2023年8月19日より東京・明治座にてa new musical『ヴァグラント』が上演中。初日前日に初日前会見と公開ゲネプロが行われ、平間壮一、廣野凌大、小南満佑子、山口乃々華、水田航生、上口耕平、玉置成実、平岡祐太、美弥るりか/新藤晴一(プロデュース・原案・作詞・作曲)、板垣恭一(脚本・演出)が登壇した。本記事では、Wキャストの平間と小南が出演したゲネプロの模様と、登壇者の挨拶をコメントとしてお届けする。
本作は、ポルノグラフィティのギタリストである新藤が初めて手掛けるオリジナルミュージカル。歌詞と音楽で世代を問わず人気を集めてきた新藤が<プロデュース・原案・作詞・作曲>とゼロから立ち上げ、脚本・演出を手掛ける板垣をはじめ、各分野のプロフェッショナルな日本スタッフと作り上げていくメイド・イン・ジャパンの作品となっている。
100年前の日本をメタファーに、彷徨う(=ヴァグラント)ものたちを、新藤ならではの世界観で描き上げる本作の主演は、『ヘアスプレー』『キングアーサー』『RENT』などの話題のミュージカル作品に次々と出演する平間と、舞台『鋼の錬金術師』主演を務めた廣野がWキャストで出演している。
ヒロイン役は、『レ・ミゼラブル』オーディションにてコゼット役を射止めたことをきっかけに活躍の場を広げた小南と、アーティストとしての活動を経て、話題作『SPY×FAMILY』にも出演した山口がWキャストで務める。
このほか、自らポルノグラフィティファンを公言する水田のほか、上口、玉置、親交の深い新藤のために8年ぶりの舞台出演となる平岡、美弥などが顔を揃える。
初日前会見では、新藤が本作の見どころについて「こんなにライブ感があっていいんだとか、こんなに音楽が前に出てきていいんだとか、それでありながら、ちゃんとミュージカルしていて、ミュージカルはお客様を楽しませるなら何をやってもいいんだというのが、とても前面に出ている作品だと思うので、そこを観てください」とアピール。
脚本・演出の板垣も見どころとして「原作がまったくない完全オリジナルストーリーであることが見どころです。なおかつ日本の話であるというところも見どころだと思っています」と挙げると、「晴一さんと脚本を作りながら、この瞬間にもミュージカルの面白い要素を全部入れようと思って作りました。なので、日本のミュージカルの未来が気になっている方にはぜひ観ていただきたいと思っております。こういう風に日本のミュージカルというものを作れるんだという一つの実例ができたと思っております」と胸を張った。
Wキャストで主演を務める平間は「完全オリジナル作品ということで、全スタッフと全キャストが気合い入っています。心からぶつかっていく稽古をしてきました。普段、僕は大きいことを言わないタイプなんですけど、マレビトの佐之助から学んだ『自分でゴールを決めるわけじゃなくて、目標を高く持ってそれに向かって頑張っていくことが大事』みたいなところで、僕も皆様の声に乗っかって伝説を残したいと思うようになりました」と自信を覗かせ、「一公演、一公演、本当に心からぶつかっていくつもりなので、劇場に遊びに来てください」と呼びかけた。
廣野も「スタッフさん、キャストさん全員を含め、胸を張って観に来てくださいと言えるような作品です」と同じく自信をたっぷりに語ると、「以前、取材を受けた時に、(面白くなければ)お金を全部返すと言ったんですけど、絶対に新藤さんと板さん(板垣)の2人が返してくれますし(笑)、僕らも全力でぶつかりますので、よろしくお願いいたします!」と冗談を交えて呼びかけた。
舞台設定は100年前となる大正時代の日本。物語は、マレビトの佐之助(平間/廣野 ※Wキャスト)と姉貴分の桃風(美弥)の2人が、炭鉱を運営する会社の新社長、弓削政則(水田)の就任式を祝うところから始まる。”マレビト”とは、めでたいことや不吉なことがあった場所に赴き、歌や踊りを披露し、「ヒト様の人生に区切りをつける」という芸能の民。それゆえ「ヒト様」と安易に接触することを禁じられていた。
しかし「ヒトの正体」を知りたい佐之助は、幼い頃から炭鉱のムラで育ってきた政則、譲治(上口)、トキ子(小南/山口 ※Wキャスト)という幼なじみの3人と出会ったことで、彼らに興味を持ち、ことあるごとに近づこうとする。
