2025年12月12日(金)に東京・明治座にて舞台『忠臣蔵』が開幕する。初日前日には取材会とプレスコールが行われ、上川隆也、藤原紀香、立石俊樹、藤岡真威人、崎山つばさ、岐洲匠、石川凌雅、近藤頌利、藤林泰也、唐木俊輔、財木琢磨、松田賢二、徳重聡、珠城りょう、高橋克典、演出の堤幸彦が登壇した。

令和に蘇る「デジタル活劇」!堤幸彦が描く新たな『忠臣蔵』

『忠臣蔵』は江戸時代の元禄年間に実際に起こった仇討ちをテーマに歌舞伎などで上演されて以来、何度もドラマ化、映画化、舞台化されて来た屈指の名作。今回は、LED映像を駆使して令和版『忠臣蔵』として創造し、新たに届け、323年前の12月14日に実際に討入りが行われ、その時期に上演するという意義のある企画となっている。
「なぜ刃傷は起きたのか、なぜ仇討ちは実現出来たのか、大石内蔵助の描いた作戦とは何か、吉良上野介はどんな人物なのか」という視点から、討入りの真実に迫る本作。松の廊下の刃傷、赤穂城明け渡し、浪士たちの暗躍、そして最大の山場となる吉良邸への討入りまで、様々なドラマと人間模様を、大立ち回りも交え、義と信念が貫くアクション活劇に仕立てられている。
演出は『魔界転生』『巌流島』『西遊記』などを手掛けてきた堤が担当。脚本は鈴木哲也が務める。
主演の上川が大石内蔵助を演じ、藤原が大石りく、そして高橋が吉良上野介を演じる。
そのほかに、浅野内匠頭・小林平八郎役に立石、堀部安兵衛役に藤岡、不破数右衛門役に崎山、片岡源五右衛門役に岐洲、大高源吾役に石川、清水一学役に近藤、大石主税役に藤林、矢頭右衛門七役に唐木、寺坂吉右衛門役に財木、原惣右衛門役に松田、色部又四郎役に徳重、阿久里(瑤泉院)・おかる役に珠城らが出演。さらに、ナレーションには松平健と、ベテランから若手まで豪華キャストが勢揃いする。
上川隆也&高橋克典が激突!? 会見で見せた“静”と“動”

囲み取材に登壇した上川は、初日を迎えて「緊張と高揚感、それにつきます」と挨拶。藤原は「キャスト、アンサンブルを含め、全員がこの物語へ没頭している感じが見て取れますので、あとは初日を待つばかりです」と心境を披露。高橋も「もう早く見ていただきたいです!」と気合いを込めて挨拶した。
大変な稽古になったということについて、上川は「もちろん1番の見せ場たる討入りもそうなんですが、背景の描写にLEDを利用して、それを様々に配置を変えながら物語を進行していくんですけれども、その舞台の上には実は何もなくて、全くの素の空間の中にLEDだけが輝いて背景を映し出しているという状況で、それは稽古場から一貫してその状態で僕らは稽古を続けてきました。ですから、僕らが何を目の当たりにして、どんな空間を共有して、何を描こうとしているのかというのを皆で想像し合いながら、ここまでやってまいりました。一つの絵を皆で作り上げていくという、その作業に何より労力を重ねてきました」と苦労を明かした。
その稽古場の雰囲気について、藤原は「やはり時代劇ということで、所作だったり作法だったり姿勢が伸びるような緊張感がありながらも、上川座長と赤穂側の浪士の皆さんとお芝居以外のところでのやり取りや、吉良様と吉良側の武士などが質問などしあっていて、すごく和気あいあいとしていて、緊張感のある中でのその感じがとても微笑ましいものでした」と語った。

