『結 ―MUSUBI-』石田明&小野塚勇人インタビュー「“絶対に喋ってはいけない”場をどう楽しむか」

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『結 ―MUSUBI-』石田明&小野塚勇人インタビュー「“絶対に喋ってはいけない”場をどう楽しむか」

NON STYLEの石田明が、脚本・演出を務めるノンバーバル舞台『結 ―MUSUBI-』が2022年2月4日(金)に開幕する。構想に4年をかけたという本作は、相撲部屋を舞台にした、アクションやダンスあり、サプライズあり、ド派手な舞台演出ありの“しゃべらないけどうるさい”ニュースタイルの作品。主人公の雅ノ花を演じる小野塚勇人と石田に、公演への意気込みを聞いた。

『結 ―MUSUBI-』石田明&小野塚勇人インタビュー「“絶対に喋ってはいけない”場をどう楽しむか」

目次

構想4年!賛同者1人からやっとスタートラインへ

――構想に4年かけたという舞台ですが、実現までの道のりを教えてください。

石田:元々は、ずっと一緒にやってきた吉本興業の社員一人しか賛同者がいない企画だったんですが、なんとかここまできました(笑)。今まで僕、そのスタッフといろんなことに挑戦させてもらったんですよ。例えば、ファミリーレストランを貸し切って、役者に1日中そこで(ファミレスを運営するために)働いてもらって、決まった時間になったら急にそこで演劇が始まるという企画とか、役者が全員、自分のキャラになりきって一斉にTwitterを始めて、半年間、それを続けて、最終的に公演で物語が完結するという企画とか・・・。

とにかく、いろんな挑戦をそのスタッフと続けていて、その中でずっと「いつか海外の人にも楽しんでもらえるのをやりたい」と話していたんです。なかなか難しい道のりだとは思っていましたが、口にするのは大事だと思って口にし続けていたら、今回、こういう話が舞い込んできました。

ここに至るまで、韓国で大ヒットしているノンバーバル・パフォーマンスの『NANTA』を観させてもらったり、ウォーリー木下さんと対談してお話を聞かせてもらったりしながら、自分の中で“構想の貯金”が貯まっていき、今、やっとスタートラインに立つことができたと思います。

――「海外の人に楽しんでもらうために」というところから発想が広がっていったんですね。

石田:その前に、まずは、常設の小屋(劇場)をやりたいという思いがありました。演劇をやるためだけの小屋に注目していて、それを実現できるとしたら?と考えたら、海外の方にも楽しんでもらえるノンバーバルだな、と。

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「小野塚くんは何でも許せてしまうような愛嬌があった」

――主演を務める小野塚さんは、石田さんの本作への思いを聞いて今作に出演することに対してどんなお気持ちですか?

小野塚:今回、オーディションで出演が決まったのですが、僕にとって、この作品は挑戦となる作品だと思います。これまでいろいろなことに挑戦されてきた石田さんが、ここからさらに一歩進むための大事な作品になると思いますので、僕も全力でそこに乗っかり、面白い作品にしたいなと思います。

――石田さんは、小野塚さんのどんなところに魅力を感じて主演に選ばれたんですか?

石田:生意気にも今回、オーディションをさせてもらい、たくさんの方に参加していただきましたが、その中でも小野塚くんは、いたずらっ子な空気や、意地悪なことをされたとしても許せてしまうような愛嬌を持っていたんです。

それは、どれだけ演出しても作り出せないもので、その人が本来持っているものが滲んで出るものだと思います。それがイメージと合致したというのが理由の一つです。それから、求めたことを遂行できる人はたくさんいますが、その上で「自分が楽しんで、人も楽しませよう」という感覚を持っている人だったというのもありました。

小野塚:嬉しいです!僕も、自分自身が楽しむことが、観てくださる方に楽しんでもらうためには一番必要だと思っています。やっぱりステージの上で心から楽しんでいないと出てこないものがあると思うんです。今回のオーディションは、ワークショップのような形式で行ってくださったので、オーディションも楽しくやらせていただきました。

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台詞なしなのに本読み・・・?

――そうしたオーディションを経て、石田さんに対してどんな印象を持ちましたか?

小野塚:やっぱりすごく面白い方だな、と。稽古に入る前に本読みがあったのですが、この作品は台詞がないので、そもそも本読みって何をするんだろうって・・・(笑)。

石田:わはは(笑)。どんなスケジュールやねん!ってなるわな(笑)。

小野塚:マネジャーさんにも「本読みってありますが、本読み以外のこともするんですよね?」って聞いたりしていました(笑)。実際には、(本読みの時間は)石田さんが台本のト書きについてひたすら説明くれて、講演を聞いているような「本読み」だったのですが、それを聞いているだけで面白い作品だと想像できたし、ワクワクしました。さすがだなという一言です。それを僕たちが具現化していかなくてはならないので、たくさんご指導いただいて、作り上げていけたらと思います。

――今回、石田さんお得意の“しゃべり”を封印して、ノンバーバルで作品を作ることのメリットとデメリットについては、どのようにお考えですか?

石田:デメリットは、言葉遊びができなかったり、情報量を増やせなかったり・・・と、たくさんあります。ですが、メリットももちろん多い。単純にお客さんの集中力を上げることができますし、皆さん「禁止事項ギリギリ」のものって好きだと思うんですよ。大晦日の風物詩だったテレビ番組の『笑ってはいけない』シリーズも、「笑ってはいけない」と言われているから笑ってしまうわけです。それと同じように、「絶対に喋ってはいけない」という状況に置かれた役者たちが、その場をどう楽しむかというのがポイントになると思います。

――小野塚さんは、台詞のない作品でお芝居することの面白さ、それから難しさをどう感じていますか?

