約1年ぶりに再始動する『Dream Stage(ドリームステージ)-読奏劇-』。エンタステージは、著作権が消失した国内外の名作小説・童話を題材に、音楽のMusic Videoのような演出を施した配信特化型朗読劇の撮影現場に密着してきた。本記事では、第2弾の読み手・・・櫻井圭登、伊万里有、田村心、梅津瑞樹の中から、トップバッターを飾る櫻井の、収録後の声をインタビューとしてお届けする。
舞台上で櫻井が見せてきた確かな芝居には、それを裏打ちする入念な準備があった。話す姿からは、そんな慎重な櫻井の素顔が垣間見えた。一方で、予想外とも言える瞬間が彼の中に多々訪れていたようにも見えた。たった一人、カメラの前で作品を背負う「読奏劇」という取り組みの中で、櫻井はどんなことを感じていたのか?
――収録を終えてみて、いかがでしたか?
朗読というか、言葉を読み上げるのは、脳を使うものなんだなと、改めて実感しました(笑)。そして、声での表現をお仕事にされている方々を、改めて尊敬しました。今までの自分にはなかったものが、今回の撮影をしながら引き出されていく感じがして、すごく勉強になりました。吐息や息遣いだけでも、こんなに伝わり方が変わるのかと思うこともありましたし、これからの役者人生に必要なことをたくさん学ばせていただいた気がしています。
――櫻井さんは、本シリーズのスピンオフ企画として「ListenGo(リスンゴ)」さんで配信された音声版にもご参加いただいていますよね。
朗読劇自体は何回か経験させていただいていたのですが、音声だけでの朗読や、映像での朗読は初めて経験させていただきました。
――今回読んでいただいた『手袋を買いに』は、プロデューサーが音声版の出来を聞いて、「これは映像でも残したい!」と、あえて同タイトルをセレクトしたとおっしゃっていました。
ありがとうございます。そんな風に言っていただけるなんて・・・。僕も、映像作品としてのお芝居はまだ経験が少ないのですが、音声版をやらせていただいていたからこそ、さらに一歩踏み込んだものができたんじゃないかと思っています。
実は僕、普段は何回も練習しないと出来ない人間なんですよ・・・本当に不器用で。
――えっ、そうなんですか?
朗読劇は、本を「読む」ことが重要なんですが、稽古の時から「もう一回やらせてください!」と言ってしまうことが多くて、そうしているうちに結局台詞を覚えてしまうことも多く・・・(笑)。だから、今回は、台詞を覚えるというよりは、読んで「今、どう感じているのか」「感じていることはどう出るのか」を大事にしようと思っていました。
監督も、事前に「間とか変に気にしないで、自分の読み方で読んでください」と言ってくださっていたんです。せっかく機会をいただけているのだから、自分の中の“今”を大事にしようと思って読みました。そうしたら、読んでいくうちに練習でも音声版でも感じたことのない気持ちが本番中に湧いてくる瞬間があったんです。それは、僕にとってとても貴重な経験で。新たな役の作り方と出会えたんじゃないかなと思いました。
――それはどういう感覚でしたか?
ふと気づいたらその世界にいた、というような感覚です。セットやメイク、小道具とか細部まですごく丁寧に作り上げてくださっていたからこそ、僕も“今”感じていることを素直に出すことが出来ていたのだと思います。
――撮影中、椅子に腰掛けて本のページをめくっているだけなのに、プロジェクションマッピングの光の中、櫻井さんのお顔がいろんな顔に見えました。
表情は、音声版としてこの作品を読んだ時との違いを考える上で、一番意識したところでした。声の表情と、顔の表情では、伝わり方もまた違うのだということも実感しました。どちらも、「伝わりやすいように」を意識した結果が出ていると思います。出てるといいな・・・(笑)。
それから、“今”感じていることを素直に出す、と言ったことと矛盾しているようにも思うんですが、「どういう顔になっているのか」は、計算したものにしないといけないなと思いました。“今”感じていることを大事にするあまり、振り回されてしまっては、観てくださる方に何を伝えたいのか、見失ってしまうと思ったので、変な迷いは出てこないように意識していました。そこのバランスを保つのは、すごく難しかったですね。
――映像でどう切り取られるのか、楽しみです。
ふとした時に、自分がイメージしていたのと全然違うアプローチをしていたこともあったんですよ。僕も自分がどういう顔をしているのか、計算どおりなのか、どう映っているんだろう。観るの緊張しますね(笑)。読むのも、家で練習していた時はスムーズだったのに、本番ではうまくいかなかったり。それも、朗読ならではのライブ感になっているのかな。
――生の舞台演劇として受ける演出と、映像演出には違いがありましたか?
基本的なことは同じなんですけど、映像ならではだなと思ったのが、限られた時間の中で作り上げなければいけないということですね。もちろん、舞台も限られた時間の中で作っていくものですが、映像作品作りはよりタイトなので、監督さんがイメージしたものを、役者に託してくださる。それって、ある意味絶対的な信頼がないとできないことだよなあって思いました。舞台での役者と演出家さんとはまた違った関係性で、すごく刺激的でしたね。
――おもしろかったですか?