吉良上野介という役の仕上がりについて問われた高橋は、「今まで描かれてない吉良上野介像が今回の『忠臣蔵』にはあります。そこはぜひ見ていただきたいところです」と自信を覗かせると、「私は討たれる側ですから。藤原さんが和気あいあいととおっしゃってましたが、私は全く和気あいあいではありません」と打ち明けると、会場の記者たちも爆笑。さらに「稽古でも、みんなが吉良を殺そうという話を目の前で言っているのをずっと見てきました。これを本番で全て返してやろうと。だから、吉良上野介は死なないかもしれません」とのまさかの宣言に、堤ら登壇者たちも大笑い。
そんな吉良上野介の人物像について、高橋は「政府高官ですよね。幕府と朝廷の間に入ってものすごく尽力してるんです。そして、地元では愛されているんですね。どこが悪いんだと(笑)」と笑いを交えて別の側面をアピールした。
本作の演出について、堤は「デジタル活劇と言えば分かりやすいと思います。ほぼ素の舞台の中で大きなLEDを使って当時の雰囲気を表現しており、その表現として浮世絵という方法を用いています」と解説。
見どころについては、「デジタルの背景の前で、たくさんの生身の肉体が、動きと声と、そしてなんとも言えないパワーみたいなものをみんなで出していくすごい舞台になってきてますので、ぜひ体感していただきたいです」と呼びかけた。さらに、キャストについても「今回、ベテランの皆様方々もさることながら、若手も大変素晴らしいです。殺陣にしても、本当に切れてんじゃないのかというぐらい接近戦、肉弾戦、もちろん十分距離をとって安全対策しながらやっているんですけども、そこの迫力たるや、ちょっと演出してる私もドキドキするぐらいです」とクオリティーに太鼓判を押した。
一方で、高橋に対して、堤は「今回は全くギャグとかも一切ありません。本当にストレートな舞台です。ただ、どうしても吉良上野介さんがちょっとギャグをやりたがるので、それを止めるのが私の唯一の仕事です」と冗談を交えてコメントすると、高橋は「今のところ僕は稽古で一切ギャグはやっていませんよ!」と反論し、会場は笑いに包まれた。

数少ない女性キャストとなる藤原と珠城。女性目線で本作を楽しむコツを質問されると、藤原は「男の方たちの魂のぶつかり合いというか、そういった『忠臣蔵』の男たちの世界の側面で瑤泉院、阿久里、りくら女性たちが生きた、そういった思いみたいなものをまた感じていただければと思っております」と答えた。
珠城は「女性目線と限るのはちょっと難しいですけれども、私個人としては、立ち回りは見るのもやるのも大好きなので、自分がいざ赤穂浪士になって一緒に打ち入りするんだったら、どういう感じで立ち回るかとか、皆様にも同じ気持ちでその作品の中に入り込んでご覧いただけたら、もっと楽しんでいただけると思います」と打ち明けた。
本作に出演するにあたって、上川と高橋は『忠臣蔵』ゆかりの地を巡ったという。そのことについて、上川は「赤穂を訪れた日は天候に恵まれまして、それもあって、赤穂という土地柄をとても好ましく思えたのは確かです。なればこその、浅野内匠頭を殿とする国のまとまり具合が感じられたような気がして、だからこそ、家臣たちは殿に対しての忠義を尽くしたんだろうという不思議な確信を得ることができた旅でした」と振り返り、お参りでお祈りした内容については「ただ純粋に、“成功と無事”これにつきます」と強い想いを明かした。

上川の言葉を受けて、高橋は「“成功と無事”っておっしゃいましたけど、僕は殺されますのでね(笑)」と笑いを誘いながらも、「吉良町、泉岳寺、それから両国のお屋敷の跡、東京にもある吉良家のお墓にも行きました。すべて天気が良くて、やっぱり吉良公は悪くないんだなと爽やかな空のもとで思いました」と振り返っていた。
最後に、上川は「今回ならではの視点で描き出す『忠臣蔵』。何か発見していただけたら、僕らとしても本当に嬉しいです。誠心誠意を込めて上演いたしますので、各キャラクターたちの心のこもったお芝居をぜひ目の当たりにしていただきたいと思います」と囲み取材を締めた。
プレスコールで見せた迫力の「討入り」と「人間ドラマ」

