11月7日(土)21:00より、『Dream Stage(ドリームステージ)-読奏劇-』第7弾となる有澤樟太郎の「小川未明 著/負傷した線路と月」が配信される。実は、トップバッターで本企画の撮影に臨んでいた有澤だが、“「朗読」を「Music Video」のように届ける”この作品づくりを通して、表現したい明確な想いを抱いていたようだ。ほんわり柔らかな人柄の中に、有澤が持つ表現への想いとは。撮影終了直後の気持ちを聞いた。
※本インタビューは7月末に行われました
――収録を終えられて、いかがでしたか?
しびれました!物理的にもしびれていました。独特の緊張感の中で、手足がピリピリしびれることってありません(笑)?そういう感覚です。久々に味わいました。
――身震いとはまた違う感覚ですね(笑)。この「読奏劇」は、文学作品を“MV風”に仕立てることをコンセプトにしていますが、企画のお話を聞いた時はどのように感じましたか?
まず、プロデューサーの方にミュージカル『刀剣乱舞』のMVでとてもお世話になっていたんです。違う部署に異動されると聞いた時は、寂しくて。だから、こうしてまた違う形で一緒にお仕事をできる機会をいただけてとても嬉しかったです。
朗読劇を映像、しかもMVっぽく撮るというのは、今まで経験したものとはまた違うアプローチで、画期的だなと思って、撮影を心待ちにしていました。読む作品も、決められたものではなく自分に合ったものを選ばせていただけたので、そういう意味でも楽しかったです。実際に撮影していただいている中でも、楽しさが増していったので、この企画がどんどん広がっていけばいいなと思っています。
――有澤さんが読まれた、小川未明さんの「負傷した線路と月」は知る人ぞ知る作品だと思ったのですが、なぜこの作品を選ばれたのですか?
どんなものを読みたいか聞かれた時に、優しい気持ちになれる作品、そういう雰囲気のものをやりたいなと思ったんです。それをお伝えしたところ、いくつか作品を提示していただきまして、その中から決めました。最後2つまで絞って、すごく迷ったんですけど。
僕、小川未明さんは存じていたんですが、この作品は知らなくて。皆さん的にはどうなんだろう?小川さんの作品って、短編が多いので読みやすいですよね。僕、本を読む時は短編を選ぶことが多くて。自分の読みたいイメージや、好きな傾向の本というところがマッチして、この作品を選びました。
――ちなみに、最後は何と迷ったんですか?
織田作之助さんの「天衣無縫」とどちらにするか迷っていました。「天衣無縫」は、妻から見た天真爛漫な夫の姿を描いた作品で、語り手が女性なんですよね。女性として朗読するのもおもしろそうだなと思ったんですが、めちゃめちゃ難しいなとも思って・・・(笑)。
この「負傷した線路と月」の語り手は、人間ではない。レールの気持ちになったり、花の気持ちになったり・・・僕にとっては、これもまた新しいなと思って、こちらの作品に決めました。僕、結構モノの気持ちが分かる方なので、すごく共感できたんです。電車に乗っている時とかも、レールは絶対痛いだろうなと考えることもあったし・・・。
――とても有澤さんらしいお考えだなと思います。
誰が悪いとか、決めつけるのではなく、表面上のことだけではない本当のことって、その人の気持ちになって考えてみないと見えてこないものだと思うんです。このお話の中では、レールとか、花とか、月といったモノをキャラクターとしてメッセージが描かれているので、普段気づかないことを考えるきっかけになるんじゃないかなと思って。僕自身、この短編を読んで「寄り添う気持ちが大事だな」ってすごく感じたので、そういうメッセージを伝えられたらなと思って、選びました。
――国語力と共感力が鋭いんですね。
僕、学生の頃も国語の点数がめちゃめちゃよかったんですよ。古典も現代文も得意で。昔から、現代文は特に好きだったんですよね。
――国語を好きになる、何かきっかけがあったんですか?
小学生の時に、読解力を上げるために読んだ本がすごく楽しかったんです。あさのあつこさんの児童小説「バッテリー」だったんですけど。野球が好きだったことも大きいんですが、「そこはどういう気持ち?」と一つ一つの場面を考えていくことをしていました。そこからハマって、国語がどんどん好きになっていきました。小学校4年生の頃の話です。
――今回の朗読は、いつも舞台上で拝見する有澤さんのお芝居とはまた違って、素の有澤さんに近いような印象を受けました。
リモートで朗読劇をさせていただく機会が増えていたりもして、朗読劇だからできるチャレンジもあるなと実感しました。こういう穏やかな芝居をする機会もあまりなかったので、この作品を選んで良かったかなと。でも、一つだけ後悔したことがあって・・・。
――後悔、ですか?
