9月26日に東京・EX THEATER ROPPONGIにて、『ハロルドとモード』が開幕。初日前日に公開ゲネプロと取材会が行われ、黒柳徹子と松島聡(timelesz)が登壇した。
主演・黒柳徹子で5度目の上演!
1971年にアメリカで公開された映画『ハロルドとモード』を舞台化した本作は、ブラックユーモアを随所に散りばめながら、年齢差のあるちょっと変わった二人のラブストーリーと生きることの楽しさをコメディータッチに描いた作品だ。2020年に上演台本・演出をG2が担当し、主演・黒柳がライフワークとして79歳のチャーミングな女性モードを演じており、今回で5回目の上演となる。
黒柳が演じるモードに恋する19歳の少年ハロルド役は、timeleszのメンバーとして活躍する松島が演じる。2020年公演の生田斗真、2021年公演のWEST.藤井流星、2022年公演のtimelesz佐藤勝利、2023年公演のSnow Man向井康二からバトンを受け継ぐ。
さらに、共演には深川麻衣、山崎樹範、平田満、板谷由夏が名を連ねる。
『ハロルドとモード』は9月26日から10月10日(木)まで東京・EX THEATER ROPPONGIにて、10月17日(木)から10月21日(月)まで大阪・森ノ宮ピロティホールにて上演される。上演時間は約1時間40分(途中休憩なし)を予定。
取材会レポート:松島「徹子さんを心の底から愛して、5代目ハロルドとして生きたい」
取材会では、まず黒柳が今回で5回目の上演となることについて「毎回お相手が違いますし、同じようにならないように新鮮な気持ちでできるように、そこのところを考えながらやりました」という思いで臨んでいることを明かした。そして、共演の松島の印象について「とても役に合ってる方」とコメント。
今回が黒柳と初対面となる松島も、黒柳の印象について「とてもフランクに接してくださります。距離感の詰め方と言いますか、呼吸がすごくお上手な方だなっていう印象です」と答え、黒柳を見つめながら「照れくさいですね。あと、いまだに目を見てお話することがちょっと夢のようというか、だからこの時間を大事にしてます」とはにかんだ。
朗読劇に初出演となる松島は「3代目ハロルドを務めた勝利の回を観させていただいた時に、観る側の人がいろんな想像力を持ちながらこの景色を観て、楽しむエンターテインメントだと思いました。なので、動きすぎてもダメだし、ただ字面を読むだけでもダメという、そのバランスがすごく難しいです」と苦労を語った。
初代ハロルドの生田にアドバイスをもらったという松島。「斗真くんからのメッセージがすごい素敵で、『伝えたいことはたくさんあるけども、とことん徹子さんを愛しなさい』との言葉を頂きました。技術面の部分も後から教えてはいただいたんですけども、そんなことよりもそのメッセージが1番響いたというか。やっぱり徹子さんってモードなんですよね。すごくリンクする部分があって。なので、稽古の段階から僕はもうモードとして徹子さんのことを見てました」と裏話を披露した。
その言葉を聞いた黒柳は「(生田へ)よろしく言ってね」と笑顔を見せると、会場も笑いに包まれた。
さらに、黒柳にキュンとしたところを尋ねられた松島は「稽古場で、差し入れとは違う自分の好きなグミを持っていって食べていたら、徹子さんが『私も1ついただけるかしら』とおっしゃったので、袋ごと差し上げたんですね。そうしたら完食されてまして(笑)。僕の分も残しといてほしかったんですけど(笑)。でも、その後はちゃんとお返しをくださいました。そういうとても可愛らしく、チャーミングな一面がたくさんあります」と稽古場エピソードを披露し、笑いを誘った。
5年目となるモードの生き方についての話題となると、黒柳は「ちょっと自分と似てるようなところがありますけど、私はもうちょっとちゃんとしてます(笑)。若い子を愛するなんていうことを私はしないだろうなと思うんですけど、演じていると若い人と一緒にやっていけばいいなとなんだか思っちゃったりしてもいます」と胸の内を明かした。
黒柳とモードの似ているところに関して、松島は「モードと徹子さんの似てる部分って絶対こうあるべきだという固定概念がないところです。その縛られてないところは徹子さんと話してても感じていました。普通はこうであるべきっていうことが、それは果たして本当に普通なのかというちょっと深い会話を徹子さんとした時に、すごくモードに近いなっていうのも感じました」とコメント。
さらに、自分とハロルドとの共通点について、「ハロルドと僕も似てる部分があります。僕自身も誰かにどこか認められたいと思う気持ちがあります」と話しながら、「ハロルドは孤独な少年と青年の狭間を生きてる子なので、そういった繊細な部分を僕が19歳だった頃の気持ちとうまくリンクさせながら芝居をするように心がけています」と演技面での心がけを語った。
