年末恒例となった、演劇製作会社る・ひまわりと明治座のタッグが贈る“祭”シリーズ。2023年の締めくくりには、シンる・ひま オリジナ・る ミュージカ・る『ながされ・る君へ~足利尊氏太変記~』(通称:る太/るたい)が上演される。足利尊氏役として座長を務めるのは、相葉裕樹。相葉は、シリーズ初演を上演した2011年以来、12年ぶりの祭シリーズ参加となる。そして、弟・足利直義役には内藤大希が決定した。
ミュージカル『レ・ミゼラブル』(2017年/2019年/2021年)などで共演し、“戦友”と呼ぶほど仲の良い二人。史上最悪の兄弟喧嘩「観応の擾乱」が起こるまでを描く歴史ロマンミュージカルに向けて、二人に話を聞いた。
――今年も、年末の祭公演の情報が発表されましたが、相葉さん、おかえりなさいですね!
相葉:ありがとうございます!でも、正直に言うと当時の記憶は曖昧で・・・(笑)。
内藤:12年前だもんねえ。
相葉:当時とは、いろいろ内容や形式的な部分もいろいろ変わっていると思うので、また新たな気持ちで参加させていただこうと思っています。
――久しぶりに12年前の公演(『新春戦国鍋祭~あんまり近づきすぎると斬られちゃうよ~』)の映像を見返してみたのですが、一部音声が使用不可で違う音が流れていたりと、いろいろあってとても面白かったです(笑)。
相葉:えっ、そうなんですか?!
内藤:なんでもありだね~。
相葉:当時は、明治座さんじゃなくて、サンシャイン劇場さんでやったんだよね。少し思い出してきた。すごく楽しかったし、徐々に当日券の列が伸びていると聞いて、嬉しかった。
――情報によると、最終日は当日券に700人ぐらい並んだそうですよ。
相葉:700?!
内藤:もう1公演できちゃうじゃん。
相葉:そんなに当日券に並ぶ作品って・・・そんなにないですよね。そうだったんですね。
――懐かしいですね。相葉さんは、昨年の公演にゲストとしてご参加されていましたが、公演自体はご覧にはなりましたか?
相葉:それが、本編は拝見できなかったんです。ここ最近の祭シリーズのことはあまり知らなくて・・・。ご本人を知らないキャストさんもいらっしゃったので、正直に言うと「これは誰なんだろう?」と思いながら審査していました(笑)。
内藤:(爆笑)!!そうだよね、一緒に共演したことがあればまだ分かるけど(笑)。
相葉:キャストさん本人のことを知っていたり、第一部を観ていたら「あの人があんなことやってる!」と思えたんでしょうけど、なんか上手いこと言わないといけない感じだけど、知らないから変なツッコミも入れられないし(笑)。すごく盛り上がっているお客さまと温度差を感じながら、審査員席にいました。
内藤:「試食した」ぐらいの感覚だ(笑)。
相葉:まさにそう(笑)。だからこそ、どうなっているのか参加するのが楽しみです。
内藤:最近の祭シリーズは、演出が板さん(板垣恭一)だったり、優一さん(原田優一)だったり、演出の方が違うと色が変わる気がするよ。優一さんのキャストへの優しさや気配り、一緒に作っていこうとたくさん話をしてくださるので、毎回本当に楽しくやらせていただいています。
相葉:何が怖いかって、やることがたくさんあるんだよね(笑)。結構なボリュームだし。まずは、覚えることから気合いを入れていかなきゃ。
――ゲスト参加した当時は、今年の祭シリーズへの出演は決まっていたんですか?
相葉:打診があったか、決まったか・・・ぐらいの段階だったかな?全体のキャストさんはほとんど決まっていませんでした。そのあと大希が出ると聞いて、さらに「兄弟役」と聞いて、すごく嬉しかったですね。信頼する仲間ですし、2017年から『レ・ミゼラブル』に一緒に参加して3年戦ってきた仲なので。不思議な絆があるんです。だから「大希がいるなら、なんでも大丈夫」みたいな安心感がありました。さらに、今回は優一くんが演出なので、色々と引き出してくださるんじゃないかなと。だからもう、存在してればいいや!というぐらいの気持ちでおります(笑)。
――内藤さんは、祭シリーズに相葉さんが参加されると聞いた時はいかがでしたか?
