日生劇場が燃える!?木村達成、小野賢章『ジャック・ザ・リッパー』インタビュー──芝居か現実かわからなくなるほどのリアリティを求めて

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日生劇場が燃える!?木村達成、小野賢章『ジャック・ザ・リッパー』インタビュー

19世紀末ロンドンに実在した、連続猟奇殺人鬼《切り裂きジャック》。いったい誰が“ジャック・ザ・リッパー(切り裂きジャック)”だったのか、その真相は100年経ったいまも不明のままだ。

世界中では切り裂きジャックをモチーフにした作品はいくつもあるが、ミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』は、チェコ共和国で創作されたミュージカルを原作として韓国独自のアレンジを施した人気演目の日本初演となる。すべての謎の中心・純真なエリートだが闇に堕ちていく外科医ダニエルを演じる木村達成と小野賢章に話を聞いた。
日生劇場が燃える!?木村達成、小野賢章『ジャック・ザ・リッパー』インタビュー

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体格も雰囲気も違う、2人のダニエル

──同じダニエル役を演じますが、2人の雰囲気はかなり違いますね。稽古でお互い見ていていかがですか?

木村:自分では客観視できてなくて分からないですが、全然違うとは言われますね。

小野:見た目は全然違いますよね。まず体格も違う。舞台に出てきた印象が変わるだろうなと思います。稽古場では、達成はすごく引っ張ってくれている。たぶん達成のなかにあるダニエル像で動いてくれたり、アイデアを出してくれたりするので、僕はそれを受け止めて「達成がこうやるんだったら僕はこうやってみようかな」といろいろ考えるきっかけをもらっています。すごく楽しいですね。

木村:賢章君は僕がなにをやろうとも、受け止めてくださるのですごく心強いですね。包容力と優しさの塊が出まくっている(笑)。しかもそれがダニエルという役に乗っかって出ているのがすごい。芝居をすると、いかにも“お芝居”だという感じになってしまう人もいるのに、ダニエルであり小野賢章なんですよ。しっかりと自分なりの背景を持つというスマートさを兼ね備えた賢章君を見ているのは面白いです。そして羨ましい。それができたらどんなに楽なことか!

小野:(笑)。

──白井晃さんの演出はいかがですか?木村さんは出演経験があり、小野さんは初めてご一緒されますね。

小野:そうですね。こだわりを持っていて、お芝居が好きなんだろうなという片鱗がすごく見えます。一度捕まると逃げられないかもしれないな、と思うんですよ(笑)。動きひとつ、手の表情ひとつとっても「もうちょっとこうあった方がいい」みたいに細部まで見られている感じがします。

木村:見られてますよ(笑)。

小野:ですよね。白井さんによってどこまで詰められていくか、こちらとしてはそれをどう回避して本番まで高められるか、楽しみですね(笑)。

木村:僕が前に白井さんとご一緒した時には、かなり早い段階から細かいところまで詰められていたんですよね。でも今回は、その時よりもゆっくりです。僕としては、時間が限られているから早く細かいところまで詰めてほしいと思ったりも・・・(笑)。

というのも、役者ってやっぱり安心したいから。でも僕が早い段階でいろんなものが詰まっていくと安心してしまうことは、白井さんにはバレているんですよ。今回は、誰かが詰められている瞬間を見るのを楽しんでいます(笑)。

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ミュージカルへの挑戦!歌で表現していく

──日本初演のミュージカルです。未知のことも多いと思いますが、演じるにあたっての難しさや課題はありますか?

小野:僕はまずミュージカルをやり慣れていないので、歌で気持ちを表現するところからですね。本当に申し訳ないんですけど・・・僕はもともと「なんで歌うんだろう?」と思ってしまうタイプの人間だったんですよ。

木村:(笑)。

小野:だから、いかに自然にお芝居から歌に切り替わっていくのかという流れをつくるのは、僕自身の課題として最初にあったんです。思わず歌ってしまうくらいに気持ちが高ぶっているとか、つらすぎて歌でしか表現できないとか・・・自分の中で整理をつけたいなと。自分の中でリアリティを持つということですね。

──歌うことについて、木村さんはどう捉えていらっしゃるんですか?

木村:僕もまだ数えるほどしかミュージカルに出てないので・・・!でも、なんで歌うんだろうと考えると、たぶん真理ですよね。なんで喋るんだろう、と同じ。考え始めると「なんで舞台をやっているんだろう」ということも疑問になってしまう気がする。ただ、歌うんです!

小野:(笑)。

──なるほど!

