1年ぶりに再始動した『Dream Stage(ドリームステージ)-読奏劇-』。12月20日(月)の配信には、梅津瑞樹が登場する。エンタステージは、著作権が消失した国内外の名作小説・童話を題材に、音楽のMusic Videoのような演出を施した配信特化型朗読劇の撮影現場に密着してきた。本記事では、収録を終えた時の梅津の声をインタビューとしてお届けする。
映像だが、あえてカメラを意識せずに臨んだという梅津。今回の撮影についての話ながらも、梅津という俳優の真髄が見えるような言葉の数々が飛び出した。また、読書家な梅津ならではの、本との出会い方なども語ってもらった。梅津はどんなことを感じていたのか?話を聞いた。
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)
――梅津さんは、音声版に続いての「読奏劇」ご参加になりますね。
前回は音声だけで「天衣無縫(織田作之助・著)」を読ませていただいたんですが、実は、今回も最初は音声だけだと思い込んでいたんです(笑)。なので、こういった素敵な環境を用意していただけてびっくりしました。
――映像で朗読をするのは、また意識が違いましたか?
今、ニコ生で番組配信(「梅津の潜む穴」)をさせていただいていて、そこでよく朗読をしているんですが、その時は映像を全部カットして、音声だけでやっているんです。朗読というからには、声だけの情報でいろいろ膨らませてほしい、聞いてもらうことを主としたくて。
今回は映像があり、ミュージックビデオのように作り込むということで、朗読劇と普通の芝居の境界線がぼんやりしている状態になるのかなと。本は持って読むにせよ、見えてるビジュアルがあるから、視覚的なものがノイズになってしまわないように、表現としてどうするのか、考えてみました。
――いろんな方のスタイルを拝見してきましたが、梅津さんは舞台で拝見するお姿と変わらない印象を受けました。
そうですね、映像ということは全く意識していなくて・・・。もちろん、監督から「こういう絵が欲しい」と求められる部分はきちんと意識しますが。
――一口に“朗読”と言っても、いろんな演出スタイルがありますからね。
本に注力するものもあるし、ストレートプレイと変わらないんじゃないかと思うものもあるりますからね。立ってやることは、実は演技として消化しやすいんです。肉体を伴うことで言葉って出やすくなりますから。
でも、朗読のおもしろさって、そういったものを削ぎ落とした状態で聞かせる部分にあるのかなと、個人的には思うところもあるので。“朗読”をする時は、なるべく余計な情報を挟まないように意識しています。
――音声版とは、また違う作品チョイスとなりましたね。
まだまだ不勉強な身ではあるんですが、わりと本を読んでいる方だという自負はあって、プロデューサーさんとお話を進める中で、変更することになりました。でも、僕から提案すると尺とか関係なく選んでしまいそうなので(笑)。いくつかご提案いただいたものの中から、「これを朗読したらおもしろいんじゃないか」と思った『猿ヶ島』を選びました。選んだというよりは、これをやりたい、が適切かな。そのほかの候補作を忘れるぐらい、叙述トリックじみたこの作品を朗読で聞いたらおもしろいだろうなと思ったんです。
――『猿ヶ島』は、目から得る文章の情報と脳裏に広がるイメージがドンッとひっくり返る瞬間がおもしろいですよね。
登場人物である「私」と「彼」がどういう状況に置かれているのか、それが徐々に分かっていく部分、そしてラスト数行の衝撃が大きいですよね。一方で、あの物語の狙いは、そこではない気もするんです。自分が身を置くことになった環境、そこで摩耗し失われていくもの・・・鴨長明じゃないですが、“よどみに浮かぶうたかた”(方丈記より)を描いているのかなと。
僕たちも、実生活ではいろんなコミュニティに属していますよね。なんでそこにいるのか分からないまま属している世界も、皆さん何かしら持っていると思うんです。そういったものに対して答えを出す必要があるのかは断定できませんが、“よどみに浮かぶうたかた”の中でこの物語の「私」と「彼」が一つの答えを出していることはすごく希望的だと僕は感じました。観てくださる皆さんにも、そういった部分にまで思いを馳せてもらえたら嬉しいなと思います。
――本作もそうですが、コロナ禍で「配信」で作品を観ていただく機会もすごく増えましたが、その点についてはどのように感じられていますか?