それぞれの事情を抱え、背負う運命に苦しむ幼馴染3人。そこに、炭鉱夫たちが集まる酒場のママ、アケミ(玉置)と、酒場へ金の無心に現れる坑夫の健三郎(平岡)らの人間模様も絡み合う。炭鉱の街の人間たちと、マレビトとして生きるために「人の正体」を見極めようとする佐之助の運命が交錯した時、米騒動という市民運動の影響を受け大きく揺れるこのヤマで、多くの坑夫たちを巻き込んだ騒動が発生するのだった・・・。
本作の大きな見どころはやはり、新藤が本作のために書き下ろし、全曲の歌詞も担当したという20曲以上に及ぶ初めてのミュージカル楽曲の数々だろう。新藤が自らギターを演奏し録音したという物語の入口となる「オーバーチュア」が観客の期待感を高揚させれば、和なテイストの楽しいナンバーから、ロック調のパワフルでノリのいいナンバー、悲哀のこもったバラードなどバラエティー豊かな楽曲が勢揃いしている。
もちろん単純な楽曲としての魅力だけでなく、新藤が本作の原案も担当していることで、作品によりマッチしており、キャストとアンサンブルの白熱した演技と音楽がぶつかり合って生み出される熱量によって、大正時代の日本を舞台としたオリジナルミュージカルとして魅力を輝き放っている。
作品を彩るキャラクターたちも見どころ満載だ。マレビトの佐之助を演じる平間は、芸能の民としてかぶき者らしく場を盛り上げれば、ヒトとは違う世界で生きる存在としての苦しみと、「ヒトの正体」を見極めるために突き進む生きざまを熱演。その佐之助の姉貴分である桃風役の美弥は、強い女性でありながら、姉のような優しさと女性すらも虜にする妖艶さで魅せる。
そして、幼馴染3人組を演じる水田、上口、小南。政則役の水田は、理想を追い求める爽やかな好青年だが、父親である会社の会長と坑夫たちとの間で苦悩する姿を好演。譲治役の上口も、坑夫たちと会社の板挟みに悩みつつも、坑夫仲間たちのために立ち上がる姿を力強く演じる。そこに、小南が演じるトキ子の悲しき過去がもたらす悲哀と激情のドラマが重なり合い、それぞれの人間関係が織りなして紡いでいく、本作の大きな軸の一つとなるドラマが生み出されている。
さらに、玉置が大人の色気とコケティッシュで魅惑的にアケミを演じれば、ミュージカル初挑戦となる平岡が怪しげな男、健三郎を嫌みたっぷりに演じきっている。
100年前の日本をメタファーに、彷徨う(=ヴァグラント)ものたちが辿り着く先に何が待ち受けるのか? 日本を舞台とした新たなるオリジナルミュージカルの誕生を、ぜひ劇場で味わってほしい。
a new musical『ヴァグラント』は8月31日(木)まで東京・明治座、9月15日(金)から9月18日(月・祝)まで大阪・新歌舞伎座にて上演される。
(取材・文・撮影/櫻井宏充)
コメント紹介
新藤晴一(プロデュース・原案・作詞・作曲)
僕は稽古が始まって、そばで観ていた立場なんですけど、舞台稽古から始まり、長いこと稽古を皆さんがやられて、今日も場当たりをやっているのを観ても、どんどん仕上がっているなという感じがします。僕は音楽をやっているんですけども、音楽もリハーサルと本番は全然違うもので、どんどんお客さんに育てもらうみたいなところがあるので、きっと舞台もそういうことなんだと思い、お客さんの前に立った時の演技、顔を見るのが今から楽しみです。
平間壮一(佐之助 ※Wキャスト)
初日に向けて、みんなのパワーがたまっているのがリハーサルをしながら感じていました。本当に稽古からずっと頑張って作ってきたものなので、大事にしていきたいと思っていますが、この期間しか『ヴァグラント』がやれないことが今もうすでにさみしいです。稽古中にふざけて、板さんが『じゃあ『ヴァグラント2』があったらマレビトの話を濃くやろう』と言うこともあったんですけど、そういうことがどんどん続いていけるように精一杯、一生懸命に頑張っていきたいです。
廣野凌大(佐之助 ※Wキャスト)
本当にあっという間に稽古が終わってしまって本番だなという感じです。僕らが舞台を作るのはなんでだというと、お客様に観てもらって、僕らが伝えたかったものが何か、それが伝わったとして、そのお客様が自分の人生にリンクさせて、何を受け取って何を自分の考えにするかだと思っています。僕らが永遠に向き合っている職業だと思いますし、それを今作へぶつけることによって生まれる僕らなりの感情と、皆さんなりの感情がすごく色濃く出ればいいなという思いで稽古をしてきましたので、本番ぶちかまします!
