ミュージカル『生きる』 実咲凜音インタビュー!「光男と一枝の夫婦の中にある私たちなりの“生きる”を深めていきたい」

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ミュージカル『生きる』 実咲凜音インタビュー!「光男と一枝の夫婦の中にある私たちなりの“生きる”を深めていきたい」

2023年9月7日(木)に東京・新国立劇場 中劇場にて、Daiwa House presents ミュージカル『生きる』が上演される。本作は、黒澤明監督が1952年に発表した映画『生きる』を原作に2018年に誕生した、日本発のオリジナルミュージカルで、定年を間近にした平凡な男が、死を目前にしながらも最後に見つけた夢を実現するために、残り半年の人生を懸命に生き抜く姿を描く。

2018年の初演時には「国産ミュージカルの記念碑的力作」と絶賛を受け、2020年に再演、コロナ禍に翻弄されながらも、全38公演を完走した。そして今回、待望の再々演を果たす。初演より引き続き主人公・渡辺勘治を、ミュージカル界のレジェンド、市村正親と鹿賀丈史がダブルキャストで演じ、キャスト陣には新メンバーを迎える。

今回は、勘治の息子・光男の妻・一枝役の実咲凜音に、本作の魅力や役柄について、意気込みなどを語ってもらった。

ミュージカル『生きる』 実咲凜音インタビュー!「光男と一枝の夫婦の中にある私たちなりの“生きる”を深めていきたい」

――本作への出演が決まった時の心境はどうでしたか?

初演を観させていただいたんですけど、その時に本当にいい作品だなと感じたので、その作品に参加できるということは単純に嬉しかったです。再々演となりますが、私にとっては新しい作品ですし、新しい作品に一歩踏み出すといろんな出会いもあり、さらに勉強になることがあると思いますから、本当に嬉しかったです。

――製作発表会に先ほど参加されましたが、改めて感じたことは?

登壇した皆さんが劇中のミュージカルナンバーを歌唱披露されていましたが、皆さんが歌われているのを聴いていて、やっぱり曲がすごく良くて、スッと心に入ってくるなという印象でした。キャラクターに合わせて曲調が変わっていく感じも面白いですね。特に市村さんは、ミュージカルで歌う時に「歌」を歌わないんですよ。台詞なのか歌なのかと分からないぐらいに境目がない歌い方をされるんです。市村さんとは、ミュージカル『屋根の上のバイオリン弾き』とミュージカル『スクルージ〜クリスマス・キャロル〜』でご一緒させていただいたんですけど、それをいつも近くで拝見していて、本当に境目がなくて素敵で、勉強になるなと思っていました。今回の製作発表会での歌唱披露でも、そういう感じで境目なく歌われていて、感情に乗るメロディーなんだろうなというのを聴いていて思っていました。

――ミュージカルでの歌唱は、普通に歌うよりも語るような形が理想とも聞きます。

それは曲が素晴らしいからというのもあるんですけど、そのほうが理想だなというのは私自身も思いますね。今回は、近くでそれを拝見できるし、自分自身もそれを挑戦していけるようにと考えています。

――その市村さんの印象はどうですか?

後輩のこちらが気を使わないような雰囲気で向こうから話しかけてくださるというか、初めてお会いした時からそうでした。「市村正親さんだ……」と緊張しているところを解いてくれるような感覚です。オフでは「ご飯食べに行こうか!」と誘ってくださったりもしますし、本当にすごい方なのにフランクだなという感じですね。分け隔てがないという感じです。製作発表会でも親父ギャグをおっしゃっていましたが(笑)、ああいうところもチャーミングですし、だけど集中されるときはギュッと集中されますし。市村さんと、またご一緒させていただけるということで、もう安心感しかありません。

――鹿賀さんの印象はどうですか?

今回、鹿賀さんとは初めてご一緒させていただきます。製作発表会の前にご挨拶させていただいた時も、鹿賀さんが「本当に役では関わらないんだよな」とおっしゃっていて、今まで共演できていなかったことがすごく残念だなと思っていました。市村さんと鹿賀さんはお二方ともタイプが違うエンターテイナーだなというのは製作発表会でお話しされていてすごく思いましたし、なんか面白いですね。鹿賀さんのイメージはもっと寡黙な方かなと勝手に思っていたんですけど、今日お会いして笑顔が印象的な包容力のある感じへと印象が変わりました。

――初演をご覧になったということですが、本作をどのように感じましたか?

私は原作の映画を観ないで初演を観て、『生きる』という作品の世界観を知ったんですけど、涙が自然に流れるように泣いてしまったんです。「すごく感動した! すごく良かった! なんか心が動かされた!」と思ったら、本当に涙がツーッと流れて。自分も一生懸命に生きなければいけないなとか、残された時間が決まったからじゃなく、1分1秒、今が大切だというメッセージをもらいました。

――その時に共感したキャラクターはいましたか?