同じグループである3代目ハロルドを演じた佐藤に、どのようなアドバイスを求めたかという質問に対して松島は「毎年演じられる方によって表現の仕方も変わりますし、伝わり方も変わるというところで、聡ちゃんらしくやったらという風に言ってくれました」と明かすと、役作りについて「斗真くんや勝利へどこか寄せた方がいいのかなとか、原作に対してのリスペクトを持ってそうした方がいいのかなと思ったんですけども、稽古場の段階で演出家のG2さんからも自由にとにかく演じてほしいということもあったので、今はのびのびと僕の思うハロルドを演じさせてもらってます」と説明。
劇中でのギターを弾くシーンの話題となると、松島は「本当にたくさんお時間を頂きました。メンバーの勝利もツアー中にバックヤードで教えてくれたりとかもしてくれましたし、いろんな方に教えてもらい、アコースティックギターにすごくハマっています。ただ、いざこうやってステージ上で弾くとなると緊張します(笑)。思うようにいかないなっていうところもありましたけど、やってみてすごくいいものだなと感じたので、これからもアコースティックギターをやり続けたいです。すごくいい出会いをしたなと思います」と振り返った。
最期に、2人からメッセージが送られた。黒柳は「何回やっても難しいことは難しいですけど、私はこの芝居が好きなので、何度やってもやっぱりいいなと思って楽しんでやっています。テレビももちろん好きですけど、舞台で何かをするのは好きで、毎年やれることは本当に嬉しいなと思っています。随分いろんな劇場でやらせていただいてますけど、この劇場が好きです。ですから、私が何かここでやります時には、それが朗読であろうと芝居であろうとなんだろうと、皆様どうぞいらしてくださいませ」と呼びかけた。
そして、松島は「この作品を観た時に、この作品の内容に時代が追いついてきたなという印象がありました。今の時代だからこそ、いろんな人の心に刺さるようなワードっていうのがたくさん散りばめられているので、ハロルドとモードの感じている生きづらさっていうところで、観てくださる皆さんにも共感を得てもらえるんじゃないかと思っています。なので、生田くんのお言葉をお借りして、とにかく徹子さんを心の底から愛して、5代目ハロルドとして生きたいと思います」と力強く宣言し、会見を締めた。
ゲネプロレポート:キュートでチャーミングな黒柳とピュアで飾り気のない松島による年の差ラブストーリー
自分らしく生きる破天荒でキュートな79歳の女性・モード(黒柳)と、狂言自殺を繰り返す愛に飢えた19歳の少年・ハロルド(松島)という、真逆の死生観を持つ2人は、共通の趣味である“赤の他人のお葬式への参列”で、何度か顔を合わせたことにより仲が深まっていく。
パワフルな生き方をするモードに次第に惹かれていくハロルド。周囲の人々は2人の交際に大反対するが、2人は全く気にしない。
そんなある日、生きることの楽しさをモードから学んだハロルドは、モードの80歳の誕生日パーティーを開くが・・・。
風変わりでユニークなお婆さんのモードと奇抜な行動を繰り返すピュアな青年ハロルドとのキュンとする年の差ラブストーリーを軸とし、滑稽な喜劇としての面に笑いながら、ハロルドとモードの言葉の一つ一つがしっとりと心に響き、涙を誘う本作。
一列に並んでテーブルの前に座るスタイルで行われる朗読劇だが、確かな表現力を持つ面々によって生き生きとした演技が躍動感を感じさせるものとなっている。
そんな演者たちを、アメリカン・ニューシネマである原作映画の1960年代から1970年代アメリカを感じさせる舞台セットに衣装、そしてピアノの生演奏が華々しく飾る。
モードを演じる黒柳は、ライフワークとして5年目となる今回も自由奔放なモードを好演し、キュートでチャーミングさに磨きをかける。5代目ハロルドを演じる松島は、ピュアで飾り気のない雰囲気をまといながら愛を求めて狂言自殺を繰り返すという複雑な少年の心情を巧みに、そして情感たっぷりに演じきる。そんな2人の織りなす心のふれあいが不思議な恋模様をステージ上に花開かせる。
そこにハロルドの母親役の板谷と、フィネガン神父役の平田、若い女性役の深川、ハーレイ医師役の山崎という複数役を兼ねている3人による印象深いユーモラスな演技が、喜劇としての面白さとハロルドとモードの生きざまに彩りを添えている。
(取材・文・撮影/櫻井宏充)
『ハロルドとモード』 公演情報
【公式サイト】https://haroldandmaude.jp/
【公式X(Twitter)】@HAROLD_MAUDE_jp