おもしろかったです!ただ、僕の能力がまだまだ追いついていないと思うこともたくさんあったので、もっと勉強しなきゃ、もっと勉強したい・・・と思いました。それぐらい、今までにない刺激を受けました。
――演出と言えば、「読奏劇」はお一人で読んでいただく作品ですが、櫻井さんには共演者がいらっしゃいましたね(笑)。
(笑)。小狐の表現を、監督がやってくださっていたんですが、まさか監督が直々にやってくださるとは・・・。自分の中でもよりイメージが湧きましたし、その演出をつけてくださったことで、とことん深いところまでいけたなと思いました。
――『手袋を買いに』は、きっと多くの方が子どもの頃に読まれていた作品だと思います。今日読んでいて、櫻井さんはどう感じていらっしゃいましたか?
児童文学って、子どもと親にとっての一種コミュニケーションの場だと思うんです。でも、子ども向けと言っても大人が書いたものなので、子どもの時に読んだみ印象と、大人になってから読む印象って全然違うんだなあというのが、ちょっと衝撃でした。子どもの頃には気づけませんでしたが、ダークな一面や描写も多いですよね。
『手袋を買いに』も、一見ほんわかしているように見えて、裏に描かれているものは・・・と想像すると、最後のお母さん狐の言葉とか、すごく考えちゃう作品だと思うんです。そういう部分も含めて、僕は作品の質が自分自身と似ているようにも感じて、この作品をご提案いただいた時は、すごく納得してしまいました。
――撮影前に、「自分の色を出したい」とおっしゃっていましたよね。
はい。完成形がどうなるのかまだ分かりませんが、自分がやりたかったことに少しは近づけたのかなと思っています。音声版で読ませていただいた時は、どちらかというと、子狐の方に自然とフォーカスを当てて読んでいたんです。でも、読み返せば読み返すほど、僕はお母さん狐の方に今の自分は感情移入していっていることに気づいて。そういう年齢になったんだな・・・って、思いました。親がどういう気持で自分を育ててくれたんだろうとか考えるようになりましたし、映像で伝える、映像だからこそ伝わるものにしたいという責任感のようなものが強くなっていきましたね。
――櫻井さんご自身も、子どもの頃読み聞かせしてもらった記憶とかありますか?
僕、「かいじゅうたちのいるところ」という本が大好きで、ずっと読んでました。今思うと、あれも結構怖い話ですよね・・・。なんか、昔からちょっとダークな部分のある話が好きだったかも・・・(笑)。童話って奥が深いですね。
――確かに、子どもの頃の記憶と、大人になって読み返す印象って、だいぶ違いますよね。
子どもの頃、もっといろんなものを読んでおけばよかったなと思ったりもしました。だから、お子さんがいらっしゃる方が観てくださったら、ぜひお子さんに一回で読み聞かせてあげてほしいです。
――ちなみに、櫻井さんご自身として、子どもの頃の出来事で一番記憶に残っていることは?
僕、姉がいるんですけど、その姉がすごくやんちゃで・・・。姉がすごく男っぽい性格で、僕はどっちかというと女々しいというか、おとなしい子どもで。それなのに、男子校みたいなノリでいつもいじられていました(笑)。両親との思い出もたくさんありますけど、とにかく姉の存在が強すぎて。親的には、性別が逆だったんじゃないかって心配した時期もあったぐらいらしいです。
――櫻井さんらしいなと思えるお話をたくさんありがとうございました。またこういった朗読や、映像に挑戦してみたいですか?
はい、ぜひやってみたいです!読んでいて、気づきもたくさんあって楽しかったです。今回の朗読は、地の文も全部自分で読ませていただいたじゃないですか。それをやったことで、改めて僕は「役」を演じるのが好きなんだなあと気づいたりもしました。お母さん狐はどういう経験をしたんだろうとか、子狐はどうやって成長していくんだろうとか。
いつも、本に書かれていないことを誰よりも多く考えるようにしたいなと思っているんですが、それがすべての答えじゃないんですよね。だからこそ、自分自身の人間力を上げなければと、最近すごく思うんです。まだまだ勉強しなければならないことばかりですが、この撮影では、今の自分ができること、それ以上のことを引き出していただいた気がします。そして、“作品”としてどう仕上げていただいているのか、僕自身もすごく楽しみです。この貴重な経験を踏まえて、求められる限り挑戦し続けいきたいなと思っています。
『Dream Stage -読奏劇-』配信概要
【出演者】伊万里有/梅津瑞樹/櫻井圭登/田村心
※50音順
【チケット販売】
イマチケ:https://ima-ticket.com/dreamstage02
チケット代:各回3,000円(税込)
※アーカイブ配信あり
#09 櫻井圭登_朗読『新美南吉・作/手袋を買いに』
配信日:10月23日(土)21:00
チケット:https://ima-ticket.com/event/301
#10 伊万里有_朗読『江戸川乱歩・作/日記帳』
配信日:11月6(土)21:00
チケット:https://ima-ticket.com/event/302
田村心『芥川龍之介 作/杜子春』
配信日:未定(後日発表)
梅津瑞樹『太宰治 作/猿ヶ島』
配信日:未定(後日発表)
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【読奏劇 公式】https://twitter.com/dokusogeki
【企画制作・ドリームライン公式】@dreamline_inc
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※2020年「読奏劇」ダイジェスト&予告
※音声版・読奏劇「読奏劇×ListenGo」試聴音源
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(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)