プレスコールでは、吉良邸への討入りと、討ち入り前に大石内蔵助と妻りくが語り合うシーン、そして、松の廊下の刃傷シーンの3シーンが公開された。

吉良邸への討入りでは、上川ら演じる赤穂浪士が吉良邸へなだれ込み、両陣営が乱れ斬り合う大迫力と疾走感のある殺陣が、取材会でも語られたLED背景によるアップテンポの転換と相まって披露され、ベテランキャストと若手キャストの迫真の演技が混じり合い、熱量があふれ出すステージとなっていた。
そして、討ち入り前の年の夏に、大石内蔵助と妻りくが想いを語り合うシーンでは、上川が大石内蔵助として言葉少なく多くを語らずという武士らしい不器用さを見せつつ、そんな大石内蔵助を優しさで包み込むりくを藤原が愛情たっぷりに演じきり、2人の心情が重なり合う心情が豊かなシーンとして披露。

最後に公開された有名な松の廊下のシーンでは、吉良上野介を演じる高橋の演技が憎らしさ満点。そんな吉良に対して、立石が演じる浅野内匠頭がこらえきれずに刀を抜く刃傷の場面では、LED背景ならではのダイナミックな松の廊下の映像演出と、ドラマチックな光と影の照明演出で、これぞ令和版『忠臣蔵』とも言うべき印象的なシーンとして繰り広げられていた。


長きにわたり描かれ、多くの日本人が親しんできたてきた『忠臣蔵』。令和ならではの演出と、豪華キャストたちの演技が融合し、新たなる歴史ドラマとして令和の舞台『忠臣蔵』が幕を開ける。

舞台『忠臣蔵』は、12月12日(金)から12月28日(日)まで東京・明治座、2026年1月3日(土)から1月6日(火)まで名古屋・御園座、1月10日(土)に高知・高知県立県民文化ホール、1月17日(土)に富山・富山県民会館、1月24日(土)から1月27日(火)まで大阪・梅田芸術劇場メインホール、1月31日(土)に新潟・長岡市立劇場にて上演される。
(取材・文・撮影/櫻井宏充)
『忠臣蔵』公演情報
| 公演情報 | |
|---|---|
| タイトル | 舞台『忠臣蔵』 |
| 公演期間・会場 | 【東京公演】 2025年12月12日(金)~12月28日(日) 明治座 【名古屋公演】 2026年1月3日(土)~1月6日(火) 御園座 【高知公演】 2026年1月10日(土) 高知県立県民文化ホール 【富山公演】 2026年1月17日(土) 富山県民会館 【大阪公演】 2026年1月24日(土)~1月27日(火) 梅田芸術劇場メインホール 【新潟公演】 2026年1月31日(土) 長岡市立劇場 |
| スタッフ | 脚本:鈴木哲也 演出:堤幸彦 |
| キャスト | 大石内蔵助:上川隆也 吉良上野介:高橋克典 大石りく:藤原紀香 浅野内匠頭・小林平八郎:立石俊樹 堀部安兵衛:藤岡真威人 不破数右衛門:崎山つばさ 片岡源五右衛門:岐洲匠 大高源吾:石川凌雅 清水一学:近藤頌利 大石主税:藤林泰也 矢頭右衛門七:唐木俊輔 寺坂吉右衛門:財木琢磨 原惣右衛門:松田賢二 色部又四郎:徳重聡 阿久里(瑤泉院)・おかる:珠城りょう ナレーション:松平健 |
| チケット情報 | 【東京公演】 平日:S席 15,000円/A席 10,000円 (全席指定・税込) 土日:S席 16,000円 A席 11,000円 (全席指定・税込) |
| 公式サイト | https://chushingura-ntv.jp/ |
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