2021年5月29日(土)に開幕する舞台『染、色』のフォトコール&会見が5月27日に東京グローブ座で行われ、正門良規(Aぇ! group/関西ジャニーズJr.)、三浦透子、岡田義徳、そして原作・脚本を務める加藤シゲアキ、演出の瀬戸山美咲が登壇した。
本作は、2015年に出版された加藤シゲアキの短編小説集「傘をもたない蟻たちは」(KADOKAWA/角川文庫刊)収録の、美大生のリアルな日常と葛藤を描いた「染色」を舞台化。加藤は自身初の舞台化&脚本に挑むことに。演出は加藤主演舞台『グリーンマイル』(2017年)で演出×主演としてタッグを組んだ瀬戸山美咲が務めており、加藤が書いた小説の世界観を見事に舞台に描き出している。
主演は今作が初の単独主演となる正門良規(Aぇ! group/関西ジャニーズJr.)が務め、自身の才能に葛藤する等身の大学生・深馬を演じている。さらに、壁にグラフィックアートの落書きをする謎の女性役を三浦透子、深馬の大学の友人役で松島庄汰と小日向星一、深馬の恋人役で黒崎レイナ、そして深馬が所属するゼミの教授役を岡田義徳が務めている。
本作は、一目置かれる美大生・深馬が恋人や友人、先生から作品を期待されながらも思い通りにならず悶々とする日々を送るところから物語が始まる。気を紛らわすように街の壁にグラフィティアートを落書きしていくが、ある日、その絵が自身が描いたものとは異なっていることに気づく。そして何者かの気配を感じるようになり、色褪せていた日常が変化していき・・・という物語が展開する。
フォトコールでは、深馬が教授や友人と美術室で他愛もないことで盛り上がり、彼女といい雰囲気になる場面や、深馬が謎の女性役と共に街中の壁に落書きをしていく場面が披露された。一目置かれる美大生である深馬の葛藤を正門が繊細に演じ、三浦と息の合った動きで落書きをする場面では、しなやかでダイナミックなダンスを見せていた。その姿で観客の目を引き付け、さらに『染、色』というタイトルの通り、色褪せていた深馬の日常が変わっていくのを表すように舞台がさまざまな色に彩られていくことで物語の世界観にさらに引きこまれた。
そのあとに行われた取材会には正門、三浦、岡田の他、原作・脚本の加藤、演出の瀬戸山が登壇した。5月29日(土)の初日に向け、正門は「1年越しにようやくお客さんにお届けできるということで、すごく楽しみでワクワクしてますし、めちゃくちゃ気持ちが高まってます」と高揚した様子でコメントした。
また、謎の女性役の三浦は「本番直前なんですけどまだまだ進化してる感じがして、本番始まってからより一層良くなっていくのかなっという感覚があるので本番をすごく楽しみしながら稽古を頑張ってます」と手ごたえを感じているようだ。
正門演じる深馬が所属するゼミの教授役の岡田は「1年経ちましたね。いろいろ中止になっている作品が多い中でこういう形で公演ができるということは本当に奇跡だと思ってるので、それも踏まえつつみんなで一致団結して頑張っていけたらなと思います」と念願の開幕に向け意気込んだ。また、正門の印象について役者の先輩である岡田は「大変まじめだと思います。近年稀に見る真面目だなと感じていて、その姿勢がすごくこっちに伝わってくるので、アドバイスできることはいくらでもアドバイスできたらと思いましたし、『何かわからないことあったら全部聞いて』という話もしました。本当に努力家だなと思いました」と印象を語る。
さらに、「考え込むタイプのようで、周りが見えなくなるところを見たりすると、『かわいいな』と。自分もこういう考え込んだ時期があったなと思うので、考え込み始めた時は温かく外から見守って、正門が答えを出すのを待ってたりしました。あと体の状態を聞くようにはしてました。あまり溜め込まないようにさせたいなと思ったので」と明かすと、正門は「ありがたかったです。カウンセリングに近いというか・・・(笑)。本当に助けていただきました」と改めて感謝の思いを伝えていた。