小野:あと、課題としてはもうひとつあって、この作品の題材(切り裂きジャック)が、自分の人生では経験しえないことなんですよね。人殺しや、内臓を取り出すというようなことが出てくるけど、自分の人生では考えられない。そういった出来事をいかに自分にとっても観てくださる方にとってもリアルに持っていくか、また、それに対して自分の中で肯定できる気持ちをどう作るかで、理解していけるのかなと思っています。

木村:僕は、自分の限界を決めない、限界以上のことをやる、ということかな。気を抜くと、どこかで楽をしてしまうと思うんですよ。でも、愛や苦しみを表現することに限界点なんてない。しっかり限界点をぶち壊していきたいです。そして、今まで経験したことの中からしっかりしたチョイスをしながら、この作品を通して新しい自分を見つけていきたいですね。

日生劇場が燃える!?木村達成、小野賢章『ジャック・ザ・リッパー』インタビュー

芝居か現実かわからなくなるほどのリアリティを求めて

──このミュージカルの題材になっている「ジャック・ザ・リッパー(切り裂きジャック)事件」はご存じでしたか?実際の真相は明らかになっていませんね。

小野:そうですよね。有名な事件なので知ってはいましたが・・・。

木村:謎が解けていない、ということに興味を惹かれるんでしょうね。人間は、真相を明らかにしたいという欲求があると思うんですよ。世の中の事件やスキャンダルがたくさん報道されるのは、人間のちょっと汚い部分とかを見たい、知りたい、という気持ちがあるからじゃないでしょうか。そういった人間の欲求も刺激される作品になっていると思います。

ジャック・ザ・リッパーの事件について調べると、ポーランド人の美容師が犯人だとかいろんな説があるけど、実際はどうだったんだろう?と知りたくなるのが人間だと思いますから。もう100年以上前のことなのでわからないことも多いと思いますけれど、もしかしたらこういう真相があったかもしれない・・・というひとつの形として、知りたいという欲を刺激してもらえればと思います。

──どんな本番になりそうですか?

木村:最終地点は、日生劇場が燃えることかな?実際に火事が起きたとしても、お客さんが「今日の舞台はすごいな、白井さんの演出は迫力があるな」と思ってしまうくらいのリアリティを追求していく。日常的ではないことが起きる芝居の中で、どうやってリアルなことだと実感してもらえるかを求めて稽古をしています。

僕たちは舞台上で登場人物の気持ちになる、いや、登場人物そのものになることで、お客さんがたくさんの魅力を見つけてくれると思います。愛とはなにか、それぞれの正義とはいったいどいうことかわからなくなっている僕達を見て、感じていただければなと。

小野:リアリティは目指すところですね。19世紀の外国が舞台なのでなかなか現実感がわきづらいだろうし、時間が大きく飛んだり戻ったりして複雑な構成でもあります。挑むのは難しい戦いではありますが、それでも「ちょっと夜道が怖いな」と感じるほどその世界に入り込んでもらえるパワーがあります。どんどんお客さんを引き込んでいける魅力がある作品だと実感しています。しかもWキャストなので、組み合わせ自体で全然違うものになるはずですから、何回観ても新たな発見があると思いますよ。

(取材・文/河野桃子、撮影/エンタステージ編集部 1号)

ミュージカル『ジャック・ザ・リッパー』公演情報

上演スケジュール

【東京公演】2021年9月9日(木)~9月29日(水) 日生劇場
【大阪公演】2021年10月8日(金)~10月10日(日) フェニーチェ堺 大ホール

キャスト・スタッフ

【出演】
ダニエル:木村達成・小野賢章(Wキャスト)
アンダーソン:加藤和樹・松下優也(Wキャスト)
ジャック:加藤和樹・堂珍嘉邦(Wキャスト)
グロリア:May’n
ポリー:エリアンナ
モンロー:田代万里生 ほか

【作曲】Vaso Patejdl
【作詞】Eduard Krecmar
【脚本】Ivan Hejna
【演出】白井晃

【公式サイト】https://horipro-stage.jp/stage/jacktheripper2021/

スタイリスト:部坂尚吾(江東衣裳)
ヘアメイク:齊藤沙織(木村担当)、齋藤将志(小野担当)

<衣裳>
小野賢章
ニット¥49,500(COOHEM / YONETOMI SENI 023-664-8166)

木村達成
ニット¥135,300
(Ermenegildo Zegna / ゼニア カスタマーサービス 03-5114-5300)

※価格はすべて税込表示

撮影場所
KITEN TOKYO
https://kitentokyo.com

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この記事を書いた人

ひょんなことから演劇にハマり、いろんな方の芝居・演出を見たくてただだた客席に座り続けて〇年。年間250本ペースで観劇を続けていた結果、気がついたら「エンタステージ」に拾われていた成り上がり系編集部員です。舞台を作るすべての方にリスペクトを持って、いつまでも究極の観客であり続けたい。

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