はい。そもそも、「機関車」って言い慣れていない言葉だったなって。「機関車」のほかにも「汽車」と「貨車」とか、たくさん出てくるんですよ。言い慣れてなさすぎる言葉がたくさん出てくるのは、盲点だったなと・・・。練習しながら「何で言えへんねん!」って気持ちになったんですが、本番ではリラックスできる空気をスタッフさんが作ってくださったので、大丈夫でした(笑)。
――(笑)。有澤さんご自身は、撮影中には見えなかったかもしれませんが、文字や映像を投影するなど、幻想的な演出で絵的にもとても美しいものになっていました。
映像は、役者というよりも監督の腕の見せどころだと思うので、僕も出来上がりを想像してワクワクしていました。肺にスモークが入るぐらいたくさん焚いていらっしゃいましたし(笑)。プロデューサーさんも「エモい!」と言ってくださったので、完成形を見るのが楽しみです。
――今年は、演劇を取り巻く状況が大きく変わってしまい、いろんなことがありましたが、有澤さんご自身はどんなことを考えていらっしゃいましたか?
できなかった公演(ブロードウェイ・ミュージカル『ウエスト・サイド・ストーリー』Season3)のことは、自分としてはとにかく悔しかったです。人生のターニングポイントにも成り得るような作品だと思い、めちゃめちゃ気合いを入れて臨んでいたので・・・。準備にも1年以上かけていたので、中止になってしまった時は気持ち的にどんっと落ち込んでしまったのですが、改めて舞台に立てる喜びや、満員のお客様の中で芝居をできていた環境って、特別なことだったんだと気づくこともできました。
その一方で、ソーシャルディスタンスを考えた新しい演劇作品もたくさん生まれてきているので、自分も今できることを考えていかなければと。舞台に立つだけではない、+αの表現を考えていかなきゃいけないなって思うようになりました。
――この「読奏劇」も、そういう状況の中から生まれましたからね。
そうですよね。僕も、上京してからあんまり本を読むことがなくなってしまっていたんですが、最近また読むようになったんです。これを読みたいっていう目的も持たずに、本屋さんにふらっと入ってみたり。本の匂いって、いいですよね。時々かぎたくなります(笑)。
――この作品も、初めて触れる方が一緒にページめくるように観てくださったらいいですね。
ファンの方は僕らよりたくさん知識をお持ちなので、きっとこの作品をご存知の方もいらっしゃると思いますが、僕が皆さんに「見せたい自分」としてアプローチしようと思い選んだ作品です。誰もが知る作品を読むのもいいなとも思いましたが、僕の読む作品が「この作品で良かった」と思ってもらえたらいいですね。
――配信当日は、お客様と一緒に時間を共有しながら観ていただくので、ぜひメッセージをお願いします。
一緒に見ることは、めちゃくちゃ恥ずかしい(笑)。深夜の2時ぐらいにやる番組のような雰囲気なので、少し夜ふかしをする時のような気持ちで、楽しんでもらえたらと思います。ラインナップを見ると、どの作品もとてもおもしろそうで。僕だけではなく、他の方の作品とも見比べて、違いを味わってほしいです。皆さんに会えない時間が続いてしまっている中、新しいエンターテイメントとして、「つらいのは君だけじゃないよ」って寄り添えるような、優しくて前向きな気持ちになってもらえるような作品になっていたら嬉しいです。
作品情報
『Dream Stage -読奏劇-』
【#7】11月7日(土)21:00~
有澤樟太郎
朗読作品「小川未明 著 / 負傷した線路と月」
チケット:https://ima-ticket.com/event/187
【#8】11月10日(火)21:00~
佐藤流司
朗読作品:「芥川龍之介 著 / 藪の中」
チケット:https://ima-ticket.com/event/188
※配信開始後、途中入場可
※アーカイブ配信あり
<シリーズ作品配信中>
【#1】アーカイブ配信(11月30日まで)
太⽥基裕
朗読「シャルル・ペロー 著/眠れる森の美女(原題:眠る森のお姫さま)」
https://ima-ticket.com/event/117
【#2】アーカイブ配信(11月30日まで)
⼤平峻也
朗読「小泉八雲 著/雪女」
https://ima-ticket.com/event/118
【#3】アーカイブ配信(11月30日まで)
崎⼭つばさ
朗読「太宰治 著/走れメロス」
https://ima-ticket.com/event/119
【#4】アーカイブ配信(11月30日まで)
橋本祥平
朗読「ヴィルヌーヴ 著/美女と野獣(原題:ラ・ベルとラ・ベート『美し姫と怪獣』)」
https://ima-ticket.com/event/120
【#5】9月30日(水)21:00~
牧島輝
朗読「宮沢賢治 著/注文の多い料理店」
https://ima-ticket.com/event/158
【#6】11月4日(水)21:00~
北村諒
朗読作品「夢野久作 著 / 瓶詰地獄」
チケット:https://ima-ticket.com/event/186
【公式Twitter】@dreamline_inc
【公式サイト】https://dreamline.link/dream_stage
【チケット】イマチケ https://ima-ticket.com/dreamstage