『三月花形歌舞伎』が、2021年3月6日(土)に京都・南座にて初日を迎えた。今回の演目は、歌舞伎のみどころを解説する「歌舞伎の魅力」に始まり、歌舞伎三大名作のひとつとして人気を誇る「義経千本桜」より『吉野山』『川連法眼館』。上方歌舞伎の次代を担い、多彩な活躍が光る中村壱太郎、歌舞伎俳優と清元節太夫の二刀流でも話題の尾上右近、古典の大役を数々勤め期待高まる中村米吉、若手立役として近年成長著しい中村橋之助という花形俳優4名に加え、中村福之助、中村歌之助の平成生まれ、アンダー30歳の花形俳優が出演している。
本公演は日替わり解説・役替わりにより、4パターンの公演がある。俳優の個性や演出の違いによって、同じ演目でも異なる見え方となり、歌舞伎の醍醐味を存分に味わうことができる。本記事では、初日・昼の部【Aプロ】の様子をレポートする。
一.『歌舞伎の魅力』出演俳優が日替わりで、歌舞伎の見方や続く演目のみどころ等をわかりやすく解説する一幕
初日昼の部には、中村米吉が登場。歌舞伎を初めて観る方にもお楽しみいただけるよう、歌舞伎の音楽や舞台装置を紹介した後、のちに続く「義経千本桜」を、人物相関図を用いながら分かりやすく解説。よどみなく快活に、時に冗談を交えながらの紹介に、客席からはたびたび笑いや拍手が。
中村米吉は初日が迎えられたことを心から喜び、「多くのお客様が足を運んでくださいました。世の中は新型コロナウイルスの話題で持ち切りですが、その中で私たちが大変大きな役をさせていただきます。感無量でございます。きっと私たち6人、この時期に南座で花形歌舞伎をさせていただき、初日に大勢のお客様がお越しくださったこと、一生忘れることはないと思います。精いっぱい勤めます。どうぞよろしくお願いいたします」と締めくった。最後には、写真撮影タイムや事前にSNSで募った質問に答えながら、和やかな雰囲気で次の芝居へとバトンを繋いだ。
二.「義経千本桜」より『吉野山』 桜満開の奈良・吉野山で義経を追う静御前と忠信の姿を描く艶やかな舞踊
中村壱太郎演じる静御前のたおやかな一人舞に続き、鼓の音と共に、どこからともなく現れた尾上右近演じる佐藤忠信。ゆったりとした音楽に合わせ、二人は艶やかな踊りを披露。最後には、忠信の衣裳が瞬時に替わり、忠信は花道に狐六方で力強く引っ込み。おだやかながらも、歌舞伎の華やかな趣向が随所に織り込まれた、美しい一幕に、客席からは温かい拍手が送られた。
三.「義経千本桜」より『川連法眼館』 静御前と義経の再会の場に忠信が2人?!ケレン味溢れる一幕
ついに再会を果たす、中村壱太郎演じる静御前と中村橋之助演じる源義経。静御前と、先にやってきた忠信の話が噛み合わないと思ったら、実は静御前に寄り添っていた忠信は狐で・・・という物語。眼目は尾上右近演じる、忠信と実は狐である忠信の二役の演じ分け。受け継がれる古典の大作に挑む俳優たちの気迫を受け取るように、お客様も食い入るように舞台を見つめていた。クライマックスでは、まさに狐のごとく、舞台を縦横無尽に駆け回る尾上右近の熱演に、客席からは大きな拍手が鳴り響いた。
南座『三月花形歌舞伎』は、3月21日(日)まで上演。
なお、本公演は新型コロナウイルス感染拡大防止、感染予防として、客席は1,082席のところを約50%の54席にしているほか、入場時にはお客様に手指消毒やサーモグラフィによる検温にご協力いただくなどの対策を実施している。