佐野大樹、森山栄治、鷲尾 昇、土屋佑壱による演劇ユニット「*pnish*(パニッシュ)」が、結成20年を迎える。そんな彼らが、結成日である7月1日(木)を含む6月17日(木)から7月4日(日)まで、自分たちのユニット名を冠した公演を行う。*pnish*の本公演は、実に5年ぶり。
“気軽に観ることができて、楽しい舞台”を目指し、走り続けてきた4人の男たち。20年の歳月を共にした彼らの歩みを紐解きながら、新作公演に向けた意気込みを聞いた。
――20周年、おめでとうございます!そして、*pnish*本公演も、5年ぶりですね。
佐野:単純に、できることが嬉しいですね。このご時勢なので素直に手放しで喜んでいいのか分からないんですが、個人的にはとにかく嬉しい。そして、今回の出演者は僕たち4人だけになりますので。これも、僕らの中ではとても大きいことなんですよ。*pnish*として、4人だけでお芝居をするっていうのは、20年の中でも初めてのことなんじゃないかな。
土屋:確かに、4人だけの芝居ってなかったね。そこが一番新鮮に感じるところかも。
――4人だけで公演をやろうとなったのは、どういう経緯から決まったんですか?
佐野:プロデューサーが、初心に戻るということで、改めて4人で一回やってみようって言ってたんだよね。合ってます?
森山:合ってる、大丈夫(笑)。
鷲尾:15周年を終えたあたりで、次は20周年が節目だねって話はすでにしていたんです。この5年、*pnish*としての公演はなかったですけど、4人で話し合いをする機会とかはあったので。発表するまでどうなるかなと思っていたんですが、「やる」という方向で動き出してよかったと、ほっとしています。とにかく、進み出せてよかった。
森山:意外と、5年って長くてね。僕は「やっとやれる」という感覚(笑)。だからなおさら、プロデューサーが「4人でやりたい」って言ってくれた時は嬉しかったですね。客演の方を入れずに、自分たちだけでどれだけのことができるのか、考えることはたくさんあるんだけど。
――20周年ということで、*pnish*の結成秘話をぜひ教えてください。
土屋:*pnish*を結成する前から、お互いに知っていて、会ってはいたんですよね。夜中の公園で、この4人ともう一人で「何かやろう」って話したのが、本当の*pnish*の最初かな?
鷲尾:・・・俺、いた?
土屋・森山:えっ、いたいた!
森山:この4人、全員いたよ。それぞれ別でやっていたユニットが継続出来なくなったりしていたタイミングで、「(これから)どうする?」みたいな話を公園でしたじゃん。「何かやりたいよね」って。でも、その時はまだ*pnish*という名前でやろうとは決まっていない状態だったけど。
鷲尾:え~、覚えてない!!
佐野:うそぉ~(笑)?!
――*pnish*という名前がついて、ユニットが誕生したのは?
森山:これまた、いろいろな説が出ちゃってるんです(笑)。僕が覚えているのは、夜中の公園で「何かやろう」と話して、後日ファミレスに集まった時。
佐野:マックじゃなかった?
森山:いやいや、ファミレスだよ。「ユニット名を決めよう」って言って、各々がどんな名前がいいか考えて、案を持ち寄ったんです。「ねずみ堂」とか(笑)。でも、どれもしっくり来なかったんだよね。
鷲尾:よく覚えてるねぇ(笑)。
森山:そのファミレスが、「Spanish(スパニッシュ)フェア」をやっていたんです。そこで誰かが「・・・スパニッシュって、いいんじゃない?」と言い出して。でも、意味ができてしまう。「じゃあ、“S”を取ったら?」という案が出たんですが、“S”を取っても意味があったんですよね。そこで、最終的に“a”も取って、*pnish*という造語ができた・・・というのが、僕の記憶です。
土屋:95点!
森山:えっ、5点マイナス何?!
佐野:問題は、場所が「どこだったか」だよ。
森山:だからファミレスだって。
鷲尾:いや、ファーストキッチンだった気がする。
土屋:いやいや、デニーズだった気がする。
森山:でも「Spanish(スパニッシュ)フェア」だよ?!ファミレスだって!
佐野:いやいや、マックだって。
森山:マックで「Spanish(スパニッシュ)フェア」やってた?!
