新演出版で来日公演が決まっていたブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』が7月5日に東京・東急シアターオーブで開幕した。
『ウエスト・サイド・ストーリー』は1957年にブロードウェイ初演、1961年に初の映画化。その60年後の2021年、スティーヴン・スピルバーグ監督が2度目の映画化を果たし、脚光を浴びた。巨匠レナード・バーンスタインによる名曲の数々、ジェローム・ロビンスのオリジナル振付を生かし技巧を尽くしたダンス、シェイクスピアの「ロミオとジュリエット」をベースに、人種間の抗争や格差社会など社会問題に鋭く切り込むストーリー、何よりトニーとマリアの燃え上がるロマンス・・・。いつの時代も観る人の心を掴んで離さない、ミュージカルの金字塔だ。そんな名作が、新演出で来日した。
開幕直前で行われたプレスコールで披露されたのは、「Tonight」「America」「Cool」の3曲。どれもこの作品を代表する名シーンだ。
「Tonight」は古びたビルのバルコニーの上で、トニーとマリアが恋に落ち、その心境を高らかに歌う。トニーはがっしりした身体ととびきりのスマイルが素敵なイケメンだ。マリアは華奢で愛らしく、実にフレッシュ。初めての恋で高鳴る様子が伝わってくる。夢のように美しいメロディーを奏でる「Tonight」。二人の美しく力強い声が重なると、至福のひとときが訪れる。NYウエストサイドの古びたビルがリアルで、バルコニーを飛び降りて帰ろうとするトニーが、何度もマリアに呼ばれて戻ってくるところにキュンキュンしてしまう。恋すると誰もがこうなるよね・・・としみじみ。 背景にはNYの街並みが広がり、この一曲ですっかりこの世界観に没入してしまう。
「America」では故郷プエルトリコより今住んでいるアメリカが一番!と、シャークス(プエルトリカン系)の女性たちがパワフルに歌い踊る。なんといってもその華やかさに目を奪われるだろう。6名の女性はオレンジとピンクのビビッドな色のドレスを着ており、とても洗練されていて美しい。 それに合わせたのか、空の色もオレンジピンク。 大きな広告の看板が掲げられているのが印象的だが、これは裕福な白人に向けた広告で当時の移民たちには手の届かないものだったとか。 格差社会を暗喩した、このプロダクションならでは演出が効いている。
そしてこの作品を象徴する「COOL」。 ジェッツ(ポーランド系)はリーダーを殺され、今にも暴走する寸前。 そんな少年たちを、頭を冷やせとなだめるナンバーだ。 不穏なメロディーに乗せて、指を鳴らす、バーンと銃を打つ仕草など、一発触発の危険さをバレエを生かしたダンスで表現しているのがたまらない。 オリジナルであるジェローム・ロビンスの振付を忠実に再現しているそうで、今でも全く古びない。 それどころかいつ観ても胸が弾み、心が躍る。 傑作とはこういうことなのだろう。
トニー役のジェイドン・ウェブスターは「日本に来た実感が湧いてきました。初日を迎えたので素晴らしいショーを届けたいと思います」と語り、マリア役のメラニー・シエラは「日本に来るのが夢でした。ニューヨークのタイムズスクエアよりも10倍くらい大きい渋谷に『ウエスト・サイド・ストーリー』の広告が出ていてとてもうれしいです」と感慨深げにコメントしている。
そして、ウェブスターは「人間味のあるそれぞれの苦悩などが、ダンスやセリフで表現されるところが素敵だと思います」、シエラは「私自身がプエルトリコ人なので、アメリカとプエルトリコの文化がぶつかり合って、やがて理解し合うところが素晴らしいと思います」と本作の魅力を語る。
これまで『ウエスト・サイド・ストーリー』を知らなかった人も、何度も観て知り尽くしているという人も楽しめる新演出版は、7月5日(水)から上演される東急シアターオーブを皮切りに、7月31日(月)から群馬・高崎芸術劇場 大劇場、8月5日(土)から大阪・オリックス劇場にて上演予定だ。
ブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』公演情報
スケジュール
【東京公演】2023年7月5日(水)~7月23日(日)東急シアターオーブ
【高崎公演】2023年7月31日(月)~8月2日(水)高崎芸術劇場 大劇場
【大阪公演】2023年8月5日(土)~8月6日(日)オリックス劇場
スタッフ・キャスト
【オリジナル演出・振付】ジェローム・ロビンス
【脚本】アーサー・ロレンツ
【音楽】レナード・バーンスタイン
【作詞】スティーブン・ソンドハイム
【演出】ロニー・プライス
【振付】フリオ・モンへ
【キャスト】
◇PRINCIPALS
トニー役:ジェイドン・ウェブスター
マリア役:メラニー・シエラ
アニタ役:キラ・ソルチェ
ベルナルド役:アントニー・サンチェス
リフ役:タイラー・ハーレイ
◇ADULTS
ドク役:ダレン・マティアス
シュランク役:ブレット・トゥオミ
クラブキ役:エリック・グラットン
グラッドハンド役:スチュアート・ダウリング
◇THE JETS(ジェッツ)
アクション役:アンソニー・J・ガスバール3世
A-ラブ役:スカイ・ベネット
ベビー・ジョン役:ダニエル・ラッセル
スノーボーイ役:リアム/ジョンソン
ビッグ・ディール役:アシュトン・ランバート
ディーゼル役:マレック・ズロウスキー
エニィボディズ役:ローラ・レオ・ケリー
グラジェラ役:ナタリー・スーティエ
ヴェルマ役:ビクトリア・ビロ
ミニー役:ニコル・レワンドウスキー
クラリス役:ケイトリン・ニーヴーナー
◇THE SHARKS(シャークス)
チノ役:クリストファー・アルバラード
ペペ役:アレッサンドロ・J・ロペス
ムース役:アーネスト・オリバス
ルイス役:マイケル・ビショップ
アンキシャス役:ヴァコ・グヴェレシアニ
ニブレス役:ヘラルド・エスパルサ
ロザリア役:ミチェル・ヴァスケス
コンスエーロ役:ディアナ・カジョー
テレシタ役:ジャンナ・アネージ
フランシスカ役:マーヨ・リベロ
マルガリータ役:ベロニカ・ケサダ
◇SWING & UNDER STUDY
ダニエル・ディピント
ジャスティン・ロペス
サラ・ゴールド
ガビ・シモンズ
◇Orchestra
Music:Director
Grant:Horace Sturiale
Reed 1:Daniel Orie Dorrance
Reed 2:品川政治、日向秀司
Reed 3:Tanner Michael Dawson
Reed 4:鈴木 徹
Trumpet 1:柴山貴生、荒井弘太(大阪・群馬)
Trumpet 2:佐藤 秀徳 *、牛腸 和彦 *
Trombone:細貝潤 *、梶原彰人 *
French Horn:廣川実 *、比嘉康志 *
Violin 1:遠藤雄一(concert master)
Violin 2:谷口いづみ *、浮村恵梨子 *
Violin 3:佐久間 大和 *(double concert master)、青柳萌 *
Violin 4:申愛聖 *、奈須田 弦 *
Cello 1:鈴木和生 *、宮尾 悠 *
Cello 2:谷口広樹 *、塚本慈和 *
Bass:安藤 章夫
Percussion:土屋吉弘、清田裕里江
Drums:Taylor Gage Simpson
Keyboard:David Terriault、白石准
* シアターオーケストラトーキョー
【公式サイト】 https://westsidestory.co.jp/