小野塚:台詞がない分、お客さんは全ての神経を視覚に費やして観てくださるんだと思います。普段以上に“観る”ことに集中して、僕たちが伝えたいものを感じとっていただけると思うので、僕はそこにやりがいや面白さを感じています。同時にそれは難しさでもあって・・・。演じる僕たちも五感を研ぎ澄ませて、相手の役者さんがどんな表情をしているのか、何を伝えようとしているのかを汲み取って演じなければいけないので、やっぱり、普通のお芝居よりも気を使いますね。

石田:特に、今はマスクをしながらの稽古ですからね。僕らは喋らないって言うてるのに、稽古場のルールでマスクをして稽古をしているんですよ。マスクをしていると、ヒントがめちゃくちゃ少ない。どんどん研ぎ澄まされていっていると思います(笑)。なので、劇場に入って、マスクを取れる日が楽しみです。きっと、そこで芝居がまた変わると思いますよ。台詞のある演劇だったとしても、マスクを取った瞬間にみんなのお芝居が変わるので。それもまた楽しみです。

『結 ―MUSUBI-』石田明&小野塚勇人インタビュー「“絶対に喋ってはいけない”場をどう楽しむか」

「誰かが誰かを笑わせにいく」アドリブが基本スタイル

――今作では、アドリブで役者さんたちが自由に動くシーンも多いのですか?

石田:基本、全部アドリブです。大まかな流れややることはもちろん決まっていますが、「誰かが誰かを驚かせて、誰かが誰かを笑わせにいく」のを基本スタイルとしているので、自由にやってもらっています。

小野塚:型が決まってしまえば楽ですが、今回はライブ感や遊びを大事にしているので、大変ではあります(笑)。

――それぞれが演じる役柄についても教えてください。

石田:僕は“便利屋”です(笑)。この物語を成立させるための裏方です。小野塚くんが演じる雅ノ花は明るくて、活発でバカなところもあって、だけど根性もあるという主人公らしい主人公ですが、その彼を生かす役どころです。

――小野塚さんは、そんな雅ノ花をどう演じようと思っていますか?

小野塚:引っ掻き回して、そこから物語が動き出すというシーンが多いので、いい意味でみんなを困らせて行けたらと思っています。4兄弟の末っ子という役柄ですが、僕自身、末っ子っぽいところがあると思うので、そこは自分の色を出せたらと思います。毎公演終わった後に、「ああ、今日も楽しかったな」と思える公演を目指してやっていきたいです。

――物語の舞台は、相撲部屋です。この設定にしたのは、どういった理由からですか?

石田:やはり最終的には、海外の方にも観てほしいという思いがあるので、海外の方が観ても楽しんでもらえるようにということで選んだ設定でもあります。ただ、(登場人物のビジュアルだけを見ると)一人も力士っぽいやついません(笑)。多くの方に気楽に楽しんでいただける舞台にと思って、この形になってます。

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最終的には相撲小屋を作ってしまいたい

――「海外の方にも観てもらいたい」となると、今回の公演だけではなく、今後の展開も考えていらっしゃるんですね。

石田:そうですね。最終的な目標は、『結 ―MUSUBI-』の常設小屋を作って上演することです。なんやったらほんまに相撲部屋を作ってしまって、そこで毎度この物語が起きるというのが、僕の中ではベストですね。お客さんをたくさん入れる必要はないんですよ。小屋の中に土俵を作って、その周りでお客さんが観ている。相撲部屋に見学に来たという雰囲気で、100人くらいでいいんです。それで、365日公演を行うというのが目標です。

――素敵ですね!いつか実現されることを楽しみにしています。では、改めて公演への意気込みとお客さんに一言お願いします。

石田:またコロナがどうなるか分からないような時期になっていますが、僕たち、飛沫対策120パーセントの演劇として全力を尽くします(笑)。「結 ―MUSUBI-」というタイトルではありますが、「緩めに」来ていただければと思います。

小野塚:“しゃべらないけどうるさい”という感覚を皆さんと共有したいと思っています。新年から満足度の高い舞台になると思うので、僕たちのお笑いを全力でお届けしたいと思います。

(取材・文・撮影/嶋田真己)

『結 -MUSUBI-』公演情報

上演スケジュール

【東京公演】2022年2月4日(金)~2月6日(日) 渋谷区文化総合センター大和田 さくらホール
【大阪公演】2022年2月11日(金・祝)~2月13日(日) COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール

スタッフ・キャスト

【脚本・演出】石田明(NON STYLE)
【出演】
小野塚勇人(劇団EXILE)、株元英彰、廣野凌大、杉江大志、中村里帆、久保田創、守谷日和、瀬下豊(天竺鼠)、石田明(NON STYLE)

あらすじ

伝説の横綱・雅ノ富士が生前に立ちあげた富士見部屋には、二つの「してはいけないこと」がある。それは「私語」と「女性を土俵にあげる」こと。とくに女性を土俵にあげてしまうと、とんでもないことが起きると言われている。
その「してはいけないこと」を守りつつ、この日も雅ノ富士の息子、雅ノ花・雅ノ國・雅ノ海・雅ノ龍の4人は稽古に勤しんでいた。そこに彼らが愛してやまない妹・幸恵がフィアンセを連れてくる幸せな物語。だと思っていたところに不穏な空気が流れ始め、彼らの命がけの結びの一番が始まるのだった・・・。

【公式サイト】https://musubi.yoshimoto.co.jp/
【公式Twitter】@musubi_newstyle

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