2020年1月13日(月・祝)から東京芸術劇場プレイハウスにて森田剛主演の舞台、PARCO PRODUCE 2020『FORTUNE(フォーチュン)』が上演される(※13日[月・祝]はプレビュー公演)。公開フォトコールと囲み会見が行われ、森田の他、吉岡里帆、田畑智子、根岸季衣、鶴見辰吾が登壇。公演への意気込みや“座長”森田の印象などが語られた。
本作は、『ブルーバード』『ポルノグラフィー』『オン・ザ・ショアー・オブ・ザ・ワイド・ワールド(広い世界の岸にて)』『ハーパー・リーガン』『夜中に犬に起こった奇妙な事件』など、多くの戯曲を生み出したイギリスの劇作家サイモン・スティーヴンスが、ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテの代表作でもある『ファウスト』を大胆にも現代のロンドンを舞台に置き換え、悪魔に魂を売った男の顛末を新たなに描き出している。演出は、イギリスを代表する劇場リリック・シアターの芸術監督経験を持つショーン・ホームズが手掛け、イギリスに先駆け日本で世界初上演される。
第一幕では、自分を幼い頃に捨てた父親とその自殺という事象から常に喪失感を抱えて生きてながらも若くして成功をおさめた映画監督・フォーチュン(森田)が、自分に対して素直に意見をぶつけてくる若きプロデューサーのマギー(吉岡)に好意を抱くも彼女は幸せな結婚生活を送っていた。欲しいものが手に入らない焦燥、そして逃れられない悲しみから、ドラッグディーラーとしてフォーチュンに接近してきた悪魔・ルーシー(田畑)に誘われるまま、半信半疑である“契約”を交わしてしまう・・・という物語を展開。
フォトコールでは第二幕のプロローグから第6場が公開された。フォーチュンとマギーは脚本家・リチャード(前原滉)と共に作品を書き上げ、ロサンゼルスへ持っていこうとする。その中で、フォーチュンはマギーのために“悪魔の力”を使って回りの人々を翻弄。その様子にマギーが恐怖を感じ始める姿が描かれた。
印象的だったのは常にフォーチュンの傍にいるルーシーだ。右腕としてフォーチュンの仕事をサポートしながら、フォーチュンが願いを口にすれば楽しそうに叶えていく。その姿は妖しくまさに“悪魔的”な魅力を持っている。フォーチュンもルーシーだけには素顔をさらし思うがままに願いを伝えていく。その関係性に2人なりの絆を垣間見ることが出来、2人がどんなやり取りをするのか目が離せなくなる。
また、手段は選ばず人としてどうなのかと思う行動が目立つフォーチュンは非情で“悪魔的”だが、それでも森田が描き出すフォーチュンはマギーに対し“純愛”を持って接しているように見えとても魅力的に感じた。マギーをバカにした男をヤギに変えたり、台本にケチをつける男にディスコダンスを躍らせたり・・・それだけを観ればとてもかわいらしい男に思える。この男がどんな風に地獄へと落ちていくのだろうか・・・と最後まで見届けたくなった。
公開フォトコールの後、囲み会見に登壇した森田は「いよいよ始まるなとドキドキしています。稽古期間含めてみんなと色々と話し合って変化が多い舞台だったので、やっとここに辿り着いたという達成感もあるんですけど・・・ここから始まるのでそわそわしています」と緊張感溢れるコメント。
悪魔に魂を売る男の物語ということで“怖い”印象のある本作だが「でも希望に溢れているんです、この作品は。もちろん刺激的なちょっと怖いシーンもあるんですけど、“諦めない”という大きなテーマがあるのでそこを感じてもらえればと思います」と語り、さらに「すごく複雑ですけど、繊細な愛が描かれています」とアピールした。
向上心が強く、真っ直ぐな信念を持った若き映画プロデューサー・マギーを演じる吉岡も「本当に変化が多い現場で、毎日新しいアイデアと発見がある現場でした。本番でどうやってお客さんに伝わるのかがすごく楽しみで、緊張しています」と語った。
