朗読劇『ノンセクシュアル』レポート!相葉裕樹、鯨井康介、相馬圭祐らが紡ぐ表裏一体の“愛と執着”

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2020年6月14日(日)・6月16日(月)・6月17日(火)の3日間、朗読劇『ノンセクシュアル』のリーディング動画配信が配信される。本作は、新型コロナウイルスの影響で劇場での公演を朗読劇の形に変更して行うもの(上演は2021年秋以降に延期)。配信に先駆け、上演予定だった神奈川・横浜赤レンガ倉庫1号館 3Fホールにて事前収録が行われた。その模様を舞台写真と共にレポートする。

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原案は、1998年に発表された森奈津子の同名小説。もともと女性目線で進む作品だが、今回の舞台化では主人公を男性に変更。主人公の職業も小説家からバンドマンにするなど手を加え、「愛と執着」が生み出す表裏一体の物語を作り上げた。

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出演者は、相葉裕樹、鯨井康介、相馬圭祐、さかいかな、松村龍之介の5名だけ。相葉、鯨井、相馬はそれぞれ二人の登場人物を演じる回代わりのWキャスト。さかいと松村はどちらも同一役を演じる。

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舞台の上に用意されていたのは、木製の枠に透明なビニールシートをぐるりと張り巡らせた四角いブース。開演前、俳優たちは非常にリラックスした状態だったが、台本を手にゆっくりとブースへと向かう背中からは、妙な気が立ち昇っているような気がした。それは「芝居ができる」という、俳優たちの震えるような喜びだったかもしれない。それはきっと、映像にもにじみ出る。

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「映画のR-15と同程度のセクシュアルな表現」を含む本作には、5つの定義が出てくる。異性・同性に関わらず性的・肉体的な欲望を抱く「バイセクシュアル」、他者に恋愛感情は抱くが性的欲求は抱かない非性愛「ノンセクシュアル」、他者に恋愛感情も性的欲求も抱かない「アセクシュアル」、同性愛者「ゲイ」、異性愛者「ヘテロセクシュアル」。それぞれ違えど、どれも愛。

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(以下、物語のあらすじに触れています)

主人公でバンドのボーカル・藤木瑛司(相葉/相馬)はバイセクシャル。バイである自分にも愛情にもフランク故に、浮気も二股も不可抗力。そんな彼に、デパートの外商である冨永秀樹(松村)と新聞記者の浅井塔子(さかい)は振り回される。ゲイであり一途に尽くすタタイプの秀樹と、自然消滅的に別れたものの諦めきれないヘテロの塔子、どちらの理解も得られない中、瑛司は村山蒼佑(鯨井/相葉)という青年に揉めごとから救われる。

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何か感じるものがあった瑛司は、蒼佑と急速に仲を深めていく。性的関係への嫌悪感を顕にする蒼佑について、瑛司の友人でアセクシャルであることからカモノハシに興味を持ち研究する秋野侑李(相馬/鯨井)は、「彼はノンセクシュアルではないか」と興味を持つ。瑛司と蒼佑は互いのことを少しずつ話しながら「友人」としての距離を詰めていくが、その好意はありえない事態へと発展していく・・・。

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なおゲネは、瑛司:相葉、蒼佑:鯨井、侑李:相馬の<スペードバージョン>で行われた(ソーシャル・ディスタンスを保ちながら少人数で実施)。相葉の明るい声色は奔放に見える瑛司の「愛」に対してどこか踏み込みきらない心の内を響かせ、鯨井の抑えた芝居は蒼佑という人間の中に渦巻く形容詞しがたい「執着」の念を灯す。そして、相馬はあっけらかんとした役作りで侑李の根底にある「情」を際立たせていく。

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この配役は三者三様、実にぴったり。怖いぐらいハマっている故に、もう一つの瑛司:相馬、蒼佑:相葉、侑李:鯨井という配役<クローバーバージョン>はまったく違う様相の仕上がりとなっていそうで、観たいという「欲」をそそる。

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松村が演じる秀樹とさかいが演じる塔子は、男性と女性とそれぞれの立場から同じ人間を愛することになる。朗読劇のため肉体は伴わないが、濃厚接触を含む愛を二人がどうアグレッシブに表現していくのか注目だ。

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人間の感情はとても複雑で、すべてが絡み合っていて表裏一体だ。どこまでが友情で、どこからが愛情なのか。何が笑えて、何が恐怖なのか。朗読劇という制約がある中、俳優と俳優を肉体的に隔てる薄い膜・・・そして、観客と舞台を分かつ画面の向こうで、途方もない欲が膨れ上がる。

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他人がどう思うかではない、自分がどう思うのか。ぜひ、自分自身の目と耳で確かめてほしい。また、物語の中には、収録が行われた横浜赤レンガ倉庫の周辺にあるライブハウスや山下公園などが出てくる。願わくば、本作がストレートプレイとして改めて上演される際には“劇場”というロケーションも含めて、五感で感じるすべてを多くの人が享受できることを祈る。

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◆公演情報
朗読劇『ノンセクシュアル』(リーディング収録動画配信)
【公演期間】6月14日(日)・6月16日(月)・6月17日(火)

<スペードVer.>
瑛司:相葉裕樹 蒼佑:鯨井康介 侑李:相馬圭祐

<クローバーVer.>
瑛司:相馬圭祐 蒼佑:相葉裕樹 侑李:鯨井康介

6月14日(日)14:00回 クローバーVer.
6月14日(日)18:00回  スペードVer.
6月16日(火)14:00回  スペードVer.
6月16日(火)21:00回  クローバー Ver.
6月17日(水)14:00   クローバーVer.
6月17日(水)21:00回 スペードVer.

<配信視聴チケット 全8種類>
1. スペードVer.視聴のみ:4,200円
2.クローバーVer.視聴のみ:4,200円
3.クローバー&スペード 2Ver.視聴のみ:8,200円
4.DVD(非売品:イメージ版、インタビュー版)付 クローバー&スペード 2Ver.視聴  :12,000円
※3・4の2Ver.割引チケットは、同日に両Ver.を見る場合に限定
5.DVD付(非売品:イメージ版)クローバーVer.視聴:6,200円(DVD送付代込)
6.DVD付(非売品:インタビュー版)クローバーVer.)視聴:6,200円(DVD送付代込)
7.DVD付(非売品:イメージ版)スペードVer.:6,200円(DVD送付代込)
8.DVD付(非売品:インタビュー版)スペードVer. :6200円(DVD送付代込)

【チケット発売先】
SPWN:https://event.spwn.jp/account
※アカウント登録(無料)後、下記へアクセスし購入
※すでにSPWNの利用IDを取得されている方は下記から直接購入可能

6月14日(日)分
https://event.spwn.jp/events/200614-nonsexual

6月16日(火)分
https://event.spwn.jp/events/200616-nonsexual

6月17日(水)分
https://event.spwn.jp/events/200617-nonsexual

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(取材・文/エンタステージ編集部 1号)

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この記事を書いた人

ひょんなことから演劇にハマり、いろんな方の芝居・演出を見たくてただだた客席に座り続けて〇年。年間250本ペースで観劇を続けていた結果、気がついたら「エンタステージ」に拾われていた成り上がり系編集部員です。舞台を作るすべての方にリスペクトを持って、いつまでも究極の観客であり続けたい。

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