内藤:めちゃめちゃ嬉しかったです!ばっちとは年齢が一緒なんですけど、もともとは『デリシャス学園』とかミュージカル『テニスの王子様』で見てた存在だったんですよ。それが、今では普通に友達になれているので不思議な感じです。しかも、ミュージカルの友達というよりも、プライベートの友達みたいなカテゴリーなんです。そんなに友達が多くない僕が、友達と一緒に作品作りができることがすごく嬉しくて。地元の友達と「youtube始めました」みたいな、そういう感じがあります。
相葉:それ、すごい分かるな~。年末、絶対やることに追われていると思うんだけど、稽古から楽しみだもん。大変だろうけど、仲間がいるから乗り越えられるって気持ちはありますね。大変であればあるほど楽しいだろうし、いい思い出にもなりそう。4日間しかないお祭りなので、思いっきり楽しみたいと思います。
――お話していてもすごく仲が良い感じが伝わってくるのですが、お二人はいつからお知り合いなんですか?
相葉:知り合ったのはミュージカル『テニスの王子様』なんですけど、その時は役としてほとんど絡みもなかったよね。
内藤:うん、あんまり喋った記憶もない。
相葉:だから、仲良くなったのは2017年の『レ・ミゼラブル』に入ってからかな。同い年の大希の存在にすごく救われていたんです。
内藤:一緒にボコボコにされる日々を過ごしたからね。
相葉:大希はそんなボコボコにされてはなかったよ(笑)。
内藤:凹む時あるじゃない。そういう時に、同い年の仲間が一緒にいるって大きかったよ。
相葉:戦友だよね。ここまで仲のいい人たちが集まって一緒に作品作りをすることって今までなかったので、これまでとはまた違う感覚でミュージカルに挑める気がします。
――同い年で戦友であるお二人が「兄弟」を演じるのも、またおもしろいですよね。
相葉:僕ら2人とも、実際は末っ子なんですよ。でも、見た目は僕が「兄」になるよねって思いました(笑)。
内藤:それは僕も思った(笑)。
相葉:でも、僕自身にはあまりお兄ちゃん要素がないので、どうなるでしょうね。優一くんからは、『ながされ・る君へ』というタイトルのとおり、足利尊氏は流されるままに物事に向き合っていき、いろんな人を巻き込んで振り回していく人物と言われているので、しっかり者の弟・直義との対比が出せるといいなと思っています。
内藤:僕・・・年齢が上がるにつれて、マジでしっかりしてなくなっていくんですよ。自分のすごくダメな部分と、日々向き合っているんです。だから、せめて舞台上だけでもしっかりできたら・・・。
相葉:(爆笑)!!
内藤:本当にダメなのよ。年齢を重ねるごとに諦めてしまうようになるっていうか。生きていくことでいっぱいいっぱい。「洗濯したからジム行かなくていいかな・・・」とか。台詞を入れたり、歌を覚えたり、舞台を作ることだけはしっかりやっているけれど、それ以外のことはダメダメだから、舞台上だけでもしっかり者を演じられるのがめちゃめちゃ嬉しくて。
相葉:確かに、大希を見てるとしっかりしてないなって思う(笑)。こんなにしっかりしてない人が舞台上だとめちゃくちゃ輝くから、本当にすごい。
内藤:それ褒めてないからね(笑)?!
相葉:本当に、そこだけはすごいって思っている(笑)。
内藤:僕も、その言葉そのまんま返したい!ばっちって、いつも自信がないんですよ。このルックスと歌声と経歴を持っていて、僕だったら自信が持てないなんて1ミリも思うことないのに。
相葉:自信は、ないです。だから、尊氏は寺に引きこもってしまう時期などもあったと聞いて、なんか似てるな・・・って思いました。
内藤:それだけのポテンシャルを持っていたら、僕だったらこんな立ち居振る舞いをするのに!って思うこの気持ちも含めて、いい感じで役に反映できたらいいなって思います。兄弟って、互いの持っていないものに対する憧れや羨望がある気がするので。
――ちなみに、実際のお二人の兄弟、姉弟関係ってどんな感じですか?
相葉:僕は・・・4つ上に兄がいるんですが、小さい頃は仲が良かったんですが、小学校高学年ぐらいになってくると、あまり一緒に遊んだりはしなくなっちゃって。超クールで、めちゃくちゃかっこよくて、めちゃくちゃモテてたんです。特に、中学校に入ったあたりから爆モテし始めて、毎日のようにラブレターをもらってくるようになったんです。
内藤:マジ?!
