2020年1月24日(金)より京都・南座で開幕するイマーシブシアター『サクラヒメ』 ~『桜姫東文章』より~。ニューヨークで大ブームとなった“没入型演劇”が、なんと日本最古の歴史を持つ歌舞伎の劇場で上演される。改装により1階座席を取り外し、床をフラット化できるようになった南座で、どのようなことが行われるのか。気になるその稽古場を取材した。
今回、題材とするのは歌舞伎の演目『桜姫東文章(さくらひめあずまぶんしょう)』。死によって恋仲の相手と離れ離れになってしまったサクラヒメが転生し、自らの前に現れた5人の男たちの中から運命の相手を見つけ出す・・・という物語を、日舞や歌やダンスといったエンタテインメントを融合させて表現する。
出演者に名を連ねるキャストも、多彩だ。元宝塚歌劇団宙組の娘役スター・純矢ちとせ、川原一馬、荒木健太朗、「EXILE/FANTASTICS from EXILE TRIBE」の世界、愛知・岐阜・三重を元気にする次世代イケメンボーイズグループ「MAG!C☆PRINCE」の平野泰新、6人組ダンスボーカルグループ「Beat Buddy Boi」のToyotaka、イマーシブシアターを牽引するダンスカンパニー「DAZZLE」の高田秀文、卓越した歌唱力でアーティスト活動も展開する新里宏太など、様々なフィールドで活躍する面々が集結している。
演出を手掛けるのは、「DAZZLE」の荒井信治。稽古場に入ると、荒井を中心に作品の全体像を掴むべく、模型を使ったシミュレーションが行われていた。場に流れる音を聞きながら、各自の動きを確認。「ここの繋ぎは間を持たせよう」「ここは割と尺はあるから」「はけるタイミングは暗転をしっかり待ってからにしよう」と、模型を動かしながらそれぞれの動きを固めていった。
稽古の中で、荒木は「上からはどう見えるのかな・・・」と、仕切りに“上”の視点を気にしていた。今回、1階エリアのフラット空間には和風の装具を身にまとった観客が“都人(みやこびと)”として参加するほか、2階・3階エリアからも“雲上人(うんじょうびと)”として観客が見下ろすことになる。上からの視点は、DAZZLEがこれまで作ってきたイマーシブシアターでも前例がない。劇場に入ってからしか分からないことも多いため、稽古場では最大限の想像を膨らませながら、考えつく限りのパターンを探っていく。
取材時に行われていたのは、5人の男たちとサクラヒメが出会い、逢瀬を重ねていくシーンの稽古が行われていた。次々にサクラヒメの前に現れる男たち。それを受けて、サクラヒメ役の純矢が見せる表情もコロコロ変わる。
鳶役の平野は、これが初舞台。異例中の異例とも言える形式の舞台デビューに一時も落ち着いていられない様子で、身体を動かし続けていたのが印象的だった。「(ダンスの振付について)曲がかかるとテンパるな~・・・」と苦笑いしていた平野は、休憩時間も鏡に向かって動きを確認。
すると、町医者役のToyotakaや陰陽師役の川原も集まってきた。みんなで繰り返し動きを身に染み込ませていく中で、荒木は「今、前に出す足はどっち?」と細かいところをさり気なくフォロー。
DAZZLEの振付は難解だが、揃うとぞわっとするほど美しい。DAZZLEメンバーから唯一メインキャストとして本作に出演している盗賊役の高田は、「カウントがわからなくなりそうな不安な時は、舞台裏でもずっと踊っているといいよ」とニコニコしながらアドバイスをしていた。
取材時間内、雲上の導者役の新里の歌唱シーンや、義賊役の世界は多忙を極めるため稽古風景を見ることはできなかったが、彼らがどんなシーンを作り出しているのか、楽しみだ。
今回の『サクラヒメ』は、劇場空間すべてを使って行われる。仕切りなどはなくすべてがオープンスペースで行われるが、同時多発的に物語が進むため、演じている役者同士は互いが何をやっているのか分からないことも多いそうだ。演出の荒井も、すべてを把握しきることは難しいという。
さらに、物語の中では、5人の男たちがサクラヒメの愛を求めて愛憎劇を繰り広げる。その結末を決めるのは観客だ。毎公演、ラストでは裁決(投票)が行われ、その結果によってサクラヒメの心の向く方向が変わるのだ。
きっと、見る人の数だけ、見える景色が違う。歴史ある空間で、何を目撃するのか・・・。この“没入”する感覚は、きっと劇場でしか、演劇でしか味わえない。
イマーシブシアター『サクラヒメ』 ~『桜姫東文章』より~は、2020年1月24日(金)から2月4日(火)まで京都・南座にて上演される。上演時間は各回約70分を予定。
【公式サイト】https://kyoto-sakurahime.com
【English】https://www.shochiku.co.jp/engeki/minamiza/sakurahime/en/
【繁体字】https://www.shochiku.co.jp/engeki/minamiza/sakurahime/zh-tw/
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)