僕が見たかった青空の23人を信じて――演出家・村井雄が語る、舞台『夏霞~NATSUGASUMI 2025~』の舞台裏

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アイドルグループ「僕が見たかった青空(通称:僕青)」23人が出演する舞台『夏霞~NATSUGASUMI 2025~』が、2025年9月6日(土)より上演される。本作はデビュー2年目である僕青メンバーたちが挑んだ初舞台で、高校3年生の夏に起こった不思議な出来事を描くオリジナル脚本の舞台だ。昨年の初演時には青春時代ならではの瞬間、瞬間の貴重さや美しさ、僕青23名が織りなす、瑞々しい魅力があふれるステージは多くの観客の心を動かし、感動を与え、話題を呼んだ。

舞台の演出を手がけるのはジャンルに捕らわれず、演劇・朗読劇・お笑い・イベントなど意欲的に幅広く手掛け、国内外で高い評価や賞の受賞のほか、東京2020パラリンピック閉会式ディレクター=AFTER THE GAMESパート担当も務めた演出家・村井雄。俳優未経験の僕青メンバー23人と向き合い、それぞれの個性を見極めながら、多くの観客を魅了した初演舞台の演出について、そしてパワーアップして帰ってくる2025年版「夏霞」について、村井に語ってもらった。

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目次

“これ面白いね”を繋ぎながら作っていく、村井雄の創作

もともと演劇にはまったく触れてこなかったという村井。学生時代は映画好きだったものの、舞台を観ることもなかった。そんな彼が演劇の道へと足を踏み入れたのは、区役所職員として働く中で出会った社会人劇団の影響だったという。

「役所の同期が劇団をやっていて、誘われて何度か観に行ったんです。それがきっかけでワークショップに参加するようになって、気づいたら自分も舞台の世界に足を踏み入れていました」

その後、世界的にも活躍をしている「劇団 山の手事情社」の研修生となり、さらにそこの仲間と劇団「KPR/開幕ペナントレース」を結成。最初は台本もなく、ワークショップの中から“面白い”を拾い上げて形にしていく創作が始まりだったという。

「3年間くらい、台本がない中でみんなで作品を作っていました。“これ面白いね”を繋ぎながら。だから、いまでも企画・台本の中で“何が面白いか”を考えています」

現在、国内外でその演出に対し高い評価を得ている村井だが、作品や状況に応じて多彩な演出手法を用い、作品と向き合っている。例えば、チェーホフなどの戯曲を徹底的に読み解き、緻密に構築した作品が海外で高く評価をされる一方、今回の『夏霞』では、初期の「KPR/開幕ペナントレース」で行っていた演者の提案や考え、個性を引き出しながら、即興的な面白さを積み重ねていく手法を用いている。

「夏霞の稽古場では、本に書かれていることを“こうしなきゃいけない”っていうのは最終手段としています。本人たちが『こうしたい』と思ったら、それを否定せず、“それいいね”って受け止めて、そこから一緒に広げていきます」

大切なことは「自分がどこにいるのか」を明確にすること

そんな村井が、演出を行う上で、どの芝居においても共通して大切にしていることは「場所をつくること」。

「どの演出の方も同じだと思うんですが・・・。舞台上の世界でも、キャストたちが舞台に向き合う上でも、まず『今、自分はどこにいるのか』という“場所”を明確にすることが大切だと考えています。例えば、作品の設定で舞台が「喫茶店」だった場合、そこは夕方の喫茶店なのか、深夜の閉店間際なのか、それだけでシチュエーションや雰囲気、空気感が全然変わってくる。何もない空間である“舞台上”に世界を立ち上げるために、まず“どこで、何が起きているのか”を舞台に関わる全員で共有したいんです」

では、僕青自身がこの舞台に取り組む上で、必要となる“場所”とは?それは「彼女たちの“らしさ”を最大限活かすこと」を第一に考えた場所作りだった。

「彼女たちはアイドルとして人前に立ってきた分、誰よりもパワーとオーラがある。それを“初挑戦だから““演劇だから”と縮こませてしまうのはもったいない。彼女たちは、これまでの経験もあってか、普通なら萎縮してしまうような場面でも、臆せず楽しみ、挑戦できる。これはもう“才能”だと思います。そんな彼女たちの力を信じ、向き合いながら、日々一緒にお芝居を創り上げています」

なお舞台上では、あえてユニゾン(同時に声を出すこと)で台詞を言わせる演出も取り入れ、個性の違いを際立たせているという。

「一緒に言えば言うほど、それぞれの声やテンポの違いが見えてくる。それが面白いんです」

僕青メンバーと向き合い、時に一緒に笑いながら、目線を合わせて作り上げてきた村井だからこそできる演出だ。作品の中に“僕青メンバー1人1人の個性”が浮かび上がる、その細やかな構造にもぜひ注目ながら舞台を楽しんでみてもらいたい。

2度目の舞台に挑む僕青メンバーの変化について尋ねると、「芝居への向き合い方が変わった」と村井は語る。

「去年は演劇の現場も初めてで、少し戸惑いがあったと思います。でも今回は、最初から“舞台の稽古場に来ました!”という空気感で参加してくれて、稽古でも自主的に取り組んだり、自分たちで考えて意見を出す場面もあります。とても頼もしいです」

さらに「“夏霞”では、それぞれのチームで同じ名前のキャラクターが登場しますが、Aチーム(とあルート)とBチーム(えれんルート)では役割が違います。そのため呼吸も表情もまったく異なり、そこで生まれる“違い”を、逆に舞台の面白さにできたらと思っています」と続ける。

まもなく幕が上がる、2年目の「夏霞」。
最後に、このインタビューを読んでいる方へのメッセージをお願いすると——。

「僕青のメンバー1人ひとりが本当に魅力的です。ライブやネットやテレビでは見られない彼女たちの“瞬間”を、舞台で見てもらいたい。演劇ファンの方にも、この舞台を通じて、きっと“23人”を好きになってもらえると思います」

舞台『夏霞~NATSUGASUMI 2025~』は、9月6日(土)から9月15日(月・祝)に東京・シアター1010にて上演される。

村井 雄プロフィール

海外公演を多数行い、ニューヨークタイムズをはじめとする海外メディアより高い評価を得ている「KPR/開幕ペナントレース」主宰/脚本家・演出家。国内では、話題の2.5次元舞台、アニメのシリーズ構成・脚本を担当。
東京2020パラリンピックでは閉会式ディレクター=AFTER THE GAMESパート担当も務める。

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舞台『夏霞~NATSUGASUMI 2025~』公演情報

公演情報
タイトル 舞台『夏霞~NATSUGASUMI 2025~』
公演期間・会場 【東京公演】2025年9月6日(土)~9月15日(月・祝) シアター1010
スタッフ 脚本:私オム
演出:村井雄
キャスト 八木仁愛、杉浦英恋/
早﨑すずき/
安納蒼衣、岩本理瑚/金澤亜美、八重樫美伊咲/塩釜菜那、西森杏弥/須永心海、柳堀花怜/長谷川稀未、吉本此那 /
青木宙帆、秋田莉杏、伊藤ゆず、今井優希、木下藍、工藤唯愛、萩原心花、宮腰友里亜、持永真奈、山口結杏
チケット情報 一般:8,300円(税込/全席指定)
U-18学割チケット:4,500円(税込/全席指定)
公式サイト https://bokuao-natsugasumi.com/
公式SNS 公式X(Twitter):@_natsugasumi_ao
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掲載日時点での情報です。 最新情報は各公式サイトをご確認ください。

(C) 舞台「夏霞」製作委員会2025

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