舞台『左ききのエレン』-最終章-クライマックスに見た、キャラクターを輝かせる役者たちの本気。ゲネプロレポート

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舞台『左ききのエレン』-最終章-クライマックスに見た、キャラクターを輝かせる役者たちの本気。ゲネプロレポート

名言溢れる漫画「左ききのエレン」。本作品のクライマックスは、とある写真撮影シーンが舞台となる。これは、非常に地味なシチュエーションだ。

一般的に写真撮影は、広告だと何時間もかかったりするが、基本的には写真を撮るだけ。記者会見やインタビューなら、5分や15分とかで終わる。重要ではあるが抑揚の少ない世界。そこでは、“フリーザ”のように第3形態に誰もならないし、山王戦のようにオールコートプレスもない。派手な演出のない、粛々と進む世界である。

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この、普通なら短く済むイベントを、長尺で表現しようとすると、ダラダラ続く可能性がある。これを漫画では佐久間威風の世界観や、岸あかりの心境を加えることで、見事に仕上げた。

しかし、舞台ではどうだろう。

生の人間が出れば、より閉塞感が出ないか。変化がなくグダグダにならないか。そんな心配を、本作は鮮やかに裏切ってくれた。

オムニバスに切り取ったスピード感ある脚本、一人ひとりのキャラクターが放つ、短いながらも信念に溢れた言葉。そして、その心情を本気で伝えようとする、役者たちの気持ちを込めた演技。その全てを集約したクライマックスは、原作とはまた違った表現で、感動的な演出に仕上がっていた。そこに閉塞感はなく、見えたのは個々のキャラクターの輝き。役者たちが本作を、心から良いものにしたいという気持ちの表れだろうと、個人的には感じた――。

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目次

紆余曲折を経て辿り着いた、舞台『左ききのエレン』最終章

舞台『左ききのエレン 〜エレンの帰還編〈EREN IS BACK〉〜』-最終章-が、2022年6月29日(水)に東京・六行会ホールにて開幕した。誰でも誰かに共感できる人気マンガの舞台版は、今回で3作目。途中で新型コロナウィルスにより延期となるなど、紆余曲折を経て辿り着いた最終章だ。

物語は、主人公の朝倉光一(吉田翔吾)を軸に進んでいく。尊敬する神谷雄介(久下恭平)が独立し、目黒広告社に残った光一。厳しい柳一ディレクター(日比博朋)のもと、激務に追われる毎日。同僚デザイナーの妻の出産日にも、容赦なく仕事を振る柳を見て、その仕事の仕方に戸惑いを覚える光一。その日々は、周囲を照らし続けた光一の性格にも、暗い影を落としていく。

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一方、天才グラフィックアーティストと評された山岸エレン(棚橋佑実子)が去ったニューヨーク。岸アンナ(葛たか喜代)から評価された加藤さゆり(生田輝)は、大手企業『AK』で戦略などを手掛け、信頼を獲得。婚約者も見つけ、安定の生活を見つけたかに思えた。しかし気にかかるのは、エレンの消息。パルクールを駆使するルーシー・B(泉ひかり)もまた、同じようにエレンを求めていた。ニューヨークへ活動の拠点を移した神谷は別視点で、日本を想いながら、光一を影で支え続ける三橋由利奈(近藤里奈)と連絡を取り続ける。

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そして、光一が働く目黒広告社には変化が起きつつあった。体制変更の中で、古谷(高田みちこりあん)を中心としたクリエイティブチームが立ち上がり、変わっていく社内。姉への愛情の裏返しから光一に執着する岸アラタ(北村悠)。クリエイターの気持ちを汲み取って動こうとする流川俊(鈴木祐大)など、会社も光一自身も変わってゆく。柳ディレクターに影響を受け、冷徹なアートディレクターとなった光一。そんな光一に、朱音優子(新川悠帆)投げかける言葉「夢って大きい方が偉いの?」も心には届かない。