僕らの芝居の本質が変わるかというと、そんなことはなく、ただ一生懸命芝居をするだけです。もちろん、劇場でやることの意義は大きいです。映像や配信では感じられないものがそこにある。それは、逆も然りですが。
昨年から今年にかけて、いろんな試行錯誤が演劇界で起きていますが、この瞬間、演劇の世界に身を置けていることはラッキーだと常々思っているんです。連綿と続いている演劇、その歴史が変化していく瞬間に立ち会えるって、すごく貴重じゃないですか。演劇という存在そのものを揺るがしかねない「人に会えない」という苦境の中で、「演劇の強み」をみんなが考えていて、そこに自分が加われていることはおもしろいことだなと思っています。
――演劇の可能性の拡大という意味で、配信が存在していったらいいですよね。
そうですね。実際のその場所に足を運ぶということは、期待感や楽しみが多い一方で、コストや時間などネックになる部分もありますから。手軽に演劇を観ていただける機会が広がること自体は、とてもいいことなんだと思います。
――「出版」も、ネットの普及によって大きな影響に受けました。それこそ、書店に行かなくても本が手に入ったり、電子で読める時代ですが、梅津さんはどうやって本と出会っていますか?
僕は、紙派で書店に実際に足を運んで買いたいタイプです。去年、ずっと休業していた書店がやっと開いた時に足を運んだら、店内で「目当ての本を買ったら即刻おかえりください」みたいな放送が流れていたのをよく覚えています(笑)。
本棚の間をぶらぶらと歩くのが好きなんですよね。電子ではサクッと手軽に購入できますけど、買ったという手応えがなく寂しいし、なんだか味気ない気がしてしっくり来ないんです。
――ハードカバー派ですか?文庫派ですか?
うーん、どちらかというとハードカバー派ですかね・・・。正直、外で読むにはまったく向かないんですけど(笑)。学生の時、天童荒太さんの「悼む人」が読みたくて、学校の図書館にリクエストして入れてもらったことがあったんです。でも、出たばっかりだったからハードカバーしかなくて。今、自分を俯瞰して見ると笑っちゃうんですが、二宮金次郎のように駅のホームでハードカバーを広げて読んでいた、というエピソードがあります。
最近はそういう光景を見ることは少なくて、電車の中で新聞を広げる人もいなくなってしまいましたよね。ふと見回すとみんなスマホを見ている。見ているものは、本や新聞と変わっていないのかもしれないんですけど、不思議ですね。
――ちなみに、梅津さんが読書にハマったきっかけは何だったんでしょうか?
物心ついた時からずっと本を読んでいたので、両親の影響が大きいんだと思います。両親がおもしろそうな本をたくさん買って家に置いておいてくれたので、勝手に手が伸びてました。ずっと本ばかり読んでいたなあ。
――子どもの頃に読んで、記憶に残っているタイトルを教えていただけたりしますか?
今パッと思い出したのは、コルネ―リア・フンケというドイツの作家さんの「どろぼうの神様」。2002年に出た本なので、当時10歳ですね(その場で調べてくださった梅津さん)。海外の作家さんが書く児童文学にハマっていた時期があったんですよ。
ほかには、天沢退二郎さんとか、ロアルド・ダールとかも。「マチルダは小さな大天才」とか、懐かしいですね。『チャーリーとチョコレート工場』の原作になった「チョコレート工場の秘密」や、「ガラスの大エレベーター」もすっごく面白いですよ。大人が読んでも面白いと思います。
一時期ミステリー小説に傾倒していた時期もありました。有栖川有栖さんとか。日本のミステリー作家さんはわりと網羅していると思います。
――最近読んでおもしろかった作品は?
