第42回世界遺産劇場が2022年2月15日(火)に大阪・フェニーチェ堺で開催され、黒羽麻璃央、染谷俊之、牧島輝によるリーディングシアターが上演された。世界遺産劇場とは、日本国内の世界遺産を会場にしてパフォーミングアーツを行うことで日本の伝統文化を継承していく企画。
過去には人気キャラクターの初音ミクとコラボレーションした人形浄瑠璃や、斉藤壮馬、伊東健人ら人気声優が出演する朗読劇なども上演してきたが、ミュージカル『刀剣乱舞』シリーズなどで活躍する若手の舞台俳優が出演するのは初めての試み。
会場となった大阪・堺市には令和元年度に世界遺産に登録されたばかりの百舌鳥古墳群が存在しており、黒羽自身も公演前日、実際に古墳を見学したそう。「自分にとっては『教科書で見たことがある前方後円墳だ!』という感想でしたが、堺の街には溶け込んでいて、この街に住む人にとっては生活の一部なんだと感じました」と目を輝かせた。
二部構成となっており、第一部では国文学者で元堺市博物館館長の中西進による講演と、中野信子(脳科学者)、古市憲寿(社会学者)と黒羽によるトークショーが行われた。
古市は「地方の有力者たちが前方後円墳を作るのは、田舎の商店がセブンイレブンに鞍替えするのと同じ」というユニークで分かりやすい例えで前方後円墳ブームを解説。中野は古墳を作った有力者たちについて「どのように人を魅了してモチベーションを高めていたのか気になります。演劇のようなものもあったのかもしれないし、巧みなトーク力で魅了していたのかもしれないですね」と黒羽や古市の活躍を例に挙げた。黒羽は終始頷きながら2人の解説を聞いていた。
世界遺産について今後やってみたいことを聞かれた黒羽は、出演作品からインスピレーションを受けてか「擬人化して舞台化できたら、舞台のファンも世界遺産のファンもお互いのジャンルに興味を持てるのでは・・・百舌鳥古墳群は緑、厳島神社は赤っぽいイメージで、1人くらいツンデレキャラがいたら面白い」と想像を膨らませた。
第二部のリーディングシアターでは日本神話で荒くれものの男神として知られる“スサノオ”の古事記をもとにした『スサノオ異伝』が上演され、黒羽がスサノオ役を、染谷と牧島が何役かを掛け持ちして演じ、それぞれの存在感を遺憾なく発揮した。物語は老人(染谷)が孫である少年(牧島)に語り掛けるシーンから始まり、その後も染谷がストーリーテラーとして進行するため、神話や古事記に詳しくなくとも非常に分かりやすい内容に。会場には静謐な空気感が漂う分、雄々しいスサノオの声がよく響いていた。
黒羽は「実はスサノオみたいな荒々しいというか、男性ホルモンが強そうなキャラクターのオファーいただくことが今までなかったので(笑)。新境地です。神話の神様って意外と人間らしいところがたくさんあるんだなと思いました。自分たちが生まれて育った国の話なので、 これをきっかけに興味を持ってもらえたら」とコメント。
神様らしからぬエピソードを数多く持つ“スサノオ”に、染谷も「本編では詳細が省略されていますがスサノオが機織女(はたおりめ)を殺してしまった時のエピソードも衝撃でした。調べれば調べるほど『何でそんなことに!?』というエピソードがたくさん出てきて面白いです」と語り、同じく古事記についてかなり調べたという牧島も「調べれば調べるほどとても奥深くて、相関図が作れそうでした。また、意外と今の自分の生きている時代に結びついているのが分かって驚きました。僕がこういった作品に出演することで興味を持ってくれる人が増えたら嬉しいです」とファンにメッセージを寄せた。
なお、本公演のダイジェスト映像が3月中旬に「堺動画チャンネル」にて公開予定となっている。
(文・取材/通崎千穂<SrotaStage>)
コメント全文
◆黒羽麻璃央
――オファーがあった時の感想は?
世界遺産について、あまり詳しい方ではなかったのでオファーをいただいた時は驚いたのですが、逆にこういった機会をいただいたことをきっかけに、世界遺産や古事記についてあまり知らないという人と同じ目線に立って、一つでも多くのことを学んでいけたらという気持ちで臨みました。
――行ったことのある世界遺産は?
宮城県出身なので(岩手県)平泉と、 厳島神社でミュージカルをやらせていただいたことがありました!
