2024年1月25日に東京・サンシャイン劇場で開幕し、その後広島、名古屋、大阪にて上演される『隅田川ヤングロード物語~嗚呼!青春はマサラの香り!~』。主演はふぉ~ゆ~(福田悠太・辰巳雄大・越岡裕貴・松崎祐介)、演出は小林顕作が務める本作の、開幕直前に行われた会見と公開ゲネプロの模様をお伝えする。
『隅田川ヤングロード物語』は、2022年秋に「劇団尺伸ばし」初のオリジナル作品として上演された、下町のさえない商店街を舞台にしたコメディ作品で、本作は、そんな『隅田川ヤングロード物語』の第2弾。「劇団尺伸ばし」からふぉ~ゆ~の4人、前野朋哉、野澤祐樹、楢木和也、 田中穂先、三倉佳奈、そして演出の小林顕作が参加。そこに新たに喜矢武豊が加わり、さらにパワーアップした作品となっている。
舞台は東京の下町にある寂れた商店街・隅田川ヤングロード。団子屋「丸福商店」の主人・丸福五郎(福田)と、その息子・末吉(辰巳)、そして飼い犬のポチ(松崎)は、商店街に活気を取り戻すためのPR動画撮影に余念がない。しかし呉服店「はんなり屋」の主人・高輪はじめ(越岡)と五郎の母・たね(前野)は非協力的だ。
そんなとき、隅田川ヤングロードが有名映画監督・狩山豪(喜矢武)の和製マサラムービーのロケ地になることとなる。その映画に出演する駆け出しの若手俳優・加藤花形(野澤)は、末吉の幼馴染。湧く商店街の店主たちだが、それをよそに、末吉は出世していく華やかな幼馴染と冴えない自身とを比べ、浮かない様子である。
そんな折、「丸福商店」に謎の人物(三倉佳奈)からの連絡が。一方末吉と高校生の佑樹丸(田中穂先)、そしてポチは河川敷で何かを発見する。それは、古びたタイムマシンの設計図であった・・・。
演出の小林が「高級B級グルメ」と銘打つ『隅田川ヤングロード物語』だが、どんな人でもとっつきやすく、気取らない魅力がある作品だ。テンポの良い台詞回しと進行の中に、お腹を抱えてしまうような笑い、思わず笑顔になってしまう痛快さ、胸がじんわりとしてしまうような熱いシーン、そして本作では「マサラの香り」が散りばめられている。
ゲネプロの後に行われた取材にて辰巳は、本作品について「休み時間の廊下みたいな作品。真面目に悩み相談をしている場面もあれば、ゲラゲラ笑っているところもある。作品として『なんか楽しかったなあ』っていう時間を過ごしてもらえると思う」と語った。まさに帰り道、非常に明るく満たされた気持ちになれる作品である。
ふぉ~ゆ~の四人、そして出演者全員の息の合ったプレーは流石の一言。休憩なしの約2時間、一瞬たりとも飽きさせることなく私たちを楽しませてくれるのは、そんな彼らの信頼関係、そして(福田が思わず稽古について「ここにいる取材陣の皆さんにも参加してほしいくらい楽しい、一回来てみてください」と言ってしまうような)仲の良さがおおいに起因しているのだと思わせる。
そんな彼らの関係性がおおいに発揮されるのが、『隅田川ヤングロード物語』の目玉、「尺伸ばしコーナー」だ。ゲネプロでも大いに盛り上がったこのコーナーは、日替わりテーマ、そして出演者のアドリブで構成される。もちろん出演者は全員参加。思わずリピートをしたくなる面白さである。
「劇団尺伸ばし」の由来について、「お客様に観て、笑っていただいて、笑うと健康になる。健康になると、寿命が延びる。人生の尺が伸びるということで、『尺伸ばし』名乗らせていただいております!」と福田が語る。しかしながらこのコーナーについて出演者たちは、「尺は伸びそう、伸びそうなかおりがぷんぷんしている」「ゲネプロの時点で危険信号は出ていた、最悪の事態は退館時間を過ぎるっていうことだが、それを制作サイドは懸念している」と口々に語っていた。ぜひ劇場で行く末を目の当たりにしたい。
辰巳が「歌も楽しんでほしい」と語るように、色とりどりの楽曲もこの作品の魅力。ジャンルを問わない数々の楽曲を出演者たちが歌い踊る。どこかで聴いたことがあるような・・・?と思うようなメロディーを耳にするかもしれないが、「すべて僕の体の中から出てきた音楽」とは小林談。ちなみに、「喜矢武さんが歌ったものだけは喜矢武さんに『大丈夫ですか』って聞きました」というのも小林談である。