また、ルーシー役の田畑は「先ほどまで稽古をやっていて、やっと全貌が見えてきました。不安もいっぱいあるんですけど、とりあえず楽しもうと思います!」語り、フォーチュンの母親・キャサリン役の根岸は「全員が着替えているか舞台の上に立っているような状況で。森田さんはもちろん出ずっぱりで大変なんですけど、誰も休ませない舞台です(笑)。ショーンが諦めない人なので、どんどん新しいアイデアを広げてここまで来ていて・・・まだこれから直しがあると思います(笑)」と、進化をし続ける舞台に戸惑いつつも楽しんでいるようだ。
そして鶴見も「何せ世界初公開ですから、我々は何回も稽古して練ってやってきました。お客さんがどういう反応するのか。悪魔に魂を売って、その代わりに成功を手に入れて、しかし地獄に落ちていくというこれをどう言う風にみんなが受け止めるのか、反応が楽しみです」と笑顔で語った。
稽古が始まったばかりの2019年11月に行われたクリエイターズ取材会ではショーンが「彼は全身を傾けて飛び込んできてくれる、非常に感情を大事にする俳優」と森田への印象を語っていたが、約1ヶ月半の稽古を経て森田は「諦めないんですよね、とにかくショーンさんが。とにかく日々変化、進化を求めている方なので中々貴重な経験でした」としみじみ。森田はショーンの言う通り全身を預け、感情を追求し、見事にフォーチュンを作り上げていた。
そんな森田を傍で見ていた吉岡は「どんな時もとても大らかな心で受け止めてくださるので、自分も初めてのことばかりで慣れていない舞台だったんですがきっとどんな(演技の)アプローチをしても受け止めてくださるんじゃないかと思いながらやっていました。とてもかっこいい座長だなと思いました」と森田の印象を語り「みんなでお食事会を開いてくださって、うれしかったです。楽しかったです。お寿司をお家でいただきました」と、ちょっと意外な“座長”エピソードを告白した。
また、根岸は“息子”役の森田について「愛しいです。これだけのセリフ量あるのに、よくめげないなと」と感心し、田畑も「とてもすてきだと思います。受け入れてくださる範囲がすごく広い。一緒にやっていてとても頼りになる、安心できる方だなと思います」とコメント。鶴見も「日に日にどんどん熟していって、良いキャラクターを形成しているなと思います。特にこのお芝居はエネルギーが必要なんですけど、我々は100人分演じようとがんばってるんですけど、森田さんは1000人分演じてます」とそのすごさを明かした。
共演者からの好評価に森田は照れた表情を覗かせながら「この言葉で勇気をもらえました。がんばれそうです」とコメント。また、記者からそんな座長っぷりをメンバーを見てもらえそうか聞かれると「どうでしょうね、来てほしいですね」と期待を口にした。最後に森田は「『FORTUNE』、世界初上演です。刺激的な舞台です。皆さんぜひ劇場にお越しください」とメッセージを送り、会見を締めくくった。
PARCO PRODUCE 2020『FORTUNEフォーチュン』は以下の日程で上演される。上演時間は約3時間(休憩20分含む)を予定。
【東京公演】2020年1月13日(月・祝)~2月2日(日) 東京芸術劇場 プレイハウス
※1月13日(月・祝)はプレビュー公演
【松本公演】2020年2月7日(金)~2月9日(日) まつもと市民芸術館 主ホール
【大阪公演】2020年2月15日(土)~2月23日(日・祝) 森ノ宮ピロティホール
【北九州公演】2020年2月27日(木)~3月1日(日) 北九州芸術劇場 大ホール
【作】サイモン・スティーヴンス
【翻訳】広田敦郎
【演出】ショーン・ホームズ
【美術・衣裳】ポール・ウィルス
【出演】
森田剛、吉岡里帆、田畑智子、市川しんぺー、平田敦子、菅原永二、内田亜希子、皆本麻帆、前原滉、斉藤直樹、津村知与支/根岸季衣、鶴見辰吾
岩崎MARK雄大、遠山悠介、渡邊絵理
【公式サイト】https://stage.parco.jp/program/fortune/
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 3号)