あとは今回出演させていただくにあたって、前乗りして古墳を観に行かせていただきました。上から見た古墳の映像も見たのですが、自分にとっては「教科書で見たことがある前方後円墳だ!」という感想でしたが、堺の街には溶け込んでいて、この街に住む人にとっては生活の一部なんだと感じました。もはや街全体が世界遺産のようにすら思えましたね。
――リーディングシアターの内容についてはいかがでしょうか?
古事記、神話というと難しいイメージかもしれませんが、そんなこともなく、特に今回の『スサノオ異伝』は分かりやすい内容になっていたなと思います。僕はスサノオ役をやらせていただいたのですが、実はスサノオみたいな荒々しいというか・・・男性ホルモンが強そうなキャラクターのオファーいただくことが今までなかったので(笑)。新境地です。神話の神様って意外と人間らしいところがたくさんあるんだなと思いました。自分たちが生まれて育った国の話なので、このリーディングシアターをきっかけに、少しでも日本に古来からある物語にも興味を持ってもらえたら、僕が参加させていただいた意義があるなと思います。
◆染谷俊之
今回のリーディングシアターは古事記がモチーフになっていると聞いて、台本をいただいてから色々と調べたのですが、神様のお話ですけど、 「え、何で!?」って思うことがいっぱい起こりますよね(笑)。
本編では詳細が省略されていますがスサノオが機織女(はたおりめ)を殺してしまった時のエピソードも衝撃でした。
調べれば調べるほど「何でそんなことに!?」というエピソードがたくさん出てきて面白いです。
(黒羽)麻璃央くんとは何だかんだ毎年1回朗読劇をやらせていただいているので、今年も早速ご一緒できたなとご縁を感じています。
牧島(輝)くんとは今回が初めましてでしたが、素敵な役者さんだとはよく聞いていて、今回仲良くなれて嬉しかったです!
今回、老人をはじめ色々な役をやらせていただいたんですが、観ている人が分かりやすいように声色や立ち方をガラッと変えるように意識しましたが、いかがだったでしょうか?自分の世界が広がるいい機会になりました。 またぜひこういった機会をいただけたらとても嬉しいです。
◆牧島輝
リーディングシアターということで、お芝居ではあるのですが、役者同士が向かい合ってお芝居をするわけではなく、お客様の想像力に委ねる部分もあるんですが、それがまた面白さでもあるなと思います。
スサノオというと、アマテラスとツクヨミの兄弟、ということしか知らなかったのですが、世界遺産も神話も興味はあったので、改めて知ることが出来るいい機会になりました!
古事記に出てくる神様ってみんなキャラが立っているんですよね(笑)。たくさん妻がいる神様がいたり、それ故にこの神様とこの神様も兄弟なの!?ということがあったり・・・。調べれば調べるほどとても奥深くて、相関図が作れそうでした。また、意外と今の自分の生きている時代に結びついているのが分かって驚きました。
僕がこういった作品に出演することで、興味を持ってくれる人が増えたら嬉しいです。きっとスサノオについて調べたら、他の神様のことも気になって止まらなくなっちゃうんじゃないかなと思います。
『世界遺産劇場~百舌鳥古墳群』概要
開催日時
2022年2月15日(火)17:00開場/18:00開演(入場無料/事前申込制)
会場:フェニーチェ堺 大ホール
プログラム
第1部 世界遺産大學
トークセッション「百舌鳥の古墳を語る」
壮大な古墳を築造し、魅力的な埴輪を作ってきた古代の日本人の夢と精神の構造を探り、そのたぐいまれな遺産をどう活かしていくのか?を問う。中西進氏の講演とユニークな顔ぶれによるフレッシュなトークショー。
講演「堺から日本の歴史は始まった」
出演:中西進(国文学者、元堺市博物館館長)
トークショー「古代人が残したもの、今にどう活かすか?」
出演:中野信子(脳科学者)、古市憲寿(社会学者)、黒羽麻璃央(俳優)
第2部 世界遺産劇場
読み語り(リーディングシアター)「スサノオ異伝」
天地(あめつち)が初めてひらいて幾許も経たぬ頃、 一柱(ひとはしら)の荒くれ者が地上に降り立つ。
その名はスサノオ。高天原から追放された、破天荒な武の神。
これはスサノオが生きた、戦いの物語――。
【脚本】Spacenoid Writers’ Room(白川ユキ、月森葵、伊藤栄之進)
【演出】田邊俊喜
【出演】黒羽麻璃央、染谷俊之、牧島輝
【公式サイト】http://www.sekaiisangekijyou.com/