9月30日配信!『宮沢賢治 著/注文の多い料理店』はコメディ?牧島 輝の「読奏劇」収録レポート

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「Dream Stage(ドリームステージ)-読奏劇-」の第5弾、牧島 輝の朗読「宮沢賢治 著/注文の多い料理店」が、9月30日(水)21:00より配信開始となる。朗読劇初挑戦となった牧島だが、持ち前の勘の良さと、イマジナリーな作品世界を具現化する力の強さを発揮した様子をレポートする。

本企画には、牧島のほか、有澤樟太郎、太田基裕、大平峻也、北村諒、崎山つばさ、佐藤流司、橋本祥平(50音順)と計8名の俳優が参加している。各出演者が読む文学作品については、俳優の希望に沿うものをピックアップしてきたが、牧島の場合は「宮沢賢治作品を」というクリエイター側の提案とすり合わせる形で決まった。

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牧島に「宮沢賢治作品を読んでほしい」と希望していたのは、監督を務める鎌田哲生(ミュージカル『刀剣乱舞』のMVを担当)。鎌田と牧島は、出演舞台のバックステージなどでこれまでも一緒に仕事をする機会があり、そこで見せる牧島の“素顔”からイメージを導き出したという。

興味深かったのが、牧島が選択した『注文の多い料理店』を、鎌田が“コメディ”と捉えていたこと。『注文の多い料理店』は、宮沢賢治が1924年に発表した童話集に収められている作品だ(副題には「イーハトヴ童話」とついている)。ちなみに、存命中の宮沢賢治はほぼ無名の存在で、生前に出版されたのはこの童話集と「春と修羅」のみである。

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童話として教科書にも載っている本作だが、出版の際の広告文には「糧に乏しい村のこどもらが都会文明と放恣な階級とに対する止むに止まれない反感です」とあったそうで、創作する際に込めた宮沢賢治の思想が透けて見える。子どもの頃、無邪気に読んだ話が、大人になった今読むと風刺の効いた話に変貌するのは、物語の受け手として自分が成長しているのを感じられる点だ(ここでは割愛するが、物語には様々な視点が込められているので、興味を持ったら調べてみるのもオススメしたいところ)。

ちなみに、牧島の読む作品の候補にはもう一つ『セロ弾きのゴーシュ』も挙がっていたそうだが、収録を取材する中でこの選択は大正解だったと感じた。『注文の多い料理店』という誰もが知る物語が、牧島という俳優が持つ天性の雰囲気と、作品の持つアイロニカルなおもしろさが響き合う良質の“コメディ”に仕上がった。

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そんな牧島だが、朗読を行うのはこれが初めて。収録開始前には、「読む時は、普通に本に目を落としてもいいですか?」などとしっかり確認をしていた。撮影が行われたのは、こだわりの英国家具が置かれたダイニングのような一室。実は、この場所は第3弾に登場した崎山つばさと同じ撮影場所なのだが、撮影する角度を変えるだけでまったく違う光景が出来上がる。

大きな食卓を前に、並べられた3脚の椅子。監督の鎌田は、中央に牧島、両脇の椅子にスタッフが座る距離について、カメラを通して入念に確認している。牧島の目が、キョロキョロと左右に揺れる。これから始まる撮影がどのように進むのか、掴み取ろうと神経を張り巡らせているようだった。

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鎌田の頭の中にあったのは、物語を人物ごとにパート分けして撮影し、合成などを加えながら一本の作品にすること。バンドで言うところの、楽器ごとのソロパート撮影に似ているかもしれない。牧島は「地の文」「青年紳士A」「青年紳士B」「二匹の山猫」「看板」に分けて1冊の本を読み上げていった。

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リハーサルで数ページ読む牧島の様子を見て、鎌田は「うん、いいね!」と顔をほころばせる。宮沢賢治の“クレイジー”な感じがよく出ていると、自分の目の確かさに自信を深めたようだ。本番、熱が入り牧島が手に持つ本の位置が高くなってきてしまった時に止めるのを忘れてしまうぐらい、その朗読にのめり込んでしまうことも。

