2022年劇団☆新感線42周年興行・春公演いのうえ歌舞伎『神州無頼街(しんしゅうぶらいがい)』が“ゲキ×シネ”として2023年1月13日(金)に公開初日を迎えた。公開を記念し、1月14日(土)東京・新宿バルト9にて舞台挨拶が行われ、福士蒼汰と宮野真守が登壇した。
コロナ禍で延期となった劇団☆新感線『神州無頼街』が、映画館の“ゲキ×シネ”に
“ゲキ×シネ”とは劇団☆新感線の話題作を、映画館の大スクリーンにて高画質・高音質で楽しむ映像エンターテイメント。今回上演される『神州無頼街』は、2020年にコロナ禍で公演延期となったが、2022年に満を持して上演された話題作。幕末を舞台に、猥雑で妖しく摩訶不思議な世界を、歌あり踊りあり殺陣ありの華やかな伝奇時代劇で描く。
本作の主人公、町医者で実は殺し屋の狼蘭一族である秋津永流<あきつながる>役を福士蒼汰が、他人の事情に口を出しては日銭にする“口出し屋”の草臥<そうが>を宮野真守が演じる。この二人のキャラクターは、福士と宮野本人を投影し作成された“当て書き”で作られている。クールな福士演じる永流に、賑やかで明るい宮野演じる草臥はお互い助け合い、時には足を引っ張り合いながら最強バディとして活躍する。
しかし、“当て書き”で描かれたキャラクターと実際の2人の関係性は少し違うようで、福士が「まもちゃん!」と宮野に懐いている様子が、舞台挨拶中に何度も見受けられた。今回の“ゲキ×シネ”版『神州無頼街』も、広い映画館で2人っきり、隣同士で試写を視聴。福士は宮野と見る試写を楽しみにしていたそうで、会場に着いたら「こんな劇場だよ!」と遅れる宮野に写真を送ったり、宮野が到着したら「どこに座る?ここがセンターだよ!」と全部説明して出迎えたそうだ。
福士と宮野は2017年に、「劇団☆新感線『髑髏城の七人』Season月」にてダブルチームとしてそれぞれ主人公・捨之介役を演じている。同じ作品を作り上げながら、チームが分かれていたため同じステージには立たなかったが、『神州無頼街』でようやく共演。映像を中心に活躍する福士と、声優を中心に活躍する宮野は、メインのフィールドが微妙に違うからこそ、なんでも気兼ねなく言い合える仲の良い関係になったようだ。
宮野真守の包容力に甘える福士蒼汰「俺のこと重いって思ってないかな」
福士は宮野と一緒にいる時間が楽しいあまりに、「今後もし一人で舞台挨拶をすることになっても、まもちゃんがいないとやる気でないかもしれない。裏でついてきて」と甘え、宮野も「俺関係ないのに!?しかも裏だけ!?せめて表にださせてよ!」と笑って受け止めていた。
実年齢で10歳ほど年下の福士は、宮野の包容力と優しさに甘えているが、時々「まもちゃん、俺のこと重いって思ってないかな」と不安になることもあるそう。宮野は「重いって恋人の距離感みたい(笑)福士蒼汰くんのファンの皆さんは僕のおかげで普段見えない姿見えるでしょう!」と会場の福士ファンに呼びかけ、ファンから拝まれていた。
確かに普段クールでしっかりしているイメージだった福士だが、今回の舞台挨拶中に「あれ?マイクが・・・どうしよう」と、マイクのスイッチをオフにしてしまい心細い声が聞こえる場面が。すかさず宮野が駆け寄り「ここのスイッチ押しちゃったんだよ」とフォローしていた。
また名前を呼び間違えられるハプニングにも「僕たち一心同体なので」と、二人でポーズを取り笑い合うなど、公私共に最強“バディ”なのを感じた。
『神州無頼街』は歌あり、躍りあり、殺陣ありの新感線らしい華やかな舞台だが、宮野は今作が今まで出演したミュージカル作品で一番歌のナンバーが多かったそう。「どの曲も良い曲で歌っていて楽しかったし、パロディも多いのでお客様も楽しんでもらえると思います」と語った。福士は民衆を引き連れて踊るインパクトの強いダンスシーンがあるが、狼蘭として重い使命を持つ永流の、年相応の若さが笑顔に見られる場面なので注目いただきたい。
