2022年2月27日(日)まで東京・渋谷MODI 7Fイベントスペースにて開催されている「読奏劇写真展 in OIOI」。国内外の名作⼩説を、一人の俳優が読む姿をドラマや映画を彷彿させるカットで構成する「映像版朗読劇」として2020年に8作品、2021年に4作品が制作された。その足跡を写真で辿る展示会に、足を運んでみた。
舞台やライブイベントの灯が消えそうになり、不要不急と呼ばれた頃、エンターテインメントに携わる人誰もが、そのあり方を模索していた。エンターテインメントを求める人の元へ、“表現”を届けたい――。プロデューサーのそんな想いのもと、「パブリックドメインとなった名作を、ミュージックビデオのように演出する」という形で具現化したのが、この『読奏劇』という企画だった。
第1弾には、太田基裕、大平峻也、崎山つばさ、橋本祥平、牧島輝、北村諒、有澤樟太郎、佐藤流司、昨年2021年10月から2022年2月にかけて配信された第2弾には櫻井圭登、伊万里有、梅津瑞樹、田村心が参加。俳優の個性と文学の出会いを、鎌田哲生監督(ミュージカル『刀剣乱舞』のMVなどを担当)が、それぞれに『読奏劇』としての“解釈”を“表現”として乗せ、一つの「作品」へと昇華していった。
そしてもう一つ、収録時に撮影された「写真」も『読奏劇』らしさを生むものに。宣伝用として撮影された写真には、被写体である俳優とカメラマン・水津惣一郎氏の表現のせめぎ合いがまた一つの“解釈”を生み、「作品」として物語を広げていった。
響き合う、表現者たちそれぞれの“解釈”。これが一堂に会するのはさぞ壮観でおもしろいだろう・・・と、思っていたら、そこは『読奏劇』。「写真展」を新たなエンターテインメントの場とすべく、さらなる“ひと工夫”が加えられていた。
会場に入ると、すぐ出演者たちの美麗な写真がずらりと並ぶ。これは、主に配信時に作られた物販などで使用されていた写真だ。と思ったら、なんだか見覚えのない写真が多い気がする・・・。それもそのはず。確認してみたところ、3分の1ほどがまだどこにも公開されていなかった新規カットとなっていた。
物販などで採用する写真は、制作するものによってそれに適したものが選ばれている。しかし、これは写真展。この開催のために、「展示する上で見せたいもの」として、新たにカメラマン水津氏によってセレクトし直されたものなのだそう。ぜひ、展示されるために選ばれた写真を、間近でじっくりご覧いただきたいものだ。
続いて目に入ってくるのは、俳優と風景が合成されたアクリル版。水津氏がこれまでに撮影した風景写真と作品をイメージした俳優の写真をかけ合わせ、新たな一枚を創出している。なぜ、この写真にこの風景を組み合わせたのか。なぜ、この並べ方になっているのか。その意図などを写真一枚から想像することも、おもしろい。
そして、最も驚いたのが、写真展の一番奥に設けられていたA0サイズのキャンバス群だった。A0は800×1,100mmという特大サイズだ。とにかく大きくて圧倒される。その写真には、日本画作家・本城葵氏によって“ひと工夫”が加えられていた。
今回、この『読奏劇』の写真展を行うにあたり、水津氏がセレクトした一枚を本編映像と共に本城氏に委ね、そこから想起されたイメージを絵筆に乗せてもらった。
「朗読されている小説と映像、そこから自分がカメラで表現しようと思ったもの。それを、本城さんなりに汲み取って、日本画として表現してもらいました」と水津氏。日本画としての“解釈”は、具体性と抽象性を使い分けながら、ミクストメディアとして新しい物語を膨らませるアート作品となっていた。
会場には、この写真展のために和賀裕希に依頼し、制作されたオリジナルのBGMが流れている。「パブリックドメインとなった名作を、ミュージックビデオのように演出する」という『読奏劇』のコンセプトのように、このBGMによって写真展もまた、来場した方の目が映したものが、MVのように記憶に刻まれるのかもしれない。
そして、この写真展の大元になった『読奏劇』の映像が写真展の開催と同時に、ついにBlu-ray・DVD化された。配信作品だが、映像作品として残したい。いい写真をたくさん撮ることができたので、お披露目する機会があったら嬉しい。その想いは、プロデューサーの中にももともとあった。ただし求めてくれる人がいるのか。手探りだった作り手たちの背を押したのは、いつだって観客(視聴者)の声だった。その結果、なんと収録時間12時間超え!という、とんでもないパッケージが出来上がっていた。
求められたことにただ応えるだけではなく、驚きを持った“エンターテインメント”として届けたい。ただ写真を並べるのではなく、表現する人たちの様々な“解釈”を加えることで、違う角度から光を当て、「作品」をより深く楽しんでもらいたい。徹頭徹尾、この『読奏劇』をエンターテインメントとして“楽しんでもらいたい”という精神が貫かれた写真展となっていた。