特に印象的だったのは、サブタイトルを彷彿とさせる、まるでインド映画を観ているかのような華やかで賑やかで楽しいダンスナンバー。劇場全体をくまなく活用し、出演者たちが舞い踊り歌いまくる。インド映画とは言ったが、非常に舞台らしい、舞台エンタメの良さを詰め込んだシーンだと感じた。
ゲネプロの後には取材会が行われた。登壇したのはふぉ〜ゆ〜の四名、三倉、喜矢武、そして演出の小林。
今回の出来栄えを聞かれ、福田は「最高傑作です!」と胸を張る。それを受けて辰巳も、「『隅田川ヤングロード物語1』を超える最高傑作がまた生まれました。軽く超えてしまいました!」とつづく。越岡は「何も考えずに笑ってもらって、それで皆さまの寿命の「尺」が伸びるんじゃないかと思っております」と話す。その後松崎がコメントを振られると、「わん、わわわわん!」と犬語で返答、辰巳は「早くみんなに観てもらいたい!って言ってますね!」と通訳したのち、「楽しようとしてない?」とすかさずツッコミを入れ、取材陣を笑わせた。
演出の小林は本作品の稽古について、「あっという間だった」だったことを強調し、「続けているというよりは気付いたらやっているという感じで、ずっと楽しく関わらせてもらっています」とコメント。また「劇団尺伸ばし」としてタッグを組んで長いふぉ~ゆ~と三倉との仲の良さに言及、その上で本作品から参加の喜矢武についても「(初参加にも関わらず)なんかもう馴染んじゃっていて!」と笑みを見せた。
そんな喜矢武は、「長い歴史のある奴らのやつ、をやらせていただいて光栄ですけれどもね、そこに喜矢武豊という人間が関わったことによって、数倍もパワーアップしてしまった。喜矢武豊の力でここまできました。次にはギャラが跳ね上がってると思います」と語り、周囲からは「長い歴史に対して“奴”!?」「自分で言う!?」「ギャラの話!?」と総ツッコミ。会場が笑いに包まれた。
三倉は「何年も前からこの座組にいるんじゃないかってくらい馴染み方がすばらしくて、とても楽しく稽古をさせていただきました」と語ったのち、今回女性キャストが一人だったことについて「男子たちが小学生みたいな人しかいないので、母親のような、保母さんのような気持ちで稽古をしていました」と微笑む。男性陣はなぜか満足げな様子であった。
最後は福田が、辰巳のカチンコのキュー出しで締めの言葉を語る。「『隅田川ヤングロード物語2~嗚呼!青春はマサラの香り!~』東京は池袋、そのあとに、名古屋、広島、大阪でも公演やります!「劇団尺伸ばし」、皆さまの人生の尺を一生懸命伸ばしていきたいと思います!高級B級グルメのような素晴らしい演劇体験をぜひ劇場で!「劇団尺伸ばし」大勢でお待ちしております!」(ちなみに、テイク2にて成功)
この作品は「映画」、そしてそれに懸ける思いがひとつの軸となって展開されているが、この作品を通して、ひいては同じエンターテイメントである舞台の素晴らしさをも噛み締めてしまう。
『隅田川ヤングロード物語2~嗚呼!青春はマサラの香り!~』は、1月25日から2月4日(日)東京・サンシャイン劇場にて上演。その後、広島、愛知、大阪を巡る。上演時間は約1時間50分を予定(休憩なし)。また、1月30日(火)の公演には、三倉佳奈の姉、三倉茉奈のゲスト出演が決定している。
『隅田川ヤングロード物語2~嗚呼!青春はマサラの香り!~』公演情報
スケジュール
スケジュール
【東京公演】2024年1月25日(木)~2月4日(日)サンシャイン劇場
【広島公演】2024年2月10日(土)アステールプラザ(大ホール)
【愛知公演】2024年2月17日(土)~2月18日(日)名古屋市公会堂
【大阪公演】2024年2月24日(土)~2月25日(日)COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール
スタッフ・キャスト
【演出・原案】小林顕作
【脚本】大池容子
【キャスト】
ふぉ〜ゆ〜(福田悠太/辰巳雄大/越岡裕貴/松崎祐介)
前野朋哉 野澤祐樹 楢木和也(梅棒) 田中穂先(柿喰う客)
三倉佳奈 喜矢武豊(ゴールデンボンバー)
図師翔太郎 藤村聡 種子島祥太 愛太
【公式サイト】 https://event.1242.com/events/syr2/
【公式 X】@syr_2024