小南満佑子(三葉トキ子 ※Wキャスト)
スタッフさんとキャストさん全員が集まった本読みの日に、スタッフさんが『いよいよ始まる』と口々におっしゃっていたのが、すごく印象に残っています。それが積み重なってすごくクリエイティブな時間を過ごしながら稽古を重ねて参りました。初日を迎えるということで、皆さんの熱い思いが結晶となって、きっとスパークするような時間になるんじゃないかと思います。精一杯、トキ子として、この新作オリジナルミュージカルの中でしっかりと存在感を残していけるように頑張りたいと思います。
山口乃々華(三葉トキ子 ※Wキャスト)
本当にあっという間でもう本番なのかと、ちゃんとできるかとドキドキしています。でも、この稽古の間、自分なりにトキ子を作り上げてきて、皆さんと関わってきて、こうやって作品をお届けできるということで、一生懸命に行きたいと思っています。たくさんの皆さんの心へちゃんと届くようなお芝居をできるように精一杯頑張りたいと思います。
水田航生(弓削政則)
“a new musical”ということで、晴一さんが原案をされて、それがいろんな方々の力を得てこうやって形になって、お客様の前に現れるというのは本当に楽しみでありますし、我々しか物語がどうなるかを知らないということでゾクゾクしております(笑)。このゾクゾクがどんどん広がっていってたくさんの方々の胸に届いて、心を動かしていければ嬉しいなと思いますし、社長としてこのカンパニーの先頭に立って走っていけるように頑張って参りたいと思います(笑)。
上口耕平(山崎譲治)
本当にゼロから作ってきて、稽古場が本当に熱くて、毎日いたるところですごい火花が散るような稽古でしたし、日々変更も重ねながらブラッシュアップを続けてきたので、すごいエネルギーを皆さまにお届けできると思います。今はただ、初日が開いて毎日カーテンコールで、お客様の表情を見るのがとても楽しみです。
玉置成実(アケミ)
晴一さんから生まれたこの『ヴァグラント』、板さんが育ててくださり、我々が魂を宿して、そして舞台のスタッフさん、音楽チーム、照明さんだったりと、本当にカンパニー一丸となって物語を作っております。そして日々、すごく感じるのが、こんなにも個性の強いキャストが揃うのかというのを、自分が出てないシーンもすごく楽しく観させていただいております。そんな中で、みんなの憩いの場と舞台でもなれるように頑張っていきたいと思います。
平岡祐太(健三郎)
僕は初めてミュージカルに参加するということで、稽古中もいろんなことを学んできました。劇場に入って客席から観てみると、ライブ感というか、会場が一つになる空間が、音楽を含め、そういう一体感みたいなものを感じています。ぜひ来てくださるお客様と一緒に一体感を作りながらこの物語を観ていただけたらなと思います。
美弥るりか(桃風)
私たちが台本を頂く何年も前から、新藤さんや板垣さん、そしてたくさんの方々が携わって、この作品を一から作っていたものが、こうして劇場に入り、照明が入り、パートの音楽が入り、形になっているのを一瞬一瞬でたくさん感じて、熱い気持ちになる場面がたくさんあります。なので、初日には最高の舞台になるんじゃないかと気合いを入れているところです。
板垣恭一(脚本・演出)
準備しだしたのはずいぶん前のことで、晴一さんと何度話し合ったんだろうかというぐらいの時間を経て公演に辿り着きました。キャストの皆さんが心に汗をかいて演じてくれていることは演出家の冥利でございます。物理的に暑い時期なので、体にたくさん汗をかいていますけども、ちゃんと心に汗をかいてくれている、そういうお芝居ですので、お客さんの心を動かすことができるんじゃないかと自分でも期待しています。
a new musical『ヴァグラント』公演情報
上演スケジュール
【東京公演】2023年8月19日(土)~8月31日(木) 東京・明治座
【大阪公演】2023年9月15日(金)~9月18日(月・祝) 新歌舞伎座
スタッフ・キャスト
【プロデュース・原案・作詞・作曲】新藤晴一(ポルノグラフィティ)
【脚本・演出】板垣恭一
【出演】
平間壮一・廣野凌大(Wキャスト)/小南満佑子・山口乃々華(Wキャスト) 水田航生 上口耕平 玉置成実/平岡祐太 美弥るりか
宮川浩 大堀こういち 吉田広大 遠山裕介 加藤潤一 礒部花凜 大月さゆ
山田裕美子 酒井翔子 杉山真梨佳 大泰司桃子 大川永
松村曜生 辰巳智秋 宇部洋之 大村真佑 りんたろう 荒川湧太
吉見彗 杉山穂乃果 脇山桃寧(※子役トリプルキャスト)
公式サイト
【公式サイト】 https://vagrant.jp/
【公式Twitter・TikTok】@vagrantjp