2月15日配信!「読奏劇」田村心に馴染む『芥川龍之介・作/杜子春』収録レポート

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約1年ぶりに新作が制作された『Dream Stage(ドリームステージ)-読奏劇-』では4作品が制作された。そのラストを飾るのは、2月15日(火)に配信される第4弾、田村心が読む『杜子春』。一人芝居初挑戦という田村が、最初は疑問を持った作品チョイスとマッチしていく様子を、撮影現場の模様を交えながらレポートする。

田村の撮影が行われたのは、まだ暑さの残る頃。都内の日本家屋風のスタジオで行われた。衣裳は、シリーズでは2作品目となる和装の選択。田村に「杜子春」を読んでもらうならば和装がいい、というのはスタッフ陣たっての希望だったようだ。場に馴染む田村の姿に、撮影前から期待が高まる。

撮影準備が進む中、田村は真剣に台本に目を落とす。ちらりと見えた台本には、あちこちに線が引かれている。聞いたところ、練習で読んでみて「難しい!」と思ったポイントなんだと言う。現場に入る前からしっかりと準備をする、田村の生真面目さが伺えた。

「杜子春」は、1920年に発表された、芥川龍之介の短編小説。もととなったのは、中国の唐代伝奇である「杜子春伝」を翻案したもので、若く貧しい青年が仙人と出会い、人として成長していく様を描いている。芥川版は児童文学として書かれているほか、もとの中国版とは異なるテーマが物語の中に流れている。田村の朗読で気になった方は、ぜひその辺りも調べていくと、より多角的に作品を楽しめるかもしれない。

広い和室に置かれた一脚の椅子。そこに、田村が一人座り、いざ撮影が始まる。『杜子春』には主な登場人物が4人登場する。1人目の主人公・杜子春は、もとは金持ちだったが、親の遺産を使い果たし、その日の暮らしにも困るほどの放蕩息子。2人目は片目眇(すがめ)の老人で、その正体は鉄冠子という仙人。3人目は仙人の言いつけを実践する杜子春の前に現れる大柄な恐ろしい神将(しんしょう)。4人目は、物語の中盤で杜子春が落とされる地獄の閻魔大王。なかなかバラエティに富んでいる。

撮影は「杜子春」「仙人」「神将」「閻魔大王」と4人の登場人物をそれぞれパートに分けて読む手法が取られた。まずは杜子春から。冒頭の「或春の日暮です」が言いにくいんですよ、と言いながらも、丁寧に丁寧に物語を読み進めていく。時間が進むにつれ、言葉がより熱を帯び、田村の額にもじんわり汗がにじむ。「言葉で物語を届けよう」と、意思が伝わるいい読みだ。

杜子春は、仙人から「黄金」が手に入る方法を教えてもらい、富を得る。しかしすぐに逆戻り。仙人が再び知恵を授けるが、同じ過ちを繰り返し、さらなる過酷な状況に追い込まれていく。ある意味、等身大の青年だ。

作品が『杜子春』に決まった時、田村自身は、自分が読むには難しい作品なのでは?と感じたそうだ。しかし、そこは「あえて」の作品選び。コロナ禍でいくつも立つステージを無くしながらも、次に目にする田村はきちんとそれも財産とし、前を見据えているような気がした。もちろん、数え切れない悔しさを飲み込むまでに感じた痛みは計り知れない。しかしその悔しさは、飲み込む度に田村を「役者」として強くしていったのだろう。作品に集中し、読みの精度をあげていく姿を見ていて、そんなことを思った。

撮影中、田村に「杜子春とご自身、似ているところはありますか?」と聞いてみた。田村はこう答えた。「僕なら、仙人がくれた2回目のチャンスのところで失敗しませんよ」。はははと快闊に笑うその姿は、妙に大人びて見えた。その時、まだまだ撮影は続くがきっといいものができるという“期待”が、“確信”に変わった。

「仙人」「神将」「閻魔大王」――撮影は、セットやライティングを変えながら続く。「キャラクターにめりはりをつけて表現してほしい」というオーダーに、田村なりの解釈で色がつけられていった。田村がどんなイメージで登場人物を自分の中で作っていったのか、想像するのもおもしろい。

監督を務める鎌田哲生(ミュージカル『刀剣乱舞』のMVなどを担当)は、これを映像として巧みに組み合わせた。同じカメラに向かって、同じアングルで、違う登場人物を演じる。一人芝居なのに、一人ではないような。映像の妙が味わえる。

映像の最後、田村が見せる表情を目に焼きつけてほしい。人として成長する杜子春と、役者として成長する田村の姿がクロスオーバーする。いつか大人になる少年が、羽化する――そんな一瞬が「読奏劇」に刻まれた。

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)

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目次

『Dream Stage -読奏劇-』第2弾 配信概要

【出演者】伊万里有/梅津瑞樹/櫻井圭登/田村心
※50音順

田村心『芥川龍之介 作/杜子春』
配信日:2022年2月15日(火)20:30
チケット:https://ima-ticket.com/event/318

イマチケ:https://ima-ticket.com/dreamstage02
チケット代:各回3,000円(税込)
※アーカイブ配信あり

<販売中>
#09 櫻井圭登_朗読『新美南吉・作/手袋を買いに』
配信日:10月23日(土)21:00
チケット:https://ima-ticket.com/event/301

#10 伊万里有_朗読『江戸川乱歩・作/日記帳』
配信日:11月6日(土)21:00
チケット:https://ima-ticket.com/event/302

#11 梅津瑞樹『太宰治 作/猿ヶ島』
配信日:12月20日(月)21:00~
チケット:https://ima-ticket.com/event/310

「読奏劇 写真展 in OIOI」
https://dreamline.link/contents/483648
2022年2月19日(土)~2月27日(日) 渋谷モディ7F催事スペース(東京)
2022年3月12日(土)~3月20日(日) なんばマルイ 催事スペース(大阪)
※詳細後日発表
※詳細発表前の開催店舗へのお問い合わせはご遠慮ください。

<Twitter>
【読奏劇 公式】@dokusogeki
【企画制作・ドリームライン公式】@dreamline_inc

<YouTube>
【ドリームライン公式】
https://www.youtube.com/c/Dreamlineinc

※2020年「読奏劇」ダイジェスト&予告
※音声版・読奏劇「読奏劇×ListenGo」試聴音源
各種コンテンツ公開中

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この記事を書いた人

ひょんなことから演劇にハマり、いろんな方の芝居・演出を見たくてただだた客席に座り続けて〇年。年間250本ペースで観劇を続けていた結果、気がついたら「エンタステージ」に拾われていた成り上がり系編集部員です。舞台を作るすべての方にリスペクトを持って、いつまでも究極の観客であり続けたい。

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