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そしてエレンは、ニューヨークを後にして上海にいた。子どもの面倒を見るも、自分自身を見つけられず。うまくいかない日々の中で、思い出すのは高校時代の記憶――。敏腕ディレクターとなった光一は、園宮製薬の広告を担当し、普段遣いの化粧品の広告戦略を提案する。岸あかり(白石みずほ)、岸あやの(相沢菜々子)を巻き込み、天才カメラマン佐久間威風(丸山正吾)の登場により、崩れていく光一のプラン。その歪みに導かれるように、それぞれが運命の横浜へと集結するーー。

舞台『左ききのエレン』-最終章-クライマックスに見た、キャラクターを輝かせる役者たちの本気。ゲネプロレポート

光の演出の鮮やかさ。後半につながる個々の性格を反映した躍動感あるダンス。『天才になれなかったすべての人へ』送る、人間ドラマに注目して欲しい。

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キャストコメント紹介

舞台『左ききのエレン』-最終章-クライマックスに見た、キャラクターを輝かせる役者たちの本気。ゲネプロレポート

◆山岸エレン:棚橋佑実子
まずここまで感染者が出なくて良かったなと思っています。あとは全力でやるだけなので、みんなで頑張っていければいいなと思います。周りで皆さんが支えてくれるので、私は考えて芝居をするのではなく、エレンのことを描写するというか、考えていることを自分とリンクさせて、感情を爆発させる。その意味では、周りのキャストに安心して任せたいと思います。お客様は見に来てくださっただけで、すごくありがたいですが、見た後に「すごいもの見たな」「マジですごかった」ってなるような、何かを与えられたらいいなと思います。

◆朝倉光一:吉田翔吾
色々なお話がたくさんあるので、オムニバスになっているのをいい感じに繋いで、最後にみんなでシュートを決められたらと思っています。一生懸命な光一ですが、最後まで来て、「この人はやっぱりずっと一生懸命なんだな」って思いました。中盤で病んじゃう光一はいますが、終盤に関してはやっぱり一生懸命さでガンガン見せていければと思っています。今回が3作目なので、エレンと光一はこういうことがあったんだなと想像させるような舞台を目指して頑張ります。感慨深い思いでいっぱいですが、そんな気持ちを全部まとめて舞台に乗っけて、お客さんに見せられたらと思います。

◆神谷雄介:久下恭平
楽しみですし、公演中にもっと楽しくなるだろうという確信もあるので、まだやれることはあるなと思っています。最高の作品になるように、頑張ります。役としては、稽古の後半でナレーションだったり、劇場に入ってからの照明を活かしたものに、もっとパワーアップできるなって、ゲネプロですごく思いました。舞台に立ってから思うことも増えたので、音などもあわせて、うまく全員で芝居できたら嬉しいなと思います。頑張ります。

◆加藤さゆり:生田輝
みんなのお芝居を舞台袖で見ていて、何度もグッときてしまいます。エレンと再会するラストシーンではお客さんをぐっと引き込みたいですね。私は今作からさゆりとして参加させていただいていますので、エレンや光一との関係性はお稽古の中で深めていきました。ラストシーンに向かっていく二人の物語を見守りたいと思います。あとオープニングのダンスでは、麗しの岸一家に混ぜていただいているので、負けないように妖艶に踊れたらいいなと思います。

◆三橋由利奈:近藤里奈
本番も楽しみたいと思います。ここから毎日の積み重ねで、いい意味でもっと役に入り込めるように、演じるのを楽しみたいと思います。レッスンしている時も標準語を話すのが大変した。気づかないうちに、関西弁を喋っていたりして、自分でも正直わからない部分はあるのですが、頑張りたいと思います。ずっと出る寸前まで、イントネーションの練習をしているので、うまく喋れるように頑張ります。

◆岸あかり:白石みずほ
無事に初日を迎えられて、嬉しく思います。最後まで誰一人かけることなく、頑張っていきたいです。今作から参加させていただいて、馴染めるか不安でしたが、皆さんが暖かい空気で迎えてくれて、とてもありがたかったです。原作の岸あかりがキャラとして1番好きだったので、この役を演じられてすごく光栄です。普段の私は、自分にあまり自信がないので、この作品が決まってから気持ち作りの意味も込めて、「私、可愛い」って鏡の前で毎日言ってます。最後まで大切に演じていたいと思います。

