2020年10月29日(木)に東京・新宿FACEにて幕を開ける舞台『真夜中のオカルト公務員』。本作は、KADOKAWAのWebマンガサイト・コミックNewtypeで連載されているたもつ葉子の人気漫画の初舞台化作品。新宿区役所の「夜間地域交流課」に配属された宮古新を取り巻く不思議な人々(?)の姿を描く。
宮古新として主演を務めるのは、谷水力。谷水は、これが自身2度目の主演舞台となる。コロナ禍の影響を受ける中、約8ヶ月ぶりに舞台に立つことになる谷水が考えていることを聞いた。
――この作品の上演発表があった時は、ちょうどいろんな舞台の中止が相次いでいたタイミングということもあり、喜びの声がたくさん聞かれました。
僕も、率直に嬉しかったです。8ヶ月ぶりぐらいになるのかな・・・舞台に立つの。しかも座長ということで、不安もあったんですが、ファンの方々がすごく喜んでくれていたので、よかったなという気持ちの方が大きかったです。心配してくれていた皆さんに恩返しというか、良いプレゼントになるような公演にできたらいいですね。
――本作は、「オカルト」という「公務員」というミスマッチな組み合わせが非常におもしろいですね。
原作やアニメ版も拝見したんですけど、都庁とか、新宿御苑とか、見たことのある光景がたくさん出てくるけれど、そこには「夜間地域交流課」とか、「アナザー」とか不思議な要素もたくさんある。SFっぽいけれど、本当にありそうで、境界線があいまいになりそう・・・。そんな不思議なおもしろい作品だなと思いました。
――個性の強いキャラクターもたくさん出てきますが、主人公の宮古新は、谷水さんの目にどう映っていますか?
新は、いわゆる“普通”の若者ですよね。でも、その普通さが、共感しやすさを生んでいるのかな。例えば、新がヤンキーだったり、すごくチャラかったりしたら、また全然違った作品になっていたでしょうから、そういう意味で新の存在というのはこの作品にとってすごく重要な役割を果たしているんじゃないかなって思います。これを舞台で表現するとなると、“受け”の芝居が大事になってくるのかなと。
――演じる上では、そこが重要なポイントになりそうですか?
そうですね。他の登場人物と比べてみても、新はいろんなことを繊細に表現できるキャラクターだと思うので、そこを大事にしたいです。芝居を受けながら、そこで生まれる感情を稽古の中で一つ一つ見つけ出して、大切にしていきたいです。
――ちなみに谷水さんは、不思議な存在を信じていますか?
小学校の頃、友達にそういう子がいたので、信じてます。毎朝一緒に登校するような、仲の良い友だちだったんですけど、ある日号泣していて。どうしたのかと思ったら、急に見えるようになったらしいんですよ。不思議な存在って、お化け屋敷みたいに突然出てくるものかと思っていたんですが、その子が言うには、そこら中にうじゃうじゃいるそうで・・・。
――ええっ?!谷水さんご自身は不思議な体験をされたことは・・・?
金縛りにあったことがあるぐらいかなあ。怖くていろんな人に相談したら、枕の下にハサミを入れるといいって教えていただいたのでやってみたら解決しました。前に住んでいたところでの体験だったので、もしかしたら場所に何かあったのかもしれませんね。
こういう話をするのは好きだし、You Tubeでもオカルト関連の動画とかつい見ちゃうんですよね。・・・でも俺、寄せつけちゃうタイプって言われたことがあって。憑かれやすいらしいです。自覚はないので、「イブン=グハジスプレー」(作中で“アナザー”を視ることが難しい人のために視やすくするためのスプレー)欲しいですね。「イブン=グハジスプレー」も、演劇的にどう表現するのか楽しみにしていてください!