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それぐらい、牧島の朗読には不思議な魅力があった。太くて落ち着いていて、よく響くいい声。そして、牧島の声はイメージを想起させる。「青年紳士A」「青年紳士B」はそれぞれこんな顔をしていて・・・など、目にしているのは牧島自身の姿なのに、その向こうにある“きっとこんな感じ”というイメージに導く力がとても強い気がした。

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おもしろかったのが「看板」の表現。部屋のあちらこちらに牧島が立ち、一つずつ作中の看板に書かれている文字を無機質に読み上げていく。そして「二匹の山猫」については、鎌田から唯一、具体的な演出指示があった。オーダーされたのは「漫才のように演じてほしい」ということ。牧島は「漫才・・・?!」と少々驚いていたようだが、果たしてその仕上がりは・・・?

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一足先に完成形を見せてもらったが、牧島の作品は“「朗読」を楽曲の「MV」のように仕立てる“という本企画のコンセプトを、最も忠実に形にした印象だ。映像ならではの手法を余すことなく使い、どこか洋楽のような雰囲気もある洒落た作品が誕生した。

そして何より、牧島 輝という俳優の魅力が炸裂している。牧島は、ミュージカル『テニスの王子様』3rdシーズンの海堂薫役、MANKAI STAGE『A3!』の碓氷真澄役、ミュージカル『刀剣乱舞』の大倶利伽羅役、舞台『炎炎ノ消防隊』の主人公・森羅日下部役など、2.5次元の人気作品の中で役を射止めてきた。キャラクターをしっかりと演じきる彼が魅力的なことは言わずもがな。さらに、監督の鎌田が「コメディをやらせてみたい」と感じたように、この「読奏劇」を観た人はもっともっといろんな役を演じる「牧島 輝」という役者が見たくなる。そして、なんとなく「牧島 輝」という俳優に興味がある方。見逃してしまったらいつか本気で彼の魅力に取り憑かれた時に後悔する。この予言はきっと当たる。今、そんな確信がある。

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目次

『Dream Stage -読奏劇-』

【#5】9月30日(水)21:00~
牧島 輝
朗読「宮沢賢治 著/注文の多い料理店」
チケット:https://ima-ticket.com/event/158
※配信開始後、途中入場可
※アーカイブ配信あり

<シリーズ作品>

【#1】アーカイブ配信(11月30日まで)
太⽥基裕
朗読「シャルル・ペロー 著/眠れる森の美女(原題:眠る森のお姫さま)」
https://ima-ticket.com/event/117

【#2】アーカイブ配信(11月30日まで)
⼤平峻也
朗読「小泉八雲 著/雪女」
https://ima-ticket.com/event/118

【#3】アーカイブ配信(11月30日まで)
崎⼭つばさ
朗読「太宰治 著/走れメロス」
https://ima-ticket.com/event/119

【#4】アーカイブ配信(11月30日まで)
橋本祥平
朗読「ヴィルヌーヴ 著/美女と野獣(原題:ラ・ベルとラ・ベート『美し姫と怪獣』)」
https://ima-ticket.com/event/120

※以降順次出演者・配信⽇・朗読作品を発表予定!

【公式Twitter】@dreamline_inc
【公式サイト】https://dreamline.link/dream_stage
【チケット】イマチケ https://ima-ticket.com/dreamstage

(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)

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この記事を書いた人

ひょんなことから演劇にハマり、いろんな方の芝居・演出を見たくてただだた客席に座り続けて〇年。年間250本ペースで観劇を続けていた結果、気がついたら「エンタステージ」に拾われていた成り上がり系編集部員です。舞台を作るすべての方にリスペクトを持って、いつまでも究極の観客であり続けたい。

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