インパクトあるシーンといえば、旅籠にチェックインする場面は福士のアイディアから生まれ採用されたそうだ。しかし、お笑いシーンに厳しい演出のいのうえから、毎日そのシーンのダメ出しを受けたとのこと。
殺陣シーンは、福士が槍による鮮やかな棒術を披露するが、家でモップを使って練習してライトを割ってしまったとの裏話も披露した。
個性的で尊敬するキャストたち
本作の出演者にも素晴らしいキャストが揃っている。侠客・身堂蛇蝎役の髙嶋政宏はいのうえの演出以上に自分で役作りをし、奇抜さを追加し存在感を発揮した。しかし、舞台袖や本番前のルーティンでは繊細な発声練習や緻密な体作りを行い、宮野はそれを毎日見て尊敬していたそうだ。
身堂の妻・麗波役の松雪泰子はとてもチャーミングで一挙手一投足が繊細で無駄がなく、お芝居が本当に素晴らしいと絶賛された。しかし、帰宅が異常に早く、麗波のメイクのままでも帰っていると暴露されていた。
新感線の劇団員たちのバラエティの豊かさも注目だ。福士は逆木圭一郎の“存在感”のファンだと語る。逆木は今作でお陀仏留蔵という4兄弟の4男を演じるが、この4兄弟が全員劇団員なのも注目ポイント。いのうえ演出の漫画のような動きを再現し、ぴったり揃えるのは劇団員ならでは。宮野も「あの動きの中に参加したい!“わーははは”って笑いたいです」と羨ましがった。
宮野は今作の好きなシーンの一つに、劇団員である右近健一と村木よし子と歌う場面を挙げ、本当に幸せな時間だったと語る。毎朝発声練習を右近と村木と行い、2人に「今日も良い声!」と褒めてもらうことで、自信をつけて毎公演挑んだそう。
通常公演とは違い、今回のゲキ×シネならではの新たな発見もあったようだ。宮野は今作のゲキ×シネ版をみて、揚羽(清水葉月)と永流が手を触れ、恥ずかしがるシーンに気が付いたそうだ。また、宮野は凶介役の木村了を「登場からかっこいい。完璧なんだよね。素晴らしい役者」と大スクリーンでみて改めて思ったそう。
福士はゲキ×シネを見て「まもちゃんの顔芸が良かった!」と絶賛。宮野本人も劇場の客席に向けての演技をアップでみる“自分の顔がうるさかった”と笑ったが、勉強になったと語る。
見どころシーンの演技を、宮野真守にべた褒めされた福士蒼汰の反応は…
また福士はゲキ×シネならでは見どころとして、1幕の最後の賭博のシーンで福士演じる永流が殺陣をしていて止まっているときに、宮野演じる草臥も殺陣を始めるシーンを挙げた。「 本当にね0.5秒から1秒くらいの間の細かいシーンなのですが、永流が草臥を見て『ふっ、やってくれたな、こいつ…』みたいな感じが出ているところを見てほしいです。永流と草臥のバディ感がでているんです!」と熱く語った。
宮野もお気に入りのシーンのようで「普通だったら殺陣の順番を待つところでもあるけど、それに深い意味を持たせる福士蒼汰はかっこいいよね」と褒めると、福士は照れながら「ふぉーんし」と答えた。この「ふぉーんし」というのは、「ありがとうございます」を縮めて言った言葉だそうで、宮野が即大笑いしながら説明。最初から最後まで、福士と宮野の仲の良さが伝わる舞台挨拶となった。
ゲキ×シネ『神州無頼街』は3週間限定で上演中。ゲキ×シネ初の試みとして無発声応援上映などもあるので、生で劇場で本作を観劇した方も、初めて見る方も楽しめることだろう。
(取材・文/一本柳歌織、編集・撮影/エンタステージ編集部)
ゲキ×シネ『神州無頼街』上映概要
【作】中島かずき
【演出】いのうえひでのり
【出演】
福士蒼汰/松雪泰子 髙嶋政宏/粟根まこと 木村了 清水葉月/宮野真守 ほか
【公開日・会場】2023年1月13日(金)新宿バルト9ほか全国にて3週間限定上映
※一部上映館では期間が異なる場合あり
※2023年2月3日(金)より、新宿バルト9ほかドルビーシネマ館全8館にて上映
【チケット】
当日券:2,200円(税込)
前売券:2,000円(税込)
※前売券はムビチケでの販売
※特別興行料金につき、各種割引、招待券や無料鑑賞券等は適用不可
※ドルビーシネマは2,200円(税込)+ドルビーシネマ追加料金(※映画館ごとに異なる)がかかる