このミステリーがすごい!に選出されてた我孫子武丸さんの「殺戮にいたる病」がおもしろかったです。我孫子武丸さんは、「かまいたちの夜」シリーズのシナリオとかも書いていらっしゃる方です。好きですね。
・・・最近、渋谷TSUTAYAさんで選書をさせて頂いたりもしたんですが、自分がおすすめとして名前を出すことで、誰かに届くことを考えると、読んでほしくなる本ってなんだろう?ってすごく考えちゃいますね(笑)。
――梅津さんご自身は、読みたい本をどうやって選んでいらっしゃいますか?
賞を取ったなどの評判を聞いて「読みたい!」と定める時もありますし、ふらっと本屋さんに行って手に取って・・・もありますし、いろいろですね。でも、あんまり装丁買いはしないかな。装丁に惹かれて手に取ることはあるんですけど、絶対中身を見てから決めています。あと、著者のプロフィールとかも気になって見ちゃいます。「ほかに何書いてる人かな?」って。
――個人的には、どの舞台を観に行くのか選ぶのと、本を選ぶ行為は似ているような気がしています。
どちらも、すごく能動的な興味の持ち方ですよね。テレビやYouTubeが垂れ流せるのと違って、劇場に足を運ばないと目にすることができない、自分で紙をめくるという行為をしないと物語が進まない。自分の中にある「もっと知りたい」とか、「もっとこの世界にいたい」というバイタリティを再確認することで、受動的な心持ちでは辿り着けないところにまで連れてもらえるのかも。
――この「読奏劇」も、能動的に観てくださる方に届くと思いますが、どのように楽しんでいただきたいですか?
朗読で一番大切なのは声、という意味で、余計な表情や動きの表現はつけずに読みました。明確なビジュアルありきの朗読としての芝居はしませんでした。それが映像になるとどうなるのか、僕には想像がつかないのですが、撮影していただいた素敵な空間の雰囲気を素敵だなと感じていただけて、朗読している僕を観察してもらうように観ていただけたらいいのかなと思っています。
――監督がどう仕上げるのか、とても楽しみです。
うまくハマることよりも、ちょっと噛み合わせが悪いぐらいの方がおもしろい気がしていて。きっと、臨場感のある映像として意味のあるものに仕上げていただけると思うので、僕自身も出来上がりを楽しみにしています。
『Dream Stage -読奏劇-』配信概要
【出演者】伊万里有/梅津瑞樹/櫻井圭登/田村心
※50音順
#11 梅津瑞樹『太宰治 作/猿ヶ島』
配信日:12月20日(月)21:00~
チケット:https://ima-ticket.com/event/310
イマチケ:https://ima-ticket.com/dreamstage02
チケット代:各回3,000円(税込)
※アーカイブ配信あり
<販売中>
#09 櫻井圭登_朗読『新美南吉・作/手袋を買いに』
配信日:10月23日(土)21:00
チケット:https://ima-ticket.com/event/301
#10 伊万里有_朗読『江戸川乱歩・作/日記帳』
配信日:11月6日(土)21:00
チケット:https://ima-ticket.com/event/302
今後の予定
田村心『芥川龍之介 作/杜子春』
配信日:2022年2月5日(土)20:30
チケット:https://ima-ticket.com/event/318
「読奏劇 写真展 in OIOI」
https://dreamline.link/contents/483648
2022年2月19日(土)~2月27日(日) 渋谷モディ7F催事スペース(東京)
2022年3月12日(土)~3月20日(日) なんばマルイ 催事スペース(大阪)
※詳細後日発表
※詳細発表前の開催店舗へのお問い合わせはご遠慮ください。
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【読奏劇 公式】@dokusogeki
【企画制作・ドリームライン公式】@dreamline_inc
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【ドリームライン公式】
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※2020年「読奏劇」ダイジェスト&予告
※音声版・読奏劇「読奏劇×ListenGo」試聴音源
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