。なかなかミュージカル作品でこんなにはっちゃけることもないので。そういう姿を年末年始に楽しんでもらえたらいいです。僕はスーパースターではないんですけれども、スーパースターになった気持ちでね。シェイクスピア役を演じさせていただきたいと思います。

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部1号)

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ミュージカル『サムシング・ロッテン!』公演情報

公演情報
タイトル ミュージカル『サムシング・ロッテン!』
公演期間・会場 【東京公演】
2025年12月19日(金)~2026年1月2日(金)
東京国際フォーラム ホールC
【大阪公演】
2026年1月8日(木)~1月12日(月・祝)
オリックス劇場
スタッフ 作詞・作曲:ウェイン・カークパトリック、ケイリー・カークパトリック
脚本:ケイリー・カークパトリック、ジョン・オファレル
演出:福田雄一
翻訳・訳詞:福田響志
振付:上島雪夫
キャスト 中川晃教、加藤和樹、石川禅、大東立樹(CLASS SEVEN) 、矢吹奈子、瀬奈じゅん

岡田誠、高橋卓士、横山敬、植村理乃、岡本華奈、岡本拓也、神谷玲花、小山侑紀、坂元宏旬、髙橋莉瑚、高山裕生、茶谷健太、横山達夫、吉井乃歌、米澤賢人、小林良輔(スウィング)、七理ひなの(スウィング)

チケット情報 <料金(全席指定・税込)>
【東京公演】
S席:15,000円/A席: 10,000円
U-25券:7,000円(当日引換券)【大阪公演】
<昼公演>
S席:15,000円/A席:10,000円/B席:7,000円
U-25券:6,000円(当日引換券)
<夜公演>
S席:14,000円/A席:9,000円/B席:6,000円
U-25券:5,000円(当日引換券)
公式サイト http://www.s-rotten2526.jp
公式SNS 公式X(Twitter):@s_rotten2526
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