森下suu作の少女漫画を舞台化したA New Musical『ゆびさきと恋々』が2021年6月4日(金)東京・本多劇場にて開幕した。
物語は、聴覚障がいのある女子大生・雪と世界を飛び回る先輩・逸臣のピュアなラブストーリー。逸臣との出会いにより、世界を広げていく雪の前向きな生き方と心情がミュージカルで描かれていく。
出演は雪役の豊原江理佳、逸臣役の前山剛久のほか、林愛夏、青野紗穂、池岡亮介、中山義紘、上山竜治ら。脚本は飯島早苗、音楽は荻野清子、演出は中麻衣子とトップクリエイターらが名を連ねている。
舞台は静寂の中で幕を開ける。しんしんと雪の降る夜のように静かな舞台上で、一息の呼吸音が、我々を一瞬で雪のいる世界へと誘う。
随所で奏でられるのはピアノ(森本夏生)とチェロ(白神あき絵)の生演奏。その音色が、時にはキャラクターの心情に、時には小粋なダンスナンバーに変身し、より一層舞台の深みを生んでいた。
初日前にゲネプロを終え前山は「昨年から新型コロナウイルス感染症の影響で、演劇界はなかなか辛い立場にありますが、今日このように無事に幕が明けられることをキャスト・スタッフ一同嬉しく思っています。このミュージカルを通してお客様がどんなものを感じ取ったのか、そして我々がどんなものを与えられたのか分かりませんが、この作品が生きる希望に繋がったなら幸せです」と挨拶。
続けて豊原も「このような難しい状況の中で、舞台の本番を迎えられることは奇跡だと感じています。本番を迎えられたからには、皆様に少しでも持って帰っていただけるものがあればと思います。生きる活力や元気になれたなら嬉しいです」とコメントを寄せた。
劇中では、色とりどりのナンバーが18曲歌いあげられる。雪は、周りから自分の声が変だと思われてしまうのではないかという不安から、家族ではない人たちの前では声を発しない。だからこそ、心の声を歌ったナンバーは魂の叫びであり、豊原の澄んでいながらもパワフルな声が、雪の気持ちを真っすぐに表現していた。
一見クールでありながらも、温かい優しさに満ちた逸臣。言葉の壁を越え、それ以上の心の交流していく姿は前山の演技力だからこそ説得力があるものになっていた。余裕のある大人な面も見せつつ、時には子どものようにはしゃいだり、自分の中の気持ちに動揺したり・・・。雪の前だからこその逸臣を繊細に演じていた。
愛すべきキャラクターは逸臣と雪だけではない。いつも雪を明るくサポートする親友のりん(林愛夏)、逸臣に片思い中のエマ(青野紗穂)、雪を大事に思うその心の奥を知りたくなる雪の幼馴染・桜志(池岡亮介)、物語のちょっとしたスパイスとなる逸臣の高校時代の同級生・心(中山義紘)、思わず戦う者の声が聞こえてきそうな(?)歌って踊れるバーの店長・京弥(上山竜治)など目がいくつあっても足りないほどであった。
少女漫画ならではのきゅんきゅんが満載でありながら、人と人との心の繋がり、そして世界の広がりを教えてくれる、温かいミュージカルだった。
A New Musical『ゆびさきと恋々』公演情報
上演スケジュール
2021年6月4日(金)~6月13日(日) 本多劇場
キャスト・スタッフ
【出演】豊原江理佳、前山剛久、林愛夏、青野紗穂、池岡亮介、中山義紘、上山竜治
アンサンブル:渡辺菜花 金井菜々 大津夕陽
ピアノ:森本夏生
チェロ:白神あき絵
【原作】森下suu「ゆびさきと恋々」(講談社「デザート」連載)
【脚本】飯島早苗
【音楽】荻野清子
【演出・脚本】田中麻衣子
【振付】前田清実
【公式サイト】https://yubisakimusical.westage.jp/
※6月12日(土)18:00 ライブ配信あり
※アーカイブ配信あり
視聴券購入URL:https://w.pia.jp/t/yubisakimusical/
販売期間:6月18日(金)21:00まで
料金:3,500円(税込)
配信サイト:PIA LIVE STREAM
(取材/編集部2号)