◆岸アラタ:北村悠
役者はみんな汗だくになりながら演技していますので、観劇される皆さんも、手に汗をがっつりかいて帰っていただけるような、熱い作品にしたいと思っております。「気持ち悪い」が最高の褒め言葉な岸アラタ役に、北村悠自身をキャスティングしたIZAMさんが、勇気あってすごいなと思っています。その期待に応えつつ、最終的に愛されるキャラになっていけたらいいなと。出てきたら拍手が来るような、そんな存在に千穐楽までになりたいです。

◆岸あやの/ナタリー・ルッソ:相沢菜々子
私は前作見させていただいて、その時はマウスシールドをして演じていらっしゃったので、ここまで来られて感慨深いなと思いました。それも皆さんが感染対策など一生懸命、守ってきたことがあるからこそ、繋がっていることだと思っています。今回、私は物語に多く関わる2役演じさせてもらえる、“おいしいポジション”をいただいて、ありがとうございます。今回はバトンをつなぐ方の役割ですが、その背景を意識しながら、大好きな作品なので演じたいと思います。あかりとのダンスも、大人の色気に誘惑されてください。有名なセリフばかりで、力強いキャラクターがたくさんいるので、体感しに来てくだされば嬉しいです。

◆柳 一/戸塚:日比博朋(ベニバラ兎団)
この作品を上演するに至るまで、紆余曲折ありまして、初日は緊張しますが、プラスアルファで特別な想いもあってさらにドキドキが増しています。我々役者も、体に気をつけながら頑張ってきて、お客様も待ち望んでいただいた分、楽しみにしていただけたらと思います。3作品とも個人的には、関西弁がポイントでした。今回の稽古場には、5~6人関西の方がいらっしゃって、教えてもらいながらここまで来ました。役を生きる上でも、指摘してもらえるのが、自分のため・役のためになったので、大事にしながら演じたいと思います。

舞台『左ききのエレン 〜エレンの帰還編〈EREN IS BACK〉〜』-最終章- 公演情報

上演スケジュール・チケット

2022年6月29日(水)~7月3日(日) 東京・六行会ホール

<チケット>
【劇団予約】2022年4月28日~
https://ticket.corich.jp/apply/141897/

■スペシャルシート
最前列から7列目までの席確定。公演パンフレット付。

■ノーマルシート
8列目以降〜最後尾列の席。

■U-15学割チケット(数量限定)
小学生〜中学生までが対象。8列目以降のみ。
※観劇当日のチケット引き換えの際に学生証の提示必須(小学生は不要)

スタッフ・キャスト

【原作】かっぴー
【脚本】川尻恵太(SUGARBOY)
【振付】青井美文

【演出・プロデュース】IZAMANIAX(ベニバラ兎団)

【出演】
朝倉光一:吉田翔吾
山岸エレン:棚橋佑実子
神谷雄介:久下恭平

加藤さゆり:生田輝
三橋由利奈:近藤里奈
岸あかり:白石みずほ
岸アラタ:北村悠
岸あやの/ナタリー・ルッソ:相沢菜々子

柳 一/戸塚:日比博朋(ベニバラ兎団)
ルーシー・B:泉ひかり
斎藤咲知代/アラタにナンパされるギャル:谷茜子(ベニバラ兎団)
朱音優子/マチルダ・G:新川悠帆(ベニバラ兎団)

岸あずさ 他:遠藤しずか
窪塚ヒカル/レイ:杉田真帆
園宮千晶/シャオシャオ/KIKI:采音
海堂/沢村孝/冬月部長:白石大祐

流川俊:鈴木祐大
園宮万作/古谷/大竹/警備員:高田みちこりあん
剛力/威風の高校時代:粕谷佳五
佐久間威風/五十嵐:丸山正吾(Bobjack Theater/ドガドガプラス)

氏田(佐久間マネージャー)/八谷:三浦剛(キャラメルボックス)

岸アンナ/楠瀬:葛たか喜代

【公式サイト】https://ameblo.jp/benibara-de-paris/
【公式Twitter】@ELEN_ofSOUTHPAW



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