そして自身初の舞台化を果たす加藤は「このプロジェクトが動き出すから1年半ぐらいかかってると思うんですが。本来であれば去年公演する予定だったので瀬戸山さんと何度も打ち合わせを重ねて『すごい台本が出来上がったね』という話をした次の日に中止が決定してしまって、せっかくいいものを話し合って作れたのに悔しいですねという話をしました。どうなるかわからないながらも、もう一度上演する機会をいただけたというのがすごく嬉しかったですし、本当であればもちろん昨年公演したかったけれど、この1年いろいろあった思いを、逆にエネルギーにして、バネにしていい作品にしたいという気持ちをひとつにしてここまでやってきました。瀬戸山さんが僕の思いを受け止めて演出してくれたので、すごくいいものができるんじゃないかなという実感があります」としみじみ語った。
瀬戸山も「加藤さんがおっしゃったように1年前に『すごくいい戯曲ができたね』と話すくらい手応えがあって世に出せないことが本当に悔しかったんですけれども、今回こうして稽古を重ねて、本番ももう少しというところまで来ました。原作はもちろん面白いし、戯曲ではさらに深まっていてとても良い作品になっていると思います」と自信を見せた。
そんな瀬戸山に信頼を寄せる加藤は、「僕の手から離れたときに、僕の想像を超えるものにしてくれる演出家の方とやりたいという話をしていて、瀬戸山さんとは一度ご一緒してるので、間違いなく良い作にしてくださるだろうと思って」と語り、実際に舞台上でその仕上がりを見て「感慨深いですね。本当に想像を超えて良い作品になっているなと。キャスティングが決まる前に書きあがった台本なので、この作品を読んでこの仕事を受けたいと言ってくださるキャストの方もきっといると思ったんです。だからお芝居しやすいというよりは読んでいて面白い台本にするということが僕の中の個人的なミッションで、めちゃくちゃ細かい描写のト書きも入れ込みました」と明かす。
さらに、「それを僕はラブレターだと思って瀬戸山さんやキャストの皆さんに送ったんですけど、瀬戸山さんはそれを挑戦状だと受け取ったようで(笑)。無茶振りのト書きをなるべく忠実に再現しようとしてくださる、その意地みたいなものが見ていてとても楽しいし、変わったところは『ここはさすがに無理だったんだな』という面白さがありました。僕は変えても良いですよと伝えているんですけど、瀬戸山さんがなるべく変えずに真摯に取り組んで、この作品を愛して臨んでくださってるんだなと感じています」としみじみ語った。
正門が本作で初単独主演を務めることになったが、加藤はそのことについて「プレッシャーですよね、きっと。決して簡単な役ではないですし、かといって正門にキャラクターを合わせるのも逆に失礼だと思ったので、この役に飛び込んでもらうつもりで僕も遠慮なく書かせていただきました。稽古場に何度か足を運ばせてもらったんですけど、あまり近くで見たら可哀想かなって思って遠くで座ろうと思ったんすけど、プレッシャーに慣れたいということで『まん前に座ってください』って言うんですよね。本番さながらの緊張感を毎回僕が与える役割としてあったかなと思いますけど(笑)、でも本当にどんどん成長していく姿は見ていて逞しいですし、初単独主演なのに堂々としてるなと。感謝してます」と感心しきりだった。
また、事務所の先輩後輩ということもあり、正門は楽屋のれんをプレゼントしていただけるんじゃないかなと期待していた部分があったようだが、それが実現していたことが明らかに。小屋入りの日となった会見の前日、正門はスタッフに『ちょっと待ってください』と言われ、動画を撮られるという状況に。何事かよくわからないまま楽屋に案内され、そこで加藤から贈られたのれんを見て驚いたという。
そして最後に、正門が「スタッフさんとキャストの皆さんと全員でまずは千秋楽を迎えるというのを目標にやっていきたいです。そして、来ていただいた方にしっかりと楽しんでいただけるよう、頑張って作品を届けたいなと思っていますのでよろしくお願いします」とメッセージを送り、会見を締めくくった。
(取材・文・撮影=エンタステージ編集部3号)
舞台『染、色』公演情報
上演日程
【東京公演】2021年5月29日(土)~6月20日(日) 東京グローブ座
【大阪公演】2021年6月24日(木)~6月30日(水) 梅田芸術劇場 シアター・ドラマシティ
スタッフ・キャスト
【原作・脚本】加藤シゲアキ
【演出】瀬戸山美咲
【出演】
正門良規(Aぇ! group/関西ジャニーズJr.)
三浦透子、松島庄汰、小日向星一、黒崎レイナ/岡田義徳
【公式サイト】 https://www.sen-shoku.com/