市村さんがご出演の回を観たんですけど、心がずっとリンクしていたのは、やっぱり勘治でしたね。それと、共演したことのある唯月ふうかちゃんが一枝役の回だったと思うんですけど、とにかく大人の女性だなという印象でした。

――勘治としての市村さんはどんな印象でしたか?

私が知っている市村さんじゃないという印象でした。市村さんってこういう風な演じ方もされるんだというような。勘治はがんが宣告されるまではなんてことのない毎日をずっと過ごしていて、そういう役柄を演じられている市村さんを観るのが私は初めてで、こういう演じ分けもされる方なんだというのは、すごい印象として残っていますね。

――鹿賀さんの勘治についてはどう思われていますか?

私は市村さんが出演されているバージョンでしか拝見したことがなくて、機会があれば映像で鹿賀さんバージョンを観たいなと思っているんです。鹿賀さんの勘治については、ミュージカル版を観た後に映画版を観たんですけど、映画を観ている時に鹿賀さんの演じられている絵も見えるというか、なんかイメージができたんです。お会いしたことがなかったんですけど、映画の勘治に似たものを持ってらっしゃる方なのかなと勝手に思いながら観ていました。

ミュージカル『生きる』 実咲凜音インタビュー!「光男と一枝の夫婦の中にある私たちなりの“生きる”を深めていきたい」

――一枝という役どころについて思うところはありますか?

初演を観ていた時は主役の勘治に感情移入していましたけど、一枝は勘治とは真逆の側にいる立場ですね。結局、自分たちの幸せのために理想があって、こういう風にこの時代を生き抜いていくという彼女なりの考えがあるんだろうなというセリフが多かったりしたので、強くてちゃんと自分の意志を持っている女性だなというのは改めて思いますね。それが悪いわけでもなく、彼女はそういう風に生きてきたんだろうなという感じで。一枝は夫の光男に寄り添っている感じも、男性から3歩下がってという感じじゃなくて、昭和の女性っぽくないですよね。裏で夫を引っ張っているぐらいの強さがある女性だなというインパクトはありました。光男と一枝の夫婦の中にある私たちなりの“生きる”を、お稽古しながら深めていけたらなと考えています。

――再演までは、渡辺一枝と小田切とよがダブルキャストで一人二役でしたが、今回はシングルキャストとなります。

「あっ、シングルなんだ!」と率直に思いました。単純に二役やるというのは大変ですからね。役作りに集中できそうです。それにキャラクターをもっと掘っていけますよね。二役やることでどうしても意識は分散されますから。今日初めてお会いした小田切とよ役の高野菜々ちゃんは、とよにピッタリな感じのあっけらかんとした明るさを持っていて、ニュアンスとかもピッタリだと思います。私は一枝にピッタリかは分からないですけど(笑)。役に寄り添っていけたらと思いますし、シングルキャストということでより一層グッと役に集中できるんじゃないでしょうか。

――市村さんと鹿賀さんのお二人の勘治との共演について考えていることはありますか?

たまたまなんですけど、前回出演していたふうかちゃんとお話する機会があったんです。彼女が言っていたんですけど、お二人の勘治は全然違っていて、手を出すタイミングだったり、台詞を言うタイミングだったりと全く違うそうなんですよね。それを自分たちが一枝ととよの二役で変わっていくから難しいと思ったし、大変だった部分もあったんですけど勉強になったと言っていたんです。全く違うものを作り上げて来られる市村さんと鹿賀さんの中で、固定された私たちがいるというのは、お二人を経験できるからより勉強になりますね。

――本作の音楽についてどのような魅力を感じていますか?

今日の製作発表会の歌唱披露の数曲だけでも、キャラクターに合わせたナンバーでちゃんと盛り上がりがあって、起承転結がしっかりしているような音楽性とストーリー性があるから、聴いていてスッと心に入ってくる感じがありました。作曲・編曲のジェイソン・ハウランドさんは、ミュージカル『東京ラブストーリー』でも音楽を担当されているんですよね。だから、あの曲を書いた方なんだと合致して、ミュージカル『生きる』の曲も書いていたんだという感じでした。歌っていても盛り上がるところでちゃんと盛り上がっていける音楽だから、歌っていて気持ちのいい歌い上げる部分もあるんです。気持ちを乗せていきやすい感じはしますね。聴いていて、それがスッと入ってくるのはそういうことなのかなと思っています。

――ミュージカル『東京ラブストーリー』もそうですが、近年、日本の国産ミュージカルを作ろうという動きが活発になっているように思います。その点について感じていることを教えてください。

