相思相愛のコラボレーション!「成井豊と梅棒のマリアージュ」稽古場レポート

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2020年12月17日(木)に、東京・サンシャイン劇場にて『成井豊と梅棒のマリアージュ』が開幕した。本作は、キャラメルボックスの成井豊と、エンターテインメント集団「梅棒」によるコラボ公演。オムニバス形式で「plat de 成井豊」と「plat d’ 梅棒」の2バージョンを上演する。会話劇を丁寧に作り上げる成井と、ノンバーバルなダンスエンターテインメントを持ち味とする梅棒。その相性は・・・?稽古にて、現場の反応を追った。

出演は、キャラメルボックスより筒井俊作、阿部丈二、鍛治本大樹、原田樹里、林貴子、森めぐみ、石森美咲。梅棒より伊藤今人、飯野高拓、遠山晶司、塩野拓矢、櫻井竜彦、天野一輝、野田裕貴。このほか、池田遼(少年王者舘/おしゃれ紳士)、正安寺悠造(DACTparty)、五十嵐結也、YOH(KEMURI)が参加する。

※森めぐみは「plat de 成井豊」のみ/飯野高拓、塩野拓矢、池田遼、正安寺悠造、五十嵐結也、YOHは「plat d’ 梅棒」のみに出演

稽古終了後、成井、原田、阿部、遠山、野田、天野が取材に対応してくれた。以下、6名の語ってくれた内容を交えながら、公演について紹介する。

今回、成井が作・演出を手掛ける「plat de 成井豊」は、『彼女の空に雪が降るまで』という全7作品の短編連作集。成井が新作を書き下ろすのは実に2年ぶり、短編集を書くのは初となる。そして、「plat d’ 梅棒」は梅棒の遠山が演出を担当。4作のうち、3作目の「CROSSROADS」のみ作・演出を成井が手掛けている。

取材したのは、「plat de 成井豊」の様子。初の通し稽古では、ほんのりと緊張感が漂いながらも、芝居作りの楽しさが満ちていた。『彼女の空に雪が降るまで』は、原田が演じる「友永雪」を中心に、彼女に関わる人たちの“人生の何気ない局面”を切り取っていく形で進む。

「ラスト・フィフティーン・ミニッツ」「たった今、好きになった」「最後の春休み」「わずか1ステージのラララ」「やっと君に追いついた」「花束」「最後の最後の1秒まで」・・・7つのエピソードで構成される物語の中で、キーワードとなるのは“時間”と“何かを好きだと思う気持ち”。成井が得意とするSF要素はなく、市井の人たちの、その時々の感情を丁寧に追っていく。

驚いたのが、二人芝居と言っていいほど、一場面に出てくる登場人物や小道具が極端に少ないこと。これには、成井の「どんな場所でも、かんたんに上演できるものを作りたい」という“出前演劇”という構想があったという。

コロナ禍の今だけでなく、この先に何があっても、エンターテインメントとして何ができるのか。そう考えた時すぐに動けるように、シンプルで制約が少なく、見やすく、そして誰でもやれるものを残しておきたい。そんな思いが生んだのが、この短編連作集だった。

描いたのは、まさに“人生”。人間は、誰しも限られた時間を生きている。その時間を、どれだけ豊かに過ごせるのか。生きることを恐れるのではなく、生きることを喜ぶ。最小限の中で、最大限の人間力を、成井の演出のもと、キャラメルボックスと梅棒、それぞれの俳優たちが身体いっぱいに表現していた。

中でも、梅棒の野田が演じる「和彦」という青年には、成井が自身の思いや体験を盛り込んで書いたという、思い入れの強い役だそう。この青年の心の機微を丁寧に演じる野田の芝居を堪能できることも見どころの一つだ。

成井は、本作に対してしっかりと手応えを感じている様子で、「梅棒が派手なので、僕の方は対局のシンプルを目指したんですが、役者の身体を使って“魅せる”という点においては僕らがやってきたことも、梅棒がやってきたことも一緒なんですよね。脚本を書いている時は苦しみもありましたけど、役者たちがとても達者なので作者としては大満足。演出家としては、本番までにもっと精度を上げていきたいと思いますね」と語った。

