2020年6月13日(土)23:00に、演劇ユニットPUBLIC∴GARDEN!(パブリックガーデン!)がオンラインリーディング公演vol.2『ピアニシモ』を生配信で上演する。これに先駆け、前日にはオンライン公開ゲネプロが行われ、PUBLIC∴GARDEN!の元吉庸泰、米原幸佑、板倉光隆、初参加となる村井良大と小泉萌香が取材に応じた。
今回も、出演者であり、元吉が主催する劇団エムキチビートメンバー・若宮亮の司会で進行。一同は、オンラインリーディング公演として打ち出した第1弾、読『芥川龍之介 地獄変』を経て感じたことや、Zoomを使った作品作りの可能性など、率直な思いを語ってくれた。
今回上演する「ピアニシモ」は、1989年に第13回すばる文学賞(集英社が主催する純文学の公募新人文学賞)を受賞し、翌年に発売された辻仁成の処女作。都会のコンクリートジャングルを彷徨う孤独な少年の心の荒廃と自立への闘いを描いた、新時代への青春小説だ(なお、辻は2007年に同作の世界を再構築した「ピアニシモ・ピアニシモ」も発表している)。今回、作・演出の元吉が同作を上演台本として仕上げた。
前回の公演を経て、元吉は「今の状況下でも、お客様が安全に、何の気兼ねもなく楽しんでもらえることに、とても大きな可能性を感じた」という。そんな中で、次にどんな物語を届けていくか。この第2弾が動き出したのは、読『芥川龍之介 地獄変』の初週を終え、Zoom越しに乾杯をしている最中だった。
辻が演出を手掛けた舞台『海峡の光』の演出補佐を元吉が務めるなど、かねてから親交のあった辻の「ピアニシモ」がやりたいと思い立ち、衝動的に辻にLINEを送ったという元吉は、「フランスにいる辻さんから、すぐに電話がかかってきたんです。『まどろんでいたら君からLINEが来たよ』と、すごく詩的な言葉からお話が始まったんですけど(笑)」とその時を振り返った。
「“孤独である”ということとどうやって戦っていかなければいけないか、どうやって人と手を繋ぐのか。今の僕らにも通じる、センセーショナルな題材が詰め込まれた本なので、ぜひこの物語を何かしらの形で届けたい」という申し出を、辻は快諾。元吉は「梅雨のお話が梅雨にできる幸せを感じていきたいと思っております」と新作を打てる喜びを噛み締めていた。
前回の読『芥川龍之介 地獄変』は一度舞台で上演した作品。今回は、リーディングとしての完全新作となる。板倉は、パブリックガーデン!として新たな挑戦ができることへの喜びを語り、「パブリックガーデンとしては、徹底的に楽しいと思えるモノづくり精神を忘れず、配信という形ですが今後も演劇にこだわって参ります。キャストの皆さんとお客様と過ごす素敵な時間を楽しみにしているので、これからもどうぞよろしくお願いします」と呼びかけた。
今回も、稽古は完全リモート。初参加の小泉は、実は全員初と初対面だったそうだ。オンラインで生のお芝居をすることも初めてということで、「参加する前は(お芝居に)タイムラグができてしまうのではと心配していたのですが、そんな心配は杞憂でした。皆さんとはカメラ越しごしにしか顔を合わせたことはないんですけれども、引っ張っていただき、がんばって追いつこう思っております」と少々緊張気味の中コメント。
村井も、生配信で芝居をするのは初めて。「生のお芝居に触れる機会も久しぶりで、すごく緊張もするんですが、『この緊張感を僕は待っていたんだな』という感覚を、本番を控えたこの時点でも感じます。そして、この“ライブ”で届けるということは、芸術としてなくしてはいけないものだなと思いました」
「座組の皆さんが機械に強くて『今、すごいことをしているんじゃないか』と思う節が多々あるんです(笑)。これまでの舞台で、台本を読んだ時にやりたいけれどできずに悔しい思いをした表現がZoomだとできることもあり、本当に新しい形の演劇だなと思いました。このチームに参加できたことを幸せに思っています。この作品を皆様にお届けできるように、がんばっていきますのでぜひ楽しみにしていてください」と率直な気持ちを述べた。
最後に、米原は「台本があって物語があるということは、役者にとってどれだけ幸せなことなのだろうと、前回噛み締めました。パブリックガーデン!として新しいものを、はじめましての方を含む素敵なメンバーとやらせていただきます。たくさんの方に観ていただけることが一番嬉しいことなので、ぜひ、楽しんでください」と締めくくった。
【あらすじ】
透(村井)とヒカル(米原)。
どんな時もふたりは共にあり。ふたりは縛り合う。そうやって生きてきた。ふたり。
転校を繰り返す透は、高校3年のある日、その学校へ転校をしてきた。
澱んだ水たまりが日を受けて、甘酸っぱい匂いのするその場所で、彼はいじめに遭う。
ヒカルと共に灰色の街を彷徨い、マッチングアプリで出会ったのは地獄にいるという少女サキ(小泉)だった。
これは、とても柔らかく、殺されていく世界に生きる、ふたりの、物語。
本作には、会見登壇者のほか、祁答院雄貴、小野川晶(虚構の劇団)も出演。また、音楽・ピアノは吉田能(あやめ十八番)。「ピアニシモ」という音楽用語を噛みしめるような生演奏が、物語にそっと寄り添う。
辻らしい、独特の瑞々しさとひりつく言葉を、元吉は今の時代に合わせながら丁寧に舞台に落とし込んだ。Zoomの機能もフル活用され、演出面でテクニカルにフル活用されている。リアルでは実現しない、オンライン上演ならではの表現が詰まっている。
村井と米原は、共に多数の作品に出演しながらもこれが初共演。過酷な現実の中に身を置く透と、彼にしか見ることのできないというヒカル。対象的な二人を、村井と米原はそれぞれの役に違うベクトルから繊細にアプローチしていく。
小泉の演じるサキとの“顔の見えない”出会いを通して浮き彫りになっていく孤独な少年が成長は、何かとまだまだ窮屈な日常を過ごす自分と重なる。特に、限られた枠の中でもがくように感情を爆発させる村井の姿は、画面のこちらの心も激しく揺さぶる。叶うことなら、このキャストで劇場公演も実現することを願ってしまう。
しっとりとした夜を超え、薄雲の向こうに朝日を感じて目覚めるまで続くような、とても余韻の強い作品だ。
PUBLIC∴GARDEN! オンラインリーディング公演vol.2『ピアニシモ』は、ZOOM THEATERにて6月13日(土)23:00から配信。
【配信URL】https://match-ing.jp/pianissimo/
※事前に、アプリケーション[ZOOM] https://zoom.us/jp-jp/meetings.htmlのダウンロードが必要
【チケット】https://match-ing.jp/pianissimo/
【公式サイト】http://e-stagetopia.com/online-reading-pianissimo/
【公式Twitter】@p_gardeofficial