――共演者の皆さんについては、初めてご一緒される方が多いですよね。
磯野大くんは、舞台『刀剣乱舞』でご一緒させていただいているんですけど、あとはほとんどの方が初めましてで・・・。あ、でも釣本南くんはプライベートで会っていたんですよ。「いつか共演したいね」って言っていたので、やっと実現できて嬉しいです。
――そして、今回上演される新宿FACEは“まさにこの作品の舞台”と言う場所にありますね。
これ、感慨深いですよね~。実際に、原作の舞台になっている場所で公演ができるってなかなかないことだと思うので、僕らもそうですけど、きっとお客様にも特別な感覚を持ってもらえるんじゃないかなあって思っています。多くの方が、きっと新宿駅で電車を降りて、新宿の街の中を歩いて劇場に来てくださると思うんですけど、そこからすでに何かが始まっている感じでワクワクして頂けるんじゃないかなあ。
――谷水さんにとって、劇場ってどういう場所ですか?
劇場は、やっぱり特別な場所です。ファンの皆さんと、イベントで交流させて頂いたりすることもありますが、そういう時間とはまた別で、舞台上と客席の、心が通じ合う瞬間・・・って言うのかな。そういうことを感じる瞬間があるんです。ほかでは絶対に味わえない感覚。だから、板の上は神聖なもので、特別な場所です。
コロナの影響で、今までに比べると人と人との間に距離ができてしまいましたし、今まで以上に僕たちがいて、お客さんがいて、自由にお芝居ができるということが当たり前じゃなくなってしまったので、そこに対する感謝は舞台に立てていない間にもすごく感じていましたし、自分の力ではどうにもならない不甲斐なさみたいなものも頭をよぎりました。少しでも早く、あの心が通う瞬間を近くに感じられる日が来るといいです。
――・・・8ヶ月ぶりに舞台から見る景色は、どんなでしょうね。
どんな風に見えるんだろう・・・泣いちゃうかもしれない(笑)。
――お話をしてきて、谷水さんご自身にすごく変化を感じたんですが、二度目の主演決定はご自身の中で何か影響していますか?
本当ですか!ありがとうございます。初主演をやらせて頂いた時(舞台『俺たちマジ校デストロイ』)は、どうすればいいのか分からなくて、結構悩んだんです。いろんなことを考えましたし、今まで以上に「自分がやらなきゃ」というプレッシャーも感じていました。
2度目の主演をやらせていただくことが決まって、今回ももちろんプレッシャーもいい意味で感じましたが、初めての時ほど座長って意識せずに、ガチガチにならずにいられる気がしています。その方が、周りの皆さんとの関係もフランクになるし、稽古場で生まれるものも増えると気づけたので。探り探りではありますが、いろんなことに挑戦しながらやっていけたらなって思います。
――谷水さんにとっても、お客様にとっても、良き時間になるとよいですね。
こういう状況の中でも、舞台をすごく楽しみにしてくださっている方はもちろん、原作やアニメが好きで観に来てくださる方に、僕たちは役者としてその期待に応えたいと思っていますし、一つでも多くの共感を持っていただけるような作品を作ろうと取り組んでいるので、ぜひ、期待して足を運んでいただけると嬉しいです!
公演情報
舞台『真夜中のオカルト公務員』
2020年10月29日(木)~11月7日(土) 東京・新宿FACE
【原作】たもつ葉子「真夜中のオカルト公務員」(KADOKAWA)
【脚本】守山カオリ
【演出】扇田賢
【出演】
宮古新:谷水力
榊京一:磯野大
姫塚セオ:とまん
仙田礼二:田中稔彦
琥珀:釣本南
狩野一悟:瀬戸啓太
狩野一茜:永瀬千裕
千草健二:毎熊宏介
玉緒勝己:石賀和輝
清水翔太:竹鼻優太
天狗:斎藤直紀
蚕神:倉田瑠夏
伊東征哉 柳下陸 辻村晃慶 久保早里奈 淺田みなみ 水野彩
【公式サイト】http://www.wup-e.com/mayonaka-stage/
【チケット購入】https://enterstage.jp/wp/database/2020/10/2269.html
(C) Yohko Tamotsu・KADOKAWA / (C) 2020 舞台「真夜中のオカルト公務員」製作委員会
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)