土屋:思い出した。ユニット名に「ソウルライブ」という候補もあったんです。その日、わっしーが着ていたTシャツに書いてあったフレーズを、誰かが「それ、いいじゃん」って言い出して。それで、わっしーの意見が「ソウルライブ」ってことになったのがファーストキッチンだ(笑)。
佐野:マックでも何かあったよ?新宿のマック。
森山:たぶんマックでも何かあったけど、やっぱり最終的に決まったのはファミレスだよ!
土屋:さっきデニーズって言ったけど、デニーズじゃないな。だって高いから(笑)。
森山:このように諸説ありますが、僕の説を*pnish*の始まりとしたいと思います(笑)。
佐野:95点のね!
――20年の歩みって、深いですね。ちなみに、活動をされる中で想い出深い事件とかありますか?
佐野:僕、あります。森山さんとの「納豆巻き事件」は忘れられない・・・!
土屋・鷲尾:あぁ~!!
佐野:これは、僕が全面的に悪い話です。僕が悪いんですが、この二人(土屋さん・鷲尾さん)も片棒を担いでいた事件です。
土屋:違うよ、俺は止めようとしていたんだよ・・・(笑)。
佐野:ある公演の稽古場に、森山さんが「納豆巻き」を買ってきたんですが、食べずに置いて帰ろうとした日があったんです。だから僕は「食べていい?」と聞いたんですけど、「ダメダメ!」って答えが返ってきて。でも、僕はそれを「食べていい」と受け取って食べてしまったんです(笑)。「押すなよ、押すなよ」の原理で。
とは言え、やっぱり悪いなと思ったので、翌日、お詫びに納豆巻きを買って行ったんです。詫び納豆巻きですね。
森山:稽古場に行ったら納豆巻きがなかったから「誰か食った?」って聞いたら、みんな知らないって言うんです。「いやいや、ないんだから食べたでしょ?」「いや食べてない」。この繰り返し。
佐野:僕、そのやりとりを見ていたら、詫び納豆巻きを出しそびれちゃったんです。
土屋:俺は新しい納豆巻きを買ってきてるの知ってたから、心の中で「何で出さないんだよ?!」って思ってたよ。
森山:こっちはそんなこと知らないから、だんだん腹が立ってきてしまって。「じゃあ泥棒が入ったってこと?それなら警察呼ばないとだめだろう!」とどんどんエスカレートしてしまったんです。でもね、それでもこの人たち、本当のこと言わないんですよ?!
鷲尾:だって、あの空気の中で言えないよ~。
土屋:早く詫び納豆巻き出してくれ~って心の中で唱えるしかなかったよ。
森山:納豆巻きを「食べた」「食べない」で、1時間くらい押し問答してたね。
佐野:あれは本当に申し訳なかった!申し訳ないと思ったから、その公演中になんとかして森山さんと決着をつけようと思って、千秋楽のカーテンコールでこの事件のことを話したら、また森山さんを激怒させてしまいました。
森山:舞台上で話してしまえば怒らないだろうって、安易に考えたんだよね(笑)。
佐野:まだ20代の頃の事件でした(笑)。今度の20周年の公演で、改めて詫び納豆巻きを・・・。
森山:じゃあ、また稽古場に納豆巻き買っていって、置いて帰ろうか。俺、今も納豆巻き食べたいなと思う度に、なんかあの事件思い出しちゃうんだよね(笑)。
佐野:分かる、俺も思い出しちゃうもん(笑)。それぐらい思い出深い「納豆巻き事件」というものがありました。
土屋:俺も森山さんの怒りを買う事件を起こしたことがあるから、次、わっしーがやったら一巡するね。
鷲尾:俺の番?!
佐野:森山さんを怒らせないと、一人前の*pnish*になれないから。
鷲尾:二人でイベントとかもやってきてるけど、森山さん、そんな怒ることないですよ?厳しい人ですけど、怒る印象はない。
森山:だから、鷲尾くんと二人でいろいろやりやすいのかも。
佐野:僕らは森山さんの触れちゃいけないスイッチに触れるから(笑)。
――絶妙なパワーバランスで成り立っている関係なんですね。
佐野:もう一つ、事件を思い出したので話してもいいですか?おなら事件、覚えてる?
土屋:おなら?
佐野:4人で、公園で打ち合わせをしている時に、僕がついおならをしてしまったんです。音がしないサイレントおなら。そうしたら、同時に森山さんもしちゃったんです(笑)。
森山:あっ、思い出した!俺は音有りのおならをしちゃったんだ。それが、思いの外くさくて、なんだ?なんだ?ってなってたら、あとで佐野が「俺もしたんだよ」って告白してきたんだ。
佐野:タイミングが良すぎたのもあるけど、自分のにおいって分からないのかな?と思ったら、おもしろくなっちゃって(笑)。
鷲尾:20年って、いろいろあるね(笑)。
――20年、このメンバーで続けてこられた秘訣ってありますか?
