2021年6月より全国書店員が選ぶおすすめの少女漫画1位を獲得した作品をミュージカル化したA New Musical『ゆびさきと恋々』が上演されるが、このほど上演に先駆けて取材会が実施された。
本作は、耳の聞こえない女の子雪(ゆき・豊原江理佳)と耳の聞こえる男の子逸臣(いつおみ・前山剛久)が、手話を通じて心と心が繋がりあう中でお互いの知らない世界を知り、互いに惹かれ合うというラブストーリー。
主⼈公雪の幼馴染桜志(おうし・池岡亮介)、雪の親友りん(林愛夏)、逸臣の親友心(しん・宮城紘大)友人でありながら逸臣に恋心を寄せるエマ(青野紗穂)、皆が集まるカフェ・バー“ロッキン・ロビン”の店長京弥(きょうや・上山竜治)らが憧れや恋心に翻弄されながらも、青春を謳歌する様も本作品の魅力の一つとなっている。
この日、全キャストがそれぞれの心を歌い上げる作品のハイライト「わたしの手・あなたの手」が初披露された。それぞれの思いがキャストのソロパートによって重なり合い、⼀つになって呼応しあうという感動的なナンバーとなっている。取材終了後の囲み取材では主演の前山剛久・豊原江理佳らがミュージカル作品にかける意気込みを語った。
前⼭剛久は、「この作品をミュージカルにすると聞いた時には映像の方が良いのでは?と思ったが⼼の声を表現できるミュージカルという形でやることにすごく意味があると思った。また、この作品は個性を大切にするということ、一人一人がすばらしいことを伝えていて、本当に全ての⼈に届けられるものであり、SDGsを実現する作品になっているし、その意味も込めて取り組んでいる。
コロナ禍で芸能の仕事、舞台芸術の仕事について色々な議論がある。医療従事者は病気を治すけどエンターテインメントは心を治す仕事だと思う。楽しいことがなければ生きていけない。ぜひこの舞台を見て、⽣きていてよかったと感じて欲しい」とエンタメと作品への強い思いを語りながら「逸臣とおなじ、銀髪にも注目して(笑)」と話しました。
豊原は「聾者の役を演じてみて、最初は不自由なものなのかと思っていたが、日々手話の練習や稽古を重ねて雪というキャラクターを知るうちに、全然そんなことはないと思いました。ひとつの個性であり、その個性がすばらしくて、個性と個性が引かれ合うというあたたかい話。コロナによって⽇々状況が変化していて、私は小さい頃アニーの主役をやっていたのですが昨年はアニーが公演中止、今年も1日しか公演ができず2年間練習していた⼦供たちが本当に悲しい思いをした。そんな中で⾊々な⽅たちの尽⼒でいまこうして稽古して舞台ができているのでより⼀層コロナ禍で⾏うことの意味を持って舞台に臨みたい。
原作は120万部を超えるヒット作ですが読んだときは本当にきゅんきゅんした。実際演じてみるとキュンとしすぎて照れてしまうほどですが人と人との思いがつながること心の声を歌で表現することを、ぜひ劇場で観ていただきたいです」
演出の田中麻衣子は「聾者が主人公のミュージカルということで、もちろん難しいことはたくさんありましたが、とにかくいろんなことを、本当に当事者のことを分かることはできなくても、知ろう知ろうと、わかろうと⽇々想像することしかできない。でもその想像⼒が一番大切なことだと思っていて、稽古場でも皆とコミュニケーションを取りながら毎⽇努⼒しています。とても気持ちが明るくなる作品です」と創作過程について説明。
手話指導を⾏っている三浦剛は「リアルな聾者の姿を、ミュージカルの中でリアルに見せるということを日々稽古しています。普通聾者の話となると、感動モノが多いが、この作品は本当に聾者と聴者の壁が無くてなんて前向きな作品なのだろうと思いました」と作品への印象を語った。
A New Musical『ゆびさきと恋々』公演情報
上演スケジュール
2021年6月4日(金)~6月13日(日) 本多劇場
※6月12日(土)18:00 ライブ配信あり
キャスト・スタッフ
【出演】豊原江理佳、前山剛久、林愛夏、青野紗穂、池岡亮介、宮城紘大、上山竜治
アンサンブル:渡辺菜花 金井菜々 大津夕陽
ピアノ:森本夏生
チェロ:白神あき絵
【原作】森下suu「ゆびさきと恋々」(講談社「デザート」連載)
【脚本】飯島早苗
【音楽】荻野清子
【演出・脚本】田中麻衣子
【振付】前田清実