私も舞台で演じる時に、海外の作品が多いなとは感じています。在籍していた宝塚歌劇団でもほとんどがヨーロッパやアメリカの作品ですし、退団していろんな作品に携わらせていただいていますが、日本のオリジナルミュージカルへの出演は本作が初めてじゃないかなというぐらいです。日本の物語とかを題材にした作品はやっぱり少ないんだなというのは感じていますね。演じる上で変化はないでしょうけど、ある意味では日本人としての感覚を使ってもいい作品ですよね。ヨーロッパの方だったら、ここはじめっとと泣きすぎないとか、もうちょっとからっとしているとか、考えなきゃいけない部分もあるかもしれないですけど、今回は日本で日本人としてという感覚を活かせる作品という感じですから。演じる上でそこまで変わりはないんですけどね(笑)。

ミュージカル『生きる』 実咲凜音インタビュー!「光男と一枝の夫婦の中にある私たちなりの“生きる”を深めていきたい」

――ゆくゆくは日本オリジナルミュージカルとして本作を海外にも持って行くというお話が製作発表会でもありました。

日本発祥のオリジナルミュージカルが世界にもっと広がっていけばいいなとは思います。例えばですけど、宝塚でもオリジナル作品ってたくさんあるんですよ。それをもっと海外に持っていったらいいのにと思うんです。日本発祥のミュージカルを海外で上演するというものがもっとあったら、日本の演劇界というのももっと広がるんじゃないでしょうか。海外のオリジナルミュージカルの来日公演というのはありますから、コロナ禍も収まってきましたし、このキャストで海外公演をするということを考えるのも楽しいですね(笑)。

――本作にちなんで、主人公の勘治のように死ぬまでにこれだけはやっておきたいということはありますか?

私は結構やりたいことをやって生きているんですよね(笑)。

――それでは人生は満たされている感じですか?

自分で満たそうとしていっているんだと思います。でも、この仕事をしているとやっぱりお客様、ファンの方が観て喜んでくださることが生きがいですから。それをもうちょっと喜んでもらうには、何をやっていくべきかというところで、やっぱりみんなの笑顔がもっと見たいです。自分が演じて舞台上で役として生きたものをファンの方が観て、感動してくださったり、笑顔になったりとか、そういうものをたくさん見てから死ねたらいいかな。だから、応援してくださる方々に喜んでもらうっていうことを全うしたいです。

――最後に、公演に向けての意気込みをお願いします。

今日、改めて出演者の皆さんに会って、ワクワクして楽しみになりました。演出の宮本亞門さんとも初めてご一緒させていただくので、色々勉強させていただき、自分がどういうことを考えてやっているのかということを受け身にならずに発信していけるように稽古場からいろいろ役作りに挑戦したいです。若い人からご年配の方まで、たくさんの方にミュージカル『生きる』を知っていただいて、また一度ご覧になられた方も観た後に前向きになれる作品だと思いますので、たくさんの方に観ていただけたらいいなと思っています。

目次

Daiwa House presents ミュージカル『生きる』公演情報

上演スケジュール

【東京公演】2023年9月7日(木)~9月24日(日) 新国立劇場 中劇場
【大阪公演】2023年9月29日(金)~10月1日(日) 梅田芸術劇場 メインホール

スタッフ・キャスト

【原作】黒澤明 監督作品「生きる」
(脚本:黒澤明 橋本忍 小國英雄)

【作曲&編曲】ジェイソン・ハウランド
【脚本&歌詞】高橋知伽江
【演出】宮本亞門

【出演】
渡辺勘治:市村正親/鹿賀丈史(Wキャスト)

渡辺光男:村井良大
小説家:平方元基/上原理生(Wキャスト)
小田切とよ:高野菜々(音楽座ミュージカル)
渡辺一枝:実咲凜音
組長:福井晶一
助役:鶴見辰吾

佐藤誓
重田千穂子
田村良太

治田敦 内田紳一郎 鎌田誠樹 齋藤桐人 高木裕和 松原剛志 森山大輔
あべこ 彩橋みゆ 飯野めぐみ 五十嵐可絵 河合篤子 隼海惺 原広実 森加織

<スウィング>
齋藤信吾 大倉杏菜

安立悠佑 高橋勝典

あらすじ

定年を間近にした役所の市民課長、渡辺勘治。
早くに妻を亡くした彼は息子夫婦と同居しているが、心の距離は遠い。
そんなある日、渡辺は、自分が胃癌であり残りの命が長くないことを知る。
自暴自棄になった彼は、居酒屋で出会った売れない小説家と夜の街に繰り出し、人生を楽しもうと試みるが、心が満たされることはなかった。
翌朝、市民課で働く女性・小田切とよに偶然出会う。太陽のように明るい彼女に惹かれ、頻繁に誘うようになる渡辺は「残りの人生を、1日でいいから君のように生きたい」と本音を語る。そして、とよが何気なく伝えた言葉に心を動かされ、渡辺は人生をかけた決意をするのだった。

公式サイト

【公式サイト】https://horipro-stage.jp/stage/ikiru2023/
【公式Twitter】@ikirumusical







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