2019年10月25日(金)に大阪メルパルクホールにて、ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」~暁の調べ~が開幕した。本作は、世界中で愛され続ける岸本斉史の漫画『NARUTO-ナルト-』(集英社)を原作とした舞台化作品第2弾の再演。約2年ぶりに幕を開けた「暁の調べ」が、鋼のように鍛え抜かれた“強い”作品となって帰ってきた。うずまきナルト役として、本シリーズで主演を務め続けている松岡広大の言葉を交えながら、この“再演”の実像に迫る。
「暁の調べ」の初演は、2017年5月から8月にかけて、東京・シンガポール・大阪・上海で上演された。あれから約2年。ナルトに扮した松岡は、随分と“いい”顔つきになっていた。「自分でも思います。第1弾の初演の時は、17歳でしたし・・・」そう語る松岡の姿は、原作漫画の中でのナルトの成長とダブって見える。
一方で、変わらないのは「信念を持ってナルトを演じること」。「暁の調べ」では、ナルトが「終末の谷」でうちはサスケ(佐藤流司)と別れざるを得なくなった場面から始まる。修業のため木ノ葉隠れの里を離れていたナルトだが、2年半ぶりに戻ることに。そして任務の最中、大蛇丸(悠未ひろ)に関する情報を入手する。サスケは、一族を暗殺し抜け忍となった兄・うちはイタチ(良知真次)への復讐のため、大蛇丸のもとで力を手に入れようとしていた。果たして、サスケの復讐の行方は――。ナルトはサスケを連れ戻すことができるのか。
ナルトは、サスケを連れ戻すことを決して諦めない。その表現にも、大きな成長が見える。松岡は「今回、初演よりもはるかに殺陣の量が増えています。殺陣が増えるということは、運動量が多くなるということですが、弱音を吐くのではなく、自分の身体としっかり向き合って総合的に高い状態に持っていきたくて。ナルトの言葉どおり、自分を曲げず、諦めない。その言葉を自分自身にも自覚させ続けることを心がけていますね」と、その思いを重ねた。
2年という月日はあっという間でもあるが、再演に臨むキャストたちからは、過ごしてきた時間が密度の濃いものであった様子が伺えた。松岡も、自身の変化を感じているようで「2年前に比べて、台本の捉え方、読み方が非常に変わったと思います。白井晃さんや、いのうえひでのりさんとご一緒させていただく中で、言葉自体が持つ感覚の鋭さやニュアンスを、自分の中に落とし込んで表現する、改めて日本語をしっかりと考えることを学び、持ち帰れるものは持ち帰ろうと思って、ここに帰ってきました」と語っていた。
松岡が「帰ってきた」と表現した、本作。松岡は「主演をさせていただく公演であり、今までの自分の能力をぶつけられる場所でもあるので、ホームという感覚なんですよ。キャストの皆さんも気心が知れた方ばかりなので」と笑う。さらに、「新キャストのサイ役の定本楓馬やペイン役の輝馬さんが、新しい風を吹き込んでくださいました。このほか、佐藤丈と倉知あゆかも新しく参加してくれています。彼らは、アクロバットに殺陣、ダンスに加えて、役名のある役もやってくださっています。・・・アンサンブルという言い方は、呼称として世間的にも認知しやすいと思うんですが、僕らの舞台では、そう呼んではいないんです。各々、プライドを持って取り組む座組です」と、座組の充実を口にしていた。
また、演出の児玉明子のもと、殺陣として清家利一、振付として西川卓が新たに参加している。ブラッシュアップされたステージングには、松岡曰く「原作の中で描かれている一コマが、殺陣やダンスの動きの中に取り入れられているんですよ」。クリエイター陣からも、「NARUTO-ナルト-」への愛が込められている。
「再演だからといって、同じことをやるのは無意味だと思うんですよね。キャストも、演出の児玉さんも、この2年間にいろんな現場を踏んで、変化したものを持って、この作品に臨めているので・・・芝居も、いい状態で仕上がっていると思います」という松岡の表情には、自身がみなぎる。
「僕は演劇が好きです。そして、お客様に喜んでいただけることが一番の喜びです。役者は、評価してくださる方がいなければ、存在できないものですから。2年ぶりに帰ってこられたからには、帰ってきたからには、日々向上心を持ちながら、お客様に感謝し、お客様のためだけにがんばります。原作への愛をもって、真摯に、自分たちも楽しんで表現していけたらと思います。よろしくお願いいたします」と、作品を待っていてくれるファンへメッセージを贈った松岡。いよいよ、再演の開幕だ。
松岡が「だってばよ!」と叫び飛び出せば、劇場は一気に「ナルト」の世界。観客を映像など、細かなギミックが加えられているほか、新曲も追加されている。サスケ役の佐藤は、舞台上で放つオーラをさらに大きくしてきた。それに呼応するように、イタチ役の良知の歌声も高まっていく。二人の対峙シーンは、飲み込まれるような迫力に満ちていた。ナルトの登場人物は、どこか弱さを捨てきれず、それゆえに強い意思を持った、愛おしいキャラクターたちだ。今回の再演で、この関係性を「手」で巧みに表現しているように感じた。
また、「暁」に輝馬が加わったことが非常に大きく、本作を印象づける楽曲の数々がよりドラマティックに。サイ役の定本も、春野サクラ役の伊藤優衣とのコンビネーションなどでカカシ班に流れる空気をたんたんと、テンポ良く作っていた。そして、松岡演じるナルトを中心に、木ノ葉隠れの忍の面々、「蛇」、「暁」、それぞれのキャストが役割を果たし、一大スペクタクルを紡ぎ上げる。
ストーリー構成に、大きな変更はない。しかし、これを再演と言ってよいのかと思うほど、世界に打って出ることを期待してしまうような豊かな含みを持った仕上がりとなっていた。
ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」~暁の調べ~は、以下の日程で上演。上演時間は、約2時間15分(休憩15分含)を予定。
【大阪公演】10月25日(金)~11月4日(月・休) 大阪メルパルクホール
【東京公演】11月8日(金)~11月10日(日) TOKYO DOME CITY HALL
【東京公演】11月15日(金)~12月1日(日) 天王洲 銀河劇場
【深セン公演】12月6日(金)~12月8日(日) 深セン保利劇院
【上海公演】12月14日(土)~12月22日(日) 虹橋芸術センター
【公式サイト】http://naruto-stage.jp/
【公式 LINE@】@naruto-stage
【公式Twitter】@naruto_stage
(C)岸本斉史 スコット/集英社
(C)ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」製作委員会2019
(取材・文・撮影/エンタステージ編集部 1号)