写真展では、Blu-ray・DVDのほかにもポストカードセットや、特大ポスターなど、“作品”を持ち帰ることができる物販なども置かれている。こちらも、ただ販売するのではない。3,000円以上購入した方が参加できる抽選会なども実施されている。なお、Blu-ray・DVD含め、完売・追加情報などは刻々と変化しているので、公式Twitterにてご確認を(マルイの通販での予約販売もあり)。
また、入り口付近には出演者から届くサイン色紙が日に日に増えていたり、実際に来場した出演者がパネルにサインとメッセージを書き加えたりと、日々会場も変化している。ぜひ、時間と状況が許す方は会場に足を運んでみていただけたらと思う。自分の目に映すことで生まれる、『読奏劇』への自分だけの“解釈”を感じてほしい。
「読奏劇 写真展 in OIOI」は、2月27日(日)まで東京・渋谷モディ 7Fイベントスペースにて。3月12日(土)から3月20 日(日)まで大阪・なんばマルイ 7Fイベントスペースにて開催される。入場無料。
なお、エンタステージ内には、Blu-ray・DVDに収録されているすべての作品の出演者インタビュー、レポートを掲載している。合わせて楽しんでもらいたい。
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)
『読奏劇』Blu-ray・DVD
【発売日】2022年2月19日(土)
【販売場所】
渋谷 MODI 7F イベントスペース(読奏劇写真展 in OIOI内)
なんばマルイ7F イベントスペース (読奏劇写真展 in OIOI 内)
※3月12日(土)販売開始
マルイノアニメ通販
【ドリームライン公式商品詳細ページ】https://dreamline.link/contents/492338
パッケージ概要
【Blu-ray】5枚組/12,000円(税込)
【DVD】7枚組/9,900円(税込)
【収録内容】本編/メイキング映像/トークダイジェスト/OP映像
【収録時間】744分(12時間24分)
※システムの都合上、マルイ店頭・通販で販売するBlu-rayの販売金額のみ12,001円(税込)となります。予めご了承ください。
収録詳細
【本編】
#1.太田基裕「眠る森のお姫さま」(ペロー・シャルル 作)
#2.大平峻也「雪女」(小泉八雲 作)
#3.崎山つばさ「走れメロス」(太宰治 作)
#4.橋本祥平「ラ・ベルとラ・ベート(美し姫と怪獣)」(ヴィルヌーヴ 作)
#5.牧島 輝「注文の多い料理店」(宮沢賢治 作)
#6.北村 諒「瓶詰地獄」(夢野久作 作)
#7.有澤樟太郎「負傷した線路と月」(小川未明 作)
#8.佐藤流司「藪の中」(芥川龍之介 作)
#9.櫻井圭登「手袋を買いに」(新美南吉 作)
#10.伊万里 有「日記帳」(江戸川乱歩 作)
#11.梅津 瑞樹「猿ヶ島」(太宰治 作)
#12.田村 心「杜子春」(芥川龍之介 作)
【メイキング映像&トークダイジェスト】
1.太田基裕 2.大平峻也 3.崎山つばさ 4.橋本祥平 5.牧島 輝 6.北村 諒
7.有澤樟太郎 8.佐藤流司 9.櫻井圭登 10.伊万里 有 11.梅津瑞樹 12.田村 心
【特典本編】
2020/2021 オープニング映像
#13. 櫻井圭登「長ぐつをはいた猫」(ペロー・シャルル 作)
#14. 梅津瑞樹「高瀬舟」(森鴎外 作)
「読奏劇 写真展 in OIOI」
【東京】2月19日(土)~2月27日(日) 渋谷モディ 7Fイベントスペース
【大阪】3月12日(土)~3月20日(日) なんばマルイ 7Fイベントスペース
※入場無料
【写真展示】
太田基裕/大平峻也/崎山つばさ/橋本祥平/牧島輝/北村諒/有澤樟太郎/
佐藤流司/櫻井圭登/伊万里有/梅津瑞樹/田村心
※出演順/敬称略
▼渋谷モディ
https://www.0101.co.jp/721/event/detail.html?article_seq=44636&article_type=sta
▼なんばマルイ
https://www.0101.co.jp/085/event/detail.html?article_seq=44707&article_type=sta
企画:株式会社ドリームライン
写真を撮る人:水津惣一郎
Hair&Makeup:SUGANAKATA(GLEAM)
Painter:Honjo Aoi
BGM制作:和賀裕希
ビジュアルデザイン:Kuwahara Yoshiyuki
プロデュース:羽田野嘉洋(Dreamline inc.)