土屋:そうだなあ・・・。持続させるために気をつけた、ということはあんまりないかもしれない。
佐野:もしかしたら「劇団」という形じゃないことと、プロデューサーがいるというのは大きかったかもしれないね。いいことも悪いこともあったけど、この20年を振り返るとそれは良かったこととして結果に表れているのかな。
森山:距離感も良かったのかも。それぞれ所属している事務所も違うし、*pnish*という枠に押し込められることもないし。変な言い方ですけど、いつでも辞められるというフランクな感覚があるんですよ。それが逆に、20年続けられているのかもしれない。
鷲尾:バラバラだけど、妙なチーム感がありますよね。最初から友達だったわけでもないけれど、いろんな段階を経て、一緒にものづくりをして、それを周囲に対して認めてもらいたいと切磋琢磨してきた。守らなければいけないものもなく、いい意味で自由にやってきたから。
土屋:4人とも、個性が違いすぎるんですよ。あまりにも違いすぎるからこそ、否定も肯定もいっぱいしてきたことが、よかったんじゃないかなと。何回か、解散した方がよかったんじゃないか、自分は抜けた方がいいんじゃないかとか考えたこともありましたけど、今は、この場所をなくしてしまうのはもったいないなと感じています。
森山:チームとかライバルというより、もう「家族」に近いよね。積極的にコミュニケーションを取ろうとするわけでもないけど、知らないことはないぐらいの関係。舞台の上でも、何も相談していなくても、こういう動きするんだろうなとか分かる。でも、5年空いたから今回の稽古場で、最初の10年と同じぐらいライバル心が芽生えたりするかもしれない。
佐野:20年経ってそれぞれ考え方も変わってきていると思うけど、どういう形をとっていくかでまだまだ幅は出るよね。今回の4人芝居も新しい試みだし、おもしろい方向にこれからもっと変わっていく気がします。*pnish*とは?って考えた時に、まだ答えが見つかっていない感じがするから。また20年後とかに、“続けてこられた秘訣”考えてみたいですね。
――次の公演、*pnish* vol.16『*pnish*(パニッシュ)』は、タイトルがそのものずばりのユニット名と同じ名前になっていますが、どんなものにしたいですか?
土屋:気負わずにやりたいですね。20年分を見せる!とかそんなこと考えず。今回、脚本と演出を村井 雄(KPR/開幕ペナントレース)さんが担当してくださるんですが、*pnish*の20周年作品としてではなく、村井さんと*pnish*で一つのエンターテインメントを作ったらこうなりました、という感じにしたい。純粋にエンターテインメントを創る純粋な姿勢でいられたらいいなと思います。
鷲尾:ちょっと緊張感はあるよね。5年空いちゃってるから。昔はそんなこと考えたこともなかったけど、自然体で楽しめたらいいなと思います。本公演にはやっぱり思い入れがあるから。いろいろ考えていることが、本番に向かう中でいい緊張感に繋がるといいですよね。
森山:この前、オンラインイベントでファンの方たちに「5年ぶりの本公演で、一番台詞覚えが早そうな人は誰だと思う?」って聞いたら、みんな誰って答えたと思う?・・・一番は、土屋さん。「一番振り覚えが早いのは?」という質問の答えも土屋さんだったんだよ。
土屋:えっ、衰えてないと思ってる・・・?やめろよぉ~!ハードル上げるなよ~!!
佐野:一番に覚えればいいんだよ!
森山:そうそう、皆さんの予想どおりにすればいいんだよ。
鷲尾:みんな怠けるってこと?
佐野:そういうことじゃない(笑)。何にしても、全力尽くすだけです!がんばりましょう!!
*pnish* vol.16『*pnish*(パニッシュ)』公演情報
<上演スケジュール>
2021年6月17日(木)~7月4日(日) 東京・赤坂RED/THEATER
スタッフ・キャスト
【脚本・演出】村井 雄(KPR/開幕ペナントレース)
【振付】本山新之助
【音楽】大石憲一郎
【出演】
*pnish*(佐野大樹 森山栄治 鷲尾 昇 土屋佑壱)
【チケット】一般発売日中
【料金】7,800円(前売・当日共/全席指定/税込)
【チケット取扱】楽天チケット http://r-t.jp/pnish_vol16/
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)