キャラメルボックスの原田も、「プロデュース公演ですが、キャラメルボックスの看板を背負う気持ちで!それから、もしまだ梅棒さんを観たことがないキャラメルボックスファンの方がいたら、今回できっと梅棒さんを好きになると思います。私たちも、梅棒さんのファンの方にキャラメルボックスいいなって思ってもらえるようにがんばらなくちゃって思っています」と気合い十分。

そして、もう一方の「plat d’ 梅棒」。こちらは「BBW~ビッグ・ビューティフル・ウーマン~」(作:伊藤今人・遠山晶司/演出:遠山晶司)、「Y」(作・演出:遠山晶司)「CROSSROADS」(作・演出:成井豊)、「End ofF Story」(作・演出:遠山晶司)の4本立てとなる。

野田曰く、「梅棒バージョンの4作品は、どれも全然カラーが違うので、いろんな梅棒を観ていただけると思います。これだけいろんな梅棒をお見せ出来るのは、初めてなのでは・・・?」とのこと。

4作中3作の演出を手掛ける遠山は、「僕らは言葉を使わず、感情の動きを音に乗せて、身体が発する力で物語を作っていきます。今回、そこにキャラメルボックスの皆さんに加わっていただくことになるので、ぜひ、梅棒とは違う、感情から動く身体のパワーを観ていただきたいですね。特に、原田さんにご注目ください。今まで観られなかったような一面を、僕らのバージョンでお見せしたいと思います」と言葉に力を込めた。

そして、梅棒も成井の演出で新境地を見せる。普段の本公演では一言も発さずに物語を作り上げるが、「今回は、しゃべるぞ!」。特に天野は、台詞劇を経験するのはこれがほぼ初めて。「僕は、嘘偽りなく最初に見た演劇がキャラメルボックスさんの作品だったんです。いわば、演劇を教えてくれた存在。役者としての手応えはまだゼロなんですけど(笑)。台詞劇のおもしろさを感じています」と語っていた。ダンスの素晴らしさに目がいきがちだが、梅棒のメンバーも、個々に様々な経験を重ね、表現について模索してきた猛者ばかり。芝居で見せる梅棒に、注目だ。

そんな梅棒について、キャラメルボックスの阿部は「僕たちにとって、成井さんの本って大切なものなんです。だから、劇団の公演をやる時なども、ゲストで来てくださる方が成井さんの描く世界にどれだけ前のめりで参加してくれるのか、気になるところで。今回、梅棒の皆さんはすごく真摯に向き合ってくださっているので、それがとても嬉しくて」と語る。

「僕も今回、梅棒さんの作品に参加させていただく上で、自分に何ができるのか考える日々なんですけど、参加しているだけですごく元気をもらえるんです。きっと、観てくださる方にも絶対にこのエネルギーは伝わると思うし、こういう人たちがいてくれることが嬉しいなと思っています」と加えた。

公演が発表された際、「キャラメルボックスと梅棒が一緒に・・・?」と不思議な取り合わせだと思ったが、蓋を開けてみれば、芝居中も、話を聞いていても、キャラメルボックスと梅棒は相思相愛な上に相性抜群。ぜひ、両バージョンの「マリアージュ」を、心ゆくまで味わいたいものだ。

最後に、遠山は「僕らが作っているものは、足を運んだ人しか観られない、時代に逆行しているようなことかもしれません。対面した瞬間にしか発することのできないものがあって、それを創り続けていきたい。僕らは生き抜いて、身体を動かして、感情を動かして、人間の有り様を表現しています。僕らの伝えたいことが確かにそこにあるので、ぜひそれを汲み取って、応援してもらえたらと願っています」と言葉を添えた。

『成井豊と梅棒のマリアージュ』は12月27日(日)まで東京・サンシャイン劇場にて上演。

【公演特設サイト】http://napposunited.com/mariage/
【NAPPOS UNITED公式サイト】http://napposunited.com
【梅棒公式サイト】https://www.umebou.com/
【梅棒公式ファンクラブ】『ひのまる弁当』】https://www.umebou.net/

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)

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この記事を書いた人

ひょんなことから演劇にハマり、いろんな方の芝居・演出を見たくてただだた客席に座り続けて〇年。年間250本ペースで観劇を続けていた結果、気がついたら「エンタステージ」に拾われていた成り上がり系編集部員です。舞台を作るすべての方にリスペクトを持って、いつまでも究極の観客であり続けたい。

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