相葉:家の勉強机の引き出し開けたら、ラブレター、ファンレターだらけだったの。「マジか・・・!」と思いつつ、僕も中学生になったらこうなるんだ、と思っていたのに、マジで何もなかった。ラブレターもらうことなんて、1回もなかった・・・。
内藤:それもマジ?!
相葉:本当。兄の方が、周りから「芸能界に行かせた方がいいんじゃないの?」って言われる見た目をしていたし。だから、兄に対して漠然とした劣等感、コンプレックスみたいなものをずっと抱いていました。だから、大希がさっき言ってた「自信がない」っていうのは、そういうところからきているのかもしれない。
内藤:初めて聞いた。意外・・・。
相葉:大希はお姉ちゃんがいるよね?
内藤:うん、3つ上の姉がいる。僕は・・・結構甘やかされてきたんだよね。お姉ちゃんの貯金箱を放課後に駄菓子屋に持っていって、全部ポケモンのガチャで使い果たす、みたいな。やりたい放題。
相葉:それ、怒られなかったの(笑)?
内藤:怒られたけど、「これ、お姉ちゃんに」って、お姉ちゃんの分の駄菓子も買っていって許される、みたいな感じ。お姉ちゃんが結婚してからも、仲いいです。うちの家族、自分にあったことを全部話すので、みんなが同じ情報を共有してるんです。何でも話しちゃう。
相葉:それすごいね。
――いろんな家族の形がありますね。作品の始動にあたり、演出の原田さんと本作について少しお話されたと伺いましたが、楽しみなことはありますか?
相葉:優一さんと池テツ(池田テツヒロ)さんは僕ら2人の元々のキャラクターを知ってるので、役とすり合わせて僕らの良さが出るようにと考えてくださっているみたいです。どんなものが上がってくるのか、今から楽しみです。
内藤:僕は、稽古からみんなに会えるのが本当に楽しみ。ばっちとはプライベートの友達のようだって言いましたけど、舞台をやっているとタイミングが合わなくてなかなか会えないんですよ。でも、稽古が始まったら毎日会える!あと、第2部の総合司会をやってくれる鯨ちゃん(鯨井康介)も同い歳で、僕ら3人仲良しなんですよ。だから、早く鯨ちゃん来る日が知りたい(笑)。耕平くん(上口耕平)とか真志(大山真志)もいるし、早く会いたい。
それから、広井雄士くんは同じ事務所なんですけど初めましてなんです。丘山晴己さんとか、石川凌雅くんとかも、SNSでよくお名前見るんですよ。個人的に会ってみたいなと思っていた方ともご一緒できるから嬉しくて、稽古がもはや口実っていうぐらい、稽古場までの道のりがめちゃめちゃ軽やかだろうなあ!って思ってます。
――客席からも、公演を楽しみにお待ちしております!
内藤:年末いつも一緒に過ごしている大好きなメンバーと、気になっていた方を含めての今回の座組で一緒にミュージカルを作れることが本当に楽しみなので、年末公演を待っていてくれる皆さんにもきっと満足いただける作品をお届けできるんじゃないかなと思っています!できれば、ばっちと一緒に舞台上でたくさん歌って、デュエットとかもできたら嬉しいな。
相葉:そうだね。本当に素敵なメンバーが集まっているので、とても楽しみです。真摯にミュージカルを届けられたらと思いますし、第2部ではいろんなユニットで歌って踊るということなので、皆さんにもぜひペンライトを振ってもらって、一緒に年末の4日間を駆け抜けたいと思います。31日には年越しのカウントダウンもあるとのことなので、一緒に素敵な2024年を迎えられたらと思います!ぜひ劇場に足をお運びください。
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)
【公演概要】
シンる・ひま オリジナ・る ミュージカ・る「ながされ・る君へ~足利尊氏太変記~」
<第一部>
オリジナ・るミュージカ・る「ながされ・る君へ~足利尊氏太変記~」
<第二部>
ショー「猿楽の日 1338~近頃都で流行るものフェスティバル」
上演スケジュール
2023年 12 月 28 日(木)~12月31 日(日) 東京・明治座
【脚本】池田テツヒロ
【演出】原田優一
【音楽】かみむら周平
【出演】
相葉裕樹/内藤大希/
石川凌雅、松田岳、前川優希、井澤巧麻、広井雄士、井深克彦/
丘山晴己/井澤勇貴、伊藤裕一、加藤啓/大山真志、辻本祐樹/
原田優一/上口耕平/ROLLY/水